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平成14年9月27日判決言渡 平成13年(ワ)第19581号 損害賠償請求事件
       主  文
1 被告は,原告に対し,金4594万3629円及びこれに対する平成13年9
月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを7分し,その5を被告の負担とし,その余を原告の負担と
する。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
      事実及び理由
第1 請求
 被告は,原告に対し,金7050万円及びこれに対する平成13年9月26日か
ら支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,マンションを建設するために被告から土地を購入した原告が,土地の引
渡し後に,地中から建物のコンクリート基礎やオイル類といった障害物が発見され
たため,それらを撤去,処理する費用や,マンション建設の遅れを取り戻すための
突貫工事費用等の負担を余儀なくされたとして,被告に対し,瑕疵担保責任特約に
基づく損害賠償及び遅延損害金を請求した事案である。
1 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は,()内に証拠を示す。)
(1) 当事者
 原告は,不動産,特にマンション建築用地を購入し,そこにマンションを建
て,マンション販売業者へ一括して売却することを主たる業務とする株式会社であ
る(弁論の全趣旨)。
 被告は,鉄鋼業等を営む株式会社である(弁論の全趣旨)。
(2) 土地の売買
 被告は,原告に対し,平成12年9月7日,被告が所有していた別紙物件目
録記載の土地(以下「本件土地」という。)及びその地上建物を,代金3億325
0万円で売った(争いがない。以下「本件売買契約」という。)。その際,株式会
社大和銀行(以下「大和銀行」という。)本店不動産部,同社東京不動産部及び株
式会社アイワ興産が仲介人となって関与した(甲2)。
(3) 瑕疵担保責任に関する特約
 原告及び被告は,本件売買契約に際し,本件土地に廃棄物,地中障害物又は
土壌汚染等の隠れた瑕疵がある場合に,本件土地の引渡し日以後6か月を経過した
ときは,原告は被告に対して担保責任の追及ができないものとする旨合意した(争
いがない。以下「本件特約」という。)。
(4) 本件土地の引渡し
 被告は,原告に対し,平成12年10月6日,本件土地を引き渡した(争い
がない)。
2 争点
(1) 本件土地の瑕疵の有無
(2) 制限期間経過前の通知の有無
(3) 損害及び因果関係
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(本件土地の瑕疵の有無)について
(原告の主張)
 本件土地には,本件売買契約当時,以下の隠れた瑕疵があった。
ア 建物のコンクリート基礎
イ オイルタンク
ウ オイルタンクからの配管
エ オイルによる土壌汚染
 なお,エのオイルによる土壌汚染については,確かに環境基本法の土壌汚染
の程度には達していないが,雨が降り土が水を含むとかなりの悪臭が生じる程度に
汚染されており,このような土壌を放置したままマンションを建築して分譲すると
なれば,マンションの購入者にとっては快適な生活を営むことができなくなること
が予想されるのであり,現に,産業廃棄物として処理せざるを得なかったのである
から,瑕疵が存在するというべきである。
(被告の主張)
 原告が主張するアないしウの構築物が発見されたこと,これらの構築物につ
いては,マンション建物の基礎の設置の障害となるから,それが隠れた瑕疵である
ということは争わない。
 これに対し,エについては,本件土地にオイル類が存在していたことは知ら
ない。仮にオイル類が本件土地中に存在していたとしても,そのオイル類は環境基
本法9条に基づく「土壌汚染にかかる環境基準について」(平成3年環境庁告示第
46号)所定の環境基準値を全項目において下回っているのであるから,同条にお
ける「土壌汚染」に該当せず,したがって,原告は本件土地内のオイル類を処分し
なければならない法的な義務を負っていない。原告がオイル類を処分したのは,マ
ンション業者が販売しやすいように改良を行ったに過ぎず,本件土地が通常有すべ
き性状を欠いていたからではない。したがって,オイル類の存在によっても,本件
土地が売買の目的物として,取引通念上,通常有すべき効用を欠く瑕疵があるとは
いえない。
(2) 争点(2)(制限期間経過前の通知の有無)について
(原告の主張)
ア 原告は,大和建設株式会社(以下「大和建設」という。)との間で,平成
13年1月31日にマンション建築請負契約を締結し,大和建設は,同年3月6日
に杭工事に着手した。すると,同年3月27日,本件土地の地中から地中梁等の地
中障害物が発見された。
 原告は,同年4月5日,本件売買契約を仲介していた大和銀行の東京不動
産部に対して,地中障害物の存在をファクシミリで連絡し,被告への報告を依頼し
た。
 大和銀行東京不動産部所属の宅地建物取引主任者Aは,原告からのファク
シミリの内容について,直ちに被告東京支店支店長Bに電話で報告した。
 また,Aは,同日,大和銀行本店不動産部課長C(以下「C」という。)
に対しても,同様の報告を行ったところ,Cは,同日中に被告常務取締役Dに対し
てこの報告内容を電話で伝えた。
イ 確かに,原告の被告に対するこれらの報告は,地中障害物が存在するとの
事実についてのみ通知するものであったが,本件土地のマンション建築に支障のあ
る地中障害物が存在するということと,瑕疵の範囲は本件土地のうちマンション建
築に必要な範囲であるということについて明らかにしているものであるから,原告
の通知は瑕疵の種類及びその大体の範囲を具体的に通知したものということができ
る。
 そして,オイル汚染については,汚染土壌が発見されたのは同年4月12
日以降ではあるが,同年4月5日に通知された「地中障害物」の中に当然に含まれ
ている。
ウ 以上によれば,原告は,被告に対し,担保責任追及の制限期間満了日であ
る同年4月6日までに,本件土地に存するすべての瑕疵について通知して,担保責
任を追及する意思を明確にしたというべきである。
(被告の主張)
ア 本件土地の地中から障害物が発見されたことは認めるが,AがBに対し
て,平成13年4月5日に障害物の存在を報告した事実については否認する。ま
た,CがDに対して連絡してきたことは認めるが,「原告より,本件土地から地中
障害物が発見された旨の連絡があった。」という趣旨の事実経過報告に過ぎず,瑕
疵担保責任の追及を内容とするものではなかった。
 したがって,原告が被告に対して制限期間内に瑕疵の存在を通知した事実
はない。
イ 瑕疵担保責任追及の前提となる瑕疵の通知の内容としては,およそ何らか
の瑕疵が存することを抽象的に通知するのみでは足りず,瑕疵の種類及び大体の範
囲を具体的に通知する必要がある。ところが,原告が被告に対して通知した瑕疵の
内容は,「地中障害物の存在」に過ぎず,オイル類の存在の瑕疵については何ら通
知されていない。
 したがって,仮に原告が被告に対して地中障害物による瑕疵の存在を制限
期間内に通知していたことが認められるとしても,オイル類に関しては,制限期間
内に瑕疵の通知を行ったことはなかった。
(3) 争点(3)(損害及び因果関係)について
(原告の主張)
 原告は,本件土地に地中障害物が存在したことによって,以下の損害を被っ
た。
ア 地中障害物の撤去費用及び工事停止費用 5050万円
 工事停止費用とは,地中障害の発生により,原告が作業を停止することを
余儀なくされ,作業員や機械等を止めたことから発生した費用である。
イ 突貫工事費用及び一般管理費 2000万円
(ア) 突貫工事費用について
 原告は,ダイア建設株式会社(以下「ダイア建設」という。)に対し,
平成13年2月16日,本件土地上にマンションを建築して,土地と建物を一括で
売却する旨合意した。その際,原告及びダイア建設は,マンションの引渡し期日を
平成14年3月末日と定め,引渡しが遅延した場合は,原告は,ダイア建設に対
し,約定による遅延損害金を支払うこと,さらに,事前にマンションを購入した顧
客からダイア建設が引渡し遅延を理由に契約解除された場合には,その損害も賠償
することを約した。
 ところが,本件土地から地中障害物が発見されたため,原告はこれを撤
去する作業を余儀なくされ,平成13年6月22日の段階で予定よりも2か月もマ
ンション建築工事が遅延してしまった。
 そこで,原告は,ダイア建設との契約を予定どおり履行するため,大和
建設に突貫工事を依頼し,その分の費用が新たに生じたのである。
 そして,原告は,被告に対し,上記のダイア建設との関係を再三伝えて
おり,被告はその事情を十分承知していた。
 したがって,突貫工事費用は,本件土地の瑕疵との間で相当因果関係に
立つ損害であるから,被告はこれを原告に賠償すべき責任を負う。
(イ) 一般管理費について
 一般管理費は,建設業界では注文者が請負人に対して支払うことが常識
とされている費用であり,一般に総工費の1割ないし1割5分とされているもので
ある。
(被告の主張)
 原告の主張はいずれも争う。
 コンクリート塊等の構築物に関しては,本件土地の瑕疵に当たることは争わ
ないが,その撤去費用は多く見積もっても222万3000円である。
 また,仮にオイル類の存在が本件土地の瑕疵に当たるとしても,原告が主張
するような損害は発生していない。特に,工事停止費用及び突貫工事は,原告が調
査をせずにマンション建設の工期を確定させてしまったことが原因であり,被告に
転嫁できる費用ではなく,一般管理費に至っては,いかなる根拠によって発生した
かさえも明らかでなく,かかる費用が損害に含まれるはずがない。
第3 当裁判所の判断
1 前提となる事実
 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 被告は,昭和42年ころ,株式会社ニュージャパンパノラマから,本件土地
を購入し,昭和43年ころ,本件土地上に2棟の建物を建築して,それぞれ非鉄金
属の保管用倉庫と,事務所兼独身寮として使用していた。
 原告は,本件土地上にマンションを建築して,これを売却することを計画
し,平成12年9月7日,分譲用マンションを建設する目的で,被告から本件土地
及びその地上建物を3億3250万円で購入し,同月25日に所有権移転登記を得
た。なお,本件売買契約の契約書(甲2)の第1条には,上記目的が明記されてお
り,被告もこれを了知していた。本件土地の引渡し時期については,契約書上,同
年10月31日とされていたが,原告は,マンション建設と販売という事業の迅速
な進展を図るため,早期の引渡しを希望し,結局,同年10月6日に被告から引渡
しを受けた(甲1,2,15,乙2)。
(2) 原告は,平成12年9月から,マンション建設の準備作業に入り,同年12
月11日,江東区から建築確認申請の認可を受けた。
 また,原告は,同年12月ころ,ダイア建設から,本件土地及びその上に建
設予定のマンションを一括して売ってほしい旨の申込みを受け,平成13年2月1
6日,これを承諾して売買契約を締結した。その際,原告及びダイア建設は,マン
ションの引渡し期日を平成14年3月末日と定め,引渡しが遅延した場合は,原告
は,ダイア建設に対し,約定による遅延損害金を支払うこと,さらに,事前にマン
ションを購入した顧客からダイア建設が引渡し遅延を理由に契約解除された場合に
は,原告はその損害も賠償することを約した(甲15,弁論の全趣旨)。
(3)ア 原告は,平成13年1月下旬ころ,本件土地上にあった建物2棟の解体を
終え,同月31日,大和建設にマンションの建設工事を発注した。その後,大和建
設は諸官庁への手続を行い,準備工事期間を経て,同年3月6日から杭打ち工事を
開始した(甲9,15)。
イ 大和建設は,同月27日,本件土地の地中に,建物のコンクリート基礎が
埋没していることを発見し,原告担当者Eにその事実を連絡した。このコンクリー
ト基礎は,同月28日及び29日の2日間で撤去された。
 Eは,連絡を受けた直後,大和銀行に対し,地中障害物が発生したことを
電話で連絡したが,大和銀行東京不動産部の担当者Fは,Eに対して書面で連絡す
るよう要求した(甲9,15,弁論の全趣旨)。
ウ そこで,Eは,工事開始後間もなくして本件土地から地中障害物が発見さ
れたこと,地中障害物の全容解明は,工事の進捗により同年5月上旬まで時間がか
かること,瑕疵担保責任の通知期間が満了するまで時間がないこと,障害物の全容
が確認でき次第,改めて資料及び見積書に写真を添付して説明することを記載した
報告書を作成し,同年4月5日,これを原告代表者名義で大和銀行東京不動産部に
ファクシミリで送信した。Fは,上記報告書を確認し,Eと連絡をとって,被告へ
の連絡は大和銀行側で行う旨を伝えた。
 Fは,同日,直ちに大和銀行東京不動産部の宅地建物取引主任者であるA
に対し,上記報告書をもって地中障害物の発見の事実を知らせた。Aは,すぐに上
記報告書を大和銀行本店不動産部の課長であるCにファクシミリで送信し,地中障
害物発見の事実を報告した(甲3,15,弁論の全趣旨)。
エ Cは,同日,即座に被告常務取締役兼営業本部長であるDに電話で連絡
し,上記報告書の内容,すなわち,工事開始後間もなくして本件土地から地中障害
物が発見されたこと,地中障害物の全容解明は,工事の進捗により同年5月上旬ま
で時間がかかること,瑕疵担保責任の通知期間が満了するまで時間がないこと,障
害物の全容が確認でき次第,原告から改めて資料及び見積書に写真を添付しての説
明があることを話した。また,Cは,翌4月6日,大阪市にある被告本店を訪れ,
Dに対し,改めて地中障害物が発見された事実を報告し,今後瑕疵担保責任の問題
が発生する可能性について説明した(甲3,弁論の全趣旨)。
オ(ア) この点について,被告は,DがCから最初に受けた連絡は,「原告よ
り,本件土地から地中障害物が発見された旨の連絡があった。」という事実経過報
告に過ぎず,また,翌日Cと面談した際に受けた説明も,地中障害物の発見場所や
形状の報告にとどまり,いずれも瑕疵の通知ではなかった旨主張し,証拠(乙3)
中にはこれに沿うDの供述記載部分も存在する。
 しかしながら,前記イ及びウのとおり,EがFに対して最初に地中障害
物の発見を電話で報告した際,FはEに書面にまとめるよう指示したことからすれ
ば,大和銀行側は地中障害物の発見の事実を重大なこととして認識しており,だか
らこそEからファクシミリで報告書が送付されてきた後,大和銀行内部では担当者
及び責任者間で迅速に連絡がとられたものと認められる。してみると,CがAから
受けた連絡は,Eの作成した上記報告書を転送することによる正確なものであるこ
とがうかがわれ,したがって,CがDに対して行った報告も,上記報告書に沿った
詳細なものであったと推認されるのである。また,Cが,地中障害物発見について
の報告があった翌日に,急遽被告本店にまで出向いて,殊更にDと面談しているこ
とからすれば,その面談の内容は,単なる地中障害物の発見場所や形状の報告にと
どまらず,今後原告から被告に対する瑕疵担保責任追及の可能性を示唆することを
も含む,突っ込んだ協議であったと推認するのが相当である。
 したがって,上記認定に反するDの供述記載部分は採用できない。
(イ) なお,原告は,同年4月5日,Aが被告東京支店支店長のBに対して地
中障害物発見の事実を報告した旨主張し,証拠(甲7)中にはこれに沿う原告代表
者の供述記載部分もあるが,これを裏付けるに足りる他の証拠はなく,かえって,
前記Bは,Aからは連絡がなかった旨述べ(乙2),原告の主張を明確に否定して
いることからすれば,この点に関する原告代表者の供述記載部分は採用できない。
(4)ア 大和建設は,杭打ち工事を完了し,山留め工事を開始したところ,同年4
月10日,本件土地からコンクリート塊等の障害物を発見したため,翌11日から
これを撤去する作業に入った。すると,同月12日,地中からオイル類を含んだ土
が発見された。
 大和建設は,障害物を撤去して,山留め工事も完了し,同年5月1日には
根伐工事に入ったが,そのころ,本件土地からコンクリート製のオイルタンクの残
骸が発見され,現場全体でオイル類により黒く汚染されて泥状になった土壌が見つ
かった。この汚染された土壌は,環境基本法16条1項(旧公害対策基本法9条)
に基づく「土壌の汚染に係る環境基準について」(平成3年8月23日環境庁告示
第46号)に定められた環境基準に抵触するような量の有害物質を含有してはいな
かったが,雨が降り水を含むと,強い悪臭を発した(甲5の1,8ないし11,1
5,乙1,弁論の全趣旨)。
イ そこで,大和建設は,発見されたガラ等を搬出した後である同月14日か
ら同年6月5日まで工事を中断し,汚染土壌は産業廃棄物扱いとなるため,これを
廃棄するには高額の費用がかかることになるが,費用を誰が負担するかについて原
告及び被告と協議した。原告は,大和建設に対し,大和建設の見積もった障害物の
撤去及び土壌廃棄費用合計5200万円をとりあえず支払うことを確約したため,
大和建設は,同年6月6日に根伐工事を再開した(甲4の1,5の2,15)。
ウ ところが,大和建設は,本件土地から,再び既存基礎や杭等を発見し,翌
7日にはオイルタンクからの配管を見つけた。この配管内には,多量のオイル類が
含まれていた。大和建設は,これらの障害物を撤去して工事を進め,同月13日に
マンションの建物部分の1次根伐工事を終了し,同月17日にマンションの立体駐
車場部分の2次根伐工事を完了した。そして,同月18日,大和建設が建物部分の
2次根伐工事を開始したところ,地中から再びオイル類を含有した土壌の層及び杭
等を発見したので,これを撤去して工事を進めた(甲5の2,15,弁論の全趣
旨)。
(5)ア 以上のように,本件土地からコンクリート塊や汚染土壌が発見され,これ
を撤去する作業をしていたため,平成13年6月当時,本件土地上のマンション建
設工事は,当初予定されていたよりも大幅に遅延していた。そこで,原告は,期限
内にダイア建設にマンションを引き渡すことができるよう,大和建設に対し,工期
の短縮を図る施策を検討するように指示し,その際に発生する費用の見積りを命じ
た。
 大和建設は,原告に対し,必要となる費用について,工事停止費用として
515万7000円,躯体逆打ち工法の導入による突貫工事費用として2451万
9000円,一般管理費として196万1000円,消費税として158万185
0円,合計3321万8850円と見積もった。なお,工事停止費用とは,地中障
害の発生により,原告が作業を停止することを余儀なくされ,作業員や機械等を止
めたことから発生した費用であり,一般管理費とは,建設業界において注文者が請
負人に対して支払うことがある費用であり,一般に総工費の1割ないし1割5分と
されているものである(甲4の2,15,弁論の全趣旨)。
イ 原告は,大和建設の見積りを承認し,大和建設に工事を行わせたが,その
後,大和建設との間で交渉し,前記(4)イ記載の障害物撤去及び土壌廃棄費用と工事
停止費用を合わせて5050万円に減額し,突貫工事費用及び一般管理費を合わせ
て2000万円に値引きして,費用を合計7050万円(消費税込み)とする旨の
合意をした(甲14,15)。
ウ 原告は,大和建設に対し,平成13年7月17日に1050万円を,平成
14年1月31日に2000万円をそれぞれ支払った。
 また,原告は,大和建設に対し,残金4000万円について,支払期日を
平成14年9月29日とする約束手形を振り出した(甲15)。 
2 争点に対する判断
(1) 争点(1)(本件土地の瑕疵の有無)について
ア 前記争いのない事実等によれば,本件売買契約には,本件土地に廃棄物,
地中障害物又は土壌汚染等の隠れた瑕疵がある場合に,本件土地の引渡し日以後6
か月を経過したときは,原告は被告に対して担保責任の追及ができないものとする
旨の特約(本件特約)が付されていたものである。そして,これを合理的に解釈す
ると,本件特約は,①商法526条1項前段の瑕疵担保責任における買主の検査・
通知義務を踏まえつつ,②同条項後段が,売買目的物に直ちに発見できない瑕疵が
ある場合に,買主に対して,引渡し後6か月以内に瑕疵を発見することと,その後
直ちに売主に通知することを要求している趣旨をさらに進めて,買主に土地の引渡
し後6か月以内に瑕疵の発見及び通知の両方を行う義務を課して,通知期間を短縮
するものであり,買主が上記期間内に発見・通知を怠った場合には,買主は売主に
対し,もはや瑕疵担保責任を追及することができなくなることを内容とするもので
あると認めるのが相当である。
 そうすると,本件土地に瑕疵があるか否かの判断は,商法526条が基礎
とする民法570条の解釈に準ずるものと解される。
イ 前記前提となる事実によれば,本件土地の地中には,杭などのほか,①建
物の基礎やオイルタンク等のコンクリート塊,②オイルタンクからの配管,③オイ
ル類によって汚染された土壌,以上の物が埋没していたが,本件売買契約当時,原
告及び被告はこれらの埋没物が存在することを認識し得なかったことが認められ
る。そして,上記①及び②が,マンション建設の障害となり,瑕疵に当たることに
ついて,被告は明らかに争わない。
ウ そこで,上記③の汚染土壌が存在したことにより,本件土地に瑕疵がある
といえるか否かについて検討する。
 民法570条にいう「瑕疵」とは,売買の目的物が,その種類のものとし
て取引通念上通常有すべき性状を欠いていることをいう。そして,宅地の売買にお
いて,地中に土以外の異物が存在することが即土地の瑕疵に当たるとはいえないの
は当然であるが,その土地上に建物を建築するについて支障となる質,量の異物が
地中に存在するために,その土地の外見から通常予測され得る地盤の整備,改良の
程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合は,宅地として通常有すべき
性状を備えないものとして,土地の瑕疵に当たるというべきである。
 これを本件についてみるに,前記前提となる事実及び証拠(甲1,4の
1,10)によれば,本件土地は,東京都江東区に所在する地積約800平方メー
トルの宅地であり,比較的大規模の建物を建築できるものであること,原告は,分
譲用マンションを建設する目的で本件土地を購入したものであり,被告もこれを了
解していたこと,オイル類によって汚染された土壌は,大和建設がマンション建築
のための基礎工事(根伐工事)を行っている際に発見されたこと,汚染土壌は,量
にして合計1200立方メートルにのぼり,その形状は黒色で部分的には泥状にな
っているところもあったこと,汚染土壌が雨等によって水分を含むと,強い悪臭が
発生したこと,オイル類によって汚染されて悪臭を発するような土壌は,産業廃棄
物に該当するため,これを処分するためには,通常の残土処分に比べてかなり高額
の廃棄費用を負担しなければならないこと,以上の諸事実が認められる。
 してみると,本件土地における土壌汚染は,マンション建設の基礎工事途
中で発見される程度に浅い位置において,多量のオイル類を含有し,しかも,容易
に悪臭を発生し得るような状態にあったというのであるから,本件土地に基礎を置
き,多数の住民を迎え入れることになるマンションを建設することを妨げる程度に
至っており,特別に費用をかけてでも処理する必要があるといわざるを得ない。し
たがって,本件土地は,取引通念上通常有すべき品質,性能を欠くというべきであ
り,上記③の土壌汚染は本件土地の瑕疵に当たると認めるのが相当である。
エ これに対し,被告は,本件土地の地中に存在したオイル類は,環境基本法
に基づく環境基準値を全項目において下回っているのであるから,原告は本件土地
内のオイル類を処分しなければならない法的な義務を負わず,したがって,本件土
地に瑕疵があるとはいえないとし,原告が汚染土壌を処理したのは,単なる土地の
改良にすぎない旨主張する。
 しかしながら,売買目的物に関する瑕疵の有無の判断は,オイル類の処分
をしなければならないかどうかという買主の法的義務の存否によって定められるの
ではなく,対象物が取引通念上通常有すべき性状を欠くか否かによって決定される
べきものであるところ,本件土地上にマンション建物を建築,販売するにあたっ
て,その地中の比較的浅い部分に多量のオイル類が存在しているということは,買
手に建物ひいては本件土地の安全性,快適性に対する疑念を生じさせ,購買意欲及
び価格のマイナス要因となることは明らかである。したがって,本件土地には,取
引通念上通常有すべき性状が欠けており,原告が本件土地の汚染土壌を処理したこ
とは,本件土地の欠陥を補正するために当然必要な措置であるというべきであるか
ら,被告の主張は採用できない。
オ よって,争点(1)に関する原告の主張は理由がある。
(2) 争点(2)(制限期間経過前の通知の有無)について
ア 前記前提となる事実及び弁論の全趣旨によれば,前記(1)で認定した各瑕疵
は,被告が原告に対して本件土地を引き渡した平成12年10月6日当時,いずれ
も地中に埋没していたから,直ちに発見することができない瑕疵,すなわち,本件
特約にいう「隠れた瑕疵」に該当すると認められる。
イ そこで,原告が被告に対し,制限期間である平成13年4月6日の経過以
前に瑕疵の存在についての通知を行ったか否かについて検討する。
 商法の瑕疵担保責任規定における通知は,売主が発見された瑕疵に対して
適切な処置,対応をとることを考慮する機会を与えるために要求されるものである
から,その通知の内容は,瑕疵の種類及び大体の範囲を明らかにするものであれば
足りると解される(大審院大正11年4月1日判決民集1巻155頁参照)。
 しかるに,前記前提となる事実によれば,原告担当者Eは,平成13年4
月5日及び6日に,被告取締役のDに対し,大和銀行のCを使者として,工事開始
後間もなくして本件土地から地中障害物が発見されたこと,地中障害物の全容解明
は,工事の進捗により同年5月上旬まで時間がかかること,瑕疵担保責任の通知期
間が満了するまで時間がないこと,障害物の全容が確認でき次第,原告から改めて
資料及び見積書に写真を添付しての説明があること,以上の事実を通知したことが
認められる。
 してみると,原告は被告に対し,制限期間経過前に,本件土地に地中障害
物が存在したこと,その範囲は現段階では解明できていないが,建物建築の基礎工
事に必要な範囲全体に及ぶ可能性もあることを通知しており,被告が瑕疵に対して
臨機の処置をとるために必要な程度に,瑕疵の種類及び大体の範囲を明らかにする
内容の通知を行ったと認めるのが相当である。
ウ これに対し,被告は,原告の通知はオイル類による土壌汚染の瑕疵の存在
について一切触れていないから,この点に関する制限期間内の通知はなかったと主
張する。
 確かに,本件特約が,瑕疵について「廃棄物,地中障害物又は土壌汚染」
と列挙していることからすれば,地中障害物と土壌汚染とは全く別異の瑕疵であ
り,地中障害物の存在について発見・通知したからといって,土壌汚染の存在を発
見・通知したことにはならないと解する余地もないではない。
 しかしながら,前記のとおり,本件特約は商法526条1項の規定を基本
的に踏襲するものと認められるから,通知の有無の解釈適用は,前記のような形式
的解釈ではなく商法の条項の解釈に従い,合理的,合目的的になされるべきであ
る。
 そうとすれば,コンクリート塊,配管及び汚染土壌は,マンション建築工
事の障害となる地中埋没物である点に差異はないから,いずれも地中障害物の存在
による瑕疵としてとらえられるところ,原告が最初にコンクリート塊を発見して,
被告に対して地中障害物の存在を通知し,その全容解明にはなお時間がかかる旨を
伝達した時点で,その後工事の進行中に発見される可能性のあるマンション建設に
とっての地中障害物全体の存在について通知がなされたと認めるのが相当である。
したがって,土壌汚染についての通知はなかったとする被告の主張は直ちに採用で
きない。
エ よって,争点(2)に関する原告の主張は理由がある。
(3) 争点(3)(損害及び因果関係)について
ア 前記前提となる事実によれば,大和建設は,原告に対し,本件地中障害物
の処理等に関し,障害物の撤去及び土壌廃棄費用として5200万円,工事停止費
用として515万7000円,突貫工事費用として2451万9000円,一般管
理費として196万1000円を見積もったこと,原告は,減額交渉の結果,大和
建設に対し,障害物の撤去及び土壌廃棄費用並びに工事停止費用として5050万
円,突貫工事費用及び一般管理費として2000万円,合計7050万円を支払う
ことを約したこと,原告は大和建設に対し,現金合計3050万円を現実に支払
い,残金4000万円についても約束手形を振り出したこと,以上の事実が認めら
れる。
イ ところで,瑕疵担保責任における損害賠償の範囲は,買主が目的物に瑕疵
がないと信じたことによって生じた損害,すなわち信頼利益に限られると解される
ところ,本件において,土地の瑕疵を除去するため,地中障害物の撤去ないし廃棄
に要した工事費用が信頼利益に含まれるのは明らかである。しかし,本件で原告が
負担したその余の費用については,いずれも原告が本件土地上に建設するマンショ
ンの工事に関して必要とした費用であって,本件土地自体の問題ではないから,原
告が本件土地に瑕疵がないと信じたことによって生じた損害とは解し得ない。
ウ これに対し,原告は,突貫工事費用について,被告は原告とダイア建設と
の関係を知っており,原告がマンション建設を急がなければならないことについて
承知していたか,容易に了解可能だったのであるから,瑕疵との関係で相当因果関
係にあり,信頼利益に含まれる旨主張する。
 しかし,相当因果関係の判断の基礎となる事情は,売買契約の締結時点を
基準に考慮すべきと解されるところ,前記前提となる事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,被告は,本件売買契約当時,本件土地の瑕疵の存在については善意無過失であ
ったと認められるから,当時被告が本件土地の瑕疵から突貫工事費用が生じること
を予見するのは不可能であり,突貫工事費用が信頼利益に含まれると認めることは
できない。
エ そして,弁論の全趣旨によれば,大和建設が,原告に対し,障害物の撤去
及び土壌廃棄費用並びに工事停止費用の当初見積額合計5715万7000円を,
合計で5050万円に減額したのは,減額分665万7000円を,上記2費目に
按分で割り付けるとの趣旨であったと推察されるから,減額後の障害物の撤去及び
土壌廃棄費用は,4594万3629円(算式:5200万円-(665万700
0円×5200万円/5715万7000円))と認めるのが相当である。
オ よって,争点(3)に関する原告の主張は,損害を障害物の撤去及び土壌廃棄
費用4594万3629円とする限度で理由がある。
第4 結論
 以上によれば,原告の請求は,金4594万3629円及びこれに対する平成1
3年9月26日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で理
由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することと
して,主文のとおり判決する。
   東京地方裁判所民事第1部
        裁判長裁判官小磯武男
  
       裁判官坂口公一
       裁判官大谷 太
物 件 目 録
所  在   東京都江東区ab丁目
地  番   c番d
地  目   宅地
地  積   793.38平方メートル

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