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詐欺被告事件
平成29年4月24日宣告東京地方裁判所刑事第7部
判決
主文
被告人を懲役2年2月に処する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,放送設備その他無線設備の建設及び保全等を目的とする株式会社A受
信・ケーブル事業部及び放送・通信ネットワーク事業部従業員として一般共聴施設
の保守及び施工管理業務等に従事するとともに,テレビ共聴設備の設計・施工・保
守業務等を目的とする株式会社Bを実質的に経営していたものであるが,Aa支店
(平成26年7月1日b事業所に名称変更。以下「a支店等」という。)において,
デジタル放送のテレビ難視地域における共同受信施設設置工事の受発注等に関する
職務に従事していたCと共謀の上,架空の工事代金の名目でAから金銭をだまし取
ろうと考え,別表(掲載省略)記載のとおり,真実は,Aa支店等が,株式会社D
を介して,富津市(以下略)テレビ共同受信施設設置工事ほか11件の工事をBに
発注した事実はなく,同社が同工事を行う事実もないのに,これがあるように装い,
平成26年1月31日頃から平成27年3月31日頃までの間,16回にわたり,
Aa支店長Eほか1名に対し,情を知らないDc事業所長Fらをして,同工事にか
かるA宛ての請求書を作成し郵送させるなどして同工事の代金の支払を請求させ,
千葉市(以下略)のAa支店等ほか1か所において,Eらをして同請求が正当なも
のであると誤信させて工事代金の支払を承認させ,よって,平成26年2月28日
から平成27年4月30日までの間,9回にわたり,A経営業務室財務担当者をし
て,東京都千代田区(以下略)(平成26年5月7日以降は同区(以下略))株式会
社G銀行d営業部に開設されたA名義の当座預金口座から東京都渋谷区(以下略)
株式会社G銀行e出張所に開設されたD名義の普通預金口座に合計2193万30
00円を振込入金させ(別表番号1については,更にD名義の普通預金口座からG
銀行f支店に開設されたB名義の普通預金口座に同額を振込入金することとなって
おり,その後実際に同口座に振込入金されている。その余については,既にDがB
に対して同額の工事代金を先払いしていたものである。),もって,人を欺いて財物
を交付させた。
(量刑の理由)
1本件は,被告人が,共犯者と共謀の上,共犯者の勤務先会社(A)から元請
会社(D)を通じて自らの経営する会社(B)がテレビ共同受信施設設置工事を請
け負ったように装い,多数回にわたり,情を知らない元請会社(D)従業員らをし
て,架空の上記工事代金の支払を勤務先会社(A)に請求させ,同社の支店長らを
して同請求が正当なものと誤信させて工事代金の支払を承認させ,同代金を振込入
金させて騙し取った,という詐欺事案である。
本件の量刑において重視すべき事情は,①本件が計画的,常習的な犯行であるこ
と,②被害が多額であることである。すなわち,被告人らは,被害会社(A)が主
導的に行っている難視地域対策の工事に目を付け,被害会社の内部者である共犯者
と下請業者である被告人が手を組み,発覚しにくいように書類を整えるなどし,約
1年3か月の長期間にわたり,合計16回にわたり,架空工事の発注を繰り返して
工事代金を騙し取っていたものである。被害額は合計約2139万円に上っており,
同種事案の中でも悪質な部類に属する。そして,被告人自身,ほぼ半額を利益とし
て得ている。以上によれば,被告人の刑事責任は重い。
2そうすると,余罪分を含めて合計1億2000万円の被害弁償をしているこ
と(弁1),共犯者の指示を受けて架空発注を繰り返していた経緯があること,被告
人が一貫して事実を全て認めて反省していること,父親が監督を誓約していること
など,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,本件は刑の執行を猶予す
るべき事案ではなく,主文のとおりの量刑が相当である。
平成29年4月24日
東京地方裁判所刑事第7部
裁判官野原俊郎

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