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令和2年3月18日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
令和元年(ワ)第29973号発信者情報開示請求事件
口頭弁論終結日令和2年2月17日
判決
当事者の表示別紙1当事者目録記載のとおり5
主文
1被告NTTは,原告に対し,別紙2発信者情報目録記載1⑴及び⑵の各情報
を開示せよ。
2被告CTCは,原告に対し,別紙2発信者情報目録記載2の各情報を開示せ
よ。10
3被告ソフトバンクは,原告に対し,別紙2発信者情報目録記載3⑴及び⑵の
各情報を開示せよ。
4原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5訴訟費用は,原告に生じた費用の9分の2,被告NTTに生じた費用の3分
の1及び被告ソフトバンクに生じた費用の3分の1を原告の負担とし,原告に生じ15
た費用の9分の2及び被告NTTに生じたその余の費用を被告NTTの負担とし,
原告に生じた費用の3分の1及び被告CTCに生じた費用を被告CTCの負担とし,
原告に生じたその余の費用及び被告ソフトバンクに生じたその余の費用を被告ソフ
トバンクの負担とする。
事実及び理由20
第1請求
1被告NTTは,原告に対し,別紙2発信者情報目録記載1の各情報を開示せ
よ。
2主文2項と同旨
3被告ソフトバンクは,原告に対し,別紙2発信者情報目録記載3の各情報を25
開示せよ。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,原告が,被告らの電気通信設備を経由してされたインターネット上のウ
ェブサイトへの別紙3侵害情報目録記載1ないし3の各「画像」欄の画像(以下,
番号に対応させて「本件掲載画像1」などという。)の掲載によって,別紙4写真5
目録記載1ないし3の各画像(以下,番号に対応させて「本件画像1」などとい
う。)についての原告の著作権(複製権,公衆送信権)が侵害されたことが明らか
であり,本件掲載画像1ないし3の掲載者(以下,画像の番号に対応させて「本件
発信者1」などという。)に対する損害賠償請求をするために,被告らの保有する
別紙2発信者情報目録記載1ないし3の各発信者情報(以下,番号に対応させて10
「本件発信者情報1」などという。)の開示が必要であると主張して,特定電気通
信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」
という。)4条1項に基づき,被告NTTに対し,本件発信者情報1の開示を,被
告CTCに対し,本件発信者情報2の開示を,被告ソフトバンクに対し,本件発信
者情報3の開示を,それぞれ求める事案である。15
2前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨に
より容易に認められる事実)
⑴被告ら
被告らは,いずれも,電気通信事業を営み,インターネット接続サービス等を提
供する株式会社である。20
⑵本件発信者1ないし3の行為
ア本件発信者1は,株式会社サイバーエージェント(以下「サイバーエージェ
ント」という。)の提供するブログサービスを利用して開設された「住林で建てた
こでぶ家の記録」と題するブログペ-ジ(以下「本件ブログページ1」という。)
に,別紙3侵害情報目録記載1の「画像URL」欄記載のURLで特定された本件25
掲載画像1を掲載し,同「タイトル」欄記載のタイトルを付した同「ページURL」
欄記載のURLで特定された記事(以下「本件記事1」という。)を投稿した。
本件記事1の投稿は,被告NTTの提供するインターネット接続サービスを介し
て行われた(甲1の1)。
イ本件発信者2は,平成30年11月23日,サイバーエージェントの提供す
るブログサービスを利用して開設された「二人のLOVE☆Life」と題するブ5
ログペ-ジ(以下「本件ブログページ2」という。)に,本件掲載画像2を掲載し
た別紙3侵害情報目録記載2の記事(以下「本件記事2」という。)を投稿した。
本件記事2の投稿は,被告CTCの提供するインターネット接続サービスを介し
て行われた(甲2の1)。
ウ本件発信者3は,令和元年8月4日,株式会社ジェイスクエアードの提供す10
る「GirlsChannel」と題するインターネット上の掲示板(以下「本
件掲示板」という。)に,本件掲載画像3を掲載した別紙3侵害情報目録記載3の
記事(以下「本件記事3」という。)を投稿した。
本件記事3の投稿は,被告ソフトバンクの提供するインターネット接続サービス
を介して行われた(甲3の1)。15
⑶本件発信者情報2及び3の全部又は一部の保有
ア被告CTCは,本件発信者情報2を保有している。
イ被告ソフトバンクは,別紙2発信者情報目録記載3⑴及び⑵の各情報(以下,
各情報につき,番号に対応させて「本件発信者情報3⑴」などという。)を保有し
ている。20
3争点
【被告NTTに対する請求】
⑴本件画像1についての原告の著作権が侵害されたことが明らかであるか(争
点1-1)
⑵本件発信者情報1は本件掲載画像1の掲載に係る発信者情報であり,被告N25
TTは本件発信者情報1を保有しているか(争点1-2)
⑶本件発信者情報1の開示を求める正当な理由はあるか(争点1-3)
【被告CTCに対する請求】
⑴本件画像2についての原告の著作権が侵害されたことが明らかであるか(争
点2-1)
⑵本件発信者情報2の開示を求める正当な理由はあるか(争点2-2)5
⑶原告が本件発信者情報2の開示を求めることは権利の濫用に当たるか(争点
2-3)
【被告ソフトバンクに対する請求】
⑴本件画像3についての原告の著作権が侵害されたことが明らかであるか(争
点3-1)10
⑵被告ソフトバンクは本件発信者情報3⑶を保有しているか(争点3-2)
⑶本件発信者情報3の開示を求める正当な理由はあるか(争点3-3)
第3争点に対する当事者の主張
1争点1-1(本件画像1についての原告の著作権が侵害されたことが明らか
であるか)について15
【原告の主張】
⑴本件画像1の著作物性及び原告の著作権
本件画像1は,カメラの設定,構図,被写体の選定等に創意工夫が凝らされた写
真の著作物であり,原告は,本件画像1の著作者として著作権を有する。
⑵著作権(複製権,公衆送信権)侵害の成否20
本件掲載画像1は本件画像1と同一であり,本件発信者1は,本件掲載画像1を
本件ブログページ1に掲載し,本件画像1についての原告の著作権(複製権,公衆
送信権)を侵害している。
⑶違法性阻却事由の不存在
本件記事1には,ウェブサイト名やURLなどで本件掲載画像1の出典が記載さ25
れていないこと,本件記事1に本件掲載画像1を掲載する必然性はないことなどに
照らせば,本件ブログページ1への本件掲載画像1の掲載は適法な引用(著作権法
32条1項)に当たらない。
その他,本件ブログページ1への本件掲載画像1の掲載について,違法性阻却事
由の存在をうかがわせる事情は認められない。
【被告NTTの主張】5
⑴本件画像1の著作物性及び原告の著作権
不知。インターネット上に公開されている写真に原告が著作権者であることを示
す表示を付すことは容易であるから,原告が本件画像1の著作権を有するかは明ら
かでない。
⑵著作権(複製権,公衆送信権)侵害の成否10
否認ないし争う。本件掲載画像1が本件ブログページ1に掲載された時点で,本
件画像1についての著作権が利用許諾や譲渡等の対象とされていれば,著作権侵害
は認められない。
⑶違法性阻却事由の不存在
争う。本件画像1は公表されたものであり,本件ブログページ1への本件掲載画15
像1の掲載は適法な引用(著作権法32条1項)に当たる可能性がある。
2争点1-2(本件発信者情報1は本件掲載画像1の掲載に係る発信者情報で
あり,被告NTTは本件発信者情報1を保有しているか)について
【原告の主張】
⑴次の各点に照らせば,本件発信者情報1は本件掲載画像1の掲載に係る発信20
者情報であり,被告NTTは本件発信者情報1を保有している。
アサイバーエージェントは,原告に対し,本件ブログページ1への本件掲載画
像1の送信日時として平成31年4月14日午後23時00分16秒を開示した。
イ被告NTTからの法4条2項の照会に対する回答(乙1,以下「本件回答」
という。)によれば,本件掲載画像1の掲載に用いられたインターネット接続サー25
ビスに係る契約者(以下「本件契約者」という。)は会社であるが,本件掲載画像
1の掲載がその従業員によって業務上行われたのであれば,本件契約者が本件発信
者1であるというべきである。
⑵本件契約者が本件発信者1であると認められなかったとしても,本件契約者
は,社内でインターネット接続環境を提供するものとして,特定電気通信役務提供
者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条第1項の発信者5
情報を定める省令(以下「省令」という。)1号,2号の「その他侵害情報の送信
に係る者」に当たるから,少なくとも,別紙2発信者情報目録記載1⑴及び⑵の各
情報(以下,各情報につき,番号に対応させて「本件発信者情報1⑴」などとい
う。)は本件掲載画像1の掲載に係る発信者情報である。
【被告NTTの主張】10
否認ないし争う。原告が主張する本件掲載画像1の送信日時は,本件掲載画像1
がその他の記事と一緒に公開された日時であり,それが本件掲載画像1の送信日時
であるかは明確でない。また,本件契約者は,契約に係るインターネット接続サー
ビスを不特定多数人が利用できる環境にあることを前提として,本件掲載画像1の
掲載に係る送信が行われたかは不明である旨回答しており,本件発信者1であると15
はいえない。
3争点1-3(本件発信者情報1の開示を求める正当な理由はあるか)につい

【原告の主張】
原告は,本件発信者1に対して,本件掲載画像1の掲載を理由とする著作権(複20
製権,公衆送信権)侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求をするために,本件
発信者情報1の開示を求める正当な理由がある。
【被告NTTの主張】
争う。
4争点2-1(本件画像2についての原告の著作権が侵害されたことが明らか25
であるか)について
【原告の主張】
⑴本件画像2の著作物性及び原告の著作権
本件画像2は,カメラの設定,構図,被写体の選定等に創意工夫が凝らされた写
真の著作物であり,原告は,本件画像2の著作者として著作権を有する。
⑵著作権(複製権,公衆送信権)侵害の成否5
本件掲載画像2は本件画像2と同一であり,本件発信者2は,本件掲載画像2を
本件ブログページ2に掲載し,本件画像2についての原告の著作権(複製権,公衆
送信権)を侵害している。
⑶違法性阻却事由の不存在
①本件記事2の本文では本件掲載画像2について触れられておらず,本件掲載画10
像2を掲載する必要はないから,正当な範囲内で引用されたものとはいえないこと,
②ウェブサイト名やURLなどで本件掲載画像2の出所が明示されておらず,公正
な慣行に合致するとはいえないことなどに照らせば,本件ブログページ2への本件
掲載画像2の掲載は適法な引用(著作権法32条1項)に当たらない。
その他,本件ブログページ2への本件掲載画像2の掲載について,違法性阻却事15
由の存在をうかがわせる事情は認められない。
【被告CTCの主張】
⑴本件画像2の著作物性及び原告の著作権
不知。
⑵著作権(複製権,公衆送信権)侵害の成否20
不知ないし争う。
⑶違法性阻却事由の不存在
争う。①本件掲載画像2は,本文に即した景色,本件発信者2の心情等を描写す
る目的で掲載されたものであり,その目的を達するために画像を1枚だけ掲載する
ことは社会通念に照らして合理的な範囲内の行為であること,②著作権者が原告で25
あることを示す表示を残したまま本件掲載画像2を掲載しており,公正な慣行に合
致することなどに照らすと,本件ブログページ2への本件掲載画像2の掲載は適法
な引用(著作権法32条1項)に当たる。
5争点2-2(本件発信者情報2の開示を求める正当な理由はあるか)につい

【原告の主張】5
原告は,本件発信者2に対して,本件掲載画像2の掲載を理由とする著作権(複
製権,公衆送信権)侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求をするために,本件
発信者情報2の開示を求める正当な理由がある。
【被告CTCの主張】
争う。10
6争点2-3(本件発信者情報2の開示を求めることは権利の濫用に当たるか)
について
【被告CTCの主張】
①本件掲載画像2は,単に法的知識がないために掲載されてしまったにすぎない
ことがうかがわれ,侵害に係る行為態様が悪質であるとはいえないこと,②本件ブ15
ログページ2で本件掲載画像2を閲覧した者は極めて少数であり,原告に具体的な
損害が生じたとはいえないことなどに照らせば,原告が本件発信者情報2の開示を
求めることは権利の濫用に当たる。
【原告の主張】
争う。20
7争点3-1(本件画像3についての原告の著作権が侵害されたことが明らか
であるか)について
【原告の主張】
⑴本件画像3の著作物性及び原告の著作権
本件画像3は,カメラの設定,構図,被写体の選定等に創意工夫が凝らされた写25
真の著作物であり,原告は,本件画像3の著作者として著作権を有する。
⑵著作権(複製権,公衆送信権)侵害の成否
本件掲載画像3は本件画像3と同一であり,本件発信者3は,本件掲載画像3を
本件掲示板に掲載し,本件画像3についての原告の著作権(複製権,公衆送信権)
を侵害している。
⑶違法性阻却事由の不存在5
本件掲示板への本件掲載画像3の掲載について,違法性阻却事由の存在をうかが
わせる事情は認められない。
【被告ソフトバンクの主張】
⑴本件画像3の著作物性及び原告の著作権
不知。10
⑵著作権(複製権,公衆送信権)侵害の成否
争う。本件画像3に右下に付されている表示は不鮮明であり,本件掲載画像3も
同様に不鮮明であるから,両者が同一のものであるかは判然とせず,本件画像3に
ついての原告の著作権を侵害(複製権,公衆送信権)していることが明らかである
とはいえない。15
⑶違法性阻却事由の不存在
争う。
8争点3-2(被告ソフトバンクは本件発信者情報3⑶を保有しているか)に
ついて
【原告の主張】20
被告ソフトバンクは,本件発信者情報3⑶を保有している。
【被告ソフトバンクの主張】
否認する。
9争点3-3(本件発信者情報3の開示を求める正当な理由はあるか)につい
て25
【原告の主張】
原告は,本件発信者3に対して,本件掲載画像3の掲載を理由とする著作権(複
製権,公衆送信権)侵害に係る不法行為に基づく損害賠償請求をするために,本件
発信者情報3の開示を求める正当な理由がある。
【被告ソフトバンクの主張】
争う。5
第4当裁判所の判断
1被告NTTに対する請求
⑴争点1-1(本件画像1についての原告の著作権が侵害されたことが明らか
であるか)について
ア本件画像1の著作物性及び原告の著作権10
証拠(甲1の3)及び弁論の全趣旨によれば,本件画像1は,高松港の風景を夕
方に撮影した写真であり,夕焼けの空を背景とし,建物の照明等を写し込むなど,
構図,アングル等を工夫して撮影されたものと認められるから,写真の著作物であ
ると認められる。
そして,証拠(甲1の3,甲4の1)及び弁論の全趣旨によれば,本件画像1の15
右下には原告の氏名のローマ字表記等と合致する「Copyright(c)Ni
ghtViewPhotographerB」との表示(以下「本件表示1」
という。)がされていること,原告が管理する「夜景INFO」と題するウェブサ
イト(以下「原告サイト」という。)に本件画像1が公開されていること,原告が
本件表示1が埋め込まれる前の本件画像1のデータを所持していることが認められ,20
これらに照らせば,本件画像1は原告が撮影した上で本件表示1を付すなどの加工
をしたものと認められる。
したがって,原告は,本件画像1を撮影した著作者であり,本件画像1の著作権
を有すると認められる。
イ著作権(複製権,公衆送信権)侵害の成否25
証拠(甲1の1~3)によれば,本件掲載画像1と本件画像1は,同一のもので
あると認められるから,本件発信者1は,本件画像1を複製して本件ブログページ
1に掲載したものであり,本件画像1についての原告の著作権(複製権,公衆送信
権)を侵害したと認められる。
ウ違法性阻却事由の不存在
(ア)証拠(甲1の1)及び弁論の全趣旨によれば,本件記事1は,四国への旅行5
のプランを記載したものであり,1日目の旅程の「屋島(夜景)」に関するものと
して,「そしてついでに夜景,見ちゃおっかな~と!」という記載の下に本件掲載
画像1が掲載されていることが認められる。
しかしながら,四国への旅行のプランや旅程を説明するために本件掲載画像1を
掲載する必要性が高いとはいえない上,本件記事1において,本件掲載画像1に本10
件表示1が付されたままであるとはいえ,原告サイトのURL等を付すなどして本
件掲載画像1の出所が明示されていたとは認められないことを併せ考慮すれば,本
件記事1における本件掲載画像1の掲載は,引用の目的上正当な範囲内のものであ
るとも,公正な慣行に合致するものであるとも認められないというべきであり,適
法な引用(著作権法32条1項)には該当しない。15
(イ)そして,本件全証拠によっても,本件掲載画像1の掲載について,その他の
違法性阻却事由をうかがわせる事情は認められない。
エ争点1-1についての小括
以上に照らせば,本件ブログページ1への本件掲載画像1の掲載により,本件画
像1についての原告の著作権(複製権,公衆送信権)が侵害されたことは明らかで20
ある。
⑵争点1-2(本件発信者情報1は本件掲載画像1の掲載に係る発信者情報で
あり,被告NTTは本件発信者情報1を保有しているか)について
ア事実認定
後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。25
(ア)本件ブログページ1には,本件記事1の投稿日時として,平成31年4月2
0日7時00分00秒が表示されている(甲1の1,以下,この日時を「本件日時
①」という。)。
(イ)本件ブログページ1の利用するブログサービスを提供しているサイバーエー
ジェントは,令和元年5月27日,原告からの本件記事1の投稿に係る発信者情報
の開示請求に対して,請求に係る情報を発信者が流通させた日時が平成31年4月5
14日23時00分16秒であること(以下,この日時を「本件日時②」という。)
及び当該発信者のIPアドレスが「(IPアドレスは省略)」(以下,このIPア
ドレスを「本件IPアドレス」という。)であることを回答した(甲7の1)。
(ウ)サイバーエージェントは,その後の原告からの照会に対し,令和元年8月2
0日,ブログページに表示される投稿日時は任意に編集することができるものであ10
り,投稿時に,投稿記事の公開日時を指定することができること,本件日時②につ
いて,本件掲載画像1を含む本件記事1が保存された最初の日時であることを回答
し,また,同年11月22日,本件日時②について,本件掲載画像1を含む本件記
事1が流通された日時であることを回答した(甲10,11)。
(エ)被告NTTから本件日時②に本件IPアドレスの割当てを受けてインターネ15
ット接続サービスの提供を受けていた本件契約者は,令和元年11月21日,被告
NTTからの法4条2項の照会に対し,契約に係る回線から本件記事1に係る情報
を発信したかは不明であるとし,回答の「理由」欄に,「当社ではインターネット
接続方法として,専用端末を用いた無線方式と有線方式があります。」と記載した
上で,有線方式による接続の場合には,有効なIDとパスワードを入力すればイン20
ターネット接続が可能となること,無線方式による接続の場合には,端末固有のI
Dによってインターネット接続が可能な契約状態にあることが確認されればインタ
ーネット接続が可能となることなどを記載した本件回答をした(乙1)。
(オ)被告NTTは,本件契約者の氏名又は名称及び住所に係る情報を保有してい
る(乙1)。25
イ検討
(ア)前記ア(ア)ないし(ウ)によれば,本件発信者1が本件ブログページ1に本件記
事1を投稿して本件掲載画像1を掲載した日時は,本件記事1に投稿日時として表
示されている本件日時①の日時ではなく,原告がサイバーエージェントから開示を
受けた本件日時②の日時,すなわち,平成31年4月14日23時00分16秒で
あると認めるのが相当であり,これを覆すに足りる証拠はない。5
(イ)本件契約者については,法人であることを前提とするような記載がされると
ともに,本件記事1に係る情報を発信したかは不明である旨が記載された本件回答
がある一方で,個人であることをうかがわせる証拠はなく,また,法人であるとし
ても,本件ブログページ1及び本件記事1がその業務として開設,投稿がされたこ
とをうかがわせる証拠はなく,かえって,本件ブログページ1や本件記事1の記載10
内容等からすれば,本件記事1を投稿した者の私的な情報を発信する場及び記事で
あることがうかがわれる。ほかに,本件契約者が本件発信者1であると認めるに足
りる証拠はない。
もっとも,前記ア(エ)のとおり,本件契約者においてインターネット接続を利用
する場合には,有線方式については有効なID及びパスワード,無線方式について15
は固有のIDを付された端末が必要となるのであるから,本件発信者1は,本件契
約者から有効なID又は固有のIDを付された端末の割当てを受けるなどして,本
件契約者の契約に係るインターネット接続サービスを利用した者であると推認する
ことができ,この推認を覆すに足りる証拠はない。
そうすると,本件契約者は,少なくとも,省令1号及び2号の「その他侵害情報20
の送信に係る者」に当たると解することができ,本件契約者の氏名又は名称及び住
所は,法4条1項の発信者情報に該当すると解することができるが,他方,本件契
約者の電子メールアドレスは,法4条1項の発信者情報に該当しないと解される。
ウ争点1-2についての小括
者情報であり,被告NTTは同情報を保有しているということができるが,本件発
⑶争点1-3(本件発信者情報1の開示を求める正当な理由はあるか)につい

前記⑴によれば,原告は,本件発信者1に対し,著作権(複製権,公衆送信権)
侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求をするために被告NTTが保有す5
る本件発信者情報1の開示を受けるべき正当な理由があるものと認められる。
⑷被告NTTに対する請求についての小括
以上のとおり,本件掲載画像1の掲載による原告の権利侵害が明白であるところ,
本件発信者情報1⑴及び⑵は被告NTTの保有する上記権利侵害に係る発信者情報
に該当し,その開示を受けるべき正当な理由があるといえるから,被告NTTは,10
開示関係役務提供者として本件発信者情報1⑴及び⑵を開示する義務を負う。
2被告CTCに対する請求
⑴争点2-1(本件画像2についての原告の著作権が侵害されたことが明らか
であるか)について
ア本件画像2の著作物性及び原告の著作権15
証拠(甲2の3)及び弁論の全趣旨によれば,本件画像2は,愛媛県新居浜市の
工場を中心とする風景を夜間に撮影した写真であり,建物の照明を写し込むなど,
構図,アングル等を工夫して撮影されたものと認められるから,写真の著作物であ
ると認められる。
そして,証拠(甲2の3,甲4の2)及び弁論の全趣旨によれば,本件画像2の20
右下には原告の氏名のローマ字表記等と合致する本件表示1がされていること,原
告が管理する原告サイトに本件画像2が公開されていること,原告が本件表示1が
埋め込まれる前の本件画像2のデータを所持していることが認められ,これらに照
らせば,本件画像2は原告が撮影した上で本件表示1を付すなどの加工をしたもの
と認められる。25
したがって,原告は,本件画像2を撮影した著作者であり,本件画像2の著作権
を有すると認められる。
イ著作権(複製権,公衆送信権)侵害の成否
証拠(甲2の1~3)によれば,本件掲載画像2と本件画像2は,同一のもので
あると認められるから,本件発信者2は,本件画像2を複製して本件ブログページ
2に掲載したものであり,本件画像2についての原告の著作権(複製権,公衆送信5
権)を侵害したと認められる。
ウ違法性阻却事由の不存在
(ア)証拠(甲2の1)及び弁論の全趣旨によれば,本件記事2は,投稿者の心情
等が記載されたものであり,工場や夜景に関する記載は見当たらず,本件掲載画像
2に関する説明もされていないことが認められるから,そもそも,本件記事2に本10
件掲載画像2を掲載する必要性を認めることはできない。
また,本件記事2において,本件掲載画像2に本件表示1が付されたままである
とはいえ,原告サイトのURL等を付すなどして本件掲載画像2の出所が明示され
ていたとは認められないことを併せ考慮すれば,本件記事2における本件掲載画像
2の掲載は,引用の目的上正当な範囲内のものであるとも,公正な慣行に合致する15
ものであるとも認められないというべきであり,適法な引用(著作権法32条1項)
には該当しない。
(イ)そして,本件全証拠によっても,本件掲載画像2の掲載について,その他の
違法性阻却事由をうかがわせる事情は認められない。
エ争点2-1についての小括20
以上に照らせば,本件ブログページ2への本件掲載画像2の掲載により,本件画
像2についての原告の著作権(複製権,公衆送信権)が侵害されたことは明らかで
ある。
⑵争点2-2(本件発信者情報2の開示を求める正当な理由はあるか)につい
て25
前記⑴によれば,原告は,本件発信者2に対し,著作権(複製権,公衆送信権)
侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求をするために被告CTCが保有す
る本件発信者情報2の開示を受けるべき正当な理由があるものと認められる。
⑶争点2-3(原告が本件発信者情報2の開示を求めることは権利の濫用に当
たるか)について
被告CTCは,原告が本件発信者情報2の開示を求めることは権利の濫用に当た5
るとし,その理由として,①本件掲載画像2は,単に法的知識がないために掲載さ
れてしまったにすぎないことがうかがわれ,侵害に係る行為態様が悪質であるとは
いえないこと,②本件ブログページ2で本件掲載画像2を閲覧した者は極めて少数
であり,原告に具体的な損害が生じたとはいえないことを主張するが,本件発信者
2において法的知識がないために本件掲載画像2を掲載したものであり,また,本10
件ブログページ2で本件画像2を閲覧した者が少数にとどまったとしても,原告に
おいて本件発信者情報2の開示を求めることが権利の濫用に当たると認めるに足り
ず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
⑷被告CTCに対する請求についての小括
以上のとおり,本件掲載画像2の掲載による原告の権利侵害が明白であるところ,15
本件発信者情報2は上記権利侵害に係る発信者情報に該当し,その開示を受けるべ
き正当な理由があるといえるから,被告CTCは,開示関係役務提供者として本件
発信者情報2を開示する義務を負う。また,原告が本件発信者情報2の開示を求め
ることは権利の濫用に当たるとはいえない。
3被告ソフトバンクに対する請求20
⑴争点3-1(本件画像3についての原告の著作権が侵害されたことが明らか
であるか)について
ア本件画像3の著作物性及び原告の著作権
証拠(甲3の3)及び弁論の全趣旨によれば,本件画像3は,茨城県神栖市の製
油所のプラントを夜間に撮影した写真であり,その施設や煙突等に設置された多数25
の照明が鮮明に撮影されたものであって,構図,アングル等を工夫して撮影された
ものと認められるから,写真の著作物であると認められる。
そして,証拠(甲3の3,甲4の3)及び弁論の全趣旨によれば,本件画像3の
右下には原告の氏名のローマ字表記と合致する「C」との表示(以下「本件表示2」
という。)がされていること,原告が管理する「工場夜景ガイド」と題するウェブ
サイトにおいて本件画像3が公開されていること,原告が本件表示2が埋め込まれ5
る前の本件画像3のデータを所持していることが認められ,これらに照らせば,本
件画像3は原告が撮影した上で本件表示2を付すなどの加工をしたものと認められ
る。
したがって,原告は,本件画像3を撮影した著作者であり,本件画像3の著作権
を有すると認められる。10
イ著作権(複製権,公衆送信権)侵害の成否
証拠(甲3の1~3)によれば,本件掲載画像3と本件画像3は,被写体,撮影
方向等が同じであり,右下に本件表示2がされている点でも共通しているから,同
一のものと認められる。
したがって,本件発信者3は,本件画像3を複製して本件掲示板に掲載したもの15
であり,本件画像3についての原告の著作権(複製権,公衆送信権)を侵害したと
認められる。
ウ違法性阻却事由の不存在
本件全証拠によっても,本件掲載画像3の掲載について,違法性阻却事由をうか
がわせる事情は認められない。20
エ争点3-1についての小括
以上に照らせば,本件掲示板への本件掲載画像3の掲載により,本件画像3につ
いての原告の著作権(複製権,公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。
⑵争点3-2(被告ソフトバンクは本件発信者情報3⑶を保有しているか)に
ついて25
原告は,被告ソフトバンクは,本件発信者情報3⑶を保有している旨主張する。
しかしながら,被告ソフトバンクは,原告の主張を否認しており,被告ソフトバ
ンクが本件発信者情報3⑶を保有していると認めるに足る証拠はないから,原告の
主張は採用することができない。
⑶争点3-3(本件発信者情報3の開示を求める正当な理由はあるか)につい
て5
前記⑴によれば,原告は,本件発信者3に対し,著作権(複製権,公衆送信権)
侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求をするために被告ソフトバンクが
保有する本件発信者情報3⑴及び⑵の開示を求める正当な理由があるものと認めら
れる。
⑷被告ソフトバンクに対する請求についての小括10
以上のとおり,本件掲載画像3の掲載による原告の権利侵害が明白であるところ,
本件発信者情報3⑴及び⑵は被告ソフトバンクの保有する上記権利侵害に係る発信
者情報に該当し,その開示を受けるべき正当な理由があるといえるから,被告ソフ
トバンクは,開示関係役務提供者として本件発信者情報3⑴及び⑵を開示する義務
を負う。15
第5結論
以上によれば,原告の請求は,被告NTTに対して本件発信者情報1⑴及び⑵の,
被告CTCに対して本件発信者情報2の,被告ソフトバンクに対して,本件発信者
情報3⑴及び⑵の開示をそれぞれ求める限度で理由があるから,その限度で認容し,
その余は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。20
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
山田真紀
裁判官
神谷厚毅5
裁判官
西山芳樹10
(別紙一覧)
別紙1当事者目録
別紙2発信者情報目録
別紙3侵害情報目録5
別紙4写真目録
(別紙1)
当事者目録
原告A
被告エヌ・ティ・ティ・5
コミュニケーションズ株式会社
(以下「被告NTT」という。)
同訴訟代理人弁護士五島丈裕
被告中部テレコミュニケーション株式会社
(以下「被告CTC」という。)10
同訴訟代理人弁護士星川勇二
星川信行
渡部英人
春田大吾
被告ソフトバンク株式会社15
(以下「被告ソフトバンク」という。)
同訴訟代理人弁護士金子和弘
(別紙2)
発信者情報目録
1別紙3侵害情報目録記載1の「IPアドレス」欄記載のIPアドレスを同目
録記載1の「投稿日時」欄記載の日時頃に使用して同目録記載1の「侵害情報」欄5
記載の情報を送信した者に関する情報であって,下記⑴ないし⑶に掲げるもの
2別紙3侵害情報目録記載2の「IPアドレス」欄記載のIPアドレスを同目
録記載2の「投稿日時」欄記載の日時頃に使用して同目録記載2の「侵害情報」欄
記載の情報を送信した者に関する情報であって,下記⑴ないし⑶に掲げるもの
3別紙3侵害情報目録記載の「IPアドレス」欄記載のIPアドレスを同目録10
記載3の「投稿日時」欄記載3の日時頃に使用して同目録記載3の「侵害情報」欄
記載の情報を送信した者に関する情報であって,下記⑴ないし⑶に掲げるもの

⑴氏名又は名称
⑵住所15
⑶電子メールアドレス
以上
(別紙3侵害情報目録は省略)
(別紙4写真目録は省略)

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