弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を取り消す。
     控訴人の新訴は、これを却下する。
     控訴人の旧訴を大阪地方裁判所に差し戻す。
         事    実
 控訴人は、本件口頭弁論期日に出頭しないが、陳述したものとみなすべき控訴状
によれば、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和二十五年九月二十九日訴外三興工
業株式会社に対する国税滞納処分として、後記引用の原判決添付の別紙目録記載の
物件についてなした差押処分はこれを取り消す、訴訟費用は、第一、二審とも被控
訴人の負担とする。」との判決を求めるというにあつて、被控訴人指定代理人は、
「本件控訴を棄却する。控訴費用は、控訴人の負担とする。」との判決を求める旨
申立てた。
 当事者双方の事実上の主張ならびに、提出援用にかかる証拠、その認否の関係
は、いずれも原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
         理    由
 控訴人は、当初大阪国税局長を被告として、本件不動産が、控訴人の所有である
ことの確認と、訴外三興工業株式会社に対する国税滞納処分により右物件上になさ
れた差押登記の抹消登記手続とを訴求し、ついで昭和二十六年六月二十二日の原審
口頭弁論において、請求を差押処分の取消請求に訂正し、さらに昭和二十七年十一
月二十一日の右口頭弁論において、被告を淀川税務署長に変更し、なお昭和二十八
年三月十日の同口頭弁論において、右新請求は差押処分の当然無効なことを理由と
してその取消を求める趣旨であると釈明したものである。(右釈明の趣旨が無効宣
言の意味での取消を求めるというのであるか、それとも単なる取消を求めるもので
あるのかは、必ずしも明らかではない。)
 ところで、右訴の変更は、請求の変更と当事者の変更を含み、しかも両者は時間
的な間隔をおいて、二段階になされているが、元来行政事件の当事者適格の観点よ
りすれば、請求を右のように変更するにおいては、当然被告をも右のように変更し
なければならない関係にあつて、換言すれば、被告の変更は、請求の変更に伴う必
然的な結果というべく、別に被告とすべき行政庁を誤つたわけでないから、行政事
件訴訟特例法第七条の規定が、そのまま適用されないことは勿論であるのみなら
ず、両者の変更に存する如上の関係から、これを一体的に観察して、それが民事訴
訟法にいわゆる訴の変更として許されるべきか、どうかの観点からその判断をなす
べきであることはいうまでもない。
 <要旨>しかして、民事訴訟法上の訴の変更は、旧請求のために開始された訴訟手
続内において、従来の訴訟追行の結果を利用して新請求の審判をするのであ
るから、性質上、請求併合の一般的要件を具備し、新旧両個の請求が同種の訴訟手
続による場合でなければならないことは当然であり、又当事者が変更すれば、訴訟
承継につき特別の規定のある場合を除いて訴訟状態の継続は維持されないから、こ
の意味において、当事者の変更は、訴の変更の範疇に属せず、訴訟法上これを許さ
ないものというべきである。
 いま、これを本件についてみるに、従前の所有権の確認ならびに差押登記の抹消
登記手続の請求は、性質上通常訴訟に属し(本訴状の内容からみて右旧請求を差押
処分の効力を争う行政訴訟と認めることは困難である。)新な差押処分の取消請求
は行政訴訟に属すること明白であり、又前者と後者は、その手続を異にすること右
特例法第八条第九条等の規定によつても明らかなところであるから、本件訴の変更
は、右の点において既にその適法要件を欠くものというべきである。もつとも特例
法第六条は、行政訴訟にその請求と関連する限り、通常訴訟による請求であつて
も、その訴の併合を許しており、本件の新請求と旧請求との間には、右規定のいわ
ゆる関連性が認められないことはないが、右の如く行政訴訟に関連請求の併合が許
されるからと言つて、逆に通常訴訟に行政事件たる関連請求の併合を許すものと言
えないのは勿論であつて、もしそうでないとすれば、行政事件を通常訴訟の手続に
よつて審理するの結果となり、右特例法の趣旨を没却しその不当なことは明白であ
るから、右逆の場合たる本件においては前記関連性があることの故に、新旧両個の
請求が同種の訴訟手続により審理し得るものとは言えない。又本件は旧請求に代え
て、新請求の審判を求める交代的変更の場合であつて、現実に請求の併合を生ずる
わけではないが、訴の変更に訴訟手続の同種性が要請されるのは、旧請求の訴訟手
続内において、新請求の審判がなされ、かつ旧請求における従来の訴訟追行の結果
が新請求の審判に利用され得る関係にあることを要なるためであること前記説示の
とおりであるから、交代的変更であつても、訴訟手続の同種性を必要とすることに
かわりなく、この点は前記結論に何の影響もない。
 さらに本件では、右の外、被告を旧訴の大阪国税局長から、新訴の淀川税務署長
に変更するものであつて、かくの如きは訴の変更として許容し難いことは前記説示
によつて明らかなところである。もつとも、行政訴訟における被告たる行政庁は、
本来行政主体たる国、公共団体の機関であつて、それ自体独立した人格を有するわ
けでなく、ただ訴訟追行の便宜上形式的に当事者能力を与えられているに過ぎずし
て、訴訟の実質上の当事者は、国その他の行政主体であり、従つてその判決の拘束
力も関係行政庁に及ぶものとせられている所以であるから、行政庁相互間又は行政
庁と行政主体相互間に当事者の変更があつても、実質上の訴訟主体を同じくし、こ
れによつて包摂される限り、右変更を許容すべきものと解する余地がないではない
が、本件の旧訴は、前記の如く通常訴訟であり、従つて、被告を行政庁たる大阪国
税局長とする限り、当事者能力を欠くことになる点は別として、右被告を以て単に
形式上の当事者に過ぎなく、実質上の訴訟主体は国であると断じ難いことは言うま
でもないから、新訴たる行政訴訟の実質上の当事者が国であると言い得るにして
も、もはや、両者実質上の訴訟主体を同じくなるものとは言事えないから、右の理
論によつて本件当事者の変更を正当ずけることはできない。叙上の次第であるか
ら、本件訴の変更はとうていこれを許容するに由なきものといわなければならな
い。
 なお本件の如く、原審において、訴の変更を許容し、新訴について判決がなされ
た場合、控訴審において、これを不当として原判決を取消すことは、一面訴訟経済
に反するとともに、行政事件等の出訴期間の定めあるものについて、これを徒過せ
しめるおそれあるため、控訴審においては、もはや訴変更の当否を争い得ないもの
とする解釈も考えられないことはないが、右は少くとも、本件の如く訴訟手続の同
種性を欠きかつ当事者の変更を生ずるような訴の変更については妥当しないものと
いうべきである。
 よつて、本件訴の変更を許容し、新訴についてなされた原判決はこれを取り消す
べきものとし、旧訴については、原裁判所をして更に審理せしめるのが相当である
から、民事訴訟法第三百八十六条第三百八十九条を各適用して主文のとおり判決す
る。
 (裁判長判事 吉村正道 判事 大田外一 判事 金田宇佐夫)

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