弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aおよび弁護人小林蝶一の各上告趣意書は、末尾に添えた別紙の通りであ
る。
 (一) 被告人Aの論旨は、犯行の動機事情を述べて量刑の不当を主張し、また
被告人が申請した証人Bを喚問しなかつたことに対する攻撃である。本件犯行の事
情はなるほど同情にあたいするが義母を殺したという重罪に対し原審も犯行の事情
を考慮に入れて言渡通りの量刑をしたものと思われるのであつて、ともかくも元来
量刑不当の主張は上告の適法な理由にならないのであるから、論旨は採用し得ない。
 (二) 小林弁護人論旨第一点は、原審が本件犯行の核心ともいうべき被告人の
犯意を被告人の法廷外における自白のみによつて認定したのは、憲法第三八条第三
項および刑訴応急措置法第一〇条第三項違反である、と主張する。しかし、自白に
補強証拠を要するということはその自白が架空のものでないことを証明するに足り
る何らかの証拠があれば足りるものであることは、当裁判所の判例とするところで
あつて、(昭和二二年(れ)第六八号同二三年六月二三日大法廷判決)その程度の
補強証拠は原判決中にも挙げられており、さらに犯意のような犯罪の主観的方面に
ついては、補強証拠を必要としないという判例もある次第で(昭和二三年(れ)第
一九五三号同二四年四月五日最高裁判所第三小法廷判決参照)、原判決には所論の
ような違法はなく、論旨は理由がない。
 (三) 同論旨第二点は、原判決が自首の事実を明示しなかつたのは、理由不備
の違法である、というのである。しかし旧刑事訴訟法第三六〇条第一項はかゝる犯
罪後の事実の判示を要求していないのであるから、原判決には所論のような違法は
なく、論旨は理由がない。
 (四) 同論旨第三点は、原判決には自首減軽の主張に対して判断を示さなかつ
た違法があり、この点についての従来の判例の変更を求める、というのである。し
かし自首減軽をするかしないかは原審の裁量であつて、判決中にそれについての判
断を示す必要がないことは、当裁判所が繰返し判示したところであつて(昭和二二
年(れ)第一六九号同二三年二月一八日第二小法廷判決、昭和二三年(れ)第四九
八号同年九月一四日第三小法廷判決)、その判例を変更する必要を見出し得ず、論
旨は理由がない。
 よつて旧刑事訴訟法第四四六条および最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項
に従い、主文の通り判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 長谷川瀏関与
  昭和二四年一二月六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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