弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成25年11月27日判決言渡
平成25年(行ケ)第10254号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成25年11月13日
判決
原告X
訴訟代理人弁理士佐藤富徳
被告特許庁長官
指定代理人谷村浩幸
同井出英一郎
同堀内仁子
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2013-5424号事件について平成25年7月30日にした審
決を取り消す。
第2前提となる事実
1特許庁における手続の経緯等
原告は,平成24年8月15日,「お客様第一主義の」(標準文字)からなり,別
紙「指定役務目録」記載のとおりの役務を指定役務とする商標(以下「本願商標」
という。)の商標登録出願をしたが,同年12月25日,拒絶査定され,不服審判請
求(不服2013-5424号事件)をした。これに対して,特許庁は,平成25
年7月30日,不服審判請求は成り立たない旨の審決(以下「審決」という。)をし,
その謄本は,同年8月12日,原告に送達された。
2審決の概要
審決の理由は,別紙「審決書写」記載のとおりである。審決は,要するに,本願
商標は,「お客様第一主義の」に続く語が省略された構成からなるものであるとして
も,「お客様第一主義」の文字が強く印象され,自他識別標識としての機能を果たし
得ないものであり,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することが
できない商標であるとして,商標法3条1項6号に該当するとした。
第3取消事由に係る当事者の主張
1原告の主張
審決は,本願商標に接した取引者・需要者は,本願の指定役務との関係で,「お客
様第一主義のもとで提供されるもの(役務)」の意味合いを表したものと理解し,把
握すると判断したが,同判断は,以下のとおり,誤りである。
すなわち,確かに,「お客様第一主義」の文字をその指定商品に使用するときには,
これに接する取引者・需要者は,企業理念の一種の宣伝文言として理解することが
あり得る。
しかし,本願商標は,「お客様第一主義」と「の」の文字からなり,「お客様第一
主義の」の後に続く語が省略されていることから,表現態様において特徴がある。
また,本願商標から想起される観念も,多岐にわたる。そのため,本願商標は,指
定役務との関係において,特定の役務の質・内容を具体的に表示したものではなく,
特定の役務の具体的内容や特徴等を宣伝するためのキャッチフレーズとして認識・
理解されることはない。
審決は,インターネット上での使用例を挙げるが,それらは,「お客様第一主義の」
との語のみが使用された例ではないもの,又は本願商標の指定役務とは無関係の業
界で使用された例であって,そのような使用例があったとしても,本願商標が自他
識別標識としての機能を果たし得ないものとの結論を導く理由にはならない。
2被告の反論
本願商標は,「お客様第一主義の」の文字からなるところ,その構成は,「お客様
を第一にする主義」という程度の意味合いを理解させる「お客様第一主義」の文字
に,助詞「の」の文字を付加したものである。
一般に,「お客様第一主義」の文字は,企業の宣伝,広告に広く使用されているも
のであり,また,本願の指定役務に係る業界でも,顧客の満足度を高めるための企
業の理念や方針を表すものとして,広く使用されている。
一方,「の」の文字は,「連体格を示す。前の語句の内容を後の体言に付け加え,
その体言の内容を限定する。」との働きを有する助詞であり,また「後に付く体言が
省略され,体言に準じて使われる」こともある。
そうすると,「お客様第一主義の」の文字に続く体言が省略された構成である本願
商標は,これに接する需要者が,「お客様第一主義」の文字が企業の宣伝や広告にお
いて,その理念を表すものとして広く使用されている実情から,当該文字に注目し,
強く印象づけられ,その指定役務との関係において,構成全体として「お客様第一
主義のもとで提供されるもの(役務)」程の意味合いを表したものとして理解すると
いえる。
以上のとおり,本願商標は,これをその指定役務に使用する場合,これに接する
需要者が,企業理念を謳った,一種の宣伝,広告の文言として理解するに止まり,
自他役務を識別できる標識部分を有しないものである。本願商標は,需要者が何人
かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるから,商標法
3条1項6号に該当する。
第4当裁判所の判断
当裁判所は,審決に原告の主張に係る誤りはないとものと判断する。その理由は,
以下のとおりである。
1本願商標の構成等について
ア本願商標「お客様第一主義の」(標準文字)は,「お客様第一主義」と「の」
の各文字から構成される商標である。
本願商標中「お客様第一主義」との文字部分は,顧客(役務の提供先)を大切に
し,満足度を高めるとの基本理念や姿勢等を表した語であると理解される。同文字
部分は,自己を犠牲にしてまで,顧客に尽くすとの印象を与える語であることから,
別紙2「『お客様第一主義』の使用事例」のとおり,宣伝,広告等において数多く用
いられている。
また,本願商標中「の」との文字部分は,前の語句の内容を後続する名詞等に繋
げ,後続する名詞等の内容を限定する働きを有する助詞と解される。また,後続す
る名詞等が省略される場合においては,名詞等の意味を漠然と示唆する代用語とし
て使われることもある(乙31参照)。
イそうすると,本願商標は,指定役務に使用する場合,これに接する需要者は,
顧客を大切にするとの基本理念や姿勢等を表わした語であり,場合によっては,宣
伝・広告的な意図をも含んだ語であると認識するものと認められ,これを超えて,
何人かの業務に係る役務表示であると認識することはないと認められ,自他役務識
別力を有しない商標と解するのが相当である。
なお,本願商標は,商標法3条1項3号に該当すると解する余地もなくはないが,
本願商標には「の」の文字部分が含まれ,同文字部分は,普通に用いられる方法で
表示する標章とは必ずしもいえないことに照らすと,「お客様第一主義の」からなる
本願商標は,同項同号所定の,普通に用いられる方法で表示する標章「のみ」から構
成される商標とまではいえない。
ウ以上のとおりであり,本願商標は,「前各号に掲げるもののほか,需要者が何
人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標」であって,これ
が商標法3条1項6号に該当するとした審決に誤りはない。
2結論
以上のとおり,審決には原告の主張に係る取消事由はない。原告は,その他縷々
主張するが,いずれも採用の限りではない。よって,原告の請求を棄却することと
して主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
八木貴美子
裁判官
小田真治
別紙「指定役務目録」
第45類「金庫の貸与,ファッション情報の提供,結婚又は交際を希望する者への
異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供,葬儀の執行,墓地又は
納骨堂の提供,工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務,訴訟事件そ
の他に関する法律事務,登記又は供託に関する手続の代理,著作権の利用に関する
契約の代理又は媒介,社会保険に関する手続の代理,施設の警備,身辺の警備,個
人の身元又は行動に関する調査,占い,身の上相談,愛玩動物の世話,乳幼児の保
育(施設において提供されるものを除く。),家事の代行,衣服の貸与,祭壇の貸与,
火災報知機の貸与,消火器の貸与,装身具の貸与,特許情報・実用新案情報・意匠
情報・商標情報に関する先行調査,工業所有権(特許権・実用新案権・意匠権・商
標権を含む。)の移転の仲介・斡旋,工業所有権(特許権・実用新案権・意匠権・商
標権を含む。)に関する実施許諾若しくは使用許諾の仲介・斡旋,金庫の貸与に関す
る情報の提供,ファッション情報の提供に関する情報の提供,結婚又は交際を希望
する者への異性の紹介に関する情報の提供,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設
の提供に関する情報の提供,葬儀の執行に関する情報の提供,墓地又は納骨堂の提
供に関する情報の提供,工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務に関
する情報の提供,訴訟事件その他に関する法律事務に関する情報の提供,登記又は
供託に関する手続の代理に関する情報の提供,著作権の利用に関する契約の代理又
は媒介に関する情報の提供,社会保険に関する手続の代理に関する情報の提供,施
設の警備に関する情報の提供,身辺の警備に関する情報の提供,個人の身元又は行
動に関する調査に関する情報の提供,占いに関する情報の提供,身の上相談に関す
る情報の提供,愛玩動物の世話に関する情報の提供,乳幼児の保育(施設において
提供されるものを除く。)に関する情報の提供,家事の代行に関する情報の提供,衣
服の貸与に関する情報の提供,祭壇の貸与に関する情報の提供,火災報知機の貸与
に関する情報の提供,消火器の貸与に関する情報の提供,装身具の貸与に関する情
報の提供,特許情報・実用新案情報・意匠情報・商標情報に関する先行調査に関す
る情報の提供,工業所有権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権を含む。)の移転
の仲介・斡旋に関する情報の提供,工業所有権(特許権・実用新案権・意匠権・商
標権を含む。)に関する実施許諾若しくは使用許諾の仲介・斡旋に関する情報の提供」
別紙「『お客様第一主義』の使用事例」
(1)Aのウェブページには,「これからも,今お客様が何を求められているのか
を大事にする『お客様第一主義』・・・を念頭に,Aを引っ張っていく所存です。」
との記載がある(乙1)。
(2)Bのウェブページには,「Client-First(お客様第一主義)」,
「お客様に知財サービスを提供する私たちは,お客様第一主義に徹することを基本
的な理念としています。」との記載がある。(乙2)
(3)Cのウェブページには,「お客様第一主義に徹する私達は,・・・全力で戦い
ます。」との記載がある。(乙3)
(4)Dのウェブページには,「・・・お客様第一主義で,質の高いサービスを提
供できる経験豊かなスタッフにより構成されています。」との記載がある。(乙4)
(5)Eのウェブページには,「1.当事務所は『お客様第一主義』を徹底してま
いります」,「今後ともこの『お客様第一主義』を推し進めてまいります。」との記載
がある。(乙5)
(6)Fのウェブページには,「当事務所は,お客様第一主義です。」との記載があ
る。(乙24)
(7)Gのウェブページには,「Gはお客様第一主義を掲げ,お客様にサービスを
ご提供しております。」との記載がある。(乙6)
(8)Hのウェブページには,「Hはお客様第一主義を掲げ,お客様にサービスを
ご提供しております。」との記載がある。(乙7)
(9)Iのウェブページには,「お客様第一主義に徹し信頼関係の構築。」との記載
がある。(乙8)
(10)Jのウェブページには,「『お客様第一主義』を実践し,・・・ご納得頂いた
上でお手伝いさせて頂きます。」との記載がある。(乙20)
(11)Kのウェブページには,「『至誠』をモットーに『お客様第一主義』の精神
で。・・・ご喪家が求める満足を追求する『お客様第一主義』の精神で仕事にのぞん
でいます。」との記載がある。(乙21)
(12)Lのウェブページには,「お客様第一主義の精神をもって,・・・施行して
おります。」との記載がある。(乙22)
(13)Mのウェブページには,「【お墓作りにかける思いとお客様へ対する思い】
『お客様第一主義』を常に念頭に置いた接客を心掛けております。」との記載がある。
(乙23)
(14)Nのウェブページには,「お客様第一主義」との項目が設けられている。(乙
9)
(15)Oのウェブページには,「お客様第一主義」との項目が設けられ,「当社が
目指す『お客様第一主義』とは」,「『お客様第一主義』や『顧客満足』の先にある『顧
客感動』」,「お客様の視点で考え,お客様を中心に,第一優先とする『お客様第一主
義』や・・・当然のこととなってきております。」と記載されている。(乙10)
(16)Pのウェブページには,「お客様第一主義」との項目が掲げられ,「掲げる
のは,お客様第一主義」,「Pは,お客様第一主義を掲げ,より良いサービス・商品
を提供してまいります。」,「お客様第一主義を実践するための教育」,「Pではお客様
第一主義を掲げ,それを実践するために・・・。」,「お客様第一主義の取組みと実績」
との記載がある。(乙11)
(17)Qのウェブページには,「qでは,『お客様第一主義』をモットーに日々頑
張っております。私共の考える『お客様第一主義』とは,全ての場面でどうしたら
お客様に満足して頂けるかという事だと考えております。」との記載がある。(乙1
2)
(18)Rのウェブページには,「創業以来,一貫して『お客様第一主義』をモット
ーに,・・・活動しております。私たちの目指すお客様第一主義とは,弊社のものづ
くりによりお客様ニーズを満足させること。」との記載がある。(乙13)
(19)Sのウェブページには,「1.お客様第一主義に徹しますお客様第一主
義とは,・・・なくてはならない存在になることである。」との記載がある。(乙14)
(20)Tのウェブページには,「T企業行動憲章」「1.【お客様第一主義の実践】」
との記載がある。(乙15)
(21)Uのウェブページには,「お客様第一主義は,・・・確信しています。」との
記載がある。(乙16)
(22)Vのウェブページには,「私たちVは“お客様第一主義”の理念のもと・・・」
との記載がある。(乙17)
(23)Wのウェブページには,「Wの販売スタッフはお客様第一主義を徹底的に貫
きます。」との記載がある。(乙18)
(24)aのウェブページには,「お客様第一主義」との項目が設けられている。(乙
19)
(25)bのウェブページには,「当店は『お客様第一主義』のペットシッターです。」
との記載がある。(乙25)
(26)cのウェブページには,「モットーである”お客さま第一主義”を心に,日々
精進全力疾走中。」,「仕事におけるモットーお客さま第一主義」との記載がある。
(乙26)
(27)dのウェブページには,「1.お客様第一主義」との項目が設けられている。
(乙27)
(28)eのウェブページには,「お客様第一主義」の項目に,「『お客様第一主義』
であることを常に念頭に置き・・・」との記載がある。(乙28)
(29)fのウェブページには,「親切,丁寧をモットーにお客様第一主義を貫きま
す。」との記載がある。(乙29)
(30)gのウェブページには,「・・・お客様第一主義に徹し,社会に貢献させて
いただく企業を目指して社員一同努力いたす所存でございます。」との記載がある。
(乙30)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛