弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第
一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、適式の呼出
を受けながら、当審における本件口頭弁論期日に出頭しない。
 当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において、「(一)原判決二枚目裏三
行目に「昭和二十五年四月十日小切手の割合」とあるのは、「昭和二十七年四月十
日小切手の割引」の誤記であるから、これを訂正する。(二)本件小切手は郵便振
替貯金法に基いて振り出されたもので、同法によれば指図禁止の小切手である。従
つて受取人を指定し得る者は振出人だけであつて、その他の者の受取人の記人は不
適法である。しかして本件においては、被控訴人が受取人の補充をしたのであつ
て、右補充は無効であつて、被控訴人は本件小切手の受取人ではない。(三)本件
小切手には支払地及び振出地として東京都としか記載してないから、小切手として
は不完全であつて、被控訴人の請求は失当である。」と述べた外、原判決事実摘示
記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。
 証拠として、被控訴人は、甲第一号証を提出し、原審証人A、Bの各証言を援用
し、控訴代理人は、原審及び当審における控訴会社(被告)代表者C尋問の結果を
援用し、甲第一号証の成立を認めた。
         理    由
 控訴人が昭和二十七年四月中、金額四万五千円、振出日昭和二十七年四月二十五
日、支払地及び振出地はいずれも東京都、支払人日本橋郵便局、振出人東京都中央
区a町b丁目cノd日本物産株式会社(控訴人)取締役社長Cと記載し、受取人欄
を白地のままとした小切手一通を振り出したことは当事者間争なく、原審証人A、
Bの各証言を綜合すれば、右小切手は控訴人がAに依頼した控訴人のために全国購
買農業協同組合連合会から注文書を入手するための報酬の支払にあてる趣旨で昭和
二十七年四月十日頃控訴人がB、D立会の上Aに交付したものであることが認めら
れる。控訴人は、右小切手は割引依頼のためDに交付したものであつて、控訴人は
まだ右割引金を受けとつてないと主張するけれども、右主張にそうが如き原審並び
に当審における控訴会社(被告)代表者Cの供述は当裁判所の信用しないところ
で、これをおいて他に控訴人の右主張事実を認めるに足る証拠はない。
 しかして成立に争のない甲第一号証と前掲証人Aの証言を綜合すれば、Aが本件
小切手の交付を受けた翌日本件小切手を被控訴人に割引のため譲渡し、白地であつ
た受取人欄に被控訴人の氏名が記入されたこと、本件小切手が昭和二十七年四月二
十六日支払のため支払人に呈示されたが支払を拒絶されたので、支払人をして本件
小切手に呈示の日を表示して記載し、かつ日附を附した支払人の支払拒絶宜言を記
載せしめたことを認めることができる。
 <要旨>控訴人は、第一に本件小切手の受取人の補充記載は無効であると主張して
いるので按ずるに、郵便振替貯金法第三十八条第三項、郵便振替貯金規則第
七十四条によれば、郵便振替貯金加入者は特別の場合に所属口座所管庁が承認した
場合の外は郵便局を支払人とする小切手は記名式でかつ指図禁止の小切手のみを振
り出さなければならないと規定されているけれども、右規定は支払人である郵便局
の小切手支払についての事務処理を簡単ならしめることを目的とした規定と認めら
れ、振出人が受取人欄の記載をなさず、いわゆる白地小切手を振り出し、受取人欄
の記載を他人に委託することまで禁じた趣旨とは解し難い。
 しかして本件の場合は、控訴人がAに対し受取人の記載を委託したことが前掲A
の証言によつて認められるから、前段認定の本件小切手の受取人の補充記載は適法
といわなければならない。原審並びに当審における控訴会社(被告)代表者本人尋
問の結果中右認定に反する部分は信用しない。
 控訴人は、第二に、本件小切手の振出地及び支払地の記載は不完全で、よつても
つて本件小切手を無効たらしむるが如き主張をしているので按ずるに、小切手に記
載すべき振出地及び支払地は最小行政区画たる地域を表示すべきものであり、東京
都における独立した最小行政区画は区、市、町、村であるから、本件の場合は振出
地及び支払地として東京都という表示は不適法である。しかしながら、小切手法第
二条第四項により振出人の名称に附記した地、すたわち本件においては東京都中央
区a町b丁目cノdにおいて振り出したものとみかされ、更に支払地については本
件小切与には支払人として日本橋郵便局と記載してあることから、支払地が東京都
中央区であることを推知するに十分であるから、振出地及び支払地はそれぞれ適法
に表示せられているものというべく、本件小切手は法定の要件を具備し居るものと
いうべきである。
 よつて被控訴人の控訴人に対する償還請求は正当としてこれを認容すべく、これ
を認容した原判決は正当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費
用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十五条を適用し、主文のとおり判決す
る。
 (裁判長判事 大江保直 判事 岡咲恕一 判事 猪俣幸一)

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