弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審における未決勾留日数中八〇日を本刑に算入する。」と
の部分を破棄する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 原審検察官の上告趣意について。
 記録によれば、被告人は、本件窃盗被告事件につき起訴(第一回)の翌日である
昭和三七年八月一四日勾留状の執行を受け、爾来第一審ならびに原審を通じて勾留
を継続されているものであるが、これよりさき、昭和三七年七月一一日大阪簡易裁
判所において窃盗罪により懲役一年に処せられ、同判決は同月二六日確定したので、
同日から該刑の執行を受け、その刑期は昭和三八年七月一〇日に満了すべき筋合で
あるところ、被告人は、本件第一審の有罪判決に対し昭和三七年一二月七日控訴の
申立をし、原審は、昭和三八年五月七日右控訴を棄却するとともに、原審における
未決勾留日数中八〇日を本刑に算入する旨の判決を言い渡したことが認められる。
してみれば、原審における未決勾留の全期間が前記確定刑の執行と重複執行されて
いたにも拘らず、原判決は、これを前示のように本刑に算入したものであることが
明らかであり、このように懲役刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入する
ことは、被告人に不当に利益を与えることとなり違法であること、所論引用の当裁
判所の判例(昭和二九年(あ)第三八九号同三二年一二月二五日大法廷判決、刑集
一一巻一四号三三七七頁以下)とするところである。されば、原判決は、刑法二一
条の適用を誤つた違法があり所論判例に相反するものといわねばならない。論旨は
理由があり、原判決中前記未決勾留日数を算入した部分は破棄を免れない。
 よつて、刑訴四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条但書により、原判決中
「当審における未決勾留日数中八〇日を本刑に算入する。」との部分を破棄し、そ
の未決勾留日数を算入しないものとし、その余の部分に対する原審検察官の本件上
告は、上告趣意としてなんら主張がなく、従つてその理由がないことに帰するから、
同四一四条、三九六条により主文二項のとおりこれを棄却すべく、同一八一条一項
但書に従い当審における訴訟費用を被告人に負担させないこととし、裁判官全員一
致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官 高橋一郎公判出席
  昭和三八年一〇月一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

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