弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審における未決勾留日数中一五〇日を原判決の刑に算入す
る。」との部分を破棄する。
     原審における未決勾留日数中六九日を本刑に算入する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 検察官の上告趣意について
 記録によれば、被告人は、第一審判決第六事実と同一性のある事実につき、起訴
前である昭和五三年八月二〇日勾留状の執行を受け、その後一、二審を通じて引き
続き勾留を継続されていたものであるが、その間、第一審は、昭和五四年六月二〇
日、被告人を懲役一三年に処し、未決勾留日数中一五〇日を右刑に算入する等の判
決を言い渡し、これに対し、被告人が同年七月二日控訴を申し立てたところ、原審
は、昭和五五年一月二一日、右控訴を棄却するとともに、「当審における未決勾留
日数中一五〇日を原判決の刑に算入する。」旨の判決を言い渡したことが明らかで
ある。他方、被告人は、昭和四九年一一月一日長野地方裁判所上田支部において、
業務上過失傷害、強姦未遂、監禁、強姦の事実により懲役三年六月、未決勾留日数
中三〇日本刑算入の判決言渡を受け、同判決は同月一六日確定し、同日から右刑の
執行を受け始めたのであるが、昭和五二年七月一六日他刑(昭和四七年一〇月二七
日大阪簡易裁判所言渡の窃盗罪による懲役一〇月、三年間刑執行猶予の確定判決の
執行猶予取消刑)に執行順序を変更され、その後、昭和五三年二月六日右両刑につ
いて仮出獄を許されたところ、昭和五四年二月二八日、前記業務上過失傷害等の事
実による懲役三年六月の刑の残刑については、仮出獄を取り消され、同日から同年
一一月一二日まで右残刑につき受刑中であつたことも、本件記録上明らかである。
 このように、懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を刑法二一条により本刑に算
入することが違法であることは、論旨引用の当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第
三八九号同三二年一二月二五日大法廷判決・刑集一一巻一四号三三七七頁、昭和五
〇年(あ)第九八七号同年一一月二八日第三小法廷判決・裁判集刑事一九八号六九
九頁、昭和五〇年(あ)第二三八五号同五一年六月二九日第三小法廷判決・裁判集
刑事二〇一号九三頁)の示すところであるから、原審における未決勾留日数のうち
本刑に算入することの許される限度は、右残刑の執行が終了した日の翌日である昭
和五四年一一月一三日から原判決の言渡の前日である昭和五五年一月二〇日までの
六九日である。したがつて、原審が右限度を超えて、原審における未決勾留日数を
本刑に算入したのは、刑法二一条の適用について右判例と相反する判断をしたもの
といわなければならない。論旨は理由がある。
 よつて、刑訴法四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条但書により、原判決
中「当審における未決勾留日数中一五〇日を原判決の刑に算入する。」との部分を
破棄し、刑法二一条により原審における未決勾留日数中六九日を本刑に算入するこ
ととし、原判決中その余の部分に対する上告は、上告趣意としてなんらの主張がな
く、したがつてその理由がないことに帰するから、刑訴法四一四条、三九六条によ
りこれを棄却し、当審における訴訟費用は、同法一八一条一項但書により被告人に
負担させないこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官谷川輝 公判出席
  昭和五五年七月一八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   本   一   夫
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    塚   本   重   頼
            裁判官    鹽   野   宜   慶
            裁判官    宮   崎   梧   一

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