弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1α町選挙管理委員会が平成20年11月13日に申立人のα町長解職
請求者署名簿に関する異議申立てについてした異議棄却決定に基づく手
続の続行は,熊本地方裁判所平成20年(行ウ)第13号裁決取消請求
事件の判決確定に至るまで停止する。
2申立費用は被申立人の負担とする。
理由
第1申立ての趣旨及び理由
1申立ての趣旨
主文1項と同旨
2申立ての理由
申立人の申立ての理由は別紙1に記載のとおりである。
第2当裁判所の判断
1一件記録によれば,本件申立てに至る経緯について,以下の事実が一応認め
られる。
()平成20年10月10日,申立外A,同B及び同Cの3名を代表者(以1
下「代表者3名」という)として,α町長である申立人の解職請求に係る署。
(「」名簿が被申立人代表者兼処分行政庁α町選挙管理委員会以下処分行政庁
という)に提出された。。
()処分行政庁は,同月23日,有効署名者数が6499人であること及び2
署名簿の縦覧期間を同月24日から同月30日までとすることを告示した
(縦覧期間については,同月24日,同月27日から同年11月2日までに
変更する旨告示された。。)
()申立人は,同年10月31日,上記署名簿のうちの別紙2簿冊番号目録3
記載の各署名簿冊にかかる署名簿(以下「本件各署名簿」という)につき,。
明らかに1通の署名簿を分割して署名が集められており,法令に定める成規
の手続に従っていないので無効であることを理由に,処分行政庁に対し,同
庁がした署名を有効とする決定を取り消し,無効とする旨の決定を求めて異
議を申し出た。
()これに対し,処分行政庁は,同年11月13日,申立人の異議の申立て4
を理由がないとして棄却する旨決定し,上記解職請求に係る署名簿の有効署
名総数が6291人である旨を告示した。さらに,処分行政庁は,同署名簿
の署名が法定必要数を満たしているとの判断に基づいて,同月18日,α町
長である申立人の解職投票の投票期日の告示日を同年12月22日と定める
旨告示するとともに,同投票期日を平成21年1月11日と定める旨告示し
た。
()申立人は,平成20年11月21日,被申立人を被告として,熊本地方5
裁判所に上記異議申立てについての裁決の取消しを求める訴えを提起し,現
在,同裁判所平成20年(行ウ)第13号裁決取消請求事件として係属して
いる。
2執行停止の可否について
()申立人は,本案において,本件各署名簿には明らかに数か所のホッチキ1
スの穴が存在しており,同署名簿はいずれも1冊の署名簿を分割して署名を
求め,署名収集したのちに編綴して1冊の署名簿であるかのように装ってい
ることが外形上明らかであるし,解散請求書及び解散請求代表者証明書の各
写しが分冊された署名簿のいずれに添付されていたかを判別できないから,
法令の定める成規の手続によらない署名(地方自治法74条の3第1項第1
号)に該当し,同署名簿に記載された3320人分の署名は無効であると主
張しているので,以下,検討する。
ア(ア)本件各署名簿の形状等について
本件各署名簿(疎乙第14号証)は,いずれも,表紙,解職請求に係
る請求代表者証明書,解職の請求書,解職の請求署名収集委任状,署名
用紙(1枚につき8名分の署名欄のある用紙(いずれもA4サイズ))
の順番に編綴されており,右側余白部分の2か所(但し,3か所以上の
ものあり)をホッチキスを使用して綴じ込む方法によっていること,。
同署名簿中,簿冊番号41,43,294,435,504を除く署名
簿(3198人分の署名がある)には,右側余白部分の2か所(ない。
しは3か所以上)の綴込み以外に,これとは別の位置に,一旦はホッチ
キスで綴じた後,これを外したために生じたことが明らかな痕跡(穴。
以下,単に「痕跡」という)が存在すること,その中で,肉眼で確認で。
きるものだけでも,例えば,痕跡が2か所(穴の数としては4つ)のも
のだけではなく,3か所以上認められるもの(例えば,簿冊番号21,
75,88,94,96,145,203,216,221,223,
226,228,298,311,326,331,342,401の
各署名簿,署名簿中の一部のみについて痕跡が存在しないもの(解職)
の請求署名収集委任状のみ痕跡がないものとして,例えば,簿冊番号2
48,251,295,296,352,368の各署名簿があり,署
名用紙のみ痕跡がないものとして,例えば,簿冊番号424,445,
464の各署名簿がある。その他,署名簿中の一部分のみ痕跡が存在す
るものとして,例えば,簿冊番号106,217,218,222,3
40,348,439の各署名簿がある,署名用紙についてのみ痕。)
跡(左側余白部分にホッチキスで一度綴じた後にこれを外した痕跡)が
存在するもの(例えば,簿冊番号7,8,12,20,22,27,1
07,115,118,121,126,164,178の各署名簿が
ある,署名用紙についてのみ痕跡があるが,当該痕跡は,同用紙の。)
右肩部分の1か所にのみ存在するもの(例えば,簿冊番号234,23
8の各署名簿がある,同一署名簿の中で,痕跡の数が異なるもの(例。)
えば,簿冊番号326,等が一応認められる。そして,痕跡の存在す)
る位置についても,同一署名簿中において部分的に異なっているものが
あり(例えば,簿冊番号249,250,252,253,255,2
56,他の署名簿についても,同一署名簿中に編綴された各書類上に)
存在する痕跡が同時に生じたものであるか否かについて肉眼で的確に判
定することは困難である。
(イ)処分行政庁の審査について
一件記録によれば,処分行政庁は,申立人の異議の申出を受けて,平
成20年11月12日午前9時23分から同日午前11時12分までの
間に代表者3名の証人尋問を実施したこと,その尋問時間は1人につき
30分程度であり,証言内容についても,調書は作成されておらず,各
証人の署名押印を徴求することもなく,走り書きの簡単なメモ(疎乙第
4号証)が残っているだけであること,被申立人は,本件申立てがされ
た後の同年12月9日付で作成した「平成20年11月12日(水)の
証人喚問の記録」と題する書面(疎乙第16号証)を提出しているが,
同書面(ただし,その内容が証言内容(要旨)を正確に表示していると
仮定する)によれば,代表者3名は,署名簿に上記のような痕跡が存。
在する理由について「署名収集中に紙が傷んではずれた「控えのた,」
めコピーをとった「重複署名を確認するためにコピーをした「署名」」
用紙がなくなったので継ぎ足した「逆綴を直した「分冊(分割)し」」
ての署名は絶対にやっていない」などと説明していること,代表者3名
は,A及びBにおいてそれぞれ1冊分の署名簿の署名を収集している以
外は,直接,署名の収集には携わっていないこと,本件各署名簿につい
て署名を収集した収集受任者の証人尋問等は一切行われていないこと,
が一応認められる。
イ上記ア(イ)のとおり,上記審査においては,代表者3名の短時間の証人
尋問により,痕跡が存在する一般的,抽象的な理由についての証言を得た
のみで,個々の署名簿毎に痕跡が存在する理由についての審査は一切行わ
れていないところ,代表者3名が証言したとされる上記説明については,
①控えをとったり重複署名を確認するためであれば,編綴したままでコピ
ーをとることにより,十分に目的を達することができるから,綴り直す必
要性は認められないし,痕跡のない署名簿も多数混在していることからす
ると,重複署名を確認するために,署名簿のうちの一部をコピーしたとい
うのも不自然であるし,②本件各署名簿の形状や枚数等に照らすとホッチ
キスの針が2本とも同時にはずれるという事態は極めて例外的であると考
えられること,③署名用紙の継足しについても,どの署名簿について,い
つ,誰が,どのように継ぎ足したのかについては,各署名簿を見分するだ
けでは明らかにはならず,実際に,継ぎ足したとする者の説明が必要とい
うべきであるし,④逆綴についても③と同様の具体的な説明が必要である
というべきであり,説明としては不十分なものである。そして,上記1の
とおり,申立人が効力を争う署名の数は多数に上り,解職請求の効力を左
右するに十分な数であることや,実際に,申立人が効力を争っている署名
簿の大部分に署名の有効性を疑うに足りる痕跡が存在していること等に照
らすと,処分行政庁の行った異議申出に対する審査手続は極めて不十分な
ものであったといわざるを得ない。
ウ以上の事情に加えて,個々の署名簿毎に痕跡が存在する理由について,
被申立人が提出した疎明資料によるも新たな説明は行われていないことを
考慮すると,現時点では痕跡の存在についての合理的な説明が行われてい
,(,ないに等しい状況にあるといわざるを得ないから本件各署名簿ただし
簿冊番号41,43,294,435,504を除く)については,編。
綴の過程において,改編や挿入がされたと推認する外ないのであって,申
立人の主張するとおり,1冊の署名簿を分割して署名を収集したのちに1
冊の署名簿として編綴し直したり,署名簿を構成する必要書類の一部を途
中で挿入するために編綴し直したりしたものと一応認められる。
エしたがって,上記各署名簿は,法令の定める成規の手続によらない署名
に該当し,その署名(3198人分)は無効であると一応認められる(地
方自治法81条2項,74条の3第1項1号。)
()一件記録によれば,本件解職請求に必要な署名数(以下「必要署名数」2
という)は5410人であり,処分行政庁が有効な署名として告示した解。
職請求者署名簿の署名総数は6291人であるところ,上記各署名簿が無効
である場合の有効署名数は3093人となり,必要署名数を下回ることとな
ることが認められる。そして,申立人の解職投票の投票期日の告示及び投票
により,申立人は町長の職を失うおそれが生じ,仮に,申立人が,本案にお
,,,,いて勝訴したとしても回復し難い重大な損害を被るおそれがありかつ
上記1認定の投票期日の告示日及び投票期日に照らすと,かかる損害を避け
るための緊急の必要があることも認められる。
第3結論
よって,本件申立ては理由があるから認容することとし,主文のとおり決定
する。
平成20年12月17日
熊本地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官高橋亮介
裁判官高田公輝
裁判官植田裕紀久

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