弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件仮処分申請を却下する。
訴訟費用は申請人の負担とする。
       理   由
一 申請の趣旨及び理由
 申請人は、「被申請人は申請人の組合員Aの解雇及びこれに関連する事項に関す
る誠意ある団体交渉の申入れに対し誠実に団体交渉をせよ。」との仮処分命令を求
め、その理由として「申請外Aは昭和四六年一〇月に被申請人に雇傭されて建築設
計業務に従事していたが、昭和四七年七月一日をもつて解雇された。そこで申請人
は、その所属組合員である右Aのために、右解雇及びこれに関連する事項につい
て、当事者間の自主的交渉によつて解決すべく被申請人に対し団体交渉を申し入
れ、同年同月中四回にわたり申請人及び被申請人間において団体交渉がおこなわれ
た結果、被申請人の副所長泉川博において本件解雇の撤回に向けて努力する旨の確
認書を認めるにいたつた。ところが被申請人は同年八月二日以降申請人の誠意ある
団体交渉の申入れに対し種種不当な理由を構えて団体交渉を拒否してきた。被申請
人の右のような不当な団体交渉拒否によりもはや誠意ある団体交渉のおこなわれる
見通しは全くなく、このまま推移するときは、解雇問題という労働者の生存権に直
結する早急な解決を必要とする重要事項について、憲法二八条、労働組合法七条二
号にもとづく団体交渉請求権の実現を期し得ず、申請人労働組合の重要な機能を侵
害されると考えざるを得ない。よつて本件仮処分申請に及んだ。」というのであ
る。
二 当裁判所の判断
 申請人は、本件仮処分申請における被保全権利として、申請人の被申請人に対す
る団体交渉請求権というものを挙げ、それが憲法二八条及び労働組合法七条二号に
もとづくものであると主張する。
 憲法二八条に「勤労者が団体交渉をする権利」とは、労働者が労働組合その他の
自主的な団体を通して労働条件その他労働者の経済的地位の向上について使用者と
対等の立場に立つて交渉する権利であるが、この団体交渉権は、団結権及び争議権
とあわせていわゆる労働三権として同法条により保障された労働者の基本権である
ことから、国と労働者との関係において国がこれを不当に侵害してはならないとい
う意味において労働者の単なる自由権として保障したにすぎないものではなく、使
用者に対する関係において尊重されるべきことが労使間の公の秩序であるとしてこ
れを保障したものと解される。したがつて、労働者の団体交渉権を不当に侵害する
行為は、それ自体違法であり、損害賠償責任を生ぜしめるほか、法律行為において
はその効力を否定するにいたらしめるというべきである。しかしながら、団体交渉
権を権利といつてみても、もとよりそのような労働者の権利に対応する法律上の義
務を使用者に認めうるような性格のものでないから、憲法二八条の規定は、これに
よつて労使間の団体交渉に関する具体的な権利義務を設定したものではないと解す
べきである。したがつて、申請人が憲法上団体交渉権を保障されているということ
から、直ちに被申請人が申請人の団体交渉の申入れに応ずべき法律上の義務を申請
人に対して負うことにはならないというのほかはない。
 また、労働組合法は、使用者が団体交渉をすることを正当の理由なくて拒むこと
を不当労働行為として禁止し(七条二号)、この不当労働行為に対しては、労働委
員会が使用者に対して団体交渉に応ずべきことを命ずることによりその救済が与え
られ(二七条)、この救済命令を履行しない使用者に対しては刑罰又は過料の制裁
が課せられる(二八条、三二条)のものとしている。右によれば、同法七条二号の
規定は、これにより使用者が団体交渉の不当な拒否をしてはならないという公法上
の義務を負い、かつ、これにつきるものというべきであるから、これによつて直接
に労働者の使用者に対する団体交渉請求権を設定したものではないと解すべきであ
る。したがつて、被申請人が申請人との団体交渉を不当に拒否していると仮定して
みても、そのことから直ちに被申請人が申請人に対して団体交渉に応ずべき法律上
の義務が発生する筋合ではないといわなければならない。
 申請人が主張するような団体交渉請求権というものの実定法上の根拠はさらにな
い。それにもかかわらず、団体交渉の不当な拒否に対して、労働委員会による救済
とは別途に、直接に裁判上の本案請求又は仮処分申請により団体交渉の拒否禁止又
は応諾を求めうるものとすることは、憲法上保障される団体交渉権の権利性をどう
把握し、いわゆる団体交渉請求権なるものに対応すべき使用者の債務の給付内容を
いかに特定するか、そして団体交渉の履行を法律上強制することの能否並びにその
履行を裁判上強制してみたところではたして実効性を確保しうるかなどといつたい
くたの難関を飛躍して法律上の争訟に短絡させるものであつて、不当労働行為制度
上裁判所と労働委員会とがそれぞれ分担する手続及び機能を不明確なものにする虞
れがあり、現行民事訴訟法の原点に立ち返つて手続及び機能を醇化すべきであると
する視座からしてにわかに賛同しがたい。
 よつて、本件仮処分申請は不適法であるから、これを却下することとし、訴訟費
用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 中川幹郎 原島克己 大喜多啓光)

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