弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴に基づいて,原判決主文1,2項を次のとおり変更する。
(1)被控訴人は,P1議員団に対し495万9214円,P2議員
団に対し61万1682円,P3議員団に対し63万6972円,
元寝屋川市議会議員P4に対し26万1450円及びこれら各金
員に対するいずれも平成14年4月1日から支払済みまで年5分
の割合による金員を請求せよ。
(2)控訴人のその余の請求を棄却する。
2本件附帯控訴を棄却する。
3訴訟費用のうち附帯控訴費用は被控訴人の負担とし,その余の訴
訟費用は,第1,2審を通じてこれを10分し,その3を控訴人の,
その余を被控訴人の各負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)被控訴人は,P1議員団に対し650万円,P2議員団に対し96万円,
P3議員団に対し101万6680円,元寝屋川市議会議員P4に対し94
万6200円及び上記各金員に対する平成13年11月1日から支払済みま
で年5分の割合による金員を請求せよ。
(3)本件附帯控訴を棄却する。
(4)訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
2被控訴人
(1)本件控訴を棄却する。
(2)原判決中,被控訴人敗訴部分を取り消す。
(3)控訴人の請求を棄却する。
(4)訴訟費用は,第1,2審とも,控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1事案の要旨
寝屋川市は,平成13年度において,寝屋川市議会(以下「市議会」という。
)の議員により結成された会派であるP1議員団に対し1248万円,P2議
員団に対し768万円,P3議員団に対し480万円,会派に属さない議員で
あるP4(以下「P4議員」といい,P4議員と上記3会派とを合わせて「相
手方ら」という。)に対し96万円の政務調査費を交付した。政務調査費の交
付を受けたP1議員団,P2議員団及びP3議員団は,当該会派に属する各議
員に対し,当該政務調査費を交付した。
本件は,大阪府寝屋川市の住民である控訴人が,P1議員団が会派に属する
議員に対して交付した政務調査費のうち事務所費として交付した650万円,
P2議員団が会派に属する議員に対して交付した政務調査費のうち事務所費と
して交付した227万7406円のうちの96万円,P3議員団が会派に属す
る議員に対して交付した政務調査費の研究研修費40万2722円のうち12
万5010円と事務所費146万3165円のうち89万1670円の合計1
01万6680円及びP4議員に交付された政務調査費96万円のうち94万
6200円は政務調査費の交付目的以外の使途に違法に使われているので,寝
屋川市の長である被控訴人は,政務調査費を交付した相手方らに対し,上記目
的外の使途に違法に使われた政務調査費相当額について損害賠償の請求に及ぶ
べきところ,これを行わず,違法に寝屋川市の財産の管理を怠っていると主張
して,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,不法行
為に基づく損害賠償として,P1議員団に対し650万円,P2議員団に対し
96万円,P3議員団に対し101万6680円及びP4議員に対し94万6
200円並びに上記各金員に対するそれぞれ平成13年11月1日から支払済
みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することを求め
た住民訴訟である。
原審は,被控訴人に対し,P1議員団に対し326万9048円及びこれに
対する平成14年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求す
ることを命ずる限度で控訴人の請求を認容し,その余の請求を棄却したところ,
控訴人は,上記第1の1の(1)(2)(4)記載の裁判を求めて控訴を提起し,被控
訴人は,上記第1の2の(2)(3)(4)記載の裁判を求めて附帯控訴を提起した。
2法令の規定,争いのない事実等,争点及び争点についての当事者の主張
次の(1)のとおり補正し,(2)のとおり当審における当事者の主張を加えるほ
かは,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」の「1法令の規
定」「2争いのない事実等」及び「3争点」のとおりであるからこれを引
用する。
(1)原判決の補正
ア6頁14行目の「(4)」を「(3)」に改める。
イ33頁4行目から5行目までを「P1議員団は,政務調査費のうちから備
品費として183万0516円を計上し,これを会派控え室用のパソコン及
びP5議員ほか6名の会派所属議員のパソコンの各購入費に充てたが,P6
議員は上記備品費をもってパソコンの購入費に充てられた議員に含まれてい
ない。」に改める。
ウ39頁13行目から14行目までを「P1議員団は,政務調査費のうちか
ら備品費として183万0516円を計上し,これを会派控え室用のパソコ
ン及びP5議員ほか6名の会派所属議員のパソコンの各購入費に充てたが,
P7議員は上記備品費をもってパソコンの購入費に充てられた議員に含まれ
ていない。」に改める。
エ39頁16行目から19行目までを以下のとおり改める。
「P8議員は,その自宅を事務所として使用していたことから,平成13年
度中の自宅の電気及びガス料金28万5282円の支払等に50万円の事務
所費を充てた。」
(2)当審における当事者の主張
ア被控訴人
(ア)平成13年度において,P3議員団は,P9,P10,P11,P1
2及びP13の5名の議員により構成されていた。
平成15年にP3議員団は解散し,同議員団に属していたP10,P1
1及びP12の各議員は,同年に結成されたP14議員団に所属すること
となった。
P14議員団は,平成17年,P15議員団とP16議員団に分裂し,
P11及びP12の各議員はP15議員団に属し,P10議員はP16議
員団に属した。
平成19年,P16議員団に属していたP10議員がP15議員団に属
することとなった。
(イ)P3議員団に属していた議員は5人中2人に過ぎず,P3議員団を承
継する議員団(会派)も存在しない。これらの意味から,会派としてのP
3議員団の存在はないといわなければならず,政務調査費の返還を求める
べき議員団が法律上存在しないのであるから,これに対する損害賠償請求
はあり得ない。
イ控訴人
P3議員団を含む寝屋川市議会において結成された会派は,民訴法29条
にいう法人でない社団に当たるから,訴訟における当事者能力を有する。
本件訴訟は,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づ
き,不法行為に基づく損害賠償として,各会派等に対する金員の請求を求め
たものであり,政務調査費の支出当時会派が存在し,その会派に不法行為が
成立する以上,たとえ,その後,会派が消滅したとしても,なお,その限り
で存在するものとして,被控訴人は,同会派に対し,損害賠償請求をするこ
とができるというべきである。
第3当裁判所の判断
1本件訴えの内容等,政務調査費の支出が違法となる場合
本件訴えの内容等並びに政務調査費の支出が地方自治法及び本件条例に違反
し違法となる場合についての当裁判所の判断は,48頁14行目の「本件訴え
の適法性等」を「本件訴えの内容等」に,50頁9行目の「相手方としての適
格を有するもの」を「相手方とすることができる」にそれぞれ改め,50頁1
2行目の「主張するが,」の次に「後記のとおり,」を加え,54頁4行目か
ら5行目にかけた「たとい」から6行目の「あったとしても」まで及び同頁7
行目から12行目までをそれぞれ削るほかは,原判決の「事実及び理由」の「
第3争点に対する判断」の「1本件訴えの適法性等」及び「2政務調査
費の支出が地方自治法及び本件条例に違反し違法となる場合」と同じであるか
らこれを引用する。
2相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否
(1)P1議員団
P1議員団の政務調査費の支出の適否についての当裁判所の判断は,以下
のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3争点に対す
る判断」の「3相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否」の「(1)
P1議員団の政務調査費の支出の適否」と同じであるからこれを引用する。
ア59頁17行目の「(乙17)」の次に「,P17議員事務所現況写真(
乙71),陳述書(乙72)」を加え,18行目の「本件においては」から
21行目の「措くとしても」までを「上記陳述書(乙72)によれば,P1
7議員は,平成13年度において,P18の営業用店舗の2階部分約43平
方メートルを議員活動用の事務室として使用していたことが認められるが」
に改める。
イ60頁18行目を改行して以下のとおり加え,19行目の「c」を「d」
に改める。
「c上記に対し,被控訴人は,当審において,P17議員が,平成13年当
時,P18の営業用店舗の2階部分約43平方メートルを事務所として賃
借し,事務所家賃として年額54万円を支払ったのは事実であり,また上
記家賃額は事務所賃料として高額なものではないなどと主張して,証拠(
乙71ないし74)を提出する。
しかし,被控訴人の主張によれば,P18の営業用店舗はP17議員自
身が所有する物件であり,同議員はこれを使用貸借契約によりP18に貸
していたというのであるから,仮に同議員がP18に年間54万円の事務
所家賃を支払ったとするなら,同議員は,無償でP18に貸した物件の一
部を,P18に賃料を支払って借り受けたこととなるが,これを合理的な
支出といい得るか極めて疑問である。被控訴人は,P17議員から営業用
店舗を無償で借り受けていたP18が,当該店舗の維持管理経費を全額負
担していたとも指摘するが,その維持管理経費なるものの実態及びその具
体的数額が不明であることからすると,その指摘に係る事実が存在すると
しても,P17議員の上記年間54万円の支出を合理的な支出といい得る
かは疑問である。
以上によれば,被控訴人の当審における主張を考慮しても,P17議員
の上記年間54万円の支出を,市政に関する調査研究に資するため必要な
経費と認めることはできない。」
ウ60頁25行目の「そうであるとすれば」から61頁1行目までを「よっ
て,P17議員が,P1議員団から事務所費として支給された金員(50万
円)を,P18の営業用店舗の維持管理費の一部に充てたことは違法という
べきである。」に改める。
エ61頁8行目から9行目にかけた「乙18の1ないし3」の次に「(家賃
通い,賃貸借契約書,領収書),64(P5議員事務所現況写真),65(
陳述書)」を,10行目の「乙18の1ないし3」の次に「,64,65」
を,12行目の「一部」の次に「約15平方メートル」をそれぞれ加え,2
1行目の「議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」に,22行目
の「調査研究活動」を「議員としての活動」に,62頁6行目から7行目に
かけたもの及び13行目の各「議員としての調査研究活動」を「一般の議員
活動」にそれぞれ改める。
オ63頁9行目から10行目にかけた「議員としての調査研究活動」を「一
般の議員活動」に改め,11行目の「いうべきである」の次に「(なお,乙
64(P5議員事務所現況写真)中の番号5の写真には,P5議員の事務所
内の事務机が写っている。この部屋は,P5議員が事務所として借り受けて
いる約15平方メートルの部屋とは別の部屋であると窺われるが,同事務机
の設置の態様から見ると,これは同議員の議員活動に使用されていると推認
できる。)」を加える。
カ63頁12行目から16行目までを,以下のとおり改める。
「eもっとも,政務調査費は市政に関する調査研究に資するため必要な経費
以外のものに充ててはならないとされ(本件条例),このうちの事務所費
は,会派等が行う調査研究活動のために必要な事務所の設置及び管理に要
する経費とされている(本件使途基準)ことからすると,特定の政務調査
を行うために賃借された事務所については,その事務所賃料の全額を政務
調査費(事務所費)をもって充てることも差し支えないと解されるのに対
し,一般的な議員個人の事務所は,当該議員の会派等に係る政務調査活動
のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員
としての活動の拠点としても使用されることが明白というべきであるから,
このような事務所については,その賃料の全額を政務調査費をもって充て
ることは許されないと解すべきである。このような事務所にあっては,当
該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合によって,政務調査
費をもって充てることが許される事務所賃料の割合とするのが相当である。
しかし,その区分が必ずしも容易でないこと,普通地方公共団体の議会の
議員の地位,権限及び職務内容等にかんがみると,当該事務所が市政に関
する調査研究活動に供される割合は3分の1を下らないと認めるのが相当
であり,したがって,一般的な議員個人の事務所においては,事務所賃料
の3分の1については政務調査費をもって充てることが許されると解する
のが相当である。
証拠(乙64,65)及び弁論の全趣旨によれば,P5議員が親族であ
るP19から賃借した上記事務所は,特定の政務調査を行うために賃借さ
れた事務所であるとまでは認められず,同議員の一般的な個人事務所と認
めるほかないから,上記のところからすると,政務調査費をもって充てる
ことが許されるのは,48万円の事務所賃料の3分の1である16万円に
限られるというべきであり,その余の部分を政務調査費をもって充てるこ
とは違法というべきである。
また,P5議員が議員としての活動のために必要な事務用品として購入
した事務机についても,上記と同様の趣旨から,政務調査費をもって充て
ることが許されるのは,事務机代金9万2760円の3分の1である3万
0920円の部分に限られると解すべきであり,その余の部分を政務調査
費をもって充てるのは違法というべきである。
f以上によれば,P5議員が,P1議員団から事務所費として支給された
金員(50万円)を,事務所賃料のうち16万円と事務机代金のうち3万
0920円の合計19万0920円の経費に充てたことは政務調査費の使
途基準に反するものでないから違法ではないが,その余の30万9080
円の使途は違法であるというべきである。」
キ63頁24行目の「乙19の1ないし3」の次に「(預金通帳,領収証),
76(P6議員事務所現況写真),77(陳述書),106(口座振替金額
のお知らせ),107(駐車場賃貸借契約書)」を加える。
ク63頁末行から66頁5行目までを,以下のとおり改める。
「b前掲証拠,証人P6及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
(一)P6議員は,昭和46年に寝屋川市会議員に当選し,以後,昭和5
8年から8年の期間を除いて,寝屋川市会議員の地位にある。同議員は,
平成13年当時,妻と三女とともに建坪18.5坪の自宅に居住してい
たが,当該自宅の約10平方メートルの応接室を一般の議員活動のため
の事務所として使用していた。
(二)P6議員は自動車を所有しており,少なくとも20年以上も前から,
自宅近くの駐車場の1区画を賃借していた。その賃料は,平成13年当
時,月額1万5000円である。駐車場主は,市民相談等でP6議員の
自宅事務所を訪れた者が同駐車場の空いた区画に無料で自動車を停める
ことを好意により容認していた。
(三)平成13年4月5日から平成14年3月29日までの,P6議員宅
の光熱水道費,電話料金(P6議員個人の携帯電話料金を含む。以下,
この項において「電話料金」という。)の合計は50万9217円であ
る。
(四)P6議員は,平成13年中に,株式会社P20からパソコンをプリ
ンタとともに購入し,同年5月10日,代金18万5000円を支払っ
た。
(五)P6議員は,自宅での光熱水道費及び電話料金の年額の2分の1で
ある25万4608円,駐車場の賃料の年額の2分の1である9万円,
並びにパソコンの購入費18万5000円の合計52万9608円のう
ち50万円を,P1議員団から事務所費として支給を受けた金員(50
万円)をもって充てた。
c上記のとおり,P6議員がその自宅の一部を一般の議員活動のための事
務所としていたことからすると,P6議員の自宅の光熱水道費,電話料金
のうちには,P6議員を含む家族の私用に供されたもののほか,P6議員
の一般の議員活動の事務所のために供されたものがあり,かつ,P6議員
の一般の議員活動のうちには,市政に関する調査研究活動が含まれると認
めることができる。
もっとも,上記それぞれの具体的な割合はこれを算定することが極めて
困難であるが,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容
等にもかんがみると,少なくともP6議員の自宅の光熱水道費,電話料金
の3分の1は,自宅を議員事務所として使用することに伴う負担と認める
のが相当であり,自宅を議員事務所として使用することに伴う光熱水道費,
電話料金の負担の3分の1は,自宅を市政に関する調査研究活動のための
事務所に供したことにより生ずる負担と認めるのが相当である。そうする
と,P6議員の自宅の光熱水道費,電話料金のうち全体の9分の1は,市
政に関する調査研究活動のための事務所の維持管理費もしくは備品に関す
る経費として,その支払に事務所費をもって充てることが許されると解す
るのが相当である。平成13年度におけるP6議員の自宅の光熱水道費,
電話料金は50万9217円であるから,このうち事務所費をもって支払
に充てることが許されるのは,上記の9分の1である5万6579円と認
められる。
d駐車場代金について,前記認定によれば,P6議員は,議員でなかった
8年間を含めて継続的に自己所有の自動車のため駐車場を借り受けていた
と認められるから,その自動車を議員活動のため使用することがあったと
しても,そのために,駐車場料金の負担が増加した事実はないと認められ
る。一方,P6議員の自宅事務所を訪れる者が前記駐車場を使用しても,
駐車場主の好意により,来訪者は無料で同駐車場に自動車を駐車させるこ
とが可能であったが,P6議員はこのために具体的な負担をしていないと
認められる。これらの事実によれば,P6議員が負担した前記平成13年
度の駐車場料金は,その一部についても,市政に関する調査研究活動の費
用と認めることはできないから,その支払に政務調査費を充てることは違
法というべきである。
e証拠(甲6,乙75)によれば,P1議員団は,政務調査費のうちから
備品費として183万0516円を計上し,これを会派控え室用のパソコ
ン及びP5議員ほか6名の会派所属議員のパソコンの各購入費に充てたこ
と,P6議員は上記備品費をもってパソコンの購入費に充てたことはない
ことが認められる。
一方,証拠(証人P6)によれば,P6議員が購入した上記パソコンを
現実に使用しているのは同議員の妻と三女であり,同議員自身がこれを使
うことはないと認められる。
P1議員団が,どのような理由から一部の議員のパソコンの購入費に備
品費を充て,一部の議員のパソコンの購入費に備品費を充てなかったのか
は明らかでないが,少なくとも,P6議員の政務調査活動にパソコンの購
入が必要であったにもかかわらず,その購入費に備品費を充てることがで
きなかった事情があることは窺えない。このことに,P6議員が購入した
パソコンの使用実態を併せ考慮すると,P6議員が購入したパソコンが,
同議員の市政に関する調査研究活動に供されているとまでは認めることが
できないというべきである。よって,政務調査費を上記パソコンの購入に
充てることは違法というべきである。
f以上によれば,P6議員が,P1議員団から事務所費として支給された
金員(50万円)を,自宅の光熱水道費,電話料金のうち5万6579円
に充てたことは政務調査費の使途基準に反するものでないから違法ではな
いが,その余の44万3421円の使途は違法というべきである。」
ケ66頁8行目の「一部」の次に「約75平方メートル」を,17行目の「
乙20の1・2」の次に「(領収証,預金通帳),78(P21議員事務所
現況写真),79(陳述書)」をそれぞれ加え,22行目の「議員としての
調査研究活動」を「一般の議員活動」に改める。
コ67頁9行目の「上記事務所に」から12行目の「認めることができる」
までを「上記事務所は一般の議員活動のための事務所であって,特定の政務
調査を行うために賃借された事務所とまでは認められないから,当該事務所
において使用された固定電話の電話料金は,P21議員の市政に関する調査
研究活動に供された料金ばかりではなく,選挙活動,後援会活動その他政務
調査活動に属さない一般の議員としての活動に供された料金をも含むと推認
することができる。そうすると,上記電話料金の全額を政務調査費から充て
ることが許されるものではない。このような電話料金は,当該電話が市政に
関する調査研究活動に供された割合によって,政務調査費をもって充てるこ
とが許される電話料金の割合とするのが相当であるが,その区分が必ずしも
容易でないこと,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容
等にかんがみると,当該電話が市政に関する調査研究活動に供された割合は
3分の1を下らないと認めるが相当であり,したがって,上記電話料金の3
分の1について,政務調査費を充てることが許されると解するのが相当であ
る」に改める。
サ67頁13行目の「しかしながら,」の次に「被控訴人の主張によれば,
P22の営業用店舗はP21議員自身が所有する物件であり,同議員はこれ
を使用貸借契約によりP22に貸していたというのであるから,仮に同議員
がP22に年間48万円の事務所家賃を支払ったとするなら,同議員は,無
償でP22に貸した物件の一部を,P22に賃料を支払って借り受けたこと
となるが,これを合理的な支出といい得るか極めて疑問である。被控訴人は,
P21議員から営業用店舗を無償で借り受けていたP22が,当該店舗の維
持管理経費を全額負担していたとも指摘するが,その維持管理経費なるもの
の実態及びその具体的数額が不明であることからすると,その指摘に係る事
実が存在するとしても,P21議員の上記年間48万円の支出を合理的な支
出といい得るかは疑問である。」を加える。
シ68頁17行目の「6万0677円」の次に「の3分の1に当たる2万0
225円」を,「議員の」の次に「市政に関する」をそれぞれ加え,18行
目の「43万9323円」を「47万9775円」に改め,19行目の「こ
れを」及び21行目の「議員の」の次にいずれも「市政に関する」をそれぞ
れ加え,24行目の「そうであるとすれば」から末行目までを「以上によれ
ば,P21議員が,P1議員団から事務所費として支給された金員(50万
円)を,電話料金のうち2万0225円に充てたことは政務調査費の使途基
準に反するものでないから違法ではないが,その余の47万9775円の使
途は違法というべきである。」に改める。
ス69頁3行目の「一部」の次に「約50平方メートル」を,11行目から
12行目にかけた「(乙21)」の次に「,P23議員事務所現況写真(乙
80),陳述書(乙81)」をそれぞれ加える。
セ69頁16行目の「されていないが,」の次に「被控訴人の主張によれば,
P24の営業用店舗はP23議員自身が所有する物件であり,同議員はこれ
を使用貸借契約によりP24に貸していたというのであるから,仮に同議員
がP24に年間60万円の事務所家賃を支払ったとするなら,同議員は,無
償でP24に貸した物件の一部を,P24に賃料を支払って借り受けたこと
となるところ,これを合理的な支出といい得るか極めて疑問である。被控訴
人は,P23議員から営業用店舗を無償で借り受けていたP24が,当該店
舗の維持管理経費を全額負担していたとも指摘するが,その維持管理経費な
るものの実態及びその具体的数額が不明であることからすると,その指摘に
係る事実が存在するとしても,P23議員の上記年間60万円の支出を合理
的な支出といい得るかは疑問である。」を加える。
ソ70頁16行目の「一部を」及び18行目の「議員の」の次にいずれも「
市政に関する」をそれぞれ加え,21行目の「そうであるとすれば」から2
3行目までを「よって,P23議員の,P1議員団から事務所費として支給
された金員(50万円)の使途は,違法というべきである。」に改める。
タ71頁3行目の「(乙22)」の次に「,P25議員事務所現況写真(乙
82),P26の陳述書(乙83),P25の陳述書(乙84)」を加え,
5行目の「父」を「弟」に改め,6行目の「建物」の次に「の一部約50平
方メートル」を加え,8行目(2箇所)及び18行目の各「親子」を「兄弟
」にそれぞれ改める。
チ72頁2行目の「いうべきであり」の次に「(なお,乙83には,P25
議員が開設する議員活動用の事務所は,寝屋川市α×番16号の家屋内の約
50平方メートルであると記載されているのに対し,乙84には,P25議
員が約65坪の土地と約30坪の建物を弟から賃借している旨の記載があり,
これらによれば,仮に,P25議員が弟から土地建物を賃借しているとして
も,賃借物件は議員活動用の事務所に限られるものではないと認められる。
また,乙84には,P25議員が借りている不動産は,家の周囲の雑草とり
や植木の剪定費用をP25議員が立て替えているので,年度の最終日に賃料
を支払ったとの趣旨の記載があるが,同記載からすると,同議員のいわゆる
54万円の賃料の一部については差し引き計算が行われており,その全額が
弟に支払われているものではないとの疑いも生ずる。)」を,6行目の「一
部を」及び8行目の「議員の」の次にいずれも「市政に関する」をそれぞれ
加え,11行目の「そうであるとすれば」から13行目までを「よって,P
25議員の,P1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の
使途は違法と認められる。」に改める。
ツ72頁24行目の「乙23の1ないし3」の次に「(建物賃貸借契約書,
利用明細書,領収証),63(住宅地図),75(抗弁書),85(P27
議員事務所現況写真),86(陳述書)」を加える。
テ73頁7行目の「上記建物」の次に「の1階部分約30平方メートル」を,
15行目の「所属する」の次に「P5議員ほか6名の」を,同行の「交付し
た」の次に「がP27議員に対してはこの交付をしなかった」をそれぞれ加
え,17行目から18行目にかけた「議員としての調査研究活動」を「一般
の議員活動」に改め,18行目の「賃借し」の次に「,その1階部分約30
平方メートルを」を加え,25行目の「調査研究」を「市政に関する調査研
究活動」に,同行の「被告の」から末行の「60パーセント」までを「,当
該事務所が一般の議員活動に供される割合を2分の1とし,市政に関する調
査研究活動が一般の議員活動の中に占める割合を3分の1と見て,全体の6
分の1」にそれぞれ改める。
ト74頁2行目から9行目の「そうであるとすれば,」までを「被控訴人は,
P27議員が事務所費をパソコンの購入費の一部に充てたと主張し,同議員
がパソコンを購入したと認められることは上記のとおりであるが,他方,P
1議員団が政務調査費のうち備品費を会派控え室用のパソコン及びP5議員
ほか6名の会派所属議員のパソコンの各購入費に充てたことも先に認定した
とおりであり,仮にP27議員の政務調査活動にパソコンの購入が必要であ
ったとすれば,その購入費に備品費を充てることができなかった事情がある
ことは窺えない。このことに,P27議員が購入したパソコンの使用実態が
不明であることを併せ考慮すると,P27議員が購入したパソコンが,同議
員の市政に関する調査研究活動に供されているとまでは認めることができな
い。よって,」に,13行目の「46万8000円」を「13万円」に,1
4行目の「60パーセント」を「6分の1」に,16行目の「3万2000
円」を「37万円」にそれぞれ改め,14行目の「議員の」の次,17行目
から18行目にかけた「議員としての」の次及び19行目の「議員の」の次
にいずれも「市政に関する」をそれぞれ加え,22行目の「そうであるとす
れば」から24行目までを「以上によれば,P27議員のP1議員団から事
務所費として支給された金員(50万円)の支出のうち,13万円の支出は
違法ではないが,37万円の支出は違法というべきである。」に改める。
ナ75頁5行目の「乙24号証の1ないし7」の次に「(入金証明書,領収
証等),87ないし92(陳述書等)」を,6行目の「乙24の1ないし7,
」の次に「87ないし92」をそれぞれ加え,7行目の「自宅の一部」を「
自宅とは別に寝屋川市β×−6に,1階部分がテナント,2,3階部分が居
宅となっている10戸続き連棟形マンションを所有し,1階の約25平方メ
ートルの部分」に,7行目から8行目にかけた「議員としての調査研究活動
」を「一般の議員活動」にそれぞれ改め,8行目の「していたこと,」の次
に「上記事務所部分には独自に電気,ガス,水道が引き込まれており,電話
回線も専用のものが引かれていたこと,」を加え,末行の「自宅」を「事務
所」に改める。
ニ76頁5行目から78頁13行目までを以下のとおり改める。
「c前掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,上記支払金のうち,株式会社P
28に対するコピー機のリース料(合計16万0020円),株式会社P
29に対する文具等の購入代金(合計5万8168円),株式会社P30
に対する支払代金(合計1万1800円),株式会社P31に対する清掃
用具等代(合計1万1402円),事務所用固定電話料金(合計18万1
472円)の各支払は,いずれも上記P32議員の事務所の備品に関する
出費と認められ,これらは同議員の一般の議員活動に付随して生じたもの
と認められる。有限会社P33に対する支払は,バッテリー代3200円
と照明器具及び配線工事増設改修工事一式9万5000円の合計9万82
00円は,証拠(乙24の4の1枚目,24の7)及び弁論の全趣旨によ
れば,P32議員の事務所の備品ないし事務所の改装にかかる費用と認め
られるが,乙24の4の2枚目にかかる6000円の支払は,その支払の
内訳も支払者も同証から明らかではなく,また他にこれを認めるべき証拠
もないので,P32議員の事務所の備品その他改装費等の経費であると認
めることはできない。
d以上によれば,被控訴人がP32議員に関する事務所費として主張する
ものうち,52万1062円はP32議員の事務所の備品その他改装費等
の経費と認められる。
ところで,前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,P32議員の上記事務
所は,特定の政務調査を行うための事務所とまでは認められず,P32議
員がその属する会派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動そ
の他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用
する事務所であると認めるほかない。政務調査費は市政に関する調査研究
に資するため必要な経費以外のものに充ててはならないとされていること
からすると,このような事務所の備品費,改装費等の経費の全額を政務調
査費をもって充てることは許されないと解すべきである。このような事務
所にあっては,当該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合に
よって,政務調査費をもって充てることが許される備品費,改装費等の割
合とするのが相当であるが,その区分が必ずしも容易でないこと,普通地
方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にかんがみると,当
該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合は3分の1を下らな
いと見るのが相当であり,したがって,備品費,改装費等の3分の1につ
いては政務調査費をもって充てることが許されると解するのが相当である。
そうすると,事務所費を充てることが許されるP32議員の事務所の備
品その他改装費等の経費は,上記52万1062円の3分の1に当たる1
7万3687円と認めるべきこととなる。」
ヌ78頁14行目の「d」を「e」に,15行目の「株式会社」から21行
目から22行目にかけた「33万5326円」までを「17万3687円」
に,23行目の「16万4674円」を「32万6313円」にそれぞれ改
め,22行目の「議員の」の次,24行目の「議員としての」の次及び25
行目から末行にかけた「議員の」の次に「市政に関する」をそれぞれ加え,
79頁2行目から3行目にかけた「そうであるとすれば」から5行目までを
「以上によれば,P32議員のP1議員団から事務所費として支給された金
員(50万円)の支出のうち,17万3687円の支出は違法ではないが,
32万6313円の支出は違法というべきである。」に改める。
ネ79頁13行目の「乙25号証の1ないし4」の次に「(送金記録,領収
証等),69(P34議員事務所現況写真),70の1・2(陳述書等)」
を加え,15行目から16行目にかけた「議員としての調査研究活動」を「
一般の議員活動」に改める。
ノ80頁3行目の「議員としての調査研究活動」及び8行目の「議員の調査
研究」をいずれも「一般の議員活動」に,22行目の「事務所として」を「
事務所としても」に,末行の「経費である」を「経費が含まれる」にそれぞ
れ改める。
ハ81頁2行目から6行目までを以下のとおり改める。
「もっとも,前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,P34議員の上記事務
所は,特定の政務調査を行うための事務所とまでは認められず,P34議
員がその属する会派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動そ
の他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用
する事務所であると認めるほかない。政務調査費は市政に関する調査研究
に資するため必要な経費以外のものに充ててはならないとされていること
からすると,このような事務所の家賃,電気,水道及び電話料金の経費の
全額を政務調査費をもって充てることは許されないと解すべきである。上
記経費のうち,政務調査費をもって充てることが許される部分は,全体の
3分の1と解するのが相当である。
そうすると,事務所費を充てることが許されるP34議員の事務所の家
賃,電気,水道及び電話料金の経費は,上記65万1115円の3分の1
に当たる21万7038円と認めるべきこととなる。
e以上によれば,P34議員は,P1議員団から事務所費として支給を受
けた金員(50万円)のうち21万7038円については議員の市政に関
する調査研究に資するため必要な経費に充てたものと認められるが,その
余の部分(28万2962円)については,議員としての市政に関する調
査研究に資するため必要な経費と認めることはできず,同議員が当該部分
をその他の議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てた
ことについての反証もないから,同議員は,当該部分を市政に関する調査
研究に資するため必要な経費以外のものに充てたと推認するほかない。よ
って,P34議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50
万円)の支出のうち,21万7038円の支出は違法ではないが,28万
2962円の支出は違法というべきである。」
ヒ81頁17行目の「(乙26の1ないし4)」の次に「申立書(乙93),
P35議員事務所現況写真(乙94),陳述書(乙95の1),状況確認書
(乙95の2)」を加える。
フ81頁18行目から83頁2行目までを以下のとおり改める。
「b乙93(申立書)によれば,P36の営業用店舗はP35議員自身が所
有する物件であり,同議員はこれを使用貸借契約によりP36に貸してい
たというのであるから,仮に同議員がP36に年間84万円の事務所家賃
を支払ったとするなら,同議員は,無償でP36に貸した物件の一部を,
P36に賃料を支払って借り受けたこととなるが,これを合理的な支出と
いい得るか極めて疑問である。
もっとも,被控訴人は,P35議員の上記84万円の出費は,実質的に
はP36が負担していた営業用店舗の維持管理費の一部であるとも主張す
るので,以下この観点から検討するに,乙93,95の1によれば,P3
5議員はP36の営業用店舗の一部約60平方メートルを事務所として議
員活動を行うに当たり,P36の事務機器,自動車,光熱設備を使用して
いたが,これらについての経費は全部P36が支払っていたこと,同証中
の事務所の使用貸借に係る契約書によれば,P35議員がP36に支払っ
ていた年間84万円(月間7万円)の金員の内訳は,①来客時の茶菓・軽
食代月額5000円,②電話等事務機器のリース料及び消耗品代月額3万
円,③車両,ガソリン代等月額1万円,④電気,ガス,水道等費用月額2
万5000円であること,同証中のP36の帳簿によれば,P35議員は,
P36に対し,事務所使用料として,平成13年8月10日に20万円,
同年10月10日に20万円,同年12月20日に20万円,平成14年
3月31日に24万円を支払ったことがそれぞれ認められる。そして,乙
93中のP36の平成13年度の損益計算書によれば,P36の同年度中
の事務・備品費・通信費は106万3124円,光熱費は46万1873
円,ガソリン代・交通費は3万5253円と認められ,少なくともこれら
合計156万0250円のうちには,P35議員がP36の営業用店舗の
一部を議員事務所として使用することにより発生した事務・備品費・通信
費,光熱費,ガソリン代・交通費その他の経費が含まれると推認すること
ができる。同証によれば,当時,P36はほとんど休業状態であったと認
められること及び普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内
容等にもかんがみると,少なくとも上記156万0250円の費用の3分
の1は,P35議員が,P36の営業用店舗の一部を議員事務所として使
用し,その備品を議員活動のために供したことに伴うP36の負担と認め
るのが相当である。また,P35議員の上記事務所は,特定の政務調査を
行うための事務所とまでは認められず,P35議員がその属する会派に係
る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さ
ない一般の議員としての活動の拠点としても使用する事務所であると認め
るほかないことからすると,政務調査費をもって充てることが許されるの
は,上記P36の営業用店舗の一部を議員事務所として使用したことに伴
うP36の負担の更に3分の1と認めるのが相当である。
c以上によれば,P35議員は,P1議員団から事務所費として支給を受
けた金員(50万円)のうち156万0250円の9分の1に当たる17
万3361円については議員の市政に関する調査研究に資するため必要な
経費に充てたものと認められるが,その余の部分(32万6639円)に
ついては,これをP36に対する経費分担名下の支払に充てたとしても,
当該金員は議員としての市政に関する調査研究に資するため必要な経費と
認めることはできず,同議員が当該部分をその他の議員の市政に関する調
査研究に資するため必要な経費に充てたことについての反証もないことか
らすると,同議員は,当該部分を市政に関する調査研究に資するため必要
な経費以外のものに充てたと推認するほかない。以上によれば,P35議
員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の支出の
うち,17万3361円の支出は違法ではないが,32万6639円の支
出は違法というべきである。」
ヘ83頁9行目の「乙27の1,2」の次に「,乙66(P37議員事務所
現況写真),67(陳述書)」を加える。
ホ84頁16行目から20行目までを,以下のとおり改める。
「もっとも,前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,P37議員の上記事務
所は,特定の政務調査を行うための事務所とまでは認められず,P37議
員がその属する会派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動そ
の他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用
する事務所であると認めるほかない。政務調査費は市政に関する調査研究
に資するため必要な経費以外のものに充ててはならないとされていること
からすると,このような事務所の賃料の全額を政務調査費をもって充てる
ことは許されないと解すべきであり,その3分の1について,政務調査費
をもって充てることが許されると解するのが相当である。
そうすると,事務所費を充てることが許されるP37議員の事務所の賃
料は,上記66万円の3分の1に当たる22万円と認めるべきこととなる。
e以上によれば,P37議員は,P1議員団から事務所費として支給を受
けた金員(50万円)のうち22万円については議員の市政に関する調査
研究に資するため必要な経費に充てたものと認められるが,その余の部分
(28万円)については,議員としての市政に関する調査研究に資するた
め必要な経費と認めることはできず,同議員が当該部分をその他の議員の
市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたことについての反
証もないから,同議員は,当該部分を市政に関する調査研究に資するため
必要な経費以外のものに充てたと推認するほかない。以上によれば,P3
7議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50万円)の支
出のうち,22万円の支出は違法ではないが,28万円の支出は違法とい
うべきである。」
マ85頁2行目及び3行目の「乙28号証の1,2」の次に「,乙96(P
7議員事務所現況写真),97(陳述書)」を,4行目の「自宅」の次に「
の一部約10平方メートル」をそれぞれ加え,4行目から5行目にかけた「
議員としての調査研究活動」を「一般の議員活動」に,18行目の「各議員
」を「P5議員ほか6名の議員」にそれぞれ改め,同行の「交付した」の次
に「が,P7議員に対してはこれを交付しなかった」を加える。
ミ85頁20行目から86頁16行目までを以下のとおり改める。
「c上記のとおり,P7議員がその自宅の一部を一般の議員活動のための事
務所としていたことからすると,P7議員の自宅の光熱水道費,電話料金
及び共同住宅管理費のうちには,P7議員を含む家族の私用に供されたも
ののほか,P7議員の一般の議員活動に供されたものがあり,かつ,P7
議員の一般の議員活動のうちには,市政に関する調査研究活動が含まれる
と認めることができる。
もっとも,上記それぞれの具体的な割合はこれを算定することが極めて
困難であるが,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容
等にもかんがみると,少なくとも光熱水道費,電話料金及び共同住宅管理
費の3分の1は,自宅を議員事務所として使用することに伴う負担と認め
るのが相当であり,自宅を議員事務所として使用することに伴う光熱水道
費,電話料金及び共同住宅管理費の負担の3分の1は,自宅を市政に関す
る調査研究活動のための事務所に供したことにより生ずる負担と認めるの
が相当である。そうすると,P7議員の自宅の光熱水道費,電話料金及び
共同住宅管理費のうち全体の9分の1は,市政に関する調査研究活動のた
めの事務所の維持管理費もしくは備品に関する経費として,その支払に事
務所費を充てることが許されると解するのが相当である。平成13年度に
おけるP7議員の自宅の光熱水道費,電話料金及び共同住宅管理費は53
万6561円であるから,このうち事務所費を支払に充てることが許され
るのは,上記の9分の1である5万9617円と認められる。
被控訴人は,P7議員が事務所費をパソコンの購入費の一部に充てたと
主張し,同議員がパソコンを購入したと認められることは上記のとおりで
あるが,他方,P1議員団が政務調査費のうち備品費を会派控え室用のパ
ソコン及びP5議員ほか6名の会派所属議員のパソコンの購入費に充てた
ことも先に認定したとおりであり,仮にP7議員の政務調査活動にパソコ
ンの購入が必要であったとすれば,その購入費に備品費を充てることがで
きなかった事情があることは窺えない。このことに,P7議員が購入した
パソコンの使用実態が不明であることを併せ考慮すると,P7議員が購入
したパソコンが,同議員の市政に関する調査研究活動に供されているとま
では認めることができない。」
ム86頁18行目の「26万8280円」を「5万9617円」に,20行
目の「23万1720円」を「44万0383円」にそれぞれ改め,19
行目の「議員の」,21行目から22行目にかけた「議員としての」及び
23行目の「議員の」の次にそれぞれ「市政に関する」を加え,87頁2
行目から3行目にかけた「そうであるとすれば」から5行目までを「以上
によれば,P7議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(5
0万円)の支出のうち,5万9617円の支出は違法ではないが,44万
0383円の支出は違法というべきである。」に改める。
メ87頁7行目から15行目までを以下のとおり改める。
「a乙98(陳述書),99の1(電気料金支払証明書)・2(取引履歴一
覧表)及び弁論の全趣旨によれば,P8議員は自宅内の事務室を議員活動
のための事務所として使用していたこと,平成13年度中のP8議員の自
宅の電気料金は28万5282円,ガス料金は12万2401円であり,
P8議員はこれら電気及びガス代の支払をしたことが認められる。
被控訴人は,P8議員が,政務調査費を,上記自宅事務所の光熱費の支
払等に充てたと主張すると解される。
b上記のとおり,P8議員がその自宅の一部を一般の議員活動のための事
務所としていたことからすると,P8議員の自宅の光熱費のうちには,P
8議員を含む家族の私用に供されたもののほか,P8議員の一般の議員活
動に供されたものがあり,かつ,P8議員の一般の議員活動のうちには,
市政に関する調査研究活動が含まれると認めることができる。
もっとも,上記それぞれの具体的な割合はこれを算定することが極めて
困難であるが,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容
等にもかんがみると,少なくとも光熱費の3分の1は,自宅を議員事務所
として使用することに伴う負担と認めるのが相当であり,自宅を議員事務
所として使用することに伴う光熱費の負担の3分の1は,自宅を市政に関
する調査研究活動のための事務所に供したことにより生ずる負担と認める
のが相当である。そうすると,P8議員の自宅の光熱費のうち全体の9分
の1は,市政に関する調査研究活動のための事務所の維持管理費もしくは
備品に関する経費として,その支払に事務所費を充てることが許されると
解するのが相当である。平成13年度におけるP8議員の自宅の光熱費は
前記電気代及びガス代を合算した40万7683円と認められるから,こ
のうち事務所費を支払に充てることが許されるのは,上記の9分の1であ
る4万5298円と認められる。
c以上によれば,P8議員は,P1議員団から事務所費として支給を受け
た金員(50万円)のうち4万5298円については議員の市政に関する
調査研究に資するため必要な経費に充てたものと認められるが,その余の
部分(45万4702円)については,議員としての市政に関する調査研
究に資するため必要な経費と認めることはできず,同議員が当該部分をそ
の他の議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てたこと
についての反証もないから,同議員は,当該部分を市政に関する調査研究
に資するため必要な経費以外のものに充てたと推認するほかない。以上に
よれば,P8議員のP1議員団から事務所費として支給された金員(50
万円)の支出のうち,4万5298円の支出は違法ではないが,45万4
702円の支出は違法というべきである。」
モ87頁20行目の「297万6891円」から25行目の「26万828
0円)」までを「128万6725円(P5議員に対する支給額のうち19
万0920円,P6議員に対する支給額のうち5万6579円,P21議員
に対する支給額のうち2万0225円,P27議員に対する支給額のうち1
3万円,P32議員に対する支給額のうち17万3687円,P34議員に
対する支給額のうち21万7038円,P35議員に対する支給額のうち1
7万3361円,P37議員に対する支給額のうち22万円,P7議員に対
する支給額のうち5万9617円,P8議員に対する支給額のうち4万52
98円)」に,末行の「352万3109円」を「521万3275円」に
それぞれ改める。
ヤ88頁10行目の「ところで」から24行目までを「ところで,政務調査
費をもって充てることが違法とされる前記521万3275円の支出は,ま
ず,P1議員団の会派会計より負担された25万4061円の部分から充当
されたと見るのが当事者の通常の意思にかんがみ相当であるから,P1議員
団が寝屋川市に対して返還義務ないし不法行為に基づく損害賠償義務を負う
のは,違法支出額である521万3275円からP1議員団の会派会計が負
担した25万4061円を控除した495万9214円と認めるのが相当で
ある。」に,末行目の「326万9048円」を「495万9214円」に
それぞれ改める。
(2)P2議員団
P2議員団の政務調査費の支出の適否についての当裁判所の判断は,以下
のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3争点に対す
る判断」の「3相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否」の「(2)
P2議員団の政務調査費の支出の適否」と同じであるからこれを引用する。
ア89頁18行目から19行目にかけたもの及び20行目の各「議員として
の調査研究活動」を「一般の議員活動」にそれぞれ改める。
イ90頁16行目の「原則として」を「特段の事情がない限り」に改め,同
行目の「もっとも」から23行目までを削る。
ウ91頁1行目の「支給しているところ,」から21行目までを以下のとお
り改める。
「支給していることが認められる。この点について,被控訴人は,議員が自
宅を事務所として使用する場合の議員活動は時間的に無限定な要素が大き
く,私生活にかかる経費と事務所としての経費を明確に区別することがで
きるものではないから,事務所を維持管理する経費として過少であること
が明白な月額1万円の金額を,市民の理解を得られる範囲内として,一律
に清算を要しないものとして支給することは合理的であり,上記は違法な
政務調査費の支出に当たらないと主張する。
しかし,政務調査費は,その議会の議員の調査研究活動に資するため必
要な経費の一部として交付することが許されるものであり,その交付を受
けた会派又は議員は条例の定めるところにより当該政務調査費に係る収入
及び支出の報告書を議長に提出するものとすると定められているのである
から(地方自治法100条12項,13項),その使途について,私生活
にかかる経費との区別が困難であるからといって,一定の額を,清算を要
しないものとして,会派又は議員に対して交付することの当否は極めて疑
問である。被控訴人は,P2議員団が自宅を事務所とする議員に対して一
律に交付した月額1万円の事務所費は過少であり,市民の理解を得られる
範囲内であると主張するが,上記事務所費の交付を受けた各議員が具体的
にどのような費目の支払に当該事務所費を充てたのかは本件において明ら
かでなく(P2議員団が事務所費として所属議員に交付した額の合計は,
争いのない事実等によれば227万7406円であるが,上記一律交付額
により支払に充てられた費目と,一律交付額を除く事務所費により支払に
充てられた費目との関係も不明である。),また,そもそも,自宅を事務
所とする議員について,当該議員の自宅の光熱費,水道代,電話料金等の
維持管理費には,議員を含む家族の私用に供されたもののほか,議員の一
般の議員活動に供されたものがあり,かつ,議員の一般の議員活動のうち
には,政務調査費をもってその費用に充てることが許される市政に関する
調査研究活動が含まれるとしても,その具体的な割合は,議員としての活
動の実態を踏まえても,一般の議員活動にかかるものは自宅全体にかかる
光熱費,水道代,電話料金等の維持管理費の3分の1を超えるものではな
く,政務調査費をもって充てることが許される市政に関する調査研究活動
にかかるものは上記部分の更に3分の1を超えるものではないというべき
であることからすると,自宅事務所の維持費としての月額1万円の額は,
過少であるとも,市民の理解を得られる範囲内であるとも認められない。
以上によれば,P2議員団が,寝屋川市から交付を受けた政務調査費から
事務所費として同会派に所属する5名の議員に対し一律に月額1万円(年
額12万円)を支給したことは,この点につき,政務調査費をもって充て
ることが許される市政に関する調査研究活動のために支出されたことの特
段の反証がない以上,これを政務調査費として容認すべき事情があると認
めることはできないので,同金員は,地方自治法100条12項,本件条
例及び本件施行規則に違反する支出というべきである。
P38議員の事務所の賃借料(年額36万円)の支出については,前掲
証拠及び弁論の全趣旨によれば,P38議員の上記事務所は,特定の政務
調査を行うための事務所とまでは認められず,P38議員がその属する会
派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動
に属さない一般の議員としての活動の拠点としても使用する事務所である
と認めるほかない。政務調査費は市政に関する調査研究に資するため必要
な経費以外のものに充ててはならないとされていることからすると,この
ような事務所の賃料の全額を政務調査費をもって充てることは許されない
と解すべきである。このような事務所にあっては,当該事務所が市政に関
する調査研究活動に供される割合によって,政務調査費をもって充てるこ
とが許される賃料の割合とするのが相当であるが,その割合は3分の1と
認めるのが相当である。
ウ以上のとおり,P2議員団が支出した事務所費96万円は,P38議員
に対して支出した36万円のうち12万円の部分についてはその使途に違
法はないが,P38議員に対して支出したその余の支出(24万円)はそ
の使途が違法である。また,P2議員団に属する5名の議員に対し一律に
月額1万円を支給した(年額合計60万円)ことは違法である。
前記争いのない事実等(5)イによれば,P2議員団が支出した政務調査
費の合計は790万8318円であり,同議員団はこれを,寝屋川市から
交付を受けた政務調査費768万円と会派会計22万8318円の合計を
もって充てたと推認される。そして,同議員団の事務所費の支出のうち8
4万円は寝屋川市から交付を受けた政務調査費をもって充てることが許さ
れない部分であるが,政務調査費をもって充てることが許されない前記8
4万円の支出は,まず,P2議員団の会派会計より負担された22万83
18円の部分から充当されたと見るのが当事者の通常の意思にかんがみ相
当であるから,P2議員団が寝屋川市に対して返還義務ないし不法行為に
基づく損害賠償義務を負うのは,違法支出額である84万円からP2議員
団の会派会計が負担した22万8318円を控除した61万1682円と
認めるのが相当である。
よって,控訴人の本訴請求のうちP2議員団に関する請求部分は,同議
員団に対し61万1682円及びこれに対する平成14年4月1日から支
払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するこ
とを被控訴人に求める限度で理由があるが,その余の請求部分は,その余
の点について判断をするまでもなく理由がない。」
(3)P3議員団
ア前提事実,乙102ないし105(会派別議員一覧表)及び弁論の全趣旨
によれば,平成13年度において,P3議員団は,P9,P10,P11,
P12及びP13の5名の議員により構成されていたこと,平成15年にP
3議員団は解散し,同議員団に属していたP10,P11及びP12の各議
員は,同年に結成されたP14議員団に所属することとなったこと,P14
議員団は,平成17年,P15議員団とP16議員団に分裂し,P11及び
P12の各議員はP15議員団に属し,P10議員はP16議員団に属した
こと,平成19年,P16議員団に属していたP10議員がP15議員団に
属することとなったこと,現在において,P9及びP13の両議員は既に議
員の地位になく,また,P3議員団を承継する議員団(会派)も存在しない
ことが認められ,以上によれば,P3議員団は,会派としては既に事実上解
散したと認められる。
イ上記を前提に,被控訴人は,会派としてのP3議員団の存在はないとした
上で,政務調査費の返還を求めるべき議員団が法律上存在しないから,これ
に対する損害賠償請求はあり得ないと主張する。
しかし,証拠(甲1,2)及び弁論の全趣旨によれば,会派は本件条例に
よって政務調査費の交付対象とされ,代表者及び経理責任者が置かれた団体
であり,権利能力のない社団としての実態を有するというべきところ,民法
上の法人は,解散した場合においても,清算の目的の範囲内において,その
清算の結了に至るまではなお存続するものとみなされることからすると(民
法73条。なお,持分会社について会社法645条も同旨。),権利能力の
ない社団であるP3議員団についてもこれと同様に解するのが相当であり,
P3議員団が事実上解散しても,清算の目的の範囲内においてはなお存続す
るものというべきである。そして,本件賠償請求は清算の目的の範囲内とい
うほかないから,その関係では,P3議員団は,事実上解散した後も,なお
存続するものとして,被控訴人は,同議員団に対し,上記賠償請求をするこ
とができるというべきである。
したがって,被控訴人の上記主張は,理由がなく,採用できない。
ウ研究研修費の支出について
当裁判所も,平成13年度の政務調査費に係るP3議員団の研究研修費の
支出のうち,飲食店4件に対する12万5010円の支払は,地方自治法1
00条12項,本件条例及び本件施行規則に違反するものではないと判断す
る。その理由は,原判決の「事実及び理由」の「第3争点に対する判断」
の「3相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否」の「(3)P3議
員団の政務調査費の支出の適否」の「ア研究研修費の支出について」と同
じであるからこれを引用する。
エ事務所費の支出について
(ア)当裁判所が認定する平成13年度の政務調査費に係るP3議員団の事
務所費の支出の経過は,原判決の「事実及び理由」の「第3争点に対す
る判断」の「3相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否」の「(3
)P3議員団の政務調査費の支出の適否」の「イ事務所費の支出につ
いて」の(ア)と同じであるからこれを引用する。
(イ)上記のとおり,P3議員団に所属していたP11議員,P12議員及
びP13議員は,その自宅の一室を議員の調査研究活動のための事務所と
して使用し,事務所を訪れる来客のための専用の駐車場を賃借して確保し
ていたというのである。普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び
職務内容等にもかんがみると,議員の調査研究活動の一環として議員事務
所において関係者や住民等から事情聴取をしたり要望,意見等を聴取した
りすることは通常想定される事態というべきであるが,上記議員らのこれ
らの自宅事務所は,特定の政務調査を行うための事務所とまでは認められ
ず,同議員らがその属する会派に係る政務調査活動のほか,選挙活動,後
援会活動その他政務調査活動に属さない一般の議員としての活動の拠点と
しても使用する事務所であると認められる。政務調査費は市政に関する調
査研究に資するため必要な経費以外のものに充ててはならないとされてい
ることからすると,このような事務所の駐車場賃借料の全額を政務調査費
をもって充てることは許されないと解すべきである。上記駐車場が議員個
人あるいは議員家族の私用に供されていたことを認めるべき証拠はないが,
このような事務所にあっては,当該事務所が市政に関する調査研究活動に
供される割合によって,政務調査費をもって充てることが許される駐車場
賃借料の割合とするのが相当であるが,その区分が必ずしも容易でないこ
と,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にかんが
みると,当該事務所が市政に関する調査研究活動に供される割合は3分の
1を下らないと見るのが相当であり,したがって,駐車場賃借料の3分の
1については政務調査費をもって充てることが許されるが,その余の部分
は政務調査費をもって充てることが許されないと解するのが相当である。
以上によれば,P11議員が支出した18万9000円の駐車場賃借料
に政務調査費から充てられた同額の金員のうち6万3000円は政務調査
費からの支払が許されるが,その余の12万6000円は政務調査費から
の支払が許されないというべきであり,P12議員が支出した25万20
00円の駐車場賃借料に政務調査費から充てられた17万0100円のう
ち8万4000円は政務調査費からの支払が許されるが,その余の8万6
100円は政務調査費からの支払が許されないというべきであり,P13
議員が支出した14万4000円の駐車場賃借料に政務調査費から充てら
れた同額の金員のうち4万8000円は政務調査費をもって支払に充てる
ことが許されるが,その余の9万6000円は政務調査費をもって支払に
充てることは許されないというべきである。そして,上記議員らが,上記
支払に充てることが許されない部分を,政務調査費をもって支払に充てる
ことが許される他の費目の支払に充てたことを認めるべき証拠はない。
(ウ)上記認定のとおり,平成13年度中の電話料金について,P9議員は
5万9517円,P11議員は14万5500円,P12議員は20万1
586円,P13議員は10万3293円の支払をしたと認められる(P
9議員とP13議員については携帯電話料金。その余の議員は固定電話料
金及び携帯電話料金。)。
普通地方公共団体の議員がその調査研究活動のために電話を使用するこ
とは通常予想される事態ではあるが,固定電話についてはもちろん(上記
議員らはいずれも自宅を事務所とする議員であるから,上記固定電話料金
は,議員個人のみならず,これら議員の家族の私用にも供されていること
が明らかである。),携帯電話についても,議員としての活動以外の私的
活動にも用いられることは明らかであることからすると,これに要する料
金の全額を政務調査費をもって充てることは許されないというべきである。
これら電話料金は,当該電話が市政に関する調査研究活動に供される割合
によって,政務調査費をもって充てることが許される料金の割合とするの
が相当である。その具体的な割合はこれを算定することが極めて困難であ
るが,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権限及び職務内容等にもか
んがみると,少なくとも電話料金の3分の1は,当該電話を議員活動のた
めに使用することに伴う負担と認めるのが相当であり,さらにその3分の
1は,当該電話を市政に関する調査研究活動のために供したことにより生
じた負担と認めるのが相当である。
以上によれば,政務調査費をもって支払に充てることが許される電話料
金は,各議員が支払った電話料金の9分の1相当額というべきであり,そ
の具体的数額は,P9議員について6613円,P11議員について1万
6166円,P12議員について2万2398円,P13議員について1
万1477円と認められ,その合計額は5万6654円である。
P3議員団が平成13年度の事務所費名目で支出した政務調査費のうち
に,上記4名の議員の固定電話料金及び携帯電話料金合計42万1690
円が含まれるのは先に認定したとおりであるが,これら議員の電話料金に
ついて政務調査費をもって充てることが許されるのは5万6654円であ
るから,その余の36万5036円は政務調査費をもって充てることが許
されないものと認められる。そして,上記議員らが,上記支払に充てるこ
とが許されない部分を,政務調査費をもって支払に充てることが許される
他の費目の支払に充てたことを認めるべき証拠はない。
オ以上のとおり,P3議員団が支出した研究研修費40万2722円のうち
12万5010円並びに事務所費146万3165円のうち来客駐車場賃借
料50万3100円及び個人使用の携帯電話代38万8570円の合計10
1万6680円については,研究研修費12万5010円,来客駐車場賃借
料19万5000円,電話料金5万6654円の合計37万6664円の部
分は議員の市政に関する調査研究に資するため必要な経費に充てられたと認
められるが,その余の64万0016円は議員の市政に関する調査研究に資
するため必要な経費に充てられたと認めることはできず,政務調査費をもっ
て支払に充てることは違法である。
前記争いのない事実等(5)ウによれば,P3議員団が支出した政務調査費
の合計は480万3044円であり,同議員団はこれを,寝屋川市から交付
を受けた政務調査費480万円と会派会計3044円の合計をもって充てた
と推認される。ところで,政務調査費をもって充てることが違法とされる前
記64万0016円の支出は,まず,P3議員団の会派会計より負担された
3044円の部分から充当されたと見るのが当事者の通常の意思にかんがみ
相当であるから,P3議員団が寝屋川市に対して返還義務ないし不法行為に
基づく損害賠償義務を負うのは,違法支出額である64万0016円からP
3議員団の会派会計が負担した3044円を控除した63万6972円と認
めるのが相当である。
よって,控訴人の本訴請求のうちP3議員団に対する請求を求める部分は,
同議員団に対し63万6972円及びこれに対する平成14年4月1日から
支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するこ
とを被控訴人に求める限度で理由があるが,その余の請求部分は,その余の
点について判断をするまでもなく理由がない。
(4)P4議員
P4議員の政務調査費の支出の適否についての当裁判所の判断は,以下の
とおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3争点に対する
判断」の「3相手方らによる個々の政務調査費の支出の適否」の「(4)
P4議員の政務調査費の支出の適否」と同じであるからこれを引用する。
ア100頁9行目から10行目にかけた「調査研究活動のための事務所」を
「一般の議員活動のための事務所(なお,この事務所を特定の政務調査活動
のための事務所とまで認めるべき証拠はなく,同事務所は,P4議員の政務
調査活動のほか,選挙活動,後援会活動その他政務調査活動に属さない一般
の議員としての活動の拠点としても使用される事務所であると認めるほかな
い。)」に改める。
イ101頁2行目から102頁14行目までを以下のとおり改める。
「イ証人P4によれば,P4議員がP39に対して支払った資料費30万
円は,北河内4市合併を推進する同議員が,守口市,門真市,寝屋川市及
び枚方市の過去10年の人口統計を年齢別に調査し,データ分析をするな
どの作業をP39に依頼し,その対価としてP39に支払ったものと認め
られ,また,政務調査費の支出にかかるP39の業務が実態を欠いていた
と認めるべき証拠はなく,これらによれば,上記資料費は,同議員の市政
に関する調査研究活動のため必要な経費であったと認められる。
また,上記認定,乙9(陳述書および意見書)及び証人P4によれば,
P39に対する事務所費18万円及び備品費46万6200円は,P4議
員が一般の議員活動を行うための拠点である事務所の賃料及びP4議員が
議員活動に使用するパソコンその他周辺機器のリース代金であると認めら
れるが,上記事務所及び備品が専ら同議員の市政に関する調査研究活動に
のみ供されていると認めるべき証拠はないから,政務調査費を充てること
が許されるのは,上記事務所賃料及び備品リース代にP4議員の市政に関
する調査研究活動が議員活動のうちに占める割合を乗じた額に限られると
いうべきである。その割合は,普通地方公共団体の議会の議員の地位,権
限及び職務内容等にかんがみて3分の1と認めるのが相当である。」
ウ103頁6行目の「各支出が」を「各支出は,先に認定した限度で」に改
め,「議員の」の次に「市政に関する」を加え,15行目の「資料費」から
16行目の「いずれも」までを「資料費30万円,事務所費18万円の3分
の1である6万円及び備品費46万6200円の3分の1である15万54
00円の合計51万5400円は」に改め,19行目の「(なお」から23
行目までを以下のとおり改める。
「。以上によれば,P4議員がP39に対して支払った94万6200円の政
務調査費のうち51万5400円は,議員の市政に関する調査研究に資する
ため必要な経費に充てたものと認められるが,その余の43万0800円は,
これを上記事務所費及び備品費の支払に充てたとしても当該代金は議員とし
ての市政に関する調査研究に資するため必要な経費と認めることはできず,
同議員が当該部分をその他の議員の市政に関する調査研究に資するため必要
な経費に充てた事実を認めるに足りる的確な証拠はないから,同議員は,上
記43万0800円を市政に関する調査研究に資するため必要な経費以外の
ものに充てたと推認するほかなく,その支出は違法である。
前記争いのない事実等(5)エによれば,P4議員が支出した政務調査費の
合計は112万9350円であり,同議員はこれを,寝屋川市から交付を受
けた政務調査費96万円と同議員の個人会計16万9350円の合計をもっ
て充てたと推認される。そして,同議員の政務調査費の支出のうち43万0
800円は寝屋川市から交付を受けた政務調査費をもって充てることが許さ
れない部分であるが,この支出は,まず,P4議員の個人会計より負担され
た16万9350円の部分から充当されたと見るのが当事者の通常の意思に
かんがみ相当であるから,P4議員が寝屋川市に対して返還義務ないし不法
行為に基づく損害賠償義務を負うのは,違法支出額である43万0800円
からP4議員の個人会計が負担した16万9350円を控除した26万14
50円と認めるのが相当である。よって,控訴人の本訴請求のうちP4議員
に関する請求部分は,同議員に対し26万1450円及びこれに対する平成
14年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払を請求することを被控訴人に求める限度で理由があるが,その余の請
求部分は,その余の点について判断をするまでもなく理由がない。」
3以上によれば,控訴人の本訴請求は,被控訴人に対し,P1議員団に対し4
95万9214円及びこれに対する平成14年4月1日から支払済みまで民法
所定の年5分の割合による遅延損害金,P2議員団に対し61万1682円及
びこれに対する前同日から前同率の割合による遅延損害金,P3議員団に対し
63万6972円及びこれに対する前同日から前同率の割合による遅延損害金,
P4議員に対し26万1450円及びこれに対する前同日から前同率の割合に
よる遅延損害金の各支払を請求することを求める限度で理由があるが,その余
は理由がない。よって,これと異なる原判決は一部相当でないので,その限度
で原判決を本件控訴に基づいて変更することとし,本件附帯控訴は理由がない
ので棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官中路義彦
裁判官川谷道郎
裁判官礒尾正は,転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官中路義彦

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