弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告をいずれも棄却する。
         理    由
 本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。
 案ずるに本件記録によると、本件更生申立会社(サンウエーブ工業株式会社。以
下本件会社という)は原裁判所に対し会社更生法(以下法という)による更生手続
の申立をしたので、原裁判所は昭和三九年一二月二四日午後三時右申立を理由あり
と認めて、右会社について更生手続開始決定をし、同時にAをその管財人に選任し
たこと、同管財人は更生計画案を作成して原裁判所に提出し、その後右更生計画案
は原裁判所の許可をえて再度修正の上、同四一年三月三〇日午前一〇時の関係人集
会において審理の上引き続き同期日において決議を経て可決されたこと、ついで原
裁判所は同月三一日右更生計画案は法第二三三条第一項所定の要件を具備するもの
と認めて、これを認可する旨の決定をしたこと、そして本件会社の株主は、本件会
社が破産原因たる債務超過の状況にあつたことを理由に、右更生計画案について議
決権を有しないものとして決議に参加せしめられなかつたことが明らかである。
 抗告人らはまず、右昭和四一年三月三〇日の関係人集会は本件会社の株主の関与
なくして行われたものであるから、関係人集会として不存在であるという。
 しかし本件会社の株主は右関係人集会について議決権なく、従つてこれに関与で
きないこと後述のとおりであるから、右関係人集会は株主の関与がなくとも成立す
ることはいうをまたない。
 つぎに抗告人らは、本件更生計画は法第二三三条第一項、第二項及び第三項の要
件を欠くものとして、その理由をるるあげているので、以下順次検討する。
 (イ) まず本件会社の株主を関係人集会に招集しなかつたのは手続の違背であ
るという。
 本件会社の株主が更生計画案について、本件会社が債務超過の状況にあつたこと
を理由に、議決権を有しないものとされたことはすでに述べたところである。しか
るところ、管財人A作成提出の調査報告書及び更生計画案(貸借対照表等を含む)
によると、本件会社は昭和二三一年一〇月わが国で初めてステンレス厨房器具の企
業化に着手して量産技術を開発し、じ来斯業界に確固たる地盤を確保して来たとこ
ろその後企業の多角化と発展を図るうち、規模の急激な拡大のため相次ぐ生産施設
と販売部門の拡大等に膨大な資金の固定化を招き、そのため過大な借入金による金
利負担を余儀なくされ、一方昭和三七年以後の売上は拡大した生産量に比較して伸
びなやみ、さらに同三九年度多額の資金を投入して建設した深谷製作所の新製品開
発が著しく遅れ、同年一〇月大阪の代理店が倒産に伴う手形の不渡を出したことに
端を発し株価の急落を招き、折柄計画中の増資の実行が不可能となつて運転資金の
不足も極限に達し、ついに更生計画が作成された当時債務超過額は、金一七億二七
一三万円余となつたことが認められる。
 ところで抗告人らは、右貸借対照表には前取締役Bに対する損害賠償請求権査定
額のほか、特許権及び商標権を計上せず、土地の評価も不当であると主張する。し
かし管財人作成提出にかかる上申書によると、右Bに対する損害賠償請求権査定申
立額元本総額二〇億二一二七万円余が全額認容され取立可能と仮定した場合には貸
借対照表中資産の部に計上されているBに対する貸付金等合計金四億〇九三六万円
余が含まれているので、その差額である金一六億一一九〇万円余の資産が増加する
こととなつて、その結果金一億一五二二万円余の債務超過となるように見える。し
かしながら査定額取立の対象となるべきBの私財は、東京都中央区ab番地にある
宅地一五筆合計一三八六、九平方メートル(四一九坪五合四勺)であり、右土地を
一括処分した場合借地権、借家権の対象を差引き、これに私道利用価格を加算する
と、最高評価額は金九億八二六三万円余と認められるので、右最高額で処分した場
合においても、資産増加額は右評価額から前述のBに対する貸付金等金四億〇九三
六万円余を差引いた金五億七三二六万円余であり、これに本件会社の借地権、借家
権の対価として取得しうる最高見込額金六億三三〇四万円余を加算した合計金一二
億〇六三〇万円余がB所有の土地の処分によつて取得しうる資産の最高額となり、
結局金五億二〇八三万円余が債務超過となるところ、東京地方裁判所昭和四〇年
(モ)第六八七四号保全処分申立事件の決定によつて、Bが国に対し有する所得税
還付金請求権金一八五九万円余を確実なものとして評価しても、なお本件会社が債
務超過であることに変りはない。次に貸借対照表によると、特許権及び商標権が資
産の部に金一億〇三四七万円余として計上されていることは明白であり、また土地
の評価額金二五億一九七六万円余は公認会計士の協力の下に、勧銀土地建物株式会
社に鑑定を依頼した上なされたものであつて、これが不当に低廉であることの証拠
はない。すると本件会社の株主が法第一二九条第三項によつて議決権を有しないも
のとされたことは当然であり、法第一六四条第二項によれば議決権を行使すること
ができない株主は関係人集会に招集されないことができることは明らかであるか
ら、このことについて何ら手続の違背はない。
 (ロ) この点に関連し、抗告人らは右規定は憲法第二九条及び第三二条に違背
すると主張する。
 <要旨>関係人集会は本来所定の届出をした株主をもその構成員とするものである
から、これらの株主は関係人集会に出席し、更生計画案について意見を述
べ、あるいは質問して説明を求めることができるべきものであることはいうまでも
ない。しかし会社に破産の原因(本件では債務超過)があるときは、株主は本来か
かる会社の構成分子としてそのままではその有する株主権は虚無にひとしいのであ
るから、この会社を更生せしめ、会社の存続をはかるためにする会社更生手続は会
社ひいてはその構成分子としての株主に、何ほどかの利益をこそもたらすものであ
つて、現時点以上に不利益を強いるものではありえないというべく、従つてこれら
株主から議決権を奪い、更生計画案の決議に参加させないことはもちろん、計画案
審理のための関係人集会に呼び出さないとしても、なんらその株主としての財産権
を害するものではない。従つて前記各法条が憲法第二九条に違反するものでないこ
とは明らかであり、いわんやこれら手続の形成に参加せしめられないとしてもこれ
ら株主の裁判を受ける権利を奪うものともいいえないことは自明である。
 (ハ) 最後に抗告人らは、財産の価額評定に会社を立会わせず、また株主から
更生計画案について意見をきかなかつた手続の違背があると主張する。
 前掲報告書の記載によると、管財人は大口債権者三者の社員多数の協力をえ実地
に検査するなど、厳重な調査の上貸借対照表を作成したことが明らかであるが、右
事実からすると管財人は財産の価額評定にあたつては、反対の事情のみるべきもの
のない本件においては当然本件会社(その代理人を含む)を立会わせ、評価の公正
を期したものと推認するのが相当であり、また本件会社の株主に議決権なく、従つ
て株主を関係人集会に招集しなくとも別に違法でないことは前記のとおりである
(もつとも記録によれば本件抗告人Cほか二、三の株主は現に関係人集会に出席
し、意見を開陳していることがうかがわれる)。従つて抗告人らの右主張もまた採
用の限りでない。
 その他記録を精査するも、原決定には何ら違法の点は認められない。されば本件
抗告は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 浅沼武 裁判官 岡本元夫 裁判官 田畑常彦)

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