弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 承継参加人あおば生命保険株式会社の本件訴えを却下する。
二 被告住友軽金属工業株式会社は、別紙保険目録1記載の保険契約に基づく保険
金を受領したときは、原告に対し、金九六五万〇八二五円及びこれに対する受領の
日の翌日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。
三 被告住友軽金属工業株式会社は、別紙保険目録2記載の保険契約に基づく保険
金を受領したときは、原告に対し、金四四三万四一六三円及びこれに対する受領の
日の翌日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。
四 被告住友軽金属工業株式会社は、別紙保険目録3記載の保険契約に基づく保険
金を受領したときは、原告に対し、金五二万一六六六円及びこれに対する受領の日
の翌日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。
五 被告住友軽金属工業株式会社は、別紙保険目録4記載の保険契約に基づく保険
金を受領したときは、原告に対し、金八三万四六六六円及びこれに対する受領の日
の翌日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。
六 被告住友軽金属工業株式会社は、別紙保険目録5記載の保険契約に基づく保険
金を受領したときは、原告に対し、金七三万〇三三三円及びこれに対する受領の日
の翌日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。
七 被告住友軽金属工業株式会社は、別紙保険目録6記載の保険契約に基づく保険
金を受領したときは、原告に対し、金五二万一六六六円及びこれに対する受領の日
の翌日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。
八 被告住友軽金属工業株式会社は、別紙保険目録7記載の保険契約に基づく保険
金を受領したときは、原告に対し、金二八万六九一六円及びこれに対する受領の日
の翌日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。
九 被告住友軽金属工業株式会社は、別紙保険目録8記載の保険契約に基づく保険
金を受領したときは、原告に対し、金二六万〇八三三円及びこれに対する受領の日
の翌日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。
一○ 被告住友軽金属工業株式会社は、別紙保険目録9記載の保険契約に基づく保
険金を受領したときは、原告に対し、金一八万二五八三円及びこれに対する受領の
日の翌日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え。
一一 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
一二 訴訟費用はこれを四分し、その一を被告住友軽金属工業株式会社の、その余
を原告の負担
とする。
       事実及び理由
第一 申立て
(平成八年(ワ)第四三四一号事件・原告)
(主位的請求)
一 被告住友生命保険相互会社(以下「被告住友生命」という。)は、原告に対
し、金三七〇〇万円及びこれに対する平成八年一一月二二日以降完済まで年六分の
割合による金員を支払え。
二 原告と被告住友軽金属工業株式会社(以下「被告住友軽金属」という。)との
間において、原告が別紙保険目録1記載の保険契約に基づく被告住友生命に対する
金三七〇〇万円の保険金請求権を有することを確認する。
三 被告日本生命保険相互会社(以下「被告日本生命」という。)は、原告に対
し、金一七〇〇万円及びこれに対する平成八年一一月二二日以降完済まで年六分の
割合による金員を支払え。
四 原告と被告住友軽金属との間において、原告が別紙保険目録2記載の保険契約
に基づく被告日本生命に対する金一七〇〇万円の保険金請求権を有することを確認
する。
五 被告太陽生命保険相互会社(以下「被告太陽生命」という。)は、原告に対
し、金二〇〇万円及びこれに対する平成八年一一月二二日以降完済まで年六分の割
合による金員を支払え。
六 原告と被告住友軽金属との間において、原告が別紙保険目録3記載の保険契約
に基づく被告太陽生命に対する金二〇〇万円の保険金請求権を有することを確認す
る。
七 被告協栄生命保険株式会社(以下「被告協栄生命」という。)は、原告に対
し、金三二〇万円及びこれに対する平成八年一一月二二日以降完済まで年六分の割
合による金員を支払え。
八 原告と被告住友軽金属との間において、原告が別紙保険目録4記載の保険契約
に基づく被告協栄生命に対する金三二〇万円の保険金請求権を有することを確認す
る。
九 被告第一生命保険相互会社(以下「被告第一生命」という。)は、原告に対
し、金二八〇万円及びこれに対する平成八年一一月二三日以降完済まで年六分の割
合による金員を支払え。
一○ 原告と被告住友軽金属との間において、原告が別紙保険目録5記載の保険契
約に基づく被告第一生命に対する金二八〇万円の保険金請求権を有することを確認
する。
一一 被告第百生命保険相互会社(以下「被告第百生命」という。)は、原告に対
し、金二〇〇万円及びこれに対する平成八年一一月二三日以降完済まで年六分の割
合による金員を支払え。
一二 原告と被告住友軽金属との間において、原告が別紙保険目録6記載の保険契
約に基づく被告第百生命に対する金二〇〇万円の保険金請求権を有することを確認
する。
一三 被告ニチダン生命保険株式会社(以下「被告ニチダン生命」という。)は、
原告に対し、金一一〇万円及びこれに対する平成八年一一月二三日以降完済まで年
六分の割合による金員を支払え。
一四 原告と被告住友軽金属との間において、原告が別紙保険目録7記載の保険契
約に基づく被告ニチダン生命に対する金一一〇万円の保険金請求権を有することを
確認する。
一五 被告明治生命保険相互会社(以下「被告明治生命」という。)は、原告に対
し、金一〇〇万円及びこれに対する平成八年一一月二三日以降完済まで年六分の割
合による金員を支払え。
一六 原告と被告住友軽金属との間において、原告が別紙保険目録8記載の保険契
約に基づく被告明治生命に対する金一○○万円の保険金請求権を有することを確認
する。
一七 参加人あおば生命保険株式会社(以下「参加人あおば生命」という。)は、
原告に対し、金七〇万円及びこれに対する平成八年一一月二三日以降完済まで年六
分の割合による金員を支払え。
一八 原告と被告住友軽金属との間において、原告が別紙保険目録9記載の保険契
約に基づく参加人あおば生命に対する金七〇万円の保険金請求権を有することを確
認する。
(予備的請求)
一 被告住友軽金属は、別紙保険目録1記載の保険契約に基づく保険金を受領した
ときは、原告に対し、金三七〇〇万円及びこれに対する受領の日の翌日以降完済ま
で年六分の割合による金員を支払え。
二 被告住友軽金属は、別紙保険目録2記載の保険契約に基づく保険金を受領した
ときは、原告に対し、金一七〇〇万円及びこれに対する受領の日の翌日以降完済ま
で年六分の割合による金員を支払え。
三 被告住友軽金属は、別紙保険目録3記載の保険契約に基づく保険金を受領した
ときは、原告に対し、金二〇〇万円及びこれに対する受領の日の翌日以降完済まで
年六分の割合による金員を支払え。
四 被告住友軽金属は、別紙保険目録4記載の保険契約に基づく保険金を受領した
ときは、原告に対し、金三二〇万円及びこれに対する受領の日の翌日以降完済まで
年六分の割合による金員を支払え。
五 被告住友軽金属は、別紙保険目録5記載の保険契約に基づく保険金を受領した
ときは、原告に対し、金二八〇万円及びこれに対する受領の日の翌日以降完済まで
年六分の割合による金員を支払え。
六 被告住
友軽金属は、別紙保険目録6記載の保険契約に基づく保険金を受領したときは、原
告に対し、金二〇〇万円及びこれに対する受領の日の翌日以降完済まで年六分の割
合による金員を支払え。
七 被告住友軽金属は、別紙保険目録7記載の保険契約に基づく保険金を受領した
ときは、原告に対し、金一一〇万円及びこれに対する受領の日の翌日以降完済まで
年六分の割合による金員を支払え。
八 被告住友軽金属は、別紙保険目録8記載の保険契約に基づく保険金を受領した
ときは、原告に対し、金一〇〇万円及びこれに対する受領の日の翌日以降完済まで
年六分の割合による金員を支払え。
九 被告住友軽金属は、別紙保険目録9記載の保険契約に基づく保険金を受領した
ときは、原告に対し、金七〇万円及びこれに対する受領の日の翌日以降完済まで年
六分の割合による金員を支払え。
(平成一○年(ワ)第三二号事件・参加人あおば生命)
 原告と参加人あおば生命との間において、別紙保険目録9記載の保険契約に基づ
く参加人あおば生命の原告に対する金七〇万円の保険金支払債務が存在しないこと
を確認する。
第二 事案の概要
 本件は、被告住友軽金属の従業員であった訴外a(以下「亡a」という。)の妻
である原告が、被告住友軽金属とその余の被告及び脱退被告日産生命保険相互会社
(以下「脱退被告日産生命」という。)との間で締結された亡aを被保険者とする
団体定期保険契約(被保険団体は全員加入団体。いわゆるAグループ保険。)(以
下「本件各団体定期保険契約」という。)につき、主位的に本件各団体定期保険契
約の保険金受取人が原告であるとして被告住友軽金属を除く被告ら(以下、被告住
友軽金属以外の被告を総称して「被告各生命保険会社」という。)及び参加人あお
ば生命に対し保険金の支払を請求する(主位的請求一、三、五、七、九、一一、一
三、一五、一七)とともに、被告住友軽金属に対し保険金請求権が原告に帰属する
ことの確認を求め(同二、四、六、八、一〇、一二、一四、一六、一八)、予備的
に被告各生命保険会社から被告住友軽金属に保険金が支払われることを条件とし
て、被告住友軽金属に対し保険金相当額の支払を請求した事案である。
一 争いのない事実等(証拠を示した部分以外は争いがない。)
1 当事者
(一) 亡a(昭和二一年一一月一八日生)は、被告住友軽金属の従業員として同
社名古屋製造所に勤務していたところ、平成八年八月
二九日に心筋梗塞により死亡した(当時四九歳。甲一〇九、一六七、乙イ三、原告
本人)。
(二) 亡aの相続人は、亡aの妻である原告並びに子である訴外e及び訴外fで
あるところ、同人らは、平成八年一一月ころ、亡aを被保険者とする被告住友軽金
属と被告各生命保険会社及び脱退被告日産生命の生命保険契約に関する一切の権利
について原告が相続するとの協議をした(甲一六七、一六八、一六九の1ないし
3、弁論の全趣旨)。
(三) 被告住友軽金属は、アルミ・銅等の非鉄金属部品の製造・販売を業とする
株式会社であり、資本金は一四二億六八三〇万円、従業員は約三〇〇〇人である。
(四) 被告各生命保険会社及び脱退被告日産生命、参加人あおば生命はいずれも
生命保険商品の販売等を業とする相互会社又は株式会社である。
2 本件各団体定期保険契約の締結
(一) 被告住友軽金属は、平成八年八月二九日当時、被告住友生命との間で保険
契約者兼保険金受取人を被告住友軽金属、被保険者を加入年齢一五歳以上七〇歳以
下の従業員全員及び嘱託とする団体定期保険契約(亡aを被保険者とする部分に付
き別紙保険目録1記載のとおり)を締結していた。
(二) 被告住友軽金属は、同日当時、被告日本生命との間で保険契約者兼保険金
受取人を被告住友軽金属、被保険者を役員、相談役、顧問を除く加入年齢一五歳か
ら五四歳までの従業員全員とする団体定期保険契約(亡aを被保険者とする部分に
付き別紙保険目録2記載のとおり)を締結していた。
(三) 被告住友軽金属は、同日当時、被告太陽生命との間で保険契約者兼保険金
受取人を被告住友軽金属、被保険者を従業員全員とする団体定期保険契約(亡aを
被保険者とする部分に付き別紙保険目録3記載のとおり)を締結していた。
(四) 被告住友軽金属は、同日当時、被告協栄生命との間で保険契約者兼保険金
受取人を被告住友軽金属、被保険者を一八歳以上五五歳以下の従業員全員とする団
体定期保険契約(亡aを被保険者とする部分に付き別紙保険目録4記載のとおり)
を締結していた。
(五) 被告住友軽金属は、同日当時、被告第一生命との間で保険契約者兼保険金
受取人を被告住友軽金属、被保険者を役員及び従業員全員とする団体定期保険契約
(亡aを被保険者とする部分に付き別紙保険目録5記載のとおり)を締結していた
(乙へ四の1、弁論の全趣旨)。
(六) 被告住友軽金属は、同日当時、被告第百生命
との間で保険契約者兼保険金受取人を被告住友軽金属、被保険者を五五歳以下の従
業員全員とする団体定期保険契約(亡aを被保険者とする部分に付き別紙保険目録
6記載のとおり)を締結していた。
(七) 被告住友軽金属は、同日当時、被告ニチダン生命との間で保険契約者兼保
険金受取人を被告住友軽金属、被保険者を従業員全員とする団体定期保険契約(亡
aを被保険者とする部分に付き別紙保険目録7記載のとおり)を締結していた。
(八) 被告住友軽金属は、同日当時、被告明治生命との間で保険契約者兼保険金
受取人を被告住友軽金属、被保険者を従業員全員とする団体定期保険契約(亡aを
被保険者とする部分に付き別紙保険目録8記載のとおり)を締結していた。
(九) 被告住友軽金属は、同日当時、脱退被告日産生命との間で保険契約者兼保
険金受取人を被告住友軽金属、被保険者を役員及び従業員全員(但し五五歳以上は
除く。)とする団体定期保険契約(亡aを被保険者とする部分に付き別紙保険目録
9記載のとおり)を締結していた。
3 参加人あおば生命の承継
 参加人あおば生命は、平成九年一〇月一日、脱退被告日産生命が平成九年七月一
五日現在保有するすべての保険契約を包括して譲り受けた。
二 争点
1 保険金の受取人指定部分の無効(主位的請求について)
(原告の主張)
(一) 他人の生命の保険契約における被保険者の同意(商法六七四条一項)は、
保険契約締結への同意すなわち被保険者になることの同意と、受取人指定について
の同意とに分けて考えられる。
 このことは、商法六七七条一項、同条二項、六七四条二項、三項後段等が、保険
契約締結後に保険金受取人を指定・変更し又はその権利を譲渡する際に被保険者の
同意を要すると規定していることから窺われる。実際にも、保険金受取人指定がな
されていない生命保険契約は多数存在しているのが事実であり、だからこそ団体定
期保険普通保険約款三五条が保険金受取人指定のされていない場合を想定して保険
金受取人を定めているのである。かような事実・実態からしても、被保険者になる
ことの同意と受取人指定の同意を別個に検討すべきこととなる。
(二) 本件では、亡aが被保険者になることの同意は住友軽金属労働組合(以
下、単に「労働組合」という。)による一括同意としてなされたと評価してよい
が、亡aは、被告住友軽金属が本件各団体定期保険契約の保険金の受取人となるこ
とに
ついて同意していたとはいえない。
 なぜなら、同意主義(商法六七四条一項)の意義からは被保険者の同意は厳格に
解さなければならないところ、本件では現実に労働組合が被告住友軽金属から本件
各団体定期保険契約について受けた説明は極めて不十分かつずさんなものであっ
て、このような状況に基づいて同意があると解釈することが許されるのは保険金の
請求権が遺族に帰属すると解するときに限られるというべきであるからである。
(三) したがって、本件各団体定期保険契約の保険金受取人を被告住友軽金属と
する指定は無効な指定であって、本件各団体定期保険契約は保険金受取人の指定が
存在しない保険契約となる。
(四) そうすると、団体定期保険普通保険約款三五条の規定により、本件各団体
定期保険契約の保険金受取人は、被保険者亡aの配偶者である原告となる。
(被告ら及び参加人あおば生命の主張)
 商法六七四条一項にいう同意は、保険契約者と保険者が締結した保険契約の内容
(この中に保険金受取人も含まれる。)に全体として同意するかどうかが保険の効
力発生要件となるものであって、保険金受取人についての同意を別個の行為とみる
ことはできない。
 保険金受取人について亡aの同意がないということであれば、亡aを被保険者と
する本件各団体定期保険契約の部分は全部無効として亡aが本件各団体定期保険契
約の被保険者団体の構成員とならないということであって、原告が保険金受取人と
なることはない。
(被告住友軽金属の主張)
 亡aは本件各団体定期保険契約の保険金受取人が被告住友軽金属であること、保
険金社別一人当たりの保険金額等の全てを知りながら、自己の意思において不承諾
の届け出をしなかったものであり、本件各団体定期保険契約の被保険者となること
を同意した。
2 公序良俗違反による受取人指定の無効(主位的請求について)
(原告の主張)
(一) 保険金受取人を被告住友軽金属とすることについて亡aの同意があったと
しても、この保険金受取人の指定は以下の理由により公序良俗に反して無効であ
る。
(1) 被告住友軽金属と被告各生命保険会社との関係
 被告各生命保険会社は被告住友軽金属に対する設備資金等長期資金の融資元又は
大株主という経済的に優位な立場を利用して保険金額を増加させて多額の保険料収
入を得てきた。他方、被告住友軽金属は団体定期保険の保険料を損金に計上するこ
とにより、法人税、法
人事業税、法人市県民税の節税を図るとともに多額の保険金を不労に利得してき
た。被告各生命保険会社と被告住友軽金属とは、被告住友軽金属の従業員を被保険
者とする団体定期保険契約を締結することにより互いに長期間にわたり多額の利益
を上げてきた。
(2) 使用者の優越的地位の濫用
 使用者が従業員の生命に保険を掛け、その保険金を一部でも従業員やその遺族に
渡さないことが許されるなら、使用者は従属的立場にある従業員の同意をいかなる
手段をもってでも取り付けることになりかねない。従業員の同意の有無にかかわら
ず、企業が従業員の生命、人格まで支配、利用することは本来許されない。まして
被告各生命保険会社から融資を受けるのと引き換えに生命保険契約を締結すること
は、従業員の生命と人格を被告各生命保険会社との取引材料にするものである。
(3) 団体定期保険契約の趣旨、目的に反する契約
 団体定期保険契約の趣旨、目的は、被保険者である従業員の福利厚生にあり、従
業員の遺族の生活補償にある。被保険者やその遺族に引き渡される金額を超えて保
険契約者が保険金受取人となることは歴史的にも禁止されてきた。団体定期保険契
約の本来の趣旨目的に加え、被告住友軽金属が締結していた団体定期保険契約の申
込書の記載及び被告住友軽金属と被告各生命保険会社との間の覚書の記載からも、
その趣旨目的が被保険者とその遺族の生活保障にあることは一層明白になってい
る。
(4) 社会通念を逸脱する多額の不労な利得
 被告住友軽金属は、被告各生命保険会社及び脱退被告日産生命合計九社との間に
おいて保険金総額六六八〇万円の保険契約を締結していた。しかし、三〇年以上に
わたって勤続した亡aの死亡により遺族に支払われた金員は、退職金一一三六万六
〇〇〇円及び葬祭料六七万二〇〇〇円の合計一二〇三万八〇〇〇円に過ぎない。亡
aの死亡保険金を被告住友軽金属が取得することを許せば、従業員の福利厚生、遺
族の生活保障という団体定期保険の趣旨、目的に反し従業員の死亡を媒介として被
告住友軽金属が不労な利得を得ることを認めることになる。
(5) 税制の濫用
 団体定期保険の趣旨目的は被保険者である従業員とその遺族の生活補償にあるこ
とから、保険料を税法上全額損金として計上することが認められている。死亡保険
金が弔慰金等として遺族に引き渡されることを前提にしているからこそ団体定期保
険の保険料は損金と
して計上することが許されているのである。被告住友軽金属が、団体定期保険の保
険料を損金として計上するという税法上の恩典を受けながら、保険金を全額取得す
ることは租税制度を濫用する行為であるというべきである。
(6) 大蔵省の行政指導及び生命保険協会の申し合わせからの逸脱
 昭和五一年に団体定期保険契約の約款が統一された以降も大蔵省は団体定期保険
が本来の趣旨・目的どおり弔慰金支払目的に使用されるよう行政指導を行ってき
た。その行政指導の都度、生命保険協会においては大蔵省の行政指導に沿った具体
的な申し合わせがなされている。本件各団体定期保険契約が、大蔵省の行政指導や
生命保険協会の申し合わせ事項に違反して契約更新を繰り返してきたという事実
は、本件保険金の受取人の指定が公序良俗違反であることを判断する重要な要素と
なる。
(二) 保険金受取人の指定についての同意が無効であれば受取人の指定が存在し
ない保険契約となることから、団体定期保険普通保険約款三五条によって被保険者
亡aの配偶者である原告が保険金の受取人となる。
(被告ら及び参加人あおば生命の主張)
(一)(1) 被告住友軽金属と被告各生命保険会社との関係について
 融資と本件各団体定期保険契約締結についての関連性に関する原告の主張は否認
する。本件各団体定期保険契約についての締結、更新、契約内容の変更等は、被告
住友軽金属の任意、自由な判断で行われたものである。
(2) 使用者の優越的地位の濫用について
 団体定期保険の保険金の一部が従業員の福利厚生制度の財源ともなることからす
れば、従業員の同意が直ちに使用者の優越的地位の濫用により取り付けられたとは
言い難い。労働組合は、本件各団体定期保険契約につき同意し、退職金協定等も成
立している。被告住友軽金属が、平成八年七月、従業員に対し「団体定期保険に関
する件」と題する書面を配付又は掲示した当時、右告知に関する不服申出について
これをしないようにするための強制、説得工作もされていない。不服の申出をする
かしないかは各従業員の自由意思に委ねられていた。使用者の優越的地位の濫用の
事実はない。従業員の地位は労働三法により保護もされている。
(3) 社会通念を逸脱する多額の不労な利得について
 被告住友軽金属は大規模災害等万一の事態に備えて団体定期保険に加入している
のであるが、長期的にみて支払保険料が受領する保険金及び配当
金の合計を超えており、団体定期保険は、被告住友軽金属が不当な利益を得るよう
なものではない。
(4) 団体定期保険契約の趣旨、目的に反する契約について
 保険金は企業の弔慰金制度に則った弔慰金の支払のほか、広義の福利厚生及び経
済的損失の填補に使われているのであり、目的を逸脱している事実はない。保険料
は被告住友軽金属で負担しているのであるから、保険金を財源とする社会通念上相
当な水準の従業員の福利厚生制度、遺族の生活補償制度が設けられている以上、労
働災害の上乗せ補償金や企業自体の損失等も考慮に入れ、どの程度の保険金額の保
険契約を締結するかは企業の合理的な経営判断に委ねられている。したがって、保
険金の一部を被告住友軽金属が取得すれば直ちに本件団体定期保険契約の趣旨を逸
脱しているということはできない。
 また、法律上及び本件各団体定期保険契約上、保険金全額を遺族の生活補償のた
めに支払う旨の規定はない。
(5) 税制の濫用について
 団体定期保険の保険料は掛け捨てという性格から損金計上が認められているもの
であって、他方で配当金及び保険金は利益に計上されているのであるから税法上収
支は均衡している。また、法人税法基本通達九―三―五は、会社が保険金受取人で
ある場合も損金算入することを認めており、遺族に弔慰金として支払うことを前提
とはしていない。
(二) 団体定期保険約款三五条の適用について
 原告の主張は、意思表示たる同意の瑕疵やその手続上の問題点を主たる理由とし
ているのではないから、同意を公序良俗違反という以上は、同意の内容、すなわ
ち、同意の対象である本件各団体定期保険契約の内容自体に公序良俗違反があると
いうことにならざるを得ない。
 団体定期保険約款三五条は、団体定期保険契約が有効であることを前提として、
当事者の意思不明な場合の意思推測をした規定であるところ、原告の主張をもとに
すれば、本件各団体定期保険契約の亡aに関する部分については有効に成立してい
ないこととなるから約款三五条適用の前提を欠くこととなる。そうでないとして
も、本件各団体定期保険契約は既に被告住友軽金属が保険金受取人として指定され
当事者の意思は明確であるから、本条項を適用する場合に当たらない。
3 保険金の全部もしくは相当部分の支払の合意(予備的請求について)
(原告)
(一) 亡aは、本件各団体定期保険契約の被保険者となることに同意する
に際して、被告住友軽金属との間で、保険金受取人を住友軽金属とするが、亡aが
死亡もしくは高度障害となって被告住友軽金属に保険金が支払われた場合には、右
保険金相当額は被保険者またはその相続人に支払う旨の合意をした。
(二) 仮に亡aと被告住友軽金属との間で、右の明示の合意がなかったとして
も、特別の合理的な事情のない限り、保険金相当額は亡aもしくはその遺族に弔慰
金等として支払う旨の合意があったものと推認すべきである。
(三) 仮に本件保険金を亡aの遺族への生活保障以外へも充てることが予定され
ていたとしても、本件保険金の相当部分は亡aの遺族への補償に充てる旨、被告住
友軽金属と亡aとの間で合意が成立していた。
(被告住友軽金属)
 被告住友軽金属は、団体定期保険契約の更新に際し、労働組合に対し、平成五年
に団体定期保険の趣旨、金額、被保険者の範囲、保険金の受取人と使途、被保険者
の同意等各項目について確認したことを前提として、前年度の保険収支を説明し、
更新契約の内容を説明し、一括して同意を得てきた。労働組合は、団体定期保険が
個々の保険保護にあるのではなく、退職金、弔慰金等の支払を担保するものである
ことを十分理解しており、団体定期保険契約を締結することによって、退職金協定
等に定められた給付以上のものが支払われるものではないことを理解した上で同意
していた。したがって、原告が主張するようないかなる合意も成立していない。
4 信義則上の引渡義務(予備的請求につき)
(原告)
 使用者と労働者が労働契約関係にある場合、使用者は、労働者の生命、健康を侵
害することは許されず、労働契約に付随する義務として労働者に対する安全配慮義
務を負っている。使用者が労働者の生命を生命保険会社との取引材料としたり、労
働者を被保険者とする団体定期保険契約を悪用して不労な利得を得ることは許され
ない。また、生命保険契約においては、他の契約に比べ契約当事者の善意と信義誠
実が特に要請される。したがって、使用者が自ら雇用する労働者を被保険者として
団体定期保険契約の契約者兼保険金受取人となった場合には、労働契約に付随する
信義則上の義務及び生命保険契約の前記性質から、特段の事情がない限り、使用者
が受け取った高度障害保険金又は死亡保険金相当額を、被保険者となった当該労働
者又はその遺族に支払う義務がある。
(被告住友軽金属)
 従業員死亡に際し、退
職金・弔慰金・年金等をどのようにするかは、企業と従業員(多くは労働組合)の
交渉により決定される。被告住友軽金属においても労働組合との協定により定まっ
た各種労働協約があり、死亡退職金・弔慰金等もこの規定に基づいて遺族に支払わ
れており、その水準は他の主要企業と同一水準にあり社会的に相当な金額であっ
て、何らかの上乗せ補償をしなければ社会的正義に反するというような特殊な事情
は全く存在しない。他方、団体定期保険契約は企業の福利厚生制度の実施の確実性
を高める一種のリスク管理の手段として企業の経営判断に基づき企業の出捐におい
て締結するものであるから、原資確保のひとつの手段ではあっても福利厚生制度と
は別物である。したがって、特殊な事情でも存在しない限り、団体定期保険契約の
存在が労働協約で定まった以外の給付をする理由とはならない。
5 被告住友軽金属が原告に支払うべき額(予備的請求につき)
(原告)
 前記3、4のとおり被告住友軽金属は死亡保険金額の全部もしくは相当部分を原
告に支払うべきであるが、仮に原告に支払うべき額が死亡保険金額の相当部分であ
ってその範囲が確定できないとすれば、被保険者もしくはその遺族が本件各団体定
期保険契約に基づく死亡保険金を取得する権利を有していることは明らかなのであ
るから、民法二六四条の準共有の規定が適用されることになる。その結果、民法二
五〇条が準用され、少なくとも保険金額の半額は原告に帰属するものと解すべきで
ある。
(被告住友軽金属)
 保険金の唯一、正当な受取人は契約上の受取人である被告住友軽金属であるから
遺族に受取保険金そのものに対する持分がないことは明らかである。したがって、
原告の主張は前提を欠く。
第三 争点に対する判断
一 争点1(保険金の受取人指定部分の無効)について
 商法六七四条一項がいわゆる他人の生命の保険契約につき被保険者の同意を要求
した趣旨は、他人の死亡を保険事故とする保険契約が、賭博の目的に利用された
り、保険金を取得する目的で被保険者の生命を害しようとする犯罪誘発の危険ない
し被保険者の人格権を侵害する危険があるなど公序良俗に反する目的に悪用される
ことを回避するために、予想される危険について最も利害関係のある被保険者の同
意を要求し、これを保険契約の有効要件とすることで右の危険を政策的に防止した
ものと解される。右の趣旨に照らすと、被保険者が右の保険契約
締結に対して同意をするに際しては、保険契約者及び保険金受取人を認識し、前記
の各危険性の有無を判断することが最も重要な要素となるから、保険金受取人が誰
であるかという事項はその中心的であって不可欠な要素であるということができ
る。そうすると、受取人指定の同意を切り離した被保険者になることのみの同意は
その存在意義を失うこととなるのであって、法がこのような無意味な同意を予定し
ていたものと解することはできない。同法六七七条二項、六七四条二項、同条三項
後段の規定も、保険金受取人の指定、変更等をする場合に前記の各危険を防止する
ために改めて被保険者の同意を必要としたものであって、その際に保険金受取人指
定についての同意と新たに被保険者となることの同意のふたつを共に求めているも
のではない以上、これらの規定の存在をもって同法六七四条一項の同意につき被保
険者になることの同意と受取人指定についての同意とに区別する根拠とすることは
できない。
 したがって、被保険者となることの同意と保険金受取人指定についての同意を区
別することを前提とする原告の主張は、その余について判断するまでもなく理由が
ない。
二 争点2(公序良俗違反による受取人指定の無効)について
1 前記のとおり商法六七四条一項が被保険者の同意を要求した趣旨は、賭博の目
的に利用されたり、犯罪誘発の危険ないし被保険者の人格権を侵害する危険がある
など保険契約が公序良俗に反する目的に悪用されることを回避するために、被保倹
者の同意を要求し、これを保険契約の有効要件とすることで右の危険を政策的に防
止したものと解されるから、右の有効な同意が存する限り、本件各団体定期保険契
約自体は公序良俗に反していないものと推定することができる。
2 そこで検討するに、証拠(乙イ一、二、証人b、同c)によれば、被告住友軽
金属は、本件各団体定期保険契約の締結の当初(昭和四五年)及び亡aらが団体定
期保険の取り扱いを問題とし始めた平成五年に、同社労働組合に対して、本件各団
体定期保険契約の趣旨及び目的について、「従業員死亡の際の会社としての具体的
な出費・人的損失を担保する。具体的には次の通り。(1)遺族補償 弔慰金 供
花料 死亡退職金 遺児福祉年金 特別弔慰金(労災付加補償)、(2)従業員死
亡に伴う経済的損失の補填 従業員死亡に伴う逸失利益 代替人材の採用・育成経
費等、(3)その他 当
該死亡に関連する不慮の出費の補填」と説明し、労働組合としては右の説明をもと
にして本件各団体定期保険契約の締結には公序良俗に反する問題は生じないものと
判断して以後毎年一括同意をしていたことが認められ、また、被告住友軽金属が、
右の説明に反して本件各団体定期保険契約を被告住友軽金属の他の利益のために締
結・運用したと認めるに足りる証拠はない。そうすると、被告住友軽金属と被告各
生命保険会社及び脱退被告日産生命との間で締結された受取人を被告住友軽金属と
する本件各団体定期保険契約自体は右の同意により公序良俗に反しないものと推定
され、これを覆すに足る証拠はないから、原告の主張は理由がない。
3 以上から、原告の主位的請求はいずれも失当である。
三 争点3(保険金の全部若しくは相当部分の支払の合意)について
1 被告日本生命は、被告住友軽金属に対する主観的予備的請求は違法であって却
下すべきと主張するが、被告日本生命は本件予備的請求の当事者ではない以上、違
法主張をする利益があるものとは認められない。そうでないとしても、被告住友軽
金属は、本件の主位的請求でも各保険金請求権が原告に帰属することの確認の被告
となっているのであり、したがって、本件予備的請求が被告住友軽金属の地位を不
安定にするものであるとはいえない。したがって、被告日本生命の前記主張には理
由がない。
2 保険金相当額支払の合意
 前記争いのない事実に加え、証拠(甲九ないし一三、二〇ないし二五、三一、三
二、四一、四七ないし五五、六一の1ないし9、七六の1ないし25、八四ないし
八八、九六、九七、九九、一〇〇、一〇三の1、4、一〇五ないし一一一、一一二
の1、2、一一三ないし一一六、一二三、一二五の1、2、一二六、一二七、一二
八の1ないし3、一二九の1ないし3、一三〇の1ないし3、一三一の1ないし
3、一三二の1ないし3、一三三の1ないし3、一三四の1ないし3、一三五の1
ないし3、一三六の1ないし3、一四三、一五八、一八〇の1、2、一八一、乙
一、三、一四、乙イ一、二、乙ロ一、二、三の1ないし4、四、五の1ないし5、
六ないし一九、乙ハ一、二の1ないし3、三の1ないし5、四の1ないし5、五の
1ないし4、六の1ないし4、七の1ないし14、八の1ないし18、九の1ない
し12、一〇の1ないし6、一一、乙ニ一ないし一四、乙ホ一、二の1ないし3、
三、四の1ないし
5、五の1ないし5、六、乙へ一の1、2、二の1ないし3、三の1、2、四の1
ないし4、五の1ないし10、六の1、2、七の1、2、八の1、2、九の1、
2、一〇の1、2、一一の1ないし3、乙ト一、二、三の1、2、四の1、2、五
の1、2、六の1、2、七の1、2、八の1ないし4、九ないし一五、乙チ一、二
の1ないし7、三の1ないし9、四の1、2、五、六の1ないし4、乙リ一の1な
いし3、二の1ないし3、三、四、乙ヌ一、二の1ないし3、三の1ないし3、四
の1、2、五の1、2、六の1、2、七の1、2、八、証人b、証人c、証人d、
原告本人)及び弁論の全趣旨によると以下の事実が認められる。
(一) 団体定期保険制度の沿革及び行政指導等
(1) 団体定期保険は、アメリカで従業員の福利厚生制度として始まった保険形
態であり、我が国では昭和九年から導入・販売された。我が国における団体定期保
険も右の制度趣旨を受け継ぎ、当初の約款では保険契約者は原則として保険金受取
人となることはできない旨を明示するものも多かった。しかし、戦後複数の保険会
杜が販売に参入した後、当初の目的である従業員の福利厚生に反した運用が懸念さ
れるようになり、これを是正する目的で、大蔵省は昭和二六年に「団体生命保険の
運営基準」を設けた(昭和二六年八月七日付蔵銀第三七六六号通達)。また、業務
運営上の重要な事項については、生命保険業界全体による申し合わせや取り決めを
行うことにより、画一的に運用されることとなった。
(2) 昭和五三年には、大蔵省が団体定期保険の第一種全員加入契約について企
業の弔慰金制度として所属員に対する福祉制度の一環として位置づけ、その運営が
適正に行われるようにとの行政指導をした結果、生命保険業界は、新契約締結時に
当該契約と福利厚生制度との関連を契約申込書において確認することとし、さら
に、保険者数が一○○○名以上の規模の契約については合わせて付保目的を記載し
た協定書を取り交わすとの申し合わせをした。平成三年には、大蔵省が団体定期保
険本来の趣旨(福利厚生)に沿って保険の運用が行われるように、被保険者の同意
をとること、弔慰金規定の確認をすること等の行政指導をした結果、生命保険業界
は、団体定期保険(Aグループ)の商品趣旨(団体の福利厚生制度等)に鑑み、そ
の目的に則した募集及び運営にいっそう努めるとの申し合わせをするとともに、弔
慰金
等規程の確認等として、①契約締結時に弔慰金等の規程の存在を確認し、写しを取
り寄せる、②申込書に弔慰金・死亡退職金等企業の福利厚生措置の内容の記載項目
を設け企業に記入させる、③明文化された規程のない企業に対しては規程を明確化
させ、規程確認後に販売するとし、また、保険金額は福利厚生措置との関連におい
て社会通念上問題のない金額とし、さらに、支払保険金の確認として、新たに、①
保険金請求書と同時に、遺族への支払い(予定)の弔慰金・死亡退職金等を企業に
記入頂いた文書を取り寄せ確認する、②契約更新時等には、それが実施されている
か、支払われた保険金が福利厚生措置の目的に沿って有効に活用されていることを
企業に確認する、③販売活動時に団体定期保険の趣旨を徹底するとし、また、弔慰
金・死亡退職金等が遺族に支払われたことの確認(領収証の写し等)を取り寄せる
ことについて前向きに検討する等の対応を行うことを申し合わせた(甲二五、四
一)。
(二) 被告各生命保険会社の認識
 右の従業員の福利厚生制度を目的とする団体定期保険の制度趣旨は、団体定期保
険(Aクループ)募集の広告等にも現れており、「従業員に万一のことがあった場
合、国からの保障として、国民年金・厚生年金による遺族年金等がありましたが、
遺族が安心して暮らせる生活資金を確保するには必ずしも充分とは言えず、企業福
祉制度による遺族補償の充実を図ることが求められています。住友のグループ保険
は、このような企業福祉の一環としての遺族補償を、割安な保険料負担で実現する
ものです。」(甲二〇)、「従業員が会社に求める条件の一つに、安定した生活の
保障があります。従業員の生活保障を整えること、それが優秀な人材の確保の基本
的な条件です。「もし私に万一のことがあったら家族は・・・」そういう心配なく
安心して働ける職場を作るのが、企業の死亡退職金・弔慰金制度です。団体定期保
険は、企業の死亡退職金・弔慰金制度をサポート(支援)します。」、「会社は受
け取った保険金を、死亡退職金・弔慰金・法定外の労災補償金としてその遺族に支
払います。」(甲二三)等と記載されており、これらに照らすと、団体定期保険契
約は、従業員の福利厚生制度を趣旨目的とし、かつ、業務上の死亡等に限定されな
い幅広い死亡等に対する福利厚生を目的としていることが理解される。
(三) 本件各団体定期保険契約締結の状況
(1) 被
告住友軽金属は、被告日本生命、被告太陽生命、被告第百生命、脱退被告日産生命
との間で昭和四八年一二月一日、被告ニチダン生命との間で昭和四九年一月一日
(同年一一月二九日に更新日を一二月一日と変更)、被告住友生命との間で昭和五
一年三月一日、(平成四年一〇月七日に更新日を一二月一日と変更)、被告第一生
命との間で昭和六〇年一二月一日、被告協栄生命との間で平成二年一二月一日、被
告明治生命との間で平成三年一二月一日にそれぞれ団体定期保険契約を締結した。
以後、保険金額や被保険者の範囲の変更はあったものの毎年一二月一日に一括して
更新を行っており、本件団体定期保険契約のうちの特定のものについて、被告住友
軽金属と保険会社との間に他とは異なる契約締結目的があったと認めるに足る証拠
はない。
(2) このうち被告住友生命との間の契約では、平成四年以降も契約変更請求書
の制度変更の趣旨欄には何らの書き込みはなく、同被告との間の契約締結に当たっ
て作成される覚書でも、亡a死亡に至るまで保険契約締結の趣旨については何らふ
れられていない(乙ロ三の1ないし4、五の1ないし5)。
(3) 被告日本生命との間の契約では、平成四年以降の保険金額変更申込書には
いかなる制度との関連で申込をするのかにつき記載する欄があるが、平成四年分に
は死亡退職金及び従業員死亡に伴う団体逸失利益と記載されているものの、平成五
年分には死亡退職金のみが記載され、平成六年分には死亡退職金及び労災上乗せ補
償金と記載されている(乙ハ三の2ないし4)。
(4) 被告太陽生命との間の契約では、昭和五五年から平成四年までの間に作成
された契約内容変更申込書の「保険の趣旨・本契約は次の福利厚生制度との関連に
おいて契約しております。1弔慰金制度、2退職金制度、3その他(空白)」との
欄に、昭和五五年分のみ1にチェックがあり、その余は何ら記載がない(乙ニの二
ないし六)。また、同被告との間で団体定期保険締結(変更)に際して作成された
協定書には「本契約は甲(被告住友軽金属)における福利厚生制度との関連に置い
て締結したものであり、甲は本契約における保険金の全部又は一部を社内規程に則
り支払う金額に充当することとする。」とある(乙ニ一三第二条)。
(5) 被告協栄生命との契約は、当初の契約申込書に弔慰金制度との関係におい
て申し込む旨の記載がされ(乙ホ二の1)、その後平成六年の保
険金額変更申込書では、弔慰金制度(最高三〇〇〇万円、最低三〇〇〇万円、標準
三〇〇〇万円)との関係で変更を申し込むとし、「企業の経済的損失を填補する目
的がある場合はその金額をご記入願います。」との注記のある「その他」の欄には
何ら記載がされていない(乙ホ三)。また、同被告との間で団体定期保険契約締結
に際し作成された協定書では、「福利厚生制度との関連において締結したものであ
り、甲(被告住友軽金属)は保険金の全部又は一部を弔慰金規定に則り支払う金額
に充当することとする。」と記載されている(乙ホ六)。
(6) 被告第一生命との契約は、当初の契約申込書上契約申込の趣旨につき、弔
慰金制度、退職金制度との関係において申し込む旨の記載がされている(乙ヘ二の
1)。右契約締結に際して同被告との間で取り交わされた覚書には、「本契約は甲
(被告住友軽金属)における福利厚生制度に基づく給付に充当することを目的とし
て締結したものであり、甲は本契約における保険金等の全部又は一部を弔慰金制
度・退職金制度規程に則り支払う金額に充当することとする。」と記載されている
(乙ヘ三の1)。その後平成七年一二月の契約締結に際して作成された協定書は、
ほぼ同趣旨の記載があるものの、使途を弔慰金規程に則り支払う金額に限定してい
る(乙ヘ三の2)。また、平成四年以降の保険金額の変更申込書には、変更申込の
趣旨として、弔慰金制度(最低三〇〇万円最高二七〇〇万円)が記載され、「保険
金額と上記制度に基づき支払われる額との差額は、従業員死亡に伴う当社の逸失利
益です。」との文言が不動文字で印刷されている(乙ヘ四の1ないし3)。
(7) 被告第百生命との契約は、平成六年一二月一日に保険金額を変更するに当
たって作成された書面で、「本契約により、当社(被告住友軽金属)が受領する保
険金の全部またはその一部は、会社の規定に基づき支払われる労災上乗せ補償金の
財源に充当するものとする。」と記載されている(乙ト八の4)。
(8) 被告ニチダン生命との契約は、昭和五五年から昭和六三年までの契約申込
書には「下記保険契約を次の福利厚生制度との関連において締結いたしたく」とし
て「1弔慰金制度、2退職金制度、3その他(空欄)」のいずれかを選択する様式
となっているところ、昭和六二年のものは記載がないが、その余のものはすべて1
が選択されたうえで提出されている(乙チ三の1な
いし9)。
(9) 被告明治生命との契約は、当初契約の申込書では契約申込の趣旨につい
て、弔慰金制度との関連において申し込む旨の記載があり(乙リ一の1)、同社と
の間の右の契約締結に際して作成された協定書では、「本契約は、甲(被告住友軽
金属)における福利厚生制度との関連において締結したものであり、甲は、本契約
における保険金、給付金の全部または一部を弔慰金制度規程に則り支払う金額に充
当することとする。」との記載がある(乙リ三)。
(四) 被告住友軽金属における福利厚生制度
 被告住友軽金属では、労働組合との間で労働協約が締結されており、その付属協
定として退職金協定、退職年金協定、慶弔金協定がある(甲三一、三二)。また、
社員就業規則の福利厚生の中には遺児福祉年金の規定がある。これらの規定によれ
ば、従業員が業務外で死亡した場合に支給される金員(平成八年当時)は、死亡時
の基礎基本給及び勤続年数を基準として算出した退職金又は遺族年金のほか慶弔金
協定から供花料五万円及び供花一対であるが、死亡が業務上又は通勤災害による場
合はこのほかに特別弔慰金として三〇〇万円ないし三〇〇〇万円が支給される。な
お、遺児福祉年金は、遺児一人当たり月額二万五〇〇〇円であった。
 これらのうち、退職金及び退職年金(以下「退職金等」という。)についてはそ
の引き当てとして退職給与引当金及び適格退職年金制度が設けられており、平成八
年当時、退職金等の支払原資は退職給与引当金と適格退職年金の積立てで十分にま
かなわれており、亡aの場合も、その退職金等は退職給与引当金から三七七万円が
支給され、その余の七五九万六〇〇〇円は適格年金基金から支給されている(甲七
六の1ないし25、一四三の三二頁、一五八、証人b第一三回口頭弁論調書二一、
二二頁)。
(五) 被告住友軽金属が付保した団体定期保険契約の保険金額の推移と関連事実
 被告住友軽金属が団体定期保険契約を開始した昭和四八年当時、業務上または通
勤災害による死亡の場合に限って支払われる特別弔慰金は八〇〇万円(上限額、以
下同じ。)で、保険金額は一七五万円であったが、昭和五〇年になると保険金額が
特別弔慰金を上回るようになり、翌五一年に特別弔慰金が一二〇〇万円であるのに
対して保険金額は二六八〇万円となって特別弔慰金の二倍以上に急増し、その後、
それぞれ増加されていったが、保険金額は一貫して特別弔慰金
を上回り(二倍前後である。)、平成六年に保険金額は六六八〇万円に増額され、
特別弔慰金は平成七年に三〇〇〇万円に増加されて平成八年に至っている(甲五
三、五五、一四三の五三頁、証人b第一四回口頭弁論調書三三頁)。なお、本件各
団体定期保険契約において、被保険者一人当たりの保険料(平成八年当時)は一八
〇万二六九五円と算定される(甲六一の1ないし9)。
 ところで、この間の(昭和四八年から平成七年までの)在職死亡者数は、平均で
年四・三名(最多の年で八名、最少の年で一名)であり、うち業務上災害による死
亡者は昭和六二年と平成五年に各一名あったのみで、累計でも二名にすぎない(甲
一四三の九九頁)。
 なお、団体定期保険契約には、労働災害の補償に備えて労災補償特約を付するこ
とができるが、被告住友軽金属は右特約を締結していなかった。また、同被告は、
損害保険会社との間で使用者損害保険等の損害保険も締結してこなかった(甲二
二、二三、一四三の九四頁)。
(六) 労働組合に対する説明及び亡aの認識
 亡aは、平成五年一月に被告住友軽金属が団体定期保険契約を締結していること
及び自らが同契約の被保険者となっていることを知り、同年二月に開催された労働
組合の集会において、本件各団体定期保険契約の内容について質問し情報開示を求
めるとともに、受領した保険金を遺族に渡すべきであると主張した。そこで、当時
の労働組合書記長である訴外cが直ちに被告住友軽金属人事室長に本件各団体定期
保険契約の内容等について問い合わせた。被告住友軽金属は、訴外cに対して書面
で回答し(乙イ二)、昭和四五年に組合に説明した内容として、団体定期保険契約
の目的は、従業員死亡の際の会社としての具体的な出費・人的損失を担保する、具
体的には、(1)遺族補償 弔慰金 供花料 死亡退職金 遺児福祉年金 特別弔
慰金(労災付加補償)、(2)従業員死亡に伴う経済的損失の補填 従業員死亡に
伴う逸失利益 代替人材の採用・育成経費等、(3)その他 当該死亡に関連する
不慮の出費の補填等と回答し、亡aは訴外cからその報告を受けた。その後亡a
は、同人が編集発行にかかわっていた「住軽の仲間」という職場新聞の同年四月号
に同人のインタビュー記事を掲載し、団体定期保険の主旨が遺族保障にあるとし
て、保険金は遺族に渡すのが当然であり、労働組合に、保険の主旨に沿った運用を
するよう被告住友軽金
属に申し入れをしてもらうように働きかけようと述べ、また、翌六年七月に労働組
合の役員選挙に立候補し、その公約として、社会問題化している団体定期保険につ
いて保険の主旨にそった運用に改めると主張したが、被告住友軽金属において本件
各団体定期保険契約に関する業務に携わっていた訴外gや訴外bはこれらの亡aの
行動やその意向を知っていた(甲四七、一一六、一四三の六頁、九頁、証人b第一
四回口頭弁論調書四六頁、証人d)。
 その後、亡aは、平成八年七月一〇日に被告住友軽金属に対して内容証明郵便を
郵送して本件各団体定期保険契約の趣旨・目的ほかについて質問したところ、被告
住友軽金属は、同月二二日付内容証明郵便を送付したが、亡aに対する質問には直
接回答しなかった。そして、同日付で、従業員各位宛とした「団体定期保険に関す
る件」と題する文書(甲五〇)を社内に配付あるいは掲示したが、同文書には、本
件各団体定期保険契約を承諾しない場合には同年七月一九日までに不承諾を届け出
るよう記載されていた。そこで、亡aは、七月二五日付内容証明郵便をもって被告
住友軽金属に再度質問したが、同被告から回答はなされなかった(甲四八、四九、
一二三)。
3 右に認定した事実によると、次のとおり判断される。
 まず、被告住友軽金属は、大規模災害等万一の事態に備えて、退職金協定、弔慰
金協定による支払を確保するため団体定期保険に加入しているとか、労働災害の上
乗せ補償金や企業自体の損失等も考慮に入れ、弔慰金制度に則った弔慰金の支払の
ほか、広義の福利厚生及び経済的損失の填補に使われていると主張するが、退職金
等の支払原資は退職給与引当金と適格退職年金の積立てで十分にまかなわれていた
こと、業務上等の死亡の場合には特別弔慰金等(供花料五万円、葬祭料一〇万円を
含む。)を支給するが、その上限額は三〇一五万円であるのに対して保険金額はそ
の二倍以上の六六八〇万円であること、しかも昭和五一年以降保険金額は一貫して
特別弔慰金を二倍前後上回っているのであるが、この間の約二〇年間の業務上死亡
者は二名にすぎないことからすると、特別弔慰金等の上限額の三〇一五万円を超え
る部分の付保目的については右主張のみでは合点がいかず、同被告の主張は付保目
的の一部を説明したに過ぎないといわざるをえない(なお、企業自体の損失につい
ては特段の立証はなされていないところである。)。
 そし
て、亡aは平成五年当初に本件各団体定期保険契約の存在を知った後は一貫して保
険金を遺族に支払うべきことを主張していたが、それは団体定期保険は従業員の福
利厚生制度として機能すべきであるとの認識に基づくものであり(大企業である被
告住友軽金属の従業員であれば、退職金等の支払財源に不安をもつことは想定しが
たく、本件各団体定期保険契約が単に退職金等の支払を確実にする目的に止まるも
のと受け止めていたと認めるに足りる証拠もない。)、被告住友軽金属の労働組合
に対する説明から実現可能とみた上で、業務外死亡の場合でも本件各団体定期保険
契約の保険金の少なくとも一部が亡aの遺族に弔慰金として支払われることを期待
して不承諾届を提出しなかったものと推認される。
 他方、被告住友軽金属においては、前記のとおり、亡aの前記意向を知っていた
こと、そして、本件各団体定期保険契約の開始時及び平成五年の労働組合への説明
時にも、従業員死亡の際の弔慰金及び特別弔慰金双方を含む遺族補償としての会社
の支出に充てることを予定しているとの説明をしていたこと、そもそも団体定期保
険が従業員の福利厚生制度として始められ、大蔵省による行政指導、生命保険業界
による申し合わせ等も右の制度趣旨が保険制度の運用に適切に反映されるべくなさ
れ、特に企業から従業員の遺族に直接支払われる弔慰金制度として位置づけている
こと、団体定期保険を販売してきた被告各生命保険会社の広告中にも、右の位置づ
けに沿う形で、明らかに従業員が死亡した場合の遺族の生活保障としての弔慰金制
度を予定した保険である旨の説明がなされている部分があること、そのような運用
のなされている団体定期保険契約を被告住友軽金属と被告各生命保険会社との間で
締結・更新するに際して、契約関係の文書上、契約目的については統一的な記載は
なされていないものの弔慰金制度との関連で申込をする旨の記載を被告住友軽金属
がしている部分が少なからずみられることからすると、業務外死亡の場合でも、同
被告が受領することのできる保険金額のうち特別弔慰金等の上限額である三〇一五
万円を超える部分を原資として、相当な弔慰金を亡aの遺族に支給することになる
ことを容認していたものと推認される。
 そうすると、平成五年ころか遅くとも平成八年八月一九日までに、被告住友軽金
属と亡aとの間で、本件各団体定期保険契約の保険金として被告住友軽金属
が受領することのできる金額のうち特別弔慰金等の上限額である三〇一五万円を超
える部分については、業務外死亡の場合でもその相当部分を亡aの遺族に退職金と
は別に弔慰金として支払う旨の黙示の合意が成立したものと認められる。
 これに対して、証人c、証人b及び訴外gは、いずれも本件各団体定期保険契約
に基づく保険金から社内の規定以上に遺族に対して支払う金員があるとの認識はな
いとの趣旨を述べ、契約関係文書上の記載や平成五年の説明文書の弔慰金との記載
は誤記であるかのようにも説明し、また平成八年に被告住友軽金属が従業員に対し
て配付あるいは掲示した文書には、本件各団体定期保険契約の制度趣旨について、
従業員に不慮の事態が生じた場合の退職金・遺児福祉年金、労災事故の場合の弔慰
金、海外における事故等の場合の不測の出費に備えることを目的としているとし
て、業務外の弔慰金は予定していないと証言ないし供述するが、これらの証言ない
し供述は、前記認定に照らし信用することができない。
四 争点5(被告住友軽金属が原告に支払うべき額)について
 右に認定した黙示の合意により被告住友軽金属が原告に支払うべき額は、本件各
団体定期保険契約の保険金として被告住友軽金属が受領することのできる金額のう
ち特別弔慰金等の上限額である三〇一五万円を超える部分のうちの相当部分である
ところ、弁論の全趣旨により、亡a死亡により本件各団体定期保険契約の保険金と
して被告住友軽金属が受領することのできる金額は六六八〇万円であると認めら
れ、また、前記認定のとおり、亡aに係る保険契約分の保険料は総額一八〇万二六
九五円であること、亡aの退職金等及び業務外死亡葬祭料の合計は一二〇三万八〇
〇〇円であること(なお、原告は既に被告住友軽金属からこれを受領している。)
に照らすと、本件各団体定期保険契約の保険金のうち特別弔慰金等の上限額である
三〇一五万円を超える部分は三六六五万円であり、そのうちの相当部分は、これか
ら保険料総額の一八〇万二六九五円を控除した額の二分の一を限度とし、かつ、こ
れを下回ることも相当とは認められないから、一七四二万三六五二円となる。そし
て、これを総保険金額中の被告各生命保険会社及び脱退被告日産生命の各保険金額
が占める割合で算出すると、被告住友軽金属は、被告住友生命から受領する保険金
三七〇〇万円のうち九六五万〇八二五円、被告日本生命から受
領する保険金一七〇〇万円のうち四四三万四一六三円、被告太陽生命から受領する
保険金二〇〇万円のうち五二万一六六六円、被告協栄生命から受領する保険金三二
〇万円のうち八三万四六六六円、被告第一生命から受領する保険金二八〇万円のう
ち七三万〇三三三円、被告第百生命から受領する保険金二〇〇万円のうち五二万一
六六六円、被告ニチダン生命から受領する保険金一一〇万円のうち二八万六九一六
円、被告明治生命から受領する保険金一〇〇万円のうち二六万〇八三三円、被告あ
おば生命から受領する保険金七〇万円のうち一八万二五八三円を、それぞれ右保険
金を受領したときは直ちに、いずれも原告に支払う義務があると認められる。
五 参加人あおば生命の訴えについて
 参加人あおば生命は、平成一〇年一〇月一日、脱退被告日産生命が平成九年七月
一五日現在保有するすべての保険契約を包括的に承継したとして、別紙保険目録9
記載の保険契約に基づく参加人あおば生命の原告に対する金七〇万円の保険金支払
債務が存在しないことの確認を求めて本件に参加したが、原告が従前の訴えを変更
し、参加人あおば生命に対し、同目録記載の保険契約に基づく保険金請求権を有す
ることの確認を求めたことによって(同訴えの変更は参加人あおば生命に対する反
訴の趣旨を含むものと解される。)、参加人あおば生命の訴えは確認の利益を欠く
に至ったというべきである。したがって、参加人あおば生命の本件訴えは却下す
る。
六 結論
 以上の次第で、原告の主位的請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、原告
の予備的請求について主文記載の範囲で認容し、参加人あおば生命の訴えは訴えの
利益がないからこれを却下して、主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第三部
裁判長裁判官 野田弘明
裁判官 堀内照美
裁判官山田裕文は、差し支えのため署名押印することができない。
裁判長裁判官 野田弘明

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