弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中第一目録の木造瓦葺二階建工場一棟建坪二八坪外二階坪二一坪
につき所有権が被上告人にあることを確認し上告人に対し所有権移転登記手続を命
じた部分を破棄する。
     原判決中その余の部分に対する上告を棄却する。
     訴訟費用は第一、二、三審を通じ上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由第一点について。
 原判決は、上告人自身がその主張のような弁済供託をした事実は認定できず、挙
示の証拠によれば、被上告人は本件(一)の不動産の所有権を取得した後、判示の
ような経緯から、訴外Aに対し、右不動産のうち土蔵一棟を取毀物件として代金八
万五、○○○円で売却する契約を締結したが、Aが、右代金に相当する金員を、上
告人の被上告人に対する抵当債務一五万円の内金として代位弁済すると称して、弁
済供託する挙に出たので、被上告人は、右供託金を受領するとともに、Aに対し、
これを前示売買代金として受領する旨の領収証を交付したことが認められる旨判示
したのである。論旨は、上告人が原審認定のごとき弁済供託の事実を主張したもの
のごとくいつて、叙上判示に理由そごの違法ありと論難するが、上告人がそのよう
な主張をした形迹を認め難い以上、論旨は採用できない。
 同第二点について。
 Aが前示弁済供託をしたのは、被上告人がすでに本件(一)の不動産の所有権を
取得した後であること、右弁済供託は判示のような経緯によってなされたものであ
ることおよび被上告人が右弁済供託受諾後、Aに対し判示のような趣旨で領収証を
交付したこと等原審が認定した事実関係のもとにおいては、被上告人が右弁済供託
金を受領したからといつて、直ちに、本件(一)の不動産の所有権を放棄したと認
めなければならないものではない。原判決には理由不備、理由そごの違法はなく、
論旨は採用できない。
 同第三点について。
 原判決挙示の証拠によれば、所論乙第三号証は上告人が被上告人の印章を冒用し
て作成したものと推認しうる旨の原審の認定は是認しえられなくはない(原判決事
実摘示には「乙第三号証は印影の真正であることは認める」旨の被上告人の陳述が
掲記されているが、記録に徴すれば、被上告人は乙第三号証の印影が、自己の印章
によつて顕出されたものであることこそ認めているが、自己の意思に基づいて成立
したことを極力争うものであることが窺われ、原審もその趣旨を汲んで、乙第三号
証の印影の成立の真否を審究し、上記のような認定に到達したものと解せられる)。
右のごとく文書の印影が、名義人の印章を冒用して他人において顕出した事情が明
らかになつた以上、民訴三二六条の規定を適用して文書の成立の真正を推定するに
由ないものといわなければならない(所論引用の判例は本件に適切でない)。それ
故原判決には所論の違法はない。その余の論旨は、乙第三号証の成立に関し、原審
の認定しない事実を述べて、原判決を攻撃するものであり、結局、論旨はすべて採
用できない。
 同第四、第五、第七、第八、第九、第一〇点について。
 所論は、すべて、原審がその裁量の範囲内においてなした証拠の取捨判断ないし
事実の認定を非難するものであり、上告適法の理由となし難い。
 同第六点について。
 記録によれば、被上告人は、第一審以来、本件(一)の不動産につき所有権の確
認と所有権移転登記手続を請求してきたところ、原審の昭和三三年七月九日の口頭
弁論期日において、同年六月三日付控訴の趣旨変更申立書に基づき、目的物件中か
ら主文第一項掲記の工場一棟を削除する旨陳述したことが明らかであり、右は、口
頭弁論期日においてなされた訴の一部取下とみるべきであるが、右期日に出頭した
上告人の原審訴訟代理人らにおいて、三ヵ月間内に異議を述べた事跡が認められな
いから、右取下に同意したものとみなされ、取下は効力を生じたものといわなけれ
ばならない。そうすると、原審が前示工場について所有権確認ならびに所有権移転
登記手続を命ずる判決をしたことは、当事者の申し立てない事項につき判決した違
法があるといわなければならない。この点に関する論旨は理由があり、原判決中右
の部分は破棄を免れない。
 よつて、民訴四〇七条、三九六条、三八四条、九六条、八九条、九二条但書に従
い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛