弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

           主    文
 1 原判決を次のとおり変更する。
  (1)ア 原審被告らは,原審原告Aに対し,連帯して,金2207万3047
円及びこれに対する平成12年5月13日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
   イ 原審被告らは,原審原告Bに対し,連帯して,金1103万6524
円及びこれに対する平成12年5月13日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
   ウ 原審被告らは,原審原告Cに対し,連帯して,金1103万6524
円及びこれに対する平成12年5月13日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
  (2) 原審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 2 原審被告らの本件控訴をいずれも棄却する。
 3 訴訟費用は,第1,2審を通じて5分し,その4を原審被告らの,その余
を原審原告らの,各負担とする。
 4 この判決の第1項(1)は仮に執行することができる。
           事実及び理由
第1 控訴の趣旨
 1 原審原告ら
  (1) 原判決中原審原告ら敗訴部分を取り消す。
  (2) 原審被告らは,連帯して,更に,原審原告Aに対して,金762万58
97円,原審原告B及び同Cに対して,各金381万2947円及びこれらに対
する平成12年5月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  (3) 訴訟費用は,第1,2審とも原審被告らの負担とする。
 2 原審被告ら
  (1) 原判決を次のとおり変更する。
  (2)ア 原審被告らは,原審原告Aに対し,連帯して金1793万7947円
及びこれに対する平成12年5月13日から支払済みまで年5分の割合による金
員を支払え。
   イ 原審被告らは,原審原告Bに対し,連帯して金896万8973円及
びこれに対する平成12年5月13日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
   ウ 原審被告らは,原審原告Cに対し,連帯して金896万8973円及
びこれに対する平成12年5月13日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
   エ 原審原告らのその余の請求を棄却する。
  (3) 訴訟費用は,第1,2審とも原審原告らの負担とする。
第2 事案の概要
 1 原審原告らは,交通事故により死亡したDの相続人(夫と子)であり,上
記事故により総額5677万4812円の損害が生じたとして,加害車両の運転
者である原審被告及び運行供用者である原審被告会社に対し,原審原告Aにつき
2838万7406円及びこれに対する平成12年5月13日(交通事故発生の
日)から支払済みまで年5分の割合の遅延損害金の,原審原告B,同Cにつき各
1419万3703円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の各連帯支払を求
めた。
   原審は,原審原告らが支払うべき損害の総額を3915万5378円であ
るとし,原審原告Aにつき1957万7688円,原審原告B,同Cにつき各9
78万8845円及びこれらに対する遅延損害金の限度で請求を一部認容し,そ
の余の請求を棄却した。
   原審原告ら及び原審被告らの双方が控訴し,原審原告らは,当審において
請求を減縮し,原審被告らの支払うべき損害の総額を5440万7169円とし
て,原審原告Aにつき金2720万3585円,原審原告B,同Cにつき各13
60万1792円及びこれらに対する遅延損害金の各支払を求めた。原審被告ら
は,原審原告らに賠償すべき損害の総額は3587万5893円にとどまるとし
て,その旨原判決を変更するよう求めた。
 2 その他の事案の概要は,次項に補正し,第4項に当審における当事者の主
張を付加するほかは,原判決「第2 事案の概要」欄2及び3に記載のとおりで
あるから,これを引用する。
 3 4頁2行目の後に行を改め次を加える。
  「(5) 原判決後の平成15年11月4日,原審被告らは,Dの母Eとの間に
おいて,本件事故に基づくEの固有の慰謝料として同人に対し100万円を支払
うことを合意し,同月19日にこれを支払った。(甲7,乙11,12,弁論の
全趣旨)」
 4 当審における当事者の主張
  (1) 原審原告ら
    Dに過失はない。事故現場交差点の状況からすれば,Dの進路からは右
方からの進入車両が目に入る状態にある。Dは,右方から進入してくる車両を確
認したところ,原審被告が一時停止線で停止したことを確認したからこそ交差点
に進入したと考えられる。他方,原審被告は,一時停止規制及び道交法36条に
よる左方進入車両に対する妨害禁止の規制を受ける状態にあったのであるから,
同人がこれらの規制に従って一時停止すれば,これを見たDとしては,原審被告
がDの車両を無視して交差点に進入してくると考えることはあり得ない。Dに過
失ありとする具体的な注意義務違反を構成する事実はない。
    また,本件交差点は見通しのよい交差点であり,35%の過失相殺をす
べき事案ではない。
  (2) 原審被告ら
   ア 過失割合
     本件においてはDの過失は35%というべきであって,これを変更す
    べき事情はない。
   イ 弁護士費用
     原審被告らは,原審原告らに対し,保険会社を介し,本件訴訟提起前
の平成13年9月25日付け書面で,3587万5894円の賠償を提示してい
たものであって,原審認容額(過失相殺後の損害額)はこれを下まわるものであ
ること,原審原告らは被害者請求をすることも可能であったこと,刑事事件が先
行し,その訴訟記録を原審被告らが全て提出していたことからすると,弁護士費
用を1割とするのは不当である。
   ウ 慰謝料の支払
     原審被告らは,Dの母Eに対し,その固有の慰謝料として100万円
を支払った。被害者死亡の場合における慰謝料について,被害者に生じた慰謝料
を相続すると解するか,固有の慰謝料を相続人等が取得すると解するかにより慰
謝料の総額に差異があるとすべきではなく,上記の金員は控除されるべきであ
る。
第3 当裁判所の判断
 1 次項に補正するほかは,原判決「第4 争点に関する当裁判所の判断」欄
に記載のとおりであるから,これを引用する。
 2 補正
  (1) 6頁21行目から24行目までを次のとおり改める。
   「(2) 慰謝料                2500万0000円
      証拠(甲6,7,乙7)によれば,Dは,夫原審原告Aを婿養子に
迎え,1町5反の田での米作や養鶏等の傍らパート勤務をし,大正9年生まれの
実母E,夫,子である原審原告B,同Cと生活していたものであるが,夫は会社
勤めをしていたものの病のために重労働ができず,米作や養鶏等は専らDが担っ
ていたものであって,Dは一家の支柱ないし少なくともこれに準ずる立場にあっ
たものと認められる。このようなDの立場のほか,後記2(引用の原判決)の本
件事故態様その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると,実母Eに固有の慰謝料
として100万円が原審被告らから支払われた事実を考慮しても,Dの死亡によ
る原審原告らの精神的苦痛を慰謝するには2500万円の支払をもってするのが
相当である。」
  (2) 7頁4行目を次のとおり改める。
   「(4) 以上合計               4840万7171円」
  (3) 10頁13行目から11頁12行目までを次のとおり改める。
   「(2) 上記の事実によれば,原審被告には,本件交差点に進入するに際し
て交差道路左方からの進入車両の有無を十分に確認しないまま同交差点に進入し
た過失があり,本件事故はそのような原審被告の過失に基づき発生したものとい
うべきである。
      もっとも,本件交差点は信号機による交通整理が行われておらず,
D進行道路から本件交差点付近の原審被告進行道路(右方)の見通しもよかった
のであるから,Dにおいても,本件交差点に右方から進入してくる車両の有無を
確認して進行すべき注意義務があったものというべきである。そして,乙5,6
によれば,原審被告車両が進入を開始した地点から衝突地点までの距離は7.6
mであるところ,原審被告は警察の取調べに対し,衝突時点での速度は時速約1
0kmであった旨供述しているのであるから,等加速度であったとすればこの間
の移動に約5.4秒程度を要したことになる(もっとも,上記速度についての供
述は原審被告の感覚に基づく不確かなものであって,その倍の時速20km程度
に近いものであったとしても不自然ではないが,そうとしても2.7秒程度を要
することになる。)。他方,D車両の速度は証拠上明らかではないので,原審被
告車両が本件交差点に進入を開始した時点におけるD車両の位置は断定できない
ものの,D車両は原動機付自転車であり,しかも同車の進行道路は時速30km
の速度規制があるから,Dがこれを遵守していたとすれば,原審被告車両が本件
交差点に進入を開始した(動き出した)時点におけるD車両の位置は,衝突地点
から約22.5mから45mということになり,この時点でDが原審被告車両の
動きを発見していたとすれば衝突地点より手前で安全に停止できた可能性は否定
できない(これが制限速度より高速度であったために停止困難であったとすれ
ば,その面でDの過失として評価されざるを得ない。)。乙4,5によれば,D
は,原審被告車両との衝突直前に「きゃあ」という叫び声を発していたものであ
って,上記のとおり原審被告車両がD車両の右側方から衝突したものであること
を考慮すると,Dは衝突前から原審被告車両の動静が視野に入っていたこと(そ
れがDにとって意外な動きをしたこと)を窺わせるものではあるが,他方では,
Dが原審被告車両の動きを発見したのが遅れたことをも窺わせるものであって,
この面ではDにも過失があったものというべきである。
      この点,原審原告らは,原審被告車両が一時停止をしており,左方
車優先の規制も受けていたことから,Dは原審被告車両が交差点に進入しないと
の正当な信頼をしていた可能性がある旨主張する。たしかに,乙6によれば,本
件事故の態様は,D車両の右側面に原審被告車両の前部が衝突したものであり,
しかも,原審被告車両の前下部バンパーの右側にも衝突による凹みがあること,
したがって,僅かな間合いがあればD車両は原審被告車両と衝突せずにその前方
を通過できたはずであること,裏返せば,原審被告車両が一時停止した後に本件
交差点に進入し始めたのは,D車両が本件交差点に相当に接近した時点であった
と認められる。しかも,上記のような衝突態様に加え,前記認定のとおり,原審
被告車両は,D車両と衝突する直前には規制に従って本件交差点手前で一時停止
をし,右方約28.3メートルの地点に本件交差点に進入しようとする車両を発
見して,その通過を待って本件交差点に進入したものであることを考慮すれば,
Dが本件交差点に進入しようとの判断をした時点においては,原審被告車両は一
時停止をしてその右方道路からの進入車両の通過を待っていた状態にあって,D
において原審被告車両がそのまま停止を継続して左方からの進行車両であるD車
両の通過を待ってくれるとの期待ないし信頼をした可能性は否定できない。しか
し,仮にDがそのような信頼ないし判断をしたとしても,そのような判断をした
後に,しかも,D車両がそのまま進行すれば交差点を安全に通過できる状態に至
る以前に,原審被告車両がその信頼を裏切るような動きを示したとすれば,Dに
おいてもこれを認識し,可能である限りはこれを回避するための措置をとるべき
義務があるものというべきところ,上記判示のとおり,原審被告車両は一時停止
をした後に発進して本件交差点に進入したものであって発進後衝突までには多少
の時間があり,Dが注意を継続していれば原審被告車両のそのような動きを認識
し,衝突を防止できた可能性は否定できないのであるから,仮にDに原審原告ら
主張のような信頼があったとしても,これをもってDの過失を全面的に否定する
ことはできない。
      もっとも,前記のとおり,原審被告車両の進行道路の幅員(外側線
で表示された歩道部分を除く)が4.6mであるのに対し,D車両の進行道路
は,本件交差点のD車両進入側の幅員(外側線で表示された歩道部分を除く)が
8.7m,D車両出口側の幅員が6.8mであって,原審被告進行道路に比して
その幅員が明らかに広い道路というべきであり,しかも,原審被告進行道路(停
止地点)とD車両進行道路とは相互に見通しは良かったのであるから,原審被告
において同方向に注意を向けていればD車両の発見は容易であり,かつ,左方
車・広路進行車として本来その進行妨害をすべきではなかったのに,原審被告
は,右方車の通過待ち後には左方道路に全く注意を払わず発進し,D車両の側面
に衝突したものであること,他方,D車両からみれば,一時停止した原審被告車
両がそのまま停止して左方車・広路進行車を優先してくれると信頼した可能性が
あり,それが過失を否定し得るものではないとしても,Dの過失を減殺する要素
として考慮すべきであり,これらの事情及び前記認定の事実を総合すれば,Dの
過失は15%と評価すべきである。
    (3) なお,Dが装着していたものとみられるヘルメットは同人が倒れた
場所から離れた場所に飛んでいたこと,Dの死因が外傷性脳挫傷であったことは
前記認定のとおりであるが,上記の事実のみをもってしては,上記のヘルメット
がDの頭部から離脱した原因ないしDが外傷性脳挫傷となり死亡に至った原因
が,ヘルメットの形状ないし装着方法の不適切その他D側の過失と評価すべき事
情に基づくものと認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
    (4) 以上により過失相殺を行った後のD(ないし原審原告ら)の損害額
は以下のとおり4114万6095円となる(円未満四捨五入)。
      (計算式)
        48,407,171×(1-0.15)=41,146,095
      この金額を原審原告らの相続分に応じて除すると,以下のとおり,
原審原告Aにつき2057万3047円,その他の原審原告らにつき各1028
万6524円となる(下記の計算においては,円未満の四捨五入による処理の結
果,これを合算すると本来の損害額を1円上回ることとなるため,これを調整す
るために原審原告A分から1円を控除しており,同人については円未満切り捨て
と同様の結果となる。)。
      (計算式)
        原審原告A     41,146,095÷ 2=20,573,047 
        その他の原審原告ら 41,146,095÷ 4=10,286,524   」
  (4) 11頁19目「180万円」を「150万円」と,同頁20行目「90
万円」を「75万円」と,各改める。
  (5) 11頁14行目「(1)」を削除し,同頁21行目から25行目までを次
のとおり改める。
   「4 以上によれば,原審被告らが賠償すべき原審原告らの損害額は,以
下のとおり,原審原告Aにつき2207万3047円,その他の原審原告らにつ
き各1103万6524円となる。
      (計算式)
        原審原告A     20,573,047+1,500,000=22,073,047
        その他の原審原告ら 10,286,524+ 750,000=11,036,524 」
 3 以上によれば,原審原告らの請求は,原審原告Aについては金2207万
3047円及びこれに対する平成12年5月13日から支払済みまで年5分の割
合による金員の,その他の原審原告らについては各金1103万6524円及び
これに対する上記期間についての同率による金員の,各支払を求める限度で理由
があり,その余は理由がない。
   よって,原審原告らの本件控訴に基づき,これと一部異なる原判決を変更
し,原審被告らの本件控訴をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決す
る。
    広島高等裁判所第3部
        裁判長裁判官   下   司   正   明
           裁判官   能   勢   顯   男
           裁判官   齋   藤   憲   次
(原判決引用部分)
第2 事案の概要
 2 前提事実等(確定の根拠は各末尾に示す。)
  (1) 交通事故の発生
    以下の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
     日  時  平成12年5月13日午後1時55分ころ
     場  所  山口県防府市ab番地のc付近道路(以下「本件事故現場」
という。)
     被害車両  原動機付自転車(車両番号・防府市de,以下「D車両」
という。)
     被害者   D
     加害車両  普通貨物自動車(登録番号・山口fgh,以下「F車両」と
いう。)
     同運転者  被告F
     事故態様  F車両が交通整理の行われていない交差点を直進するに
当たり,左方道路から進行してきたD車両と出合い頭に衝突したもの
  (2) Dの死亡
    Dは,本件事故によって受けた外傷性脳挫傷により,平成12年5月1
3日午後3時6分ころ,外傷性ショック等により死亡した。
   (争いがない事実,甲1,4)
  (3) 被告らの責任原因
   ア 被告F
     民法709条
    (争いがない) 
   イ 被告会社
     自動車損害賠償保障法3条
    (争いがない)
  (4) 原告らとDとの関係等
    原告Aは,Dの夫であり,原告B及び原告Cは,Dの子である。
    そして,Dの死亡に基づく相続により,原告Aは2分の1,原告B及び
原告Cはそれぞれ4分の1ずつ,Dの権利義務を承継した。
   (甲1,2)
 3 争点
  (1) D(ないし原告ら)の損害
  (2) 過失相殺
  (3) 弁護士費用
第4 争点に関する当裁判所の判断
 1 争点(1)(原告らの損害)について
  (1) 逸失利益                 2190万7171円
    証拠(甲1)によれば,Dは昭和19年10月14日生であることが認
められ,したがって,本件事故当時(平成12年5月13日)におけるDの年齢
は55歳である。
    賃金センサス平成12年第1巻第1表中の産業計・企業規模計・女性労
働者・学歴計・年齢別(55歳ないし59歳)の平均年収額が353万1000
円であることは,当裁判所に顕著な事実である。
    また,55歳から67歳までの就労可能年数12年に対応するライプニ
ッツ係数が8.8632であることは,当裁判所に顕著な事実である。
    生活費控除率については,弁論の全趣旨により,30パーセントを相当
と認める。
    以上を基礎として,Dの逸失利益を算定すると,次のとおりとなる。
     (計算式) 3,531,000×(1-0.3)×8.8632≒21,907,171
  (2) 慰謝料                  2400万0000円
    本件において顕れた諸般の事情(後記2において述べる本件の事故態様
を含む。)に照らせば,原告らの精神的苦痛を慰謝するには,上記金額の支払を
もってするのが相当であると認める。
  (3) 葬儀費用                  150万0000円
    原告らがDの葬儀関係費用として少なくとも150万円を超える金額を
支出したとの事実は,弁論の全趣旨によってこれを認め,本件において顕れた諸
般の事情に照らせば,そのうち150万円が本件各事故と相当因果関係を有する
ものと認める。
  (4) 以上合計                 4740万7171円
 2 争点(2)(過失相殺)について
  (1) 証拠(認定の根拠は各末尾に示す。)によれば,以下の事実を認めるこ
とができる。
   ア 本件事故現場の状況
     概要は別紙交通事故現場見取図(以下「別紙見取図」という。)記載
のとおりであるが,詳細は以下のとおりである。
    (現場の位置)
     北西方向(i方面)から南東方向(j方面)に伸びる市道k線と,北東方
向(l方面)から南西方向(m方面)に伸びる市道n線とが,ほぼ十字型に交差する
道路上である。
    (道路の状況)
     市道k線
       幅員は,交差点より北西側が約5.1メートル,南東側が約4.
8メートルであるが,交差点より北西側の道路の内側には,道路北東端から約
0.5メートルの位置に,外側線が白色ペイントの実線で表示されている。
       アスファルトで舗装されており,中央線,中央分離帯,縁石,ガ
ードレール等は設置されていない。
     市道n線
       幅員は,交差点より北東側が約9.6メートル,南西側が約6.
8メートルであるが,交差点より北東側の道路の内側には,道路北西端から約
0.9メートルの位置に,外側線が白色ペイントの破線で表示されている。
       アスファルトで舗装されており,中央線,中央分離帯,縁石,ガ
ードレール等は設置されていない。
    (交通整理の状況)
     信号機は設置されていない。
    (交通規制の状況)
     山口県公安委員会の指定により,市道k線及び市道n線の双方に,最高
速度30キロメートル毎時,駐車禁止の規制がされている。
     交差点進入に際しては,市道k線には一時停止の規制がされ,交差点入
口にその標識及び表示が設けられているが,市道n線には一時停止の規制はされて
いない。
    (視認の状況)
     北西方向から交差点に向かう市道k線は,進行方向の右側に高さ約1.
8メートルのブロック塀が設置されているが,そのブロック塀は交差点入口付近
では停止線より後方に斜角となっているため,右方の見通しの妨害とはなってお
らず,別紙見取図記載①の地点から右方は約50メートルの距離まで視認可能で
ある。
     また,上記道路の進行方向の左側には,高さ約2メートルの看板2
枚,カーブミラー,消火栓標識,一時停止標識,電柱が設置されているが,いず
れも支柱が細いため左方の見通しの妨害とはなっておらず,別紙見取図記載①の
地点から左方は約100メートルの距離まで視認可能である。
     他方,北東方向から交差点に向かう市道n線は,進行方向の右側に高さ
約1.5メートルのフェンスが設置されているが,右方の見通しの妨害とはなっ
ていない。
    (天候の状況)
     本件事故当時は,昼間であったが,降雨中であった。
    (乙6)
   イ 本件事故当時の状況
     概要は別紙見取図記載のとおりであるが,その詳細は以下のとおりで
ある。
     本件事故当日,被告Fは,被告会社の業務に従事し,山口県防府市iの
現場で作業を行った後,帰社するためF車両を運転し,市道k線を走行して北西方
向から本件事故現場の交差点に差し掛かった。
     被告Fは,一時停止標識に従い,別紙見取図記載①の地点で一時停止
した。被告Fは,交差道路(市道n線)の左方(北東方向)を確認したところ,進
入車がいないものと考え,次いで交差道路の右方(南西方向)を確認したとこ
ろ,進入車両を右方28.3メートルの位置に認め,その車両が交差点を通過し
たのを待機した。被告Fは,上記車両の通過後,交差道路左方から進入する車両
はないものと思い込み,交差道路左方の確認を十分に行わないままF車両を発進
させ,時速約10キロメートルで交差点に進入した。ところが,そのとき交差道
路左方からD車両が交差点に進入してきたため,現場見取図記載②の地点(同記
載①の地点との距離は約7.6メートル)を走行中のF車両の前部が,同記載
<ア>の地点を走行中のD車両右側に,同記載<×>の位置で衝突した。
     被告Fは,そのとき初めてD車両の存在に気が付き,別紙見取図記載
③の地点(同記載②の地点との距離は0.6メートル)でブレーキを掛け,同記
載④の地点(同記載③の地点との距離は1.1メートル)で停止したが,D車両
は同記載<イ>の地点(同記載<ア>地点との距離は1.8メートル)に転倒し,D
は同記載<ウ>の地点(同記載<イ>の地点との距離は2.8メートル)で頭部から
多量に出血した状態で倒れていた。
     なお,本件事故後,路面には,D車両の左ステップバーによって形成
されたものと思われる擦過痕が,別紙見取図記載l1の地点に長さ約0.4メート
ルにわたり,また,別紙見取図記載l2の地点に長さ約0.5メートルにわたり,
それぞれ印象されている。
     他方,別紙見取図記載<オ>の地点には,Dのものと思われるヘルメッ
トが遺留されているが,同地点と他の地点との距離は,証拠上必ずしも明らかで
はない(この点,論告要旨〔乙8〕には,Dのヘルメットが衝突地点から6メー
トル前後,衝突後転倒した被害者の頭部から5メートル前後離れた場所に落下し
ていた旨の記載が存在するが,実況見分調書〔乙6〕には,別紙見取図記載<オ>
の地点と他の地点との測定距離は表示されていない。)。
    (乙4ないし6)
   以上の事実を認めることができる。証拠中上記認定に反する部分は採用し
ない。
  (2) 上記の事実関係の下においては,本件事故は,被告Fが交差点に進入す
るに際し交差道路左方から進入してくる車両の有無を十分に確認しないまま進行
した過失によって発生したものというべきであるが,他方,上記交差点が信号機
による交通整理が行われていないものであったことに照らせば,Dにおいても,
その進行交差道路右方から進入してくる車両の有無を確認することにより,本件
事故の発生又はこれに基づく損害の発生若しくは拡大を防止することができたも
のというべきである。以上のほか,本件事故現場付近の交通規制状況(本件事故
現場の交差点においては,一時停止の交通規制が,F車両の進行方向には存在す
る反面,D車両の進行方向には存在しなかったこと),その履践状況(F車両が
交差点の手前で一時停止をしていること),本件事故の態様(本件事故はF車両
が道路交通法36条1項所定の左方優先原則に違反して発生したものであるこ
と),事故車両の形態(四輪車たるF車両対単車たるD車両の事故であるこ
と),その他本件において顕れた諸般の事情を総合考慮すると,本件事故に対す
るDの過失割合は25パーセントと認めるのが相当である。
  (3) 以上により過失相殺を行った後のD(ないし原告ら)の損害額は,以下
のとおりとなる。
    (計算式) 47,407,171×(1-0.25)≒35,555,378
    この金額を,原告A,原告B及び原告Cにつき,その相続による承継割
合(前記第2の2(4))で除すると,以下のとおりとなる。
    (計算式)
      原告A        35,555,378÷2=17,777,689≒17,777,688
      原告B及び原告C   35,555,378÷4=8,888,844.5≒8,888,845
   (上記の計算式においては,原告B及び原告Cの損害額の端数を切り上げ
たことから,損害総額を3555万5378円に一致させるために,原告Aの損
害額を1円減額している。)
 3 争点(3)(弁護士費用)について
  (1) 原告らがその権利実現のため訴訟の提起及び追行を弁護士に委任したこ
とは,当裁判所に顕著な事実である。そして,本件事案の内容,審理経過,立証
活動の難易,認容額その他弁論に表れた諸般の事情を考慮すると,原告らが本件
訴訟の追行に要した費用のうち本件事故と相当因果関係のある損害は,以下のと
おりであると認める。
    原告A         180万円
    原告B及び原告C    各90万円
  (2) 以上によれば,被告らが賠償すべき原告らの損害額は,以下のとおりと
なる。
    (計算式)
      原告A         17,777,688+1,800,000=19,577,688
      原告B及び原告C    8,888,845+900,000=9,788,845

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛