弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人等の負担とする。
         事    実
 第一審原告Aの訴訟代理人であつた弁護士白木豊寿は、第一審原告訴訟代理人と
して「原判決を取消す、被控訴人は控訴人に対し別紙第一目録記載の土地につき函
館司法事務局B出張所大正十四年六月十八日受付第三七〇号の、別紙第二目録記載
の土地につき同出張所昭和十年三月二十七日受付第一三九号の、別紙第三目録記載
の土地につき同出張所同日受付第一四〇号の各売買を原因とする所有権取得登記の
抹消登記手続をせよ、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との旨の判
決を求める旨を記載した控訴状を提出し、その後右訴訟代理人たることを辞任した
が、第一審原告Aの訴訟承継人たる控訴人C1及び同C2は本件口頭弁論期日に右
控訴状に基き控訴の趣旨を陳述し、その他の訴訟承継人たる控訴人等は当審第一回
口頭弁論期日に出頭しないが、当裁判所は同人等において右控訴状を陳述したもの
とみなした。これに対して被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張並に証拠の提出、援用、認否は、被控訴代理人におい
て、第一審原告Aは昭和二十六年二月八日死亡し、長男亡Dの代襲相続人C3、同
C4、二男亡Eの代襲相続人C5、同C6、同C7、三男C8、四男C9、五男C
10、七男C1、八男C2、長女亡Fの代襲相続人C11、同C12、同C13、
同C14、同C15、同C16、同C17、三女C18、以上十八名において右A
の相続をしたので、右十八名に訴訟手続を受継せしめられたい旨申立て、控訴人C
3、同C10、同C1、同C2及び同C18等代理人において当審証人Gの証言を
援用したほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
 なお右十八名のうちC4は昭和三十三年十一月十九日控訴の取下書を提出し、更
にその後昭和三十四年四月十三日被控訴代理人の同意の下に訴の取下書を提出し、
又C9、C11、C15、C16、及びC17親権者Hは、昭和三十四年三月十七
日から同年四月十三日までの間に被控訴代理人の同意の下に訴の取下書を提出し
た。
         理    由
 まず本件の訴訟関係について職権をもつて案ずるに、被控訴人提出の訴訟受継の
申立と題する書面添付の各戸籍謄本又は抄本もしくは除籍謄本及びC8の証明書に
よると、第一審原告Aは、昭和二十六年二月八日(原審口頭弁論の終結前)死亡
し、被控訴人主張の十八名が、その相続人としてAの財産に属した権利義務を承継
したことが明らかである。而して右十八名中、第一審被告C8は、もともと被控訴
人として本件訴訟の当事者であるからたとい後記の如く訴訟手続受継後の相続人等
による本件の抹消登記請求の訴訟がいわゆる必要的共同訴訟となつても、更に第一
審原告の控訴人としてなすべき訴訟手続を受継するいわれのないことはもとより当
然である。従つて本件は被控訴人C8を除く十七名の相続人等において第一審原告
Aの控訴人としてなすべき訴訟手続を受継したものと解すべきところ、本件は第一
審原告Aにおいて別紙各目録記載の土地の所有権を主張し被控訴人C8に対し右土
地に対する所有権移転登記の抹消登記手続をすることを求めていたものであること
は第一審原告の原審における主張自体によつて明かであるか<要旨第一>ら、Aの共
同相続人たる承継人等よりする右訴は右各土地の共有権を主張し共有権に基き右登
記抹消を求める訴となるものと解すべく、かかる訴を提起し訴訟を追行
することは民法第二百五十二条の保存行為に該るものと認むべきであるから共有者
全員が当事者となることを要せず一部の者より訴えることを妨げないが、訴訟の目
的が右共有者全員について合一に確定することを要する、いわゆる類似の必要的共
同訴訟となるもの<要旨第二>と解するのが相当である。しからば、右受継後、C4
のなした控訴の取下はその効力を生じないが、同人か五名のなした訴の
取下は有効であつて、同人等は本件の訴訟関係より離脱したものと認める。よつて
当審の口頭弁論終結当時における第一審原告の控訴人としての訴訟手続の受継者
は、前記の相続人十八名より被控訴人及び訴の取下をなしたC4ほか五名を除くC
3ほか十名であるということができる。なお右十一名において受継した本件訴訟は
前述のとおり同人等が共有者全員のためにする保存行為として追行するものである
から、本件の判決の効力が訴を取下げた前記六名に及ぶことも亦当然である。 そ
こで、右訴訟承継人たる控訴人等の控訴の趣旨は、控訴状の記載並に右訴訟承継の
原因事実に徴して、結局「原判決を取消す、被控訴人は控訴人等に対し別紙第一目
録記載の土地につき函館司法事務局B出張所大正十四年六月十八日受付第三七〇号
の、別紙第二目録記載の土地につき同出張所昭和十年三月二十七日受付第一三九号
の、別紙第三目録記載の土地につき同出張所同日受付第一四〇号の各売買を原因と
する所有権取得登記の抹消登記手続をせよ、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負
担とする」との判決を求める趣旨に帰着するものと認められる。
 よつて右控訴人等の請求について判断する。
 別紙第一目録記載の土地につき函館司法事務局B出張所大正十四年六月十八日受
付第三七〇号をもつてIより、別紙第二目録記載の土地につき同出張所昭和十年三
月二十七日受付第一三九号をもつてAより、別紙第三目録記載の土地につき同出張
所同日受付第一四〇号をもつて同人より、いずれも被控訴人に対し売買を原因とす
る所有権移転の登記がなされたことは当事者間に争いがない。そして成立に争いな
い乙第三号証の四及び同第十三乃至第十九号証、原審証人Jの証言(第三回)によ
つて成立の認められる乙第三号証の一乃至三、原審証人J(第一乃至第三回)同K
(第二回)、同L(第一、二回)、同M同N、同O、同P、同Q、同R、同S(第
一乃至第三回)及び同Tの各証言並に原審における被控訴本人の尋問の結果(第
一、二回)を綜合すると次の事実が認められる。すなわち、被控訴人は大正九年頃
から露領浦塩に行つて働き相当の金銭を貯めたが、たまたま大正十一年頃兄Dが他
人の金銭約三千二百円を使い込み、その父A(第一審原告)及び祖父I等はその弁
償に苦慮したところがら大正十二年二月中被控訴人に対し弁償方を依頼し、被控訴
人より預金合計千八百五十円の提供を受け、同人等において同年末までに被控訴人
に対しその返済をしなかつたときは、代物弁済としてAにおいて、大正三年三月十
一日Iの隠居により相続した当時Iの所有名義であつた別紙第一乃至第三目録記載
の土地を譲渡することを約したが、遂に右期限までに右金員の返済がなされなかつ
たため、約旨により右土地は被控訴人の所有となり、その後別紙第一目録記載の土
地については大正十四年六月十八日AがIを代理して被控訴人と共に登記所に赴き
所有権移転の登記手続を済ませ、別紙第二及び第三日録記載の土地については被控
訴人は将来場合によつては他の親族に譲渡してもよいとの考えから同時に登記を受
けることをしなかつたが、その後被控訴人が刑事事件を若き起し刑務所に服役した
ために延び延びとなり、出所後の昭和十年三月二十七日Aと共に登記所に出頭しI
よりAに対する家督相続による所有権移転登記及びAより被控訴人に対する所有権
移転登記を受けたものであることを認めることができる。右認定に反し、右の被控
訴人に対する各所有権移転登記はいずれも被控訴人がI或いはAの印鑑を盗用し無
断でなしたものであつて右各土地は被控訴人に移転していないとの控訴人等の主張
に相応するが如き原審証人C10、同U(第一、二回)及び同C18の各証言並に
原審における第一審原告A本人の供述はいずれも措信できず、その他に右認定を覆
えすに足るべき何ら適切の資料も存しない。しからば別紙各目録記載の土地はいず
れも代物弁済により被控訴人の所有となつたものであり、且つ被控訴人に対する所
有権移転登記はいずれも売買を原因とするものであり、殊に別紙第一目録記載の土
地についてはAの前主Iより直接登記されたものである点において、真実の権利移
動の経過とは一致しないけれども、その点で何ら効力を妨げられず有効であること
も亦もとより当外である。
 よつて右各登記の抹消を求める控訴人等の請求は失当たること明かであるから、
控訴人等の本件控訴は民事訴訟法第三百八十四条により棄却すべきものとし、控訴
費用の負担について同法第九十五条第八十九条、第九十三条第一項本文を適用し
て、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 羽生田利朝 裁判官 今村三郎 裁判官 田中良二)
 (別紙目録は省略する。)

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