弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
2被上告人は,上告人に対し,142万3000円を
支払え。
3訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
理由
上告代理人柴田信夫の上告受理申立て理由について
1本件は,上告人が,被上告人に対し,自動継続特約付き定期預金(以下「自
動継続定期預金」という。)の元本100万円及びこれに対する10年間の約定利
息の合計42万3000円の支払を求める事案である。
2原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)上告人は,昭和61年11月19日,A信用組合に対し,100万円を次
の約定で預け入れた(以下,この預入れによる預金契約を「本件預金契約」とい
う。)。
ア利息年4.23%
イ期間1年
ウ満期日昭和62年11月19日
(2)本件預金契約においては,特約として,本件預金契約が満期日に前回と同
一の期間の預金契約として自動的に継続されること,預金者が本件預金契約の継続
を停止するときは満期日までにその旨を申し出るべきこと(以下,この申出を「継
続停止の申出」という。)などが定められている(この特約は一般の金融機関にお
いて通常用いられている自動継続定期預金の特約と同旨のものであり,以下,この
ような特約を「自動継続特約」という。)。なお,上記特約によれば,継続の回数
は10回を限度とすることとされている。
(3)被上告人は,A信用組合の破たんにより,平成12年12月11日,A信
用組合から事業を譲り受け,本件預金契約に係る債務を承継した。
(4)上告人は,被上告人に対し,平成15年6月25日,本件預金契約に基づ
く預金(以下「本件預金」という。)の払戻しを請求したが,被上告人はこれに応
じなかった。
(5)上告人は,平成15年8月26日,本件訴えを提起したが,被上告人は,
同年10月10日の第1審第1回口頭弁論期日において,本件預金の払戻請求権に
つき10年の消滅時効が完成しているとして,これを援用した。
3原審は,前記事実関係の下において,次のとおり判断して,上告人の請求を
棄却すべきものとした。
自動継続定期預金においては,預金者は,預金契約締結後最初に到来する満期日
(以下「初回満期日」という。)までに継続停止の申出をすることにより,初回満
期日以降,預金払戻請求権を行使することができる。そのように預金者の一方的意
思表示によって排除できる自動継続に係る弁済期の定めは,消滅時効の進行を妨げ
る法律上の障害とはならないものというべきである。したがって,上告人の本件預
金の払戻請求権の消滅時効は,初回満期日である昭和62年11月19日から進行
するものと解するのが相当である。
そうすると,その10年後である平成9年11月19日の経過により,本件預金
の払戻請求権の消滅時効が完成したものと解される。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
(1)自動継続定期預金契約における自動継続特約は,預金者から満期日におけ
る払戻請求がされない限り,当事者の何らの行為を要せずに,満期日において払い
戻すべき元金又は元利金について,前回と同一の預入期間の定期預金契約として継
続させることを内容とするものである(最高裁平成11年(受)第320号同13
年3月16日第二小法廷判決・裁判集民事201号441頁参照)。消滅時効は,
権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)が,自動継続定
期預金契約は,自動継続特約の効力が維持されている間は,満期日が経過すると新
たな満期日が弁済期となるということを繰り返すため,預金者は,満期日から満期
日までの間は任意に預金払戻請求権を行使することができない。したがって,初回
満期日が到来しても,預金払戻請求権の行使については法律上の障害があるという
べきである。
もっとも,自動継続特約によれば,自動継続定期預金契約を締結した預金者は,
満期日(継続をしたときはその満期日)より前に継続停止の申出をすることによっ
て,当該満期日より後の満期日に係る弁済期の定めを一方的に排除し,預金の払戻
しを請求することができる。しかし,自動継続定期預金契約は,預金契約の当事者
双方が,満期日が自動的に更新されることに意義を認めて締結するものであること
は,その内容に照らして明らかであり,預金者が継続停止の申出をするか否かは,
預金契約上,預金者の自由にゆだねられた行為というべきである。したがって,預
金者が初回満期日前にこのような行為をして初回満期日に預金の払戻しを請求する
ことを前提に,消滅時効に関し,初回満期日から預金払戻請求権を行使することが
できると解することは,預金者に対し契約上その自由にゆだねられた行為を事実上
行うよう要求するに等しいものであり,自動継続定期預金契約の趣旨に反するとい
うべきである。そうすると,初回満期日前の継続停止の申出が可能であるからとい
って,預金払戻請求権の消滅時効が初回満期日から進行すると解することはできな
い。
以上によれば,自動継続定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は,自
動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行するものと
解するのが相当である。
(2)これを本件についてみるに,前記事実関係等によれば,本件預金契約は,
継続の回数が10回に達した後の満期日になって初めて自動継続がされることがな
くなったものであるから,本件預金の払戻請求権の消滅時効は,同満期日である平
成9年11月19日から進行し,上告人による平成15年における前記預金払戻請
求の時にはまだ完成していなかったというべきである。
5以上と異なる原審の判断には,判決の結論に影響を及ぼすことが明らかな法
令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,前記事実
関係等によれば,上告人の請求は理由があるから,これを棄却した第1審判決を取
り消して,同請求を認容することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官涌井紀夫裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官
泉徳治裁判官才口千晴)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛