弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人弁護人小野久七の上告趣意及び被告人本人の上告趣意は後記書面のとおり
である。
 弁護人の上告趣意について。
 所論第一点は、原判決が憲法三八条の法意に反するという主張の前提として、原
審が証拠として採用した被告人の司法警察員に対する供述調書は、任意性を欠き証
拠能力がないという趣旨を述べているが、記録を精査してもそのような事実を認め
ることはできないから、所論違憲の主張はその前提を欠き適法な上告理由と認めら
れない。また所論第二点は、原判決の事実誤認叉は量刑不当を主張するのであつて、
刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。その他記録を精査しても刑訴四一一条を適
用すべき事由も認められない。
 被告人本人の上告趣意について。
 所論(2)は、原判決が憲法七六条三項に違反すると主張するのであるが、論旨
末段にあるとおり、その実質は刑訴四一一条の事由あることを主張するに帰し、適
法な上告理由にあたらない。(なお昭和二五年二月九日の第一審第一回公判調書に
よれば、論旨指摘の証拠書類について同意があつたものと認められ、原判決のこの
点に関する判断に誤りはない。またその他の証拠調も適法に行われたことが認めら
れ所論のような違法はない。)所論(12)(13)の主張中に摘示する証人尋問
調書は原判決の採用しなかつたところであるから、これについて憲法三七条同七六
条三項違反を云々しても、原判決に対する適法な上告理由とならない。
 その他の論旨について、(1)は単なる訴訟法違反の主張であつて適法な上告理
由にあたらないのみならず、公判調書の記載を具さに調べて見ても所論のような違
法は認められない。(なお第二審判決原本冒頭の「八月八日」という記載は、その
他の記載と照合して見ると八月十日の誤記であることは明らかである。)(4)(
5)の論旨は、被告人の司法警察員Aに対する供述調書の任意性をしきりに否定攻
撃するのであるが、記録についてその経過を詳細に調べて見ても、なんら任意性を
疑わしめる形跡は認められない。(6)ないし(11)の論旨は、要するに原審の
証拠の取捨判断を非難するのであつて、適法な上告理由にあたらない。その他の論
旨はすべて原判決の事実誤認又は法令違反を主張するに帰し刑訴四〇五条の上告理
由に当らず、また記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められな
い。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和二八年九月二九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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