弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中控訴人勝訴の部分を除く其の余を取消す。
     被控訴人の請求を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。控
訴費用は控訴人の負担とする」との判決を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述及び証拠の提出援用認否は被控訴代理人に於て「訴外
Aが昭和二十三年十二月控訴人の持参した家賃を受領したこと及び被控訴人が石A
に家賃の取立を委任していたことは認めるが、同人に家屋を管理させていたことは
否認なる。尚被控訴人が先に控訴人に対し提起した家屋明渡請求の訴は休止満了に
より終了したものである」と述べ、控訴代理人に於て「右休止満了の事実及び本件
家屋が被控訴人の所有に属する事実は認める」と述べ立証として被控訴代理人に於
て甲第五号証の一、二を提出し、当審証人Bの証言を援用し控訴代理人に於て当審
に於ける証人C、D(第一回)A、Eの各証言、控訴人本人の供述(第一、二回)
を援用し、甲第四号証の一、二の認否を不知と訂正し、甲第五号証の一、二の成立
を認めたほか、すべて原判決の記載と同一であるから之を引用する。
 当裁判所は職権により証人Dの再訊問を為した。
         理    由
 本件係争家屋が被控訴人の所有に属し、もと訴外Eが被控訴人から之を賃借して
いたこと及び昭和二十二年八月頃Eが此の家屋より退去し、以後控訴人が之に居住
して現在に至つたことはいずれも当事者間に争が無い。控訴人は同年七月二十一日
右Eから賃借権を譲受け、之に付被控訴人の家屋管理人Aの承諾を得たと主張する
ので以下此の点に付考察する。
 先ず右Aの権限の点に付ては控訴人は家屋の賃貸その他一切の権限を有したと主
張し被控訴人は単に家賃の取立の権限を与えたにすぎないと争うのであるが、原審
及び当審証人A当審証人Cの各証言を綜合すると、右Aは士友社と称し被控訴人の
ほか多数の家主の為総計二百五十戸程の借家の管理を業としていた者で、本件家屋
を含む被控訴人所有の四戸一棟に付ても賃貸その他一切の権限を与えられていた事
実を認めることが出来、右認定に反する原審証人Bの証言及び原審に於ける被控訴
人本人の供述は信用出来ない。次に原審証人F当審証人C、D(第一、二回)原審
及び当審に於ける控訴人本人の各供述並に之に依り成立を認められる乙第三乃至第
五号証に原審及び当審証人A当審証人Eの各証言の一部を綜合すれば控訴人は昭和
二十二年七月二十日Eとの間に賃借権譲受けに関なる話合がまとまつたので家主の
承諾の点を確かめたところ右Aの承諾を得ているとの返事であつた為Eと共にA方
に赴いたところAが病気で寝ているとの女中の返事で已むを得ず面会せずに引返
し、Eに権利金一万五千円を支払つた事実、及び其の後控訴人方も妻Dの病気入院
のため右家屋への移転が遅れていたが、同年九月十二日頃此の家屋に移転し、其の
翌日右DがA方に赴いて転居の挨拶をしたが、其の際もAは病臥中であつて面会せ
ず、応対した女中からDが挨拶に来たとの報告を聞いた事実、Dは同月十五日に
塩、煙草等の配給店を兼ねていた右A方にその配給登録の手続を受けに行つたが此
の登録のあつたこともAは女中から報告を受けた事実、並にその十日程後A方の女
中は控訴人方に家賃の取立に赴いたが、Eの賃借時代の滞納が三ケ月分あり之も併
せて支払を求めた為DはEの息子が尚近所に居住中であるから聞いて見て返事する
旨を答えたとヒろ女中は主人に伝える旨述べて帰り、その後A方から誰も来宅しな
かつた為Dは同年十月末頃A方に家賃を持参したところ家主の来る迄待つてほしい
との返事があり、同年十一月頃初めて被控訴人の子上羽英二から控訴人に対し明渡
の請求があつた事実を各認定することが出来る。(原審証人Aの証言中昭和二十二
年九月に女中を家賃取立に行かせる迄控訴人の転居の事実を知らなかつたとの部
分、当審証人Aの証言中Eの居住の時代に朝鮮人を転入させることの承諾を求めて
来たので之を拒絶しその二、三日後に被控訴人より今後他に貸さないとの申出があ
つたとの部分、当審証人Eの証言中Eが控訴人と共にA方に赴いたときEのみはA
に面会し賃借権譲渡の承諾を受けたとの部分はいずれも信用しない。)一方原審及
び当審に於ける証人Bの各証言及原審に於ける被控訴人本人の供述を綜合すると、
被控訴人が控訴人の転入の事実を知つたのは同年十月末頃で、同人は其の後直ちに
A及び<要旨>控訴人に異議を述べ明渡の請求をなした事は明かである。併しながら
以上の認定に依れば本件家屋に付賃貸その他一切の管理の権限を有するAが
控訴人の賃借権譲受及び本件家屋への転入の事実を知つたのが同年九月中旬のこと
であるに拘らず、たとえ病気のためにせよ、同年十月下旬に被控訴人から控訴人の
居住なることに付不服の意向を表明なる迄の一ケ月半の間控訴人に対し何等の異議
も述べなかつたのであり、一方控訴人は賃借権譲受及び本件家屋への転入の前後に
管理人Aの承諾を求めるため十分子を尽しているのであつて、世間に往々見られる
ような家主若くは管理人に全く無断で賃借権を譲受け家屋に入つたあとで承諾を求
めるのとは著しく事情を異にするのであるから、このような諸般の状況を綜合して
考慮するときは、結局家屋管理人AはEより控訴人に対する賃借権の譲渡に付積極
的に承諾を与えたことはないが、此の事実を知りながら之を暗黙の裡に承諾したも
のと解すべきであつて、其の後賃貸人たる被控訴人自身が右譲渡を知つて直ちに異
議を述べたとしても、もはや民法第六百十二条による解除権を取得しないものと謂
わねばならない。従つてその以後に於ける双方の交渉の経緯に付て判断をなす迄も
なく、賃借権の無断譲渡を前提とする被控訴人の本訴請求は既に此の点に於て失当
として棄却すべきであり、原判決中控訴人勝訴の部分を除く其の余は不当で本件控
訴は理由がある。仍て民事訴訟法第三百八十六条第九十六条第八十九条を適用し主
文のとおり判決する。
 (裁判長判事 朝山二郎 判事 沢井種雄 判事 前川透)

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