弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人安藤一二夫の上告理由、同兼子一の上告理由第一点ないし第四点、同
立花定、同田中泰岩の上告理占第一点、第二点、同藤田八郎の上告理由第一点ない
し第四点、同水野東太郎、同芳賀繁蔵、同宮原三芳、同荒井秀夫、同海地清幸、同
萩原剛、同辻亨、同平岡高志、同浜名儀一、同阿部裕三、同山本進一、同鈴木俊光、
同玉田弘毅の上告理由第一点ないし第三点および第五点、第六点について。
 原判決が確定したところによると、訴外D株式会社は、昭和二元年一一月一日本
件土地につき管理権を有していた上告人Aから本件土地を含む宅地合計四一七坪二
合五勺七才を建物所有の目的をもつて借り受け(とくに無断転貸禁止の契約条項を
付していた。)、その地上に本件建物を建設所有してきたところ、その後、同会社
は商号をE株式会社と変更し、また、昭和二三年三号二六日当事者間の合意により
前記借地の範囲を本件土地のみに縮少したこと、右訴外会社は、資本金を三〇〇万
円とし、スポーツ興行、スポーツ施設の経営、映画興行等を目的として設立された
もので、実際には当初拳闘興行をしていたが後これを映画館としてその営業を続け
てきたところ、昭和二三・四年頃営業不振に陥つたため、同会社々長Fより被上告
会社々長Gに対してこれが打開についての援助方を申し入れたことから、両会社間
に合併の話が持ち上り、とりあえず、昭和二四年四月二八日頃から被上告会社にお
いて本件建物における映画館経営を引き受けることになり、被上告会社から右G外
二名が訴外会社の重役陣に加わるとともに、被上告会社は、本件建物の引渡を受け
たうえその社員Hを支配人とし、訴外会社の従業員をそのまま被上告会社の従業員
として従前に引き続き映画館の経営を続けるようになつたこと、同年五月末頃前記
Gが訴外会社の代表取締役に就任するに至つたが、同年七月六日同会社は賃貸人た
る上告人Aの承諾を得ずに代金一〇〇万円で賃借権とともに本件建物を被上告会社
に譲渡し、同月八日右建物につき所有権移転登記手続を経由したこと、そこで同月
三〇日上告人Aは訴外会社に対して本件土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示を
したこと、そして、その頃から両会社間に合併の気運が高まり、同年九月頃には具
体的に合併の話合がまとまつたので、被上告会社は同年一〇月二八日正式に合併な
らびに資本増加の決議をなし、両会社ともに合併に関する諸手続を進めたうえ(同
年一一月頃前記Fは訴外会社の取締役兼代表取締役を辞任した。)、昭和二五年三
月二八日被上告会社は吸収合併の登記を、訴外会社は合併による解散登記をそれぞ
れ完了し、ここに被上告会社は訴外会社を吸収合併することによつてその権利義務
を承継するに至つたことがいずれも認められるというのである。ところで、賃貸借
契約の解除がいつたん有効になされた場合には、その後に生じた事情によつてその
効力が左右されないものと解すべきところ(最高裁昭和二五年(オ)第一二〇号、
昭和二八年四月九日第一小法廷判決、民集七巻二九五頁。同昭和二七年(オ)第三
五四号、昭和二八年五月七日第一小法廷判決、民集七巻五二五頁参照)、前示のよ
うに、上告人Aが本件賃貸借契約を解除した当時は、被上告会社と訴外会社との合
併についてはその話が持ち上つてはいたものの、いまだその話合が具体的にまとま
つてはいなかつたというのであるから、その後に行われた合併の事実をもつて、右
解除の効力を判断する資料とすることは許されないところである。しかるときは、
右解除当時の前示事実関係のほか、原判決は、(1)被上告会社が本件建物におけ
る映画館経営を引き継いだ際、あらたに支配人となつたHが本件土地の賃貸人たる
上告人Aに面接して右引継の旨を述べて挨拶をしたとき、同上告人が特段の異議を
述べなかつたこと、(2)本件建物の所有権移転登記を受けた被上告会社が昭和二
四年七月中坪当り二一円の割合による賃料を持参したが、上告人Aは従前の坪当り
七円を二五円に値上することを要求して受領を拒絶したこと、(3)被上告会社は、
訴外会社とは比較にならぬ大資本の会社であり、支払能力ないし信用の点において
も格段の開きがあることは公知の事実であること、(4)訴外会社々長Fは従前賃
料の支払を滞つたことがあつて信用がおけなかつたことなどを認定判示しているが、
これらの事実関係をすべて併せて考えても(かえつて、前示のように、本件賃貸借
には無断転貸禁止条項が付せられていたことを想起すべきである。)、本件解除が
本件土地の無断譲渡を理由とする以上、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足り
ない特段の事情があるものとして右解除を無効とすべき事由は到底見出すことがで
きない。しかるに、原判決は、本件契約解除後に行われた前記両会社の合併の事実
に拘泥したものか、右合併依然における被上告会社の本件土地の使用関係から見れ
ば合併による借地権の承継の場合と径庭がなく賃貸人に特段の不利益を及ぼしたも
のとは考えられないとなし、前記のような本件土地賃借権の無断譲渡があつても賃
貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるから民法六一二条の
解除権は行使できないとして、上告人らの主張を排斥したのは、合併による借地権
の承継が民法六一二条にいう譲渡にあたるかどうかの点についての判断はしばらく
措くとしても、結局、原判決には法令の解釈適用を誤つた違法があるといわなけれ
ばならない。したがつて、論旨は理由あるに帰し、原判決は、その他の論旨につい
ての判断をまつまでもなく破棄を免れない。そいて、本件は、さらに審理を要する
ものと認めるから、原審に差し戻すことを相当とする。
 よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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