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平成24年11月29日判決言渡
平成23年(行ケ)第10447号商標登録取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日平成24年11月27日
判決
原告ビーディーオーユニバンクインコーポレイテッド
訴訟代理人弁護士鈴木秀彦
同莇智子
訴訟復代理人弁護士坂井健吾
被告特許庁長官
指定代理人渡邉健司
同田村正明
被告補助参加人ステッヒティングべーデーオー
訴訟代理人弁護士窪田英一郎
同柿内瑞絵
同乾裕介
同今井優仁
同野口洋高
同中岡起代子
同熊谷郁
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を
30日と定める。
事実及び理由
第1請求
特許庁が異議2010-900180号事件について平成23年8月31日にし
た異議の決定中,「登録第5310534号商標の指定役務中,第36類『預金の受
入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け
及び手形の割引,内国為替取引,外国為替取引,信用状に関する業務,送金・振込
事務の取扱い,その他の銀行業務』についての商標登録を取り消す。」との部分を取
り消す。
第2争いのない事実
1特許庁における手続の概要
原告は,別紙商標目録記載1の登録第5310534号商標(以下「本件商標」
という。)の商標権者である。
被告補助参加人は,別紙商標目録記載2の国際登録第770374号商標及び同
記載3の国際登録第770421号商標(以下,これらを併せて「引用商標」とい
う。)の商標権者である。
被告補助参加人は,平成22年6月18日,「本件商標は,商標法4条1項10号
及び11号又は15号に反して登録されたものであり,その登録は,取り消される
べきものである」として,商標登録異議(異議2010-900180)を申し立
てた。特許庁は,平成23年8月31日,本件商標について,その指定役務中「建
物又は土地の情報の提供」以外の役務に係る部分の商標登録を取り消す旨の決定(以
下「決定」という。)をし,その謄本は,同年9月14日,原告に送達された。
2決定の理由
決定の理由は,別紙決定写しのとおりであり,要するに,本件商標は,引用商標
に類似し,本件商標の指定役務中「建物又は土地の情報の提供」以外の部分は引用
商標の指定役務と同一又は類似するから,商標法4条1項11号に該当するという
ものである。
第3当事者の主張
1原告の主張
決定には,本件商標と引用商標の類否判断の誤り(取消事由1),及び本件商標と
引用商標の指定役務の類否判断の誤り(取消事由2)があり,決定は違法として取
り消されるべきである。
(1)商標の類否判断の誤り(取消事由1)
本件商標と引用商標とが類似するとした決定には,類否の判断を誤った違法があ
る。
ア分離観察の可否について
複数の構成部分からなる商標については,分離観察が許されると主張する当事者
側において,当該部分が取引者,需要者に対し,強く支配的な印象を与えること,
又は,それ以外の部分が出所識別標識としての称呼,観念を生じないことを立証し
なければならない。
本件商標中の「Remit」部分は,中央部分に位置すること,ローマ字又は英
語読みで「リミット」の称呼が生じ,「Remit(Japan)」部分は,本件商
標の約7割以上もの幅を使って表記されていること,「Remit」は「送金する」
を意味する英単語であり,送金業務に従事する「銀行」を連想させることから,「R
emit」部分が,本件商標の特徴的部分であるといえる。
他方,本件商標中の「BDO」部分が取引者,需要者に対し役務の出所識別標識
として強く支配的な印象を与えるものと認められるような取引の実情はない。
イ類否判断
本件商標には,「Remit(Japan)」部分があるのに対し,引用商標には,
同部分がないことから,両商標は,外観において異なる。本件商標は,「BDO」部
分から「ビーディーオー」の称呼,全体から「ビーディーオーリミットジャパン」
の呼称が生じるのに対し,引用商標は,被告補助参加人の名称から「べーデーオー」
の称呼が生じ,称呼において相違する。本件商標中の「Remit」部分から,銀
行業務としての観念が生じるのに対し,引用商標は,特定の観念が生じない点にお
いて,観念の対比はできない。
また,本件商標に関しては,商標権者である原告はフィリピンで著名な銀行であ
ること,銀行業務は顧客からの信頼と理解が最も重要な基盤であること,引用商標
の指定役務には,銀行業務が含まれておらず,需要者層が異なることなどの取引の
実情に照らすと,両商標の類似性は否定されるべきである。
ウ小括
以上のとおり,本件商標と引用商標とは類似しない。
(2)指定役務の類否判断の誤り(取消事由2)
本件商標の指定役務中,原告が本訴において取消しの対象とした第36類「預金
の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸
付け及び手形の割引,内国為替取引,外国為替取引,信用状に関する業務,送金・
振込事務の取扱い,その他の銀行業務」(以下,「本件商標の指定役務」という。)と
引用商標の指定役務とは,同一又は類似ではない。したがって,本件商標の指定役
務と引用商標の指定役務とが類似するとした決定の判断は誤りがある。
ア本件商標の指定役務について
本件商標の指定役務のうち,「預金の受入れ及び定期積立金の受入れ」,「資金の貸
付け及び手形の割引」,「有価証券の貸付け」は,銀行法2条1項1号に該当し,「内
国為替取引」,「外国為替取引」,「送金・振込事務の取扱い」は同項2号に該当する
から,これらの業務は,「銀行業」に当たる。「銀行業」は,銀行法による特別な規
制を受け,銀行法上の免許を受けた者のみが行うことのできる業種であり(同法4
条1項),さらに金融庁による特別な監督を受ける(同法4章)特殊な業務である(例
外として,送金事務の取扱い業務は,資金決済に関する法律37条により,内閣総
理大臣の登録を受けることによって「資金移動業」として営むことができる。)。ま
た,「信用状に関する業務」及び「その他銀行業務」も,銀行業に付随する業務とし
て,通常,銀行でなければ行うことがない業務である。
原告は,日本で銀行業の免許を有する「ブラジル銀行(東京支店)」及び「資金移
動業」の登録を受けた「資金移動業者」である「SpeedMoneyTra
nsferJapan株式会社」と提携して,適法に業務を行っている。
イ引用商標の指定役務について
引用商標中の指定役務の第36類には,本件商標の指定役務と同一の役務が含ま
れておらず,本件商標の指定役務と引用商標の指定役務は同一とはいえない。
また,以下の理由により,本件商標の指定役務と引用商標の指定役務は類似しな
い。
すなわち,被告補助参加人は,日本において監査法人,税理士法人,アドバイザリ
ー会社及びコンサルタント会社に対してライセンスを供与している。「監査法人」は,
公認会計士法による規制を受け(同法5章の2参照),その規制態様は銀行法による
厳しい規制とは明らかに異なるし,また,税理士法人は,税理士法による規制を受
け,規制態様が銀行法による規制とは異なる点は監査法人と同様である。アドバイ
ザリー又はコンサルタント業務には特別な規制法が規定されていないほか,免許が
不要で,官公庁による特別な監督を受ける業種ではないため,かかる業務は銀行業
とはまったく趣が異なる業種である。銀行法上,銀行には厳しい業務範囲規制が定
められており(銀行法10条,11条,12条,16条の2参照),監査法人,税理
士法人,アドバイザリー会社又はコンサルタント会社はいずれも銀行が営むことが
できる業種ではない。
以上のとおり,監査業務及び税理士業務と銀行業とは,業務内容,規制法等にお
いて異なる。また,アドバイザリー又はコンサルタント業務と銀行業務とは,業務
の性質,特別な規制・監督の有無等において異なる。
被告補助参加人は,日本において銀行法47条1項による銀行業の免許,及び資
金決済に関する法律37条の登録のいずれも受けていない。
したがって,本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とは,類似しない。
2被告の反論
(1)商標の類否判断の誤り(取消事由1)に対して
ア結合商標における類否判断の基準
複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部
分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判
断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識とし
て強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識
別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないと
いうべきである(最判昭和38年12月5日・民集17巻12号1621頁,最判
平成5年9月10日・民集47巻7号5009頁参照)。
イ本件商標について
(ア)外観
本件商標は,「BDORemit(Japan)」の全17文字(記号及びスペー
スを含む。)からなる商標であるところ,その文字色は,先頭から3文字目の「O」
部分のみが黄色であり(以下,同部分を「黄色O部分」という。),その他の部分は
すべて青色である。このように黄色と青色によるコントラストのはっきりした彩色
効果により,視覚上,黄色O部分は,中間に位置する文字でありながら,他の部分
より特に目立った印象を与える表記態様である。
(イ)観念
本件商標中の「BDO」部分は,直ちに特定の観念を生じさせない。
本件商標中の「Remit」部分は,「送金する」を意味し,「Japan」は「日
本」を意味する。しかし,「BDO」部分以外の部分も,本件商標の指定役務中「送
金・振込事務の取扱い」との関係において,格別の観念を有するものと解されない。
(ウ)称呼
本件商標は,「BDO」部分からは「ビーディーオー」との称呼が生じ,「Rem
it(Japan)」部分からは「リミットジャパン」との称呼が生じるとみるのが
それぞれ自然であるから,その構成全体からは「ビーディーオーリミットジャパン」
の称呼が生じるものといえる。また,括弧書きされた「(Japan)」部分が省略
された場合には,「ビーディーオーリミット」との称呼が生じる。
(エ)取引の実情
本件商標の指定役務との関係において,本件商標が常に一体で使用され,需要者
にも不可分一体の商標として認識されていることを認めるに足りる事実は見いだし
得ない。むしろ,原告のウェブサイトでは,本件商標の「BDO」と同じ表記態様
からなる標章が,単独で,使用されていることがうかがわれる。
(オ)小括
本件商標は,その特徴的部分である「BDO」部分に相応して,「ビーディーオー」
の称呼も生じ,特定の観念は生じない。
また,取引の実情に照らして,本件商標は,常にその構成全体をもって取引に資
されるとは限らず,「BDO」のみでも取引に資される蓋然性は極めて高い。
ウ引用商標について
引用商標はいずれも,「ビーディーオー」の称呼を生じ,特定の観念は生じない。
エ本件商標と引用商標との類否
本件商標は,その特徴的部分である「BDO」と引用商標とを対比すると,両者
は,観念において比較し得ないものの,「ビーディーオー」との称呼において共通し,
「BDO」の綴りの外観において共通するから,本件商標と引用商標は,類似する。
(2)指定役務の類否判断の誤り(取消事由2)に対して
本件商標の指定役務は,引用商標の指定役務と同一又は類似のものである。
3被告補助参加人の反論(指定役務の類否判断の誤り(取消事由2)に対して)
(1)役務の類否の判断基準について
役務の類否は,役務自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判断さ
れるべきではなく,それらの役務に同一又は類似の商標を使用するときは,同一主
体の提供に係る役務と誤認されるおそれがあるか否かによって,判断されるべきで
ある。
そして,この場合の出所の混同については,既登録商標と出願商標が同一又は類
似の商品(役務)に同じ地域,同じ取引分野で使用されるとすれば,経験則上,出
所の混同を生じるか否か(一般的出所の混同の有無)により判断されるべきである。
その理由は,登録主義の下では,出願商標については,予測される使用状況により
判断せざるを得ないこと,既登録商標については,現に使用していることは求めら
れていないことによる。
したがって,役務の類否の判断において参酌される取引の実情は,その指定商品
(役務)全般についての一般的・恒常的な取引の実情を指すべきであって,当該商
標が現在使用されている態様のみに限定して判断されるべきではない。
(2)本件商標の指定役務と引用商標の指定役務との比較
本件商標の指定役務は,いずれも銀行が通常提供する業務であり,いわゆる「銀
行業務」といえる。他方,引用商標の指定役務のうち,第36類の「金融及び財務
に関する事項についての助言」,「金融及び財務に関する研究」,「資金の貸し付けに
関する助言」,「会社への資金の貸し付けに関する助言」及び「保険・金融及び財務
に関する事項についての情報の提供」(以下,これらをまとめて「『金融及び財務に
関する事項についての助言』等」という。)は,必ずしも銀行のみが提供する業務で
はないが,銀行が直接,あるいはその関連会社を通じて提供する業務を含んでいる。
したがって,「金融及び財務に関する事項についての助言」等は,銀行が提供する業
務の範疇に入るものを含むと理解される。
(3)各指定役務の提供者及び利用者
本件商標の指定役務は,上記のとおり,銀行が提供する役務である。他方,引用
商標の指定役務の「金融及び財務に関する事項についての助言」等は,銀行に限定
されるものではないが,日本の銀行が,一般的に提供している役務である。
また,本件商標の指定役務も,引用商標の指定役務の「金融及び財務に関する事
項についての助言」等も,規模の大きさにかかわらず,その役務提供の相手方は,
企業を含む点で共通である。
(4)小括
以上のとおり,本件商標の指定役務と,引用商標の指定役務のうち「金融及び財
務に関する事項についての助言」等は,いずれも,銀行が提供する業務の範疇に属
する役務を含む点で共通することに照らすと,両役務の性質,提供者及び利用者の
範囲において共通するといえる。したがって,仮に商標法4条1項11号所定の「類
似する商標」が使用されることを想定した場合,これに接する取引者,需要者は,
役務の出所につき誤認混同を生じさせるといえる。
(5)原告のその他の主張に対して
原告の主張する事情は,本来,役務の類否判断において考慮されるべきではない。
仮にこれを考慮するとしても,引用商標の使用権者が現に提供する「金融及び財務
に関する事項についての助言」等には,資金調達に関する助言等も含まれ,このよ
うな助言業務は,銀行が通常提供する助言業務と密接に関連している。したがって,
引用商標の使用権者が現に提供する「金融及び財務に関する事項についての助言」
等も,原告が日本で提供する「個人によるフィリピンへの送金に関連する業務」も
同一の金融機関が提供しているものと認識されるおそれが高い。したがって,原告
主張に係る個別の事情があったとしても,本件商標の指定役務と,引用商標の指定
役務のうち「金融及び財務に関する事項についての助言」等が類似するとの判断に
影響を与えるものではない。
第4当裁判所の判断
当裁判所は,本件商標と引用商標は類似し,それぞれの指定役務も類似するから,
本件商標は商標法4条1項11号に該当するとした決定に誤りはないものと判断す
る。その理由の詳細は,次のとおりである。
1商標の類否判断の誤り(取消事由1)について
(1)商標の類否判断
商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用
された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記
憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に
考察すべきものであり(最判昭和43年2月27日・民集22巻2号399頁参照),
複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分
の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断
することは,その部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識とし
て強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識
別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないと
いうべきである(最判昭和38年12月5日・民集17巻12号1621頁,最判
平成5年9月10日・民集47巻7号5009頁,最判平成20年9月8日・裁判
集民事228号561頁参照)。
上記の観点から,本件商標と引用商標の類否を判断する。
(2)本件商標の特徴部分
本件商標は,「BDO」を大文字により表記した部分と「Remit」「(Japa
n)」と表記した部分からなる商標である。「BDO」部分は,「Remit」「(Ja
pan)」部分と対比して,概ね2倍の太さで表記され,「B」の文字は下側のふく
らみの部分のみ「D」と接触し,また,「O」の文字は,「D」の文字に重なるよう
に配置され,かつ黄色で目立つように彩色されている。他方,本件商標の他の文字
は,すべて青色に彩色されている。
また,「Remit」の部分は,「送金する」との意味を,「(Japan)」との部
分は,「日本」との意味を,それぞれ有する英語であり,取引者,需要者は,同部分
については,役務の内容,場所等を指すものと認識,理解する。
さらに,取引の実情についてみると,原告は,「BDOBancoDeOr
o」(BancoDeOroは,フィリピン法では,ユニバーサルバンクを指す。)
との構成からなる登録第5310533号商標の商標登録を受けたが,その商標登
録取消決定取消請求訴訟が当裁判所に係属中である(当裁判所に顕著な事実)こと,
原告のウェブサイトでは,「BDO」部分のみを表示している部分があること(甲1
5),原告は商号を従前の「バンコデオロユニバンク」から「ビーディーオーユニバ
ンク」に変更していることを考慮すると,原告においては,「BDO」部分を共通の
ロゴとして統一的に用いていることが認められる。
以上のとおり,「BDO」部分が,それぞれの文字が接触又は重なるように配置さ
れて,デザイン上の特徴を備えており,「O」の文字が黄色で目立つように彩色され
ていること,「Remit(Japan)」部分は役務の内容,場所等を指すと認識,
理解されること,原告自身においても「BDO」部分を共通のロゴとして統一的に
用いていることからすると,本件商標中における取引者,需要者の注意を喚起させ
る特徴部分は,「BDO」部分であると解すべきである。
(3)本件商標と引用商標の類否判断
本件商標は,「ビーディーオー」の称呼を生じる。本件商標は,「BDO」部分か
らは特定の観念を生じることはない(なお,「Remit(Japan)」部分を併
せても,取引者,需要者においては,役務等に関する説明と認識,理解され,観念
が生じるものとはいえない。)。
引用商標は,いずれもその構成文字に相応して「ビーディーオー」の称呼を生じ,
特定の観念を生じない。
本件商標の特徴部分である「BDO」と引用商標とを対比すると,「ビーディーオ
ー」との称呼において共通し,外観において「BDO」部分と共通し,観念におい
ては,比較することができない。
(4)小括
以上のとおりであり,本件商標と引用商標とは類似する。
2指定役務の類否判断の誤り(取消事由2)
(1)指定役務の類否判断
商標法4条1項11号にいう指定役務が類似のものであるかどうかは,これらの
役務が通常同一営業主体により提供されている等の事情により,それらの役務に同
一又は類似の商標を使用するときには同一営業主体の提供に係る役務と誤認される
おそれがあると認められるか否かによって決するのが相当である。
(2)本件商標と引用商標の指定役務の類否
これを本件についてみる。本件商標の指定役務(第36類「預金の受入れ(債券
の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の
割引,内国為替取引,外国為替取引,信用状に関する業務,送金・振込事務の取扱
い,その他の銀行業務」)は,いずれも銀行によって提供される役務の代表的なもの
である。
他方,引用商標の指定役務中,第36類の「金融及び財務に関する事項について
の助言」,「金融及び財務に関する研究」,「資金の貸し付けに関する助言」,「会社へ
の資金の貸し付けに関する助言」及び「保険・金融及び財務に関する事項について
の情報の提供」については,典型的には,監査法人や金融・財務に関するコンサル
ティング会社等によって提供されることが多いが,銀行もまた,自らあるいは関連
会社を通じてこれらの業務を提供することがあることが認められる(丙1,2)。
そうすると,これらの役務はいずれも銀行によって提供されることがあるという
点において,同一又は類似の商標が用いられた場合には,その役務の出所について
の混同を生じるおそれがあると認められるとするのが相当である。
(3)原告の主張について
原告は,本件商標の商標権者である原告はフィリピン法上の銀行であり,引用商
標は監査法人等が使用権者となっている点を前提とするならば,本件商標と引用商
標の指定役務は類似しない旨を主張する。しかし,仮に,そのような主張を前提に
したとしても,原告において「BDO」部分のロゴを共通とし,かつ,単に役務内
容等の説明部分を付加した他の商標登録出願の実情等を総合考慮すると,本件商標
と引用商標が用いられた場合に,役務の出所について混同を生じるおそれがあると
の前記判断を左右するものとはいえない。
原告の主張は,採用できない。
(4)小括
以上のとおり,本件商標と引用商標の指定役務とは類似すると認められるから,
これと同趣旨の決定には違法はない。
3結論
原告はその他にも縷々主張するがいずれも採用の限りではない。よって,原告の
主張を棄却することとして主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
八木貴美子
裁判官
小田真治
別紙
商標目録
1次に示すとおりの構成からなり,平成21年12月2日に登録出願,第36類
に属する別掲1に記載の役務を指定役務として,平成22年2月18日に登録査
定,同年3月19日に設定登録されたもの。
2次に示すとおりの構成からなり,2001(平成13)年8月8日にBene
luxにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張
し,同年10月30日に国際商標登録出願,第9類,第16類,第35類,第3
6類,第41類及び第42類に属する別掲2に記載の商品及び役務を指定商品及
び指定役務として,平成15年2月21日に設定登録されたもの。
3次に示すとおりの構成からなり,2001(平成13)年7月19日にBen
eluxにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主
張し,同年10月30日に国際商標登録出願,第9類,第16類,第35類,第
36類,第41類及び第42類に属する別掲2に記載の商品及び役務を指定商品
及び指定役務として,平成15年2月21日に設定登録されたもの。
別掲1
第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の
受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引
受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の
物品の保護預かり,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土
地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の
募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,送金・振
込事務の取扱い,その他の銀行業務,投資,有価証券の売買,有価証券指数等先
物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有
価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒
介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数
等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有
価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒
介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証
券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取
引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等精算取次ぎ,有価証券の引受け,有
価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の
提供,金融又は財務に関する情報の提供,金融又は財務に関する助言及び評価,
生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損
害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,保険に関する指
導・助言及び情報の提供,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,
建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,
土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒
介,建物又は土地の情報の提供」
別掲2
第9類「Computersoftware;electronicpublications.」
第16類「Printedmatter;printedpublications;newsletters;reports;forms;
handbooksonthesubjectofcomputersoftware.」
第35類「Accountancy;forensicaccountancy,includingfraudinvestigation
andresearch;internalandexternalauditing;book-keeping;taxresearch;
taxpreparation;consultancyandservicesrenderedintheadministrativeand
secretarialfield;businessinvestigations;businessinvestigationsand
businessconsultancyrelatingtoinsolventcompanies;formationof
companies;providingcommercialandcommercialbusinessinformation,
whetherornoton-line;costpriceanalysisandconsultancyrelatedthereto;
providingtemporarymanagementtoanorganization(interimmanagement);
businessmanagementassistanceandconsultancy;marketresearch,market
studiesandmarketanalysis;businessmanagementandorganization
consultancy;businessconsultancyforthebenefitofcompanies;consultancy
inthefieldofmarketingandbusinessefficiency;consultancyrelatingto
mergers,acquisitions,franchising,companysalesandwinding-up;
consultancyinthefieldofriskmanagementandbusinessprocessmanagement;
personnelmanagement,selectionandrecruitment;personnelmanagement
consultancy;outplacementofpersonnel;counsellingindismissal
procedures;businessmanagementanalysisorbusinessconsultancy;
preparation,auditingorcertificationoffinancialstatement.」
第36類「Fiscalassessments;consultancyrelatingtofinancialandfiscal
matters;consultancyrelatingtocreditanddebtorcontrol;actuarial
servicesandconsultancyrelatedthereto;financialandfiscalresearch;
consultancyinthefieldofinvestmentsandsubsidies;consultancyinthe
fieldof(obtaining)financingandloans;consultancyinthefieldofcompany
financing;realestateappraisal;realestatemanagement;consultancyinthe
fieldofinsuranceandriskmanagement;pensionfundadministrationand
management;managementofpensionfunds;debtcollectionservices;
investmenttrustservices;providing(whetherornotonline)informationin
thefieldofinsurance,financialmattersandfiscalmatters;tax
consultancy;taxagency.」(第36類「財政の評価,金融及び財務に関する事
項についての助言,債権及び債務の管理に関する助言,保険数理及びそれらに関
する助言,金融及び財務に関する研究,投資及び助成金に関する助言,資金の貸
し付けに関する助言,会社への資金の貸し付けに関する助言,建物又は土地の鑑
定評価,土地・建物の管理,保険及び危機管理に関する助言,年金基金の運営及
び管理,年金基金の管理,債権回収の代行,投資信託の募集・売出し,保険・金
融及び財務に関する事項についての情報の提供(オンラインによるか否かを問わ
ない。),税務相談,税務代理」)(翻訳は被告による。)
第41類「Education,coursesandtraininginthefieldofaccountancy,
book-keeping,financialandfiscalmanagement,personnelandbusiness
management;arrangingandconductingconferences,seminars,symposiumsand
workshops;editingandpublishinginthefieldofaccountancy,book-keeping,
financialandfiscalmanagement,personnelandbusinessmanagement.」
第42類「Consultancyonthesubjectofinformationtechnology,computer
hardwareandcomputersoftware;systemanalysis;computerprogrammingand
programmingfordataprocessing;providinginformationonlegalservices,
agenciesorsupportsforlegalproceduresrelatingtolawsuitsorotherlegal
issuesoutsideJapan,legalconsultancy,legalresearch;consultancyinthe
fieldoftaxlaw;consultancyandservicesrenderedbyanotarypublic;
arbitrationservices;consultancyregardingrulesandlegislationinthe
fieldofenvironment;qualitycontrol,qualityresearch;scientific
research;translation.」

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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