弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を原判示第一の罪につき懲役四月に、原判示第二の罪につき懲役
拾月に処する。
     原審の未決勾留日数中六拾日を右懲役拾月の刑に算入する。
         理    由
 控訴理由は記録に綴つてある弁護人前堀政幸名義の控訴趣意書記載の通りである
から、これを引用する。
 弁護人の論旨第一点について。
 原判決は主文に於て「被告人を第一の各罪につき懲役四月に、第二の各罪につき
懲役十月に処する。未決勾留日数中六十日を右本刑に算入する。」と宣告し、その
理由中法令の適用の部に於て「判示第一の各所為につき……判示第二の各所為につ
き……。以上につき刑法第二十一条(未決通算)……」としていること所論のとお
りである。
 今この判決の趣旨を検討してみるに主文に於て未決勾留日数を算入すべき刑を
「右本刑」としているが、右本刑には懲役四月と懲役十月との二箇があるのである
から、このいずれに算入するのか不明であつて算入すべき本刑を確定判示していな
いことになり、又法令の適用の部に「以上につき」とあるところよりすれば、右両
刑を指すもののようにも思はれるが、そうだとすれば、六十日を右両刑に幾らずつ
算入するのかその割合を判示していないことになり、結局この未決勾留日数の算入
の点につき判決の趣旨が不明確であつて、これを捕捉することができない。
 元来刑法第二十一条により未決勾留日数を本刑に算入するにあたり、本刑が二以
上ある場合には、いずれの本刑に幾日を算入するかを判示する必要がある。もしこ
の判示がない場合には刑の執行に際し未決算入の取扱いに支障を生ずるのであつ
て、このことは本刑が懲役又は禁錮の体刑である場合に益々痛感するところであ
る。
 あるいは両刑の執行に際しとにかくその未決日数を控除して執行すればよいとの
説があるかも知れないし、原判決の趣旨もここにあつたのかも知れないが、二以上
の懲役又は禁錮の執行にはその順序(刑事訴訟法第四百七十四条)があり、各刑に
つき始期と終期とを必要とするところ、この終期は未決の算入を如何ようにするか
によりて異つてくるし、又両刑が同時に確定しないて、一つは確定したが他の部分
につき上訴があり、上訴審に於て上訴の部分を破棄せられた場合は未決算入の点を
とうずればよいか判らなくなるから右の説も採用できない。
 又あるいは両刑に平等に分割算入すれはよいとの説があるかも知れぬが、多数当
事者の平等の原則(民法第四百二十七条)は財産権に関するものであるから、刑罰
に関する本件の如き場合にはその適用の余地がないものと解せられる。
 又あるいは勾留の原由となつた罪とそうでない罪とある場合には、その原由とな
つた罪に対する刑に算入したものと解すべきものとするとの説があるかも知れぬ
が、勾留の原由となつた罪の如何は記録を調査して始めて認め得られることであつ
て、判決自体では未決算入を如何にしたものかを特定できないし(最高裁昭和二
五、九、五、第三小法廷判決、集四巻九号一六一七頁参照)、又いずれの罪も勾留
の原由とはなつているが、その日数がいずれも裁定の算入日数に満たない場合には
右の説でも解決ができない。かく考えて来ると右の如き言渡をした判決では未決を
本刑に如何ように算入するものかを確定するのみちがないことになる。
 懲役刑と罰金刑とを併科した場合単に未決勾留日数中六十日を本刑に算入すると
の言渡をした場合には、懲役刑にのみ算入した趣旨と解すべきものとする旨の判例
(最高裁昭和二六、一一、二七、第二小決定、集五巻一二号二四一三頁)がある
が、この場合は右判決に於ても説示しているとおり、未決勾留日数の一日を罰金の
幾程に折算して罰金に算入するかを明示していない点などからして懲役刑にのみ算
入したものであることを判決自体より窺知できるけれども、懲役刑の本刑が二以上
ある場合には、右判例の趣旨に則つてみても、原判決の趣旨を諒解することはでき
ない。
 <要旨>然らば原判決は二箇の懲役刑を宣告し未決勾留日数中六十日を右本刑に算
入するとの言渡をしたのみで、いずれの本刑に算入するのか、又双方に算入
するものとすればこの六十日を幾日宛に分割算入するかを判示しない理由不備の違
法があつて、本論旨は理由がある。
 同論旨第二点について。
 憲法第三十八条第三項、刑事訴訟法第三百十九条第二項に於て自白以外に所謂補
強証拠を必要とした所以は、自白が虚偽架空のものでないことを保障せんとしたも
のであるから、この目的を達し得るものであれば以て足りるものであつて、自白事
実全部に照応するものを必要とするものではない。而して原判決が判示第一の
(1)事実認定の証拠として引用した証人Aの供述は、被告人の検事に対する自白
の真実性を保障するに十分てあるから、これを被告人の自白に対する補強証拠とな
し得べきものである。然らば原判決は被告人の自白を唯一の証拠としたものではな
いから、論旨は理由がない。
 同論旨第三点について。
 被告人の公判廷に於ける供述を証拠として採用するか、或は司法警察員又は検察
官に対する供述調書を採用するかは裁判官の専権に属するところであつて、原判決
が第一の(3)事実認定の証拠として引用したものの内に、措信できないものがあ
るとする資料はない。
 よつてこれ等の証拠によれは、原判示事実を認定することができるし、原判決は
被告人の自白以外に補強証拠をも引用しているのであつて、自白のみによりて事実
を認定したものではない。記録に徴してみても右認定に誤はないのであつて、本論
旨はすべて理由がない。
 以上弁護人の論旨第一点は理由あり、原判決は全部破棄を免れないから、論旨第
四点量刑不当の点に対する説明を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条第一項第三百
七十八条第四号により原判決を破棄し、同法第四百条但書により直ちに次のとおり
判決する。
 原判決が証拠により確定した被告人の各所為は刑法第二百三十五条(判示第一の
(3)の点につき更に第六十条)に該当するが、被告人には判示第一と判示第二と
の中間に於て原判示どおりの確定裁判を経た罪があるから刑法第四十五条後段第五
十条に基き各別に処断すべきところ、判示第一及び第二の各罪はそれぞれ刑法第四
十五条前段の併合罪の関係があるから、いずれも刑法第四十七条第十条により犯情
の重い判示第一の点については第一の(3)、判示第二の点については第二の
(1)の罪の刑にそれぞれ加重した刑期範囲内に於て、被告人を判示第一の罪につ
き懲役四月に、判示第二の罪につき懲役十月に処す。
 被告人に対する未決勾留は判示第二の(1)の罪につきなされたものであるか
ら、原審に於けるその日数中六十日を刑法第二十一条を適用して右懲役十月の刑に
算入する。(従て本件に於ける未決の法定算入日数も亦この刑に算入すべきもので
ある。)
 よつて主文のとおりの判決をしたのである。
 (裁判長判事 岡利裕 判事 国政真男 判事 石丸弘衛)

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