弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人君野駿平の上告理由第一点について。
 原判決理由二(5)(ハ)の認定、すなわち、本件バスの乗客Dが本件衝突によ
る衝撃を感じたのは同人が右顎を打ちつけた時のみであるとの認定は、原判決挙示
の証拠たる第一審における同人の証言に徴して肯認できる。
 所論は、右D証人の証言が乙四号証(同人の司法警察員に対する供述調書)の記
載とくいちがつていることを指摘する。
 しかし、右両証拠には必ずしも矛盾くいちがいがあるとはいえないし、事故発生
に近い時期になされた供述調書の記載を証拠として採用しないでその後になされた
証言によつて事実の認定をしたからといつて何らの違法もない。証拠の取捨判断、
事実の認定は、原審の専権に属することであつて、原判決には所論理由不備ないし
理由そごは存しないから、論旨は採用できない。
 同第二点について。
 所論は、乙四号証によれば、右Dが本件衝突のときに明らかに衝撃を最初前方か
ら、次いで後方から感じた事実を認定しなければならないというが、右所論は、原
審の前示認定と異ることを主張するにすぎず、採用できない。右認定に論理法則、
経験法則または採証法則の違背があるとの所論は、すべて原審の専権に属する証拠
の取捨判断、事実の認定を非難するに帰着し、採用の限りでない。
 同第三点について。
 所論は、前記Dが衝撃を一回しか感じなかつたとの原審認定の違法を前提とする
が、右認定が肯認できてその点に所論違法のないことは、前述のとおりであるから、
所論は採用するに由ない。
 原判決が挙示の証拠によつて認定した同判決理由二(5)の(イ)(ロ)(ハ)
記載の事実を併せ考えて、被上告会社の本件バスの乗客が原判示衝撃によつて前方
に倒れる可能性のある場合の原判示三車の衝突追突時の状態として考えられる事実
関係を判示した点(原判決理由三)に、理由不備はない。
 原判決理由四(1)の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に徴して肯認できる。
また、右四(1)の認定と前示理由三の説示との間に矛盾はない。
 所論は、ひつきよう、被上告会社の本件バスが原判示のように停車ないし漸次停
車せんとした時尾行してきた上告人のトラツクに追突され、瞬時に、西進してきた
訴外E木材のトラツク車体右前方に斜から衝突したとの原審認定に異見を述べるに
帰着し、原審の専権事項を論難するに帰するから、採用できない。
 同第四点の一、二について。
 所論は、原審の認定にそわない事実関係を前提として、原判決の理由不備ないし
理由そごをいうものであつて、採用できない。
 同第四点の三は、原判決が一方では衝撃が二回あると認め、一方では一回と認め
る矛盾を侵しているというが、このような認定の矛盾は原判文上存しないから、右
理由そごの所論は採用できない。
 同第四点の四は、原審が上告人の鑑定申請を理由なしに却下したことの違法をい
うが、証拠の取捨は原審の専権に属することであり、所論鑑定申請を採用しないこ
とについて原判決が理由を説示していないからといつて何らの違法もない。
 従つて、原判決に理由不備、理由そご、審理不尽の違法があるとの所論は、すべ
て採用できない。
 同第五点について。
 原判決には、虚無の証拠によつて所論事実を認定した違法はないし、所論証言が
偽証であると疑うべき証拠資料も記録上見当らない。
 所論は、原判決の採証法則違反、理由そごの違法をいうが、ひつきよう、原審の
専権たる証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰着し、原判決には所論違法は
認められないから、論旨はすべて採用できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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