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平成26年7月10日判決言渡
平成26年(行コ)第18号在留特別許可義務付け請求控訴事件
主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴人の当審追加請求に係る訴えを却下する。
3当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2主位的請求
法務大臣又は法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入国管理局長は,控訴
人に対し,本邦における在留を特別に許可する処分をせよ。
3予備的請求1(原審予備的請求1(2))
名古屋入国管理局特別審理官は,控訴人の平成23年10月5日付け口頭審
理請求を受理せよ。
4予備的請求2(原審予備的請求2及び当審追加請求)
法務大臣又は法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入国管理局長は,控訴
人に対する再審情願手続を開始せよ。
5予備的請求3(原審予備的請求1(1))
名古屋入国管理局主任審査官は,控訴人に対して平成21年4月14日付け
でした退去強制令書発付処分を撤回せよ。
第2事案の概要
1控訴人は,大韓民国(以下「韓国」という。)国籍を有する外国人であり,
出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)24条1号(不法入国)
所定の退去強制事由に該当すると認定された後,同認定に服して口頭審理の請
求をしないで,退去強制令書発付処分(以下「本件処分」という。)を受け,
その後,本件処分の取消しを求める訴えを提起したものの,請求棄却判決を受
け,既に同判決は確定しているところ,本件は,控訴人が,本件処分後に永住
者の在留資格で本邦に在留する韓国人女性と婚姻し同居生活を継続している
ことを理由に,主位的に,法務大臣又は名古屋入国管理局長(以下「名古屋入
管局長」という。)に対し,控訴人に対する在留特別許可の義務付けを求め,
予備的に,①名古屋入国管理局(以下「名古屋入管」という。)特別審理官に
対する控訴人の口頭審理請求の受理の義務付け又は②法務大臣又は名古屋入
管局長に対するいわゆる再審情願手続を開始することの義務付け又は③名古
屋入管主任審査官に対する本件処分の撤回の義務付けを求める事案である。
原審は,控訴人の主位的請求及び予備的請求①,同②(ただし,法務大臣に
対する請求を除く。)を却下し,予備的請求③を棄却した。なお,控訴人は当
審において,予備的請求のうち,上記②における法務大臣に対する義務付けに
係る訴えを追加し,また,各予備的請求の順位を前記第1のとおり変更した。
2前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決「事実及び理由」
欄の第2の2及び3記載のとおりであるから,これを引用する。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の請求のうち,主位的請求及び予備的請求1,同2(当
審追加請求を含む。)に係る訴えはいずれも不適法であり,予備的請求3は理
由がないものと判断する。
その理由は,控訴人の当審における主張に対する判断等を次項以下に付加す
るほか,原判決「事実及び理由」欄の第3記載のとおりであるから,これを引
用する。
2控訴人は,上記引用の原判決の説示につき,再審情願を違法と断ずるなら
説明責任を果たすべきであること,控訴人をひとり司法救済の枠組みのらち外
に置くのは憲法14条,31条に違反すること,再審情願の実務が違法である
ことを前提にして本案審理に入らないのは民訴法上の当事者主義に違反する
こと,本件に対する対応をいわゆる事情変更型の事案と対比すると合理性を欠
くこと,控訴人の婚姻の実態について十分な事実審理を行う必要があったのに
これを行わなかった審理不尽などを指摘し,いわゆる口頭審理放棄型の本件に
おいて,およそ理論上,口頭審理放棄後に在留特別許可を付与しないことが違
法となる余地を否定した原判決は,明らかに誤りであると主張する。
しかし,原判決が説示するとおり,法務大臣等が特別在留許可をし得るとい
う規定のない,いわゆる口頭審理放棄型の本件が,その規定のあるいわゆる事
情変更型の事案と異なる取扱いを受けても不合理であるとはいえず,また,そ
の余の控訴人の主張は,独自の見解に基づいて,控訴人の請求を認容するには
至らない論点等を種々展開するものであって,採用することはできない。
3なお,前記前提事実(原判示)のとおり,控訴人は,平成14年2月に退去
強制令書発付処分を受けて韓国に送還されたにもかかわらず,その上陸拒否期
間中に,偽造された船員手帳を使って本邦に不法入国し,約4年8か月にわた
って不法滞在を続けた末に不法在留の罪により有罪判決を受け,引き続き退去
強制令書を発付する旨の本件処分を受けた後に,婚姻し,更に本件処分の取消
訴訟を提起したものの,棄却判決が確定したものである。
このような事実関係の下では,法務大臣等に対し在留特別許可の義務付けを
求めることができるとする控訴人の法的見解に基づいて,控訴人が在留資格を
有する永住者の配偶者であり,現在,善良な一市民として平穏な生活を営んで
いることなどの控訴人主張の事情を前提に検討しても,法務大臣等が原告に対
して在留を特別に許可しないことが,その裁量権の範囲を超え又はその濫用と
なるということはできない。また,同様に,本件処分の撤回権限を有する名古
屋入管主任審査官がその権限を行使しないことが違法となるとは到底認めら
れないものである。
第4結論
よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからいずれも棄却し,
控訴人の当審追加請求に係る訴えは不適法であるから却下することとして,主
文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第2部
裁判長裁判官林道春
裁判官戸田久
裁判官森淳子

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