弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人は控訴人に対し金三十二万四千五百円
の支払をせよ、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決並に仮執
行の宣言を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上並に法律上の主張は、控訴代理人において、借地法第十条に
いう建物の「時価」とは、建物の敷地の借地権の価格は包含しないが、建物がその
存在する場所において利用されるものとしての価格であると述べたほか、原判決事
実摘示と同一であるからここにこれを引用する。
 証拠として控訴代理人は甲第一及び第二号証を提出し、当審証人Aの証言、当審
における検証並に鑑定人Aの鑑定の各結果を援用し、被控訴代理人は原審証人B及
び同Cの各証言、当審における検証の結果並に原審鑑定人D及び同Eの各鑑定の結
果を援用し、甲号各証の成立を認めた。
         理    由
 訴外Fが函館市a町b番地のc所在の被控訴人所有の宅地四十六坪六合二勺の土
地を賃借し、同地上に家屋番号同町d番木造亜鉛鍍金鋼板葺二階建住家一棟建坪十
六坪二階十三坪五合(以下本件建物と称する)を所有していたところ、控訴人が昭
和三十年十一月二十八日間訴外人より本件建物を右敷地の借地権と共に買受けて即
日本件建物につき所有権移転登記を了し、その所有権を取得したが、被控訴人が右
借地権の譲渡について承諾を与えないため、控訴人が同年十二月十七日内容証明郵
便をもつて本件建物を時価で買取るべきことを請求し、右内容証明郵便が同日被控
訴人に到達したことは当事者間に争いがない。
 <要旨第一>よつて本件建物の右買取請求当時における時価について判断するに、
借地法第十条にいう建物の「時価」とは、建物を取毀つた場合の動産の
価格ではなく、建物が現存するままの状態における価格であるが、建物の敷地の借
地権の価格はこれを包含しない建物自体のみの価格をいうのであつて、換言すれ
ば、建物の存在する環境によつて異なる場所的価値はこれを含まず、従つて建物が
へんぴな所にあると又繁華な所にあるとを問わず、その所在場所の如何によつて価
格を異にしないものと解するのが相当である。けだし、借地法第十条の規定は借地
権の譲渡又は借地の転貸について土地賃貸人の承諾が得られない場合に、譲受人又
は転借人において借地上の建物等を取毀つて撤去することは社会経済上多大の損失
であるから、その取毀撤去を回避して土地賃貸人に対しその現存するままの状態に
おける建物等の買取を請求することを得しめたものと解するのが相当であるから、
その買取の価格は取毀つた場合の動産の価格によるベきでないことは勿論である。
又借地上に建築した建物の所有者がその建物を他に売却する場合に、その借地権の
譲渡又は借地の転貸について土地賃貸人の承諾を得た場合にはその建物の価格に借
地権の価格を含めてその売買価格とすることが取引の通例であるけれども、土地賃
貸人の承諾の得られない場合には建物の買受人は右建物の所有権を取得するにすぎ
ないのであつて、借地権の取得を土地賃貸人に対抗し得ないのであるから、借地法
第十条の建物の買取請求はその建物のみの買取請求であつてその建物の価格に借地
権の価格を包含せしめないことは勿論である。そこで前示のような建物が現存する
状態における建物自体の価格は如何なる方法をもつて算定するのが最も適当である
かについ<要旨第二>て考えるに、建物の新築と同時に買取請求のなされた場合には
その建築費に相当する額によるべくその後において買取請求権が行使さ
れた場合には、大体においてその建物と同等の資材をもつて買取請求当時にその建
物と同様の建物を新築する価格から、その建物が使用に耐えない状態に至る総耐用
年数に対し相対的に考えられる実際の経過年数に応じた減損価格を控除した純建物
価格によることが最も妥当であると考えられる。この見地に立つて本件建物の昭和
三十年十二月十七日の買取請求当時の時価について考えると、甲第一号証記載の評
価額金三十二万四千五百円は本件建物の敷地の借地権の価格を包含するきのである
ことが右甲第一号証の記載自体によつて明かであるし、また当審鑑定人Aの鑑定の
結果による金額二十四万五千三百円も同人の証人としての証言と併せ考えれば、本
件建物の存在する場所的環境を若干考慮にいれたものであることが認められるから
いずれもこれを採用することができない。又原審鑑定人Dの鑑定の結果は、何ら場
所的価値を考慮することなく建物自体の価格を算定したものであり且つ算定の方法
も概ね前叙の方法によつたものであるけれども、当審証人Aの証言によると本件建
物は昭和九年秋頃建築されたものであることが認められるにかかわらず、右D鑑定
人の鑑定は昭和三十年十二月十七日当時において本件建物が建築後十五年を経過し
たにすぎないものとして価格を算定したことが明かであつて、これを前記甲第一号
証の評価と対照してもその評価額金三十二万五千円は高きに失し、これを採用する
ことができない。そうして諸般の事情を考慮すると原審鑑定人Eは、借地権の価格
を包含しない現存するままの状態における建物自体の価格につき、本件建物が建築
後昭和三十年十二月十七日当時までに約二十年を経過したものとして、前叙のよう
な算定方法をもつて算定したものと認められるからこの点において採用に適するも
のと考えられるし、右鑑定の結果によると本件建物の控訴人が買取請求権を行使し
た昭和三十年十二月十七日当時の建物自体の時価は金二十万円であると認めるのが
相当であると考えられる。
 してみれば、被控訴人は控訴人に対し本件建物の買取代金として金二十万円の支
払義務があるけれども、その余の金員の支払義務のないことはもとより当然であ
る。仍つて右の限度において控訴人の本訴請求を認容し控訴人のその余の請求を棄
却した原判決は相当であつて、本件控訴は民事訴訟法第三百八十四条に則りこれを
棄却すべく、控訴費用の負担について同法第九十五条第八十九条を適用して、主文
のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 羽生田利朝 裁判官 磯江秋仲 裁判官 今村三郎)

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