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平成18年3月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成16年ワ第23600号特許権侵害差止等請求事件()
平成17年ワ第24177号損害賠償請求事件()
口頭弁論終結日平成18年1月20日
判決
原告株式会社東芝
同訴訟代理人弁護士高橋雄一郎
被告株式会社ハイニックス・セミ
コンダクター・ジャパン
同訴訟代理人弁護士片山英二
同長沢幸男
同北原潤一
同服部誠
同岡本尚美
同訴訟代理人弁理士萩原誠
同日野真美
同補佐人弁理士藤田尚
主文
,,,1被告は別紙被告製品目録記載の半導体記憶装置を譲渡し貸し渡し
輸入し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2被告は,別紙被告製品目録記載の半導体記憶装置を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,金784万2103円及び内金133万86
68円に対する平成17年11月8日から,残金650万3435円
に対する平成17年11月26日から支払済みまで,それぞれ年5分
の割合による金員を支払え。
4原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5訴訟費用は,これを20分し,その1を被告の負担とし,その余を
原告の負担とする。
,,。6この判決は第1項及び第3項に限り仮に執行することができる
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙被告製品目録記載の半導体記憶装置を譲渡し,貸し渡し,又は輸
入し,若しくは譲渡,貸渡し又は輸入の申出をしてはならない。
2被告は,その占有に係る別紙被告製品目録記載の半導体記憶装置及びその半
製品を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,金4200万円及びこれに対する平成17年11月8日
(平成16年ワ第23600号事件訴え変更申立書送達の日の翌日)から支払()
済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4被告は,原告に対し,金2億4832万5000円及びこれに対する平成17
年11月26日(平成17年ワ第24177号事件訴状送達の日の翌日)から()
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない)。
当事者(1)
原告は,電気機械器具の製造販売等を業とする会社であり,被告は,半導
体素子の輸出入及び販売等を業とする会社である。
本件特許権(2)
原告は,次の特許権を有している(以下「本件特許権」という。その特許
請求の範囲請求項1の発明を「本件特許発明1,同請求項2の発明を「本」
件特許発明2同請求項3の発明を本件特許発明3といい併せて本」,「」,「
件特許発明」ということがある。なお,本件特許に係る明細書を「本件明細
書」という。本判決末尾に添付した特許公報参照。。)
発明の名称半導体記憶装置
特許番号第3187121号
出願日平成4年3月27日
登録日平成13年5月11日
特許請求の範囲
(請求項1)
「マトリクス状に配列された複数のメモリセルと各列に対してデータを一
時的に格納するデータレジスタとを有し,前記メモリセルの内の選択した
行に並ぶページデータを前記データレジスタに格納し,前記データレジス
タ内のデータを順次外部に出力するページ読みだしモードを備える半導体
記憶装置において,選択された行が切り換ると第1の所定の列から順次前
記データレジスタの内容が外部に出力される第1のモードと,選択された
行が切り換ると第2の所定の列から順次前記データレジスタの内容が外部
に出力される第2のモードとを具備することを特徴とする半導体記憶装
置」。
(請求項2)
「マトリクス状に配列された複数のメモリセルと各列に対してデータを一
時的に格納するデータレジスタとを有し,前記メモリセルの内の選択した
行に並ぶページデータを前記データレジスタに格納し,前記データレジス
タ内のデータを順次外部に出力するページ読みだしモードを備える半導体
記憶装置において,第1のモードでは選択された行が切り換ると第1の所
定の列から順次前記データレジスタの内容を外部に出力し,第2のモード
では選択された行が切り換ると第2の所定の列から順次前記データレジス
タの内容を外部に出力する制御手段を具備することを特徴とする半導体記
憶装置」。
(請求項3)
「マトリクス状に配列された複数のメモリセルと各列に対してデータを一
時的に格納するデータレジスタとを有し,前記メモリセルの内の選択した
行に並ぶページデータを前記データレジスタに格納し,前記データレジス
タ内のデータを順次外部に出力するページ読み出しモードを備える半導体
記憶装置において,前記半導体記憶装置を第1のモードに切り換えて,所
定の列から順次データレジスタの内容を読み出し,前記半導体記憶装置を
第2のモードに切り換えて,前記所定の列のアドレス以降に記憶された冗
長メモリセルのデータを順次連続して読み出す制御装置とを具備すること
を特徴とする半導体記憶装置」。
構成要件の分説(3)
ア本件特許発明1を構成要件に分説すると次のとおりである。
Aマトリクス状に配列された複数のメモリセルと
B各列に対してデータを一時的に格納するデータレジスタとを有し,
C前記メモリセルの内の選択した行に並ぶページデータを前記データレジ
スタに格納し,前記データレジスタ内のデータを順次外部に出力するペー
ジ読みだしモード
Dを備える半導体記憶装置において,
E選択された行が切り換ると第1の所定の列から順次前記データレジスタ
の内容が外部に出力される第1のモードと,
F選択された行が切り換ると第2の所定の列から順次前記データレジスタ
の内容が外部に出力される第2のモードと
Gを具備することを特徴とする半導体記憶装置
イ本件特許発明2を構成要件に分説すると次のとおりである。
Hマトリクス状に配列された複数のメモリセルと
I各列に対してデータを一時的に格納するデータレジスタとを有し,
J前記メモリセルの内の選択した行に並ぶページデータを前記データレジ
スタに格納し,前記データレジスタ内のデータを順次外部に出力するペー
ジ読み出しモード
Kを備える半導体記憶装置において,
L第1のモードでは選択された行が切り換ると第1の所定の列から順次前
記データレジスタの内容を外部に出力し,第2のモードでは選択された行
が切り換ると第2の所定の列から順次前記データレジスタの内容を外部に
出力する制御手段
Mを具備することを特徴とする半導体記憶装置
ウ本件特許発明3を構成要件に分説すると次のとおりである。
Nマトリクス状に配列された複数のメモリセルと
O各列に対してデータを一時的に格納するデータレジスタとを有し,
P前記メモリセルの内の選択した行に並ぶページデータを前記データレジ
スタに格納し,前記データレジスタ内のデータを順次外部に出力するペー
ジ読み出しモード
Qを備える半導体記憶装置において,
R前記半導体記憶装置を第1のモードに切り換えて,所定の列から順次デ
ータレジスタの内容を読み出し,前記半導体記憶装置を第2のモードに切
り換えて,前記所定の列のアドレス以降に記憶された冗長メモリセルのデ
ータを順次連続して読み出す制御装置と
Sを具備することを特徴とする半導体記憶装置
被告の行為(4)
被告は,平成16年7月ころから別紙被告製品目録記載の半導体記憶装置
(以下「被告製品」という)を韓国等から輸入し,我が国内で譲渡,貸渡。
し又はその申出をしている。
被告製品の構成(5)
被告製品の構成は,別紙被告製品説明書記載のとおりである。
2本件は,本件特許権を有する原告が,被告に対し,被告製品は,本件特許発
明1ないし3の技術的範囲に属し本件特許権を侵害すると主張して,特許法1
00条に基づき,被告製品の譲渡等の差止め及び廃棄を請求するとともに,民
法709条に基づき,損害賠償を請求する事案である。
3本件の争点
構成要件充足性(1)
本件特許発明は特許無効審判により無効にされるべきものか否か(2)
ア特許法36条5項2号違反
イ新規性欠如その1(乙第6号証と同一か)
ウ新規性欠如その2(乙第7号証と同一か)
損害の発生及びその額(3)
第3争点に関する当事者の主張
1争点(構成要件充足性)について(1)
〔原告の主張〕
本件特許発明1の充足性(1)
ア被告製品は,別紙被告製品説明書によれば,次のような構成である。
a行列状に配列された複数のメモリセルと
b各列に対してデータを一時的に格納するページバッファとを有し,
cこのメモリセルのうちの選択した行に並ぶページデータをこのページバ
ッファに格納し,このページバッファ内のデータを順次外部に出力するシ
ーケンシャルリードモード
dを備える半導体記憶装置において,
e選択された行の最終列まで読み出されると,次の行に切り換わり,列ア
ドレスが0の位置から順次このページバッファの内容が外部に出力される
リードAモードと,
f選択された行が切り換ると列アドレスが512の位置から順次このペー
ジバッファの内容が外部に出力されるリードCモードと
gを具備することを特徴とする半導体記憶装置
イ対比
ア構成要件Aについて()
被告製品の構成aにいう行列状とは「マトリクス状」であるから,被告
製品は構成要件Aを充足する。
イ構成要件Bについて()
被告製品の構成bにいうページバッファは「データレジスタ」に該当す
るから,被告製品は構成要件Bを充足する。
ウ構成要件Cについて()
被告製品の構成cにいうシーケンシャルリードモードは「ページ読みだ
しモード」に該当するから,被告製品は構成要件Cを充足する。
エ構成要件Dについて()
被告製品は構成要件Dを充足する。
オ構成要件Eについて()
上記アのとおり,メモリセルは行列状に配置されていることから列ア()
ドレスが0の位置は「第1の所定の列」に該当し,リードAモードは「第
1のモード」に該当する。
したがって,被告製品は構成要件Eを充足する。
カ構成要件Fについて()
上記アのとおり,メモリセルは行列状に配置されていることから列ア()
ドレスが512の位置は「第2の所定の列」に該当し,リードCモードは
「第2のモード」に該当する。
したがって,被告製品は構成要件Fを充足する。
キ構成要件Gについて()
被告製品が構成要件Gを充足することは明らかである。
本件特許発明2の充足性(2)
ア被告製品は,別紙被告製品説明書によれば,次のような構成である。
h行列状に配列された複数のメモリセルと
i各列に対してデータを一時的に格納するページバッファとを有し,
jこのメモリセルのうちの選択した行に並ぶページデータをこのページバ
ッファに格納し,このページバッファ内のデータを順次外部に出力するシ
ーケンシャルリードモード
kを備える半導体記憶装置において,
lリードAモードでは選択された行が切り換わると列アドレスが0の位置
から順次このページバッファの内容を外部に出力し,リードCモードでは
選択された行が切り換わると列アドレスが512の位置から順次このペー
ジバッファの内容を外部に出力するアドレスレジスタ・カウンタ,行デコ
ーダ及び列デコーダ
mを具備することを特徴とする半導体記憶装置
イ対比
ア構成要件HないしK及びMについて()
被告製品の構成hないしk及びmが,それぞれ構成要件HないしK及び
Mを充足することは明らかである。
イ構成要件Lについて()
「制御手段」はおよそ制御を行う回路ならすべてを含むように理解され
るので,念のため実施例を参酌して解釈すると,本件明細書の図面の中で
【】「」,「」,「」,も図2の制御回路カラムアドレスバッファカラムデコーダ
「ロウアドレスバッファ「ロウデコーダ」等が「制御手段」の一例を表」,
していることは明白である。
したがって「制御手段」とは行アドレスや列アドレスを保持し,これを,
カウントアップする機能と,これらアドレスによってメモリセル及びこれ
に接続されたページバッファを選択する機能とを有する回路であるという
ことになる。
以上より,被告製品の構成lのアドレスレジスタ・カウンタ,行デコー
ダ及び列デコーダが「制御手段」に該当する。
前記イアのとおり,メモリセルは行列状に配置されていることから(1)()
列アドレスが0の位置は「第1の所定の列」に,列アドレスが512の位
置は「第2の所定の列」にそれぞれ該当する。
したがって,被告製品は構成要件Lを充足する。
本件特許発明3の充足性(3)
ア被告製品は,別紙被告製品説明書によれば,次のような構成である。
n行列状に配列された複数のメモリセルと
o各列に対してデータを一時的に格納するページバッファとを有し,
pこのメモリセルのうちの選択した行に並ぶページデータをこのページバ
ッファに格納し,このページバッファ内のデータを順次外部に出力するシ
ーケンシャルリードモード
qを備える半導体記憶装置において,
rこの半導体記憶装置をリードAモードに切り換えて,列アドレスが0の
位置から順次ページバッファの内容を読み出し,半導体記憶装置をリード
Cモードに切り換えて,列アドレスが512の位置以降に記憶された冗長
,メモリセルのデータを順次連続して読み出すアドレスレジスタ・カウンタ
行デコーダ及び列デコーダと
sを具備することを特徴とする半導体記憶装置
イ対比
ア構成要件NないしQ及びSについて()
被告製品の構成nないしq及びsが,それぞれ構成要件NないしQ及び
Sを充足することは明らかである。
イ構成要件Rについて()
被告製品における,列アドレスが512の位置以降に記憶された冗長メ
モリセルは「前記所定の列のアドレス以降に記憶された冗長メモリセル」,
に該当する。したがって,被告製品の構成rが構成要件Rを充足すること
は明らかである。
被告の主張に対する反論(4)
被告は,本件特許発明の発明の内容を把握することができないとして構成要
件充足性を争っているが,これは実質上特許法36条違反の問題に解消される
ところ,被告の同条違反の主張が理由のないことは,後記2〔原告の主張〕の
とおりである。個々の構成要件要素と被告製品の特徴とが一対一で対応する以
上,充足性に欠けることはない。
〔被告の主張〕
後記2〔被告の主張〕のとおり,本件特許発明にはその発明に必要不可欠
な構成が記載されておらず,まとまりのある1つの技術思想としての発明を把
,。握することができないから特許発明の技術的範囲を確定することができない
したがって,被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するとはいえない。
2争点ア(特許法36条5項2号違反)について(2)
〔被告の主張〕
本件特許発明の特許請求の範囲には,その発明の解決課題・目的及び作用効(1)
果を達成するのに不可欠な構成が記載されておらず,まとまりのある1つの技
術的思想として発明を把握することができないから,平成6年法律第116号
による改正前の特許法36条5項2号(特許を受けようとする発明の構成に欠
くことのできない事項のみが記載されていること)に違反し,無効にされるべ
きものである。
すなわち,本件明細書の【0012】によれば,従来のメモリチップにおい
ては,メモリチップをハードディスクの代用として用いる場合に,各ページの
連続情報(すなわち,あるページの次にどのページを読むかについての情報。
以下「ページ連続情報」という)のみを連続して読み出す必要性があったとこ。
ろ,このような連続読み出しをする場合には,各ページの読み出し開始時に,
このページ内におけるページ連続情報が記載されているセルのスタートアドレ
スを毎回入力する必要があり,そのため,メモリチップ制御システムの負担が
重くなるという問題があったものである。
また,本件明細書【0013】によれば,従来の半導体メモリは,①任意の
アドレスからのページ単位連続読み出しが可能であったところ,②このような
連続読み出しをする場合には,③各ページの読み出し開始時に,このページ内
における上記任意の(所定の)スタートアドレスを毎回入力する必要があり,
そのため,④システムの効率が低下する問題があったものである。
,【】,,なお上記0012においては連続読み出しをする対象となる情報は
,【】,ページ連続情報であることが明記されているのに対し上記0013では
連続読み出しの対象となる情報は「任意のアドレス」以降に記載された情報で,
あり,ページ連続情報に限定されてはいない。しかし,この点を除けば,上記
の両段落が述べていることは共通である。すなわち,従来の半導体記憶装置に
おいては,各ページ内の任意のアドレス(スタートアドレス)以降に記載され
た情報のみを,各ページにわたって連続して読み出すことが可能であったとこ
ろ,係る連続読み出しを行う場合には,各ページの読み出し開始時に,このペ
ージ内における上記任意の(所定の)アドレスを毎回入力する必要があり,そ
のため,システムの負担が重くなり,効率が低下するという問題点があったの
であり,この問題点(連続読み出しの場合における,所定アドレス毎回入力の
必要性)が本件特許発明の解決課題である。
本件特許発明の効果は,連続読み出しの場合における,所定アドレス毎回入
力の必要性を除去したことである旨記載されている。しかしながら,本件特許
発明の特許請求の範囲の記載は,上記の本件特許発明の解決課題及び効果と全
く整合していない。つまり,本件特許発明の特許請求の範囲には,本件特許発
明の上記解決課題が一切記載されていないし,同発明の上記効果を達成する技
術的手段(解決手段)も一切記載されていない。
このように,本件特許発明の特許請求の範囲には,本件特許発明が特許発明
であるための必要不可欠な構成,すなわち,連続読み出しの場合における,所
,定アドレス毎回入力の必要性を除去するための技術的手段が記載されておらず
結局,この特許請求の範囲からは,本件特許発明は従来技術のどのような問題
点をどのような手段で解決しようとしているのかを全く理解することができな
い。上記特許請求の範囲からは,まとまりのある1つの技術的思想として発明
を把握することができないから,本件特許発明は,特許法36条5項2号に違
反して特許されたものであり,無効とされるべきことは明白である。
原告の主張に対する反論(2)
ア原告は本件特許発明の特許請求の範囲のモード第1のモード第,「」,「」,「
2のモード」という用語自体に,連続読み出しの場合における,所定アドレ
ス毎回入力の必要性の除去及びこれを実現するための技術的手段が含意され
ていると主張するのかもしれない。
しかしながら,特許請求の範囲における「モード」の説明は,例えば,本
件特許発明1では「前記メモリセルの内の選択した行に並ぶページデータを,
前記データレジスタに格納し,前記データレジスタ内のデータを順次外部に
出力するページ読み出しモード「選択された行が切り換ると第1の所定の」,
列から順次前記データレジスタの内容が外部に出力される第1のモード選」,「
択された行が切り換ると第2の所定の列から順次前記データレジスタの内容
」,「」が外部に出力される第2のモードなどと記載されているにすぎずモード
の機能についての上記記載から読み取れることは「各モードにおいて,任意,
のアドレス以降の情報をデータレジスタを介して連続して読み出すことがで
きる」というだけのことであって,これは要するに「連続読み出し」を表現,
したものにほかならない。しかし「連続読み出し」は本件特許発明の前提事,
項であり,むしろ,本件特許発明が発明であるか否かを決定づける事項は,
このような「連続読み出し」の場合において,果たして,各ページの読み出
し開始時にスタートアドレスを入力する必要があるのか否かということであ
り,さらに,どのような技術的手段を採用することにより,各ページごとに
スタートアドレスを入力しないにもかかわらず,連続読み出しができるのか
ということである。しかし,これらの点を上記特許請求の範囲の記載から読
み取ることは不可能である。
原告は「モード「第1のモード,あるいは「第2のモード」という用,」,」
語自体から,上記の各事項が読み取れると主張したいのかもしれないが,そ
れは無謀である。そもそも「モード」という用語は,原告も認めるとおり,,
「ある動作状態ないし方式」を示すものであって「その動作状態ないし方式,
が具体的にいかなるものであるのか」を含意するものではないからである。
もし,ある「モード」が具体的にいかなるものであるのかをクレームに表現
したいのであれば,それは「モード」とは別の構成要件として,クレームに
明確に記載しなければならないのであり,これを本件特許発明についていえ
ば「所定アドレス毎回入力の必要性」を除去する技術的手段とはいかなるも,
のであるのかが,特許請求の範囲に明確に記載されなければならないのであ
る。
イ原告は「モード」の修飾語としてクレームに記載されている「選択された,
行が切り換ると第1(第2)の所定の列から順次前記データレジスタの内容
」,「」,が外部に出力されるとの表現特に所定の列という文言を拠り所とし
「所定の」とは「予め定まっている」という意味であり「予め列が定まって,
いる」ということは「列のアドレスを入力する必要がない」ことを必然的に
意味すると主張しているのかもしれない。
しかし「所定の列」の意味については,本件明細書のどこにも定義がない,
ところ「所定」という語の日本語の通常の意味及び「第1(第2)の所定の,
列から順次前記データレジスタの内容が外部に出力される第1(第2)のモ
ード」という記載からすると「ある特定のモードに対応するある特定の列」,
といった漠然とした意味であると解するほかない。そして「ある特定の」と,
いうのを「予め定まっている」と言い換えてみたとしても,そのことによっ
て「各行(ページ)の読み出しを行う場合に,読み出し開始列アドレスを毎,
回入力する必要がない」という結論が必然的に導かれるものではない。以上
のとおり「所定の」という文言と「読み出し開始アドレスの毎回入力の必要,
性の有無」との間には,何ら必然的な結びつきはなく「所定の」を「予め定,
まっている」と言い換えてみても同じことである。したがって,クレームの
「所定の」という文言に依拠して,本件特許発明には従来技術の問題点につ
いての解決手段が備わっているという原告の主張が成り立つ余地はない。
,,「」「」ウ仮に原告の主張が本件特許発明に第1のモードと第2のモード
という「読み出し開始位置の異なる」2つのモードを設けることが記載され
ていることから「連続読み出しの場合における,所定アドレス毎回入力の必,
要性」を除去するための技術的手段が特許請求の範囲に記載されているのと
同視できるという趣旨であったとしても「第1のモード「第2のモード」,」,
という2つのモードで,読み出し開始位置がそれぞれ異なっていたり,第2
のモードに入ることで第2の所定カラムアドレスから読み出しが開始される
からといって,このことが当然に,ページが切り換わるたびに何度もカラム
アドレスを入れ直す必要がなくなることを意味するものでない。すなわち,
本件特許発明の解決課題は「連続読み出しの場合における,所定アドレス毎,
回入力の必要性」であり,それは,たとえば,0列というカラムアドレスか
ら読み出しを開始する連続読み出しを「第1のモード,512列というカラ」
ムアドレスから読み出しを開始する連続読み出しを「第2のモード」と呼ぶ
として,少なくともこの「第2のモード」の連続読み出しにおいて,各ペー
ジごとに512列というスタートアドレスを入力する必要があったというこ
とが,本件特許発明が解決すべき従来技術の課題である。しかしながら,も
し原告の主張のように,連続読み出しをする場合において,読み出し開始位
置の異なる2つのモード(動作状態ないし方式)を設けることや,連続読み
出しをする場合においてあるモード第2のモードでは所定アドレス5,()(
12列)から読み出しが開始されることにより,必然的に,各ページごとに
当該アドレスを入力する必要がなくなるなどといえるのであれば,本件特許
発明の上記解決課題は存在しなかったことになり,同発明の前提が崩れ去っ
てしまうことになるはずである。したがって,本来,本件特許発明の特許請
求の範囲には所定のカラムアドレスからの連続読み出しを規定する第,「」「
」,「」,「」1のモード第2のモードの要件とは別にこのような連続読み出し
の場合において「所定アドレス毎回入力の必要性」を除去する技術的手段と,
はいかなるものであるのかが,明確に記載されなければならない。しかし,
実際には,かかる技術的手段は一切記載されていない。
〔原告の主張〕
本件特許発明は「モード」という概念を導入し「第1のモード」と「第2の(1),
モード」とで,読み出し開始位置が(一方で,0カラム,他方で512カラム
というように)異なっている点に特徴がある。つまり「第1の所定の列から順,
次前記データレジスタの内容を外部に出力」する「第1のモード」と「第2の
所定の列から順次前記データレジスタの内容を外部に出力」する「第2のモー
ド」を設けている点に特徴がある。そのように構成すれば,読み出し開始位置
が「第1の所定の列「第2の所定の列」という具合に,あらかじめ定まるの,」,
であるから,ページが変わるごとにアドレスを何度も入力し直す手間が省ける
のであって,この点に発明の新規性があることは明らかである。
前記〔被告の主張〕アについて(2)(2)
被告は,原告の主張が,特許請求の範囲の「モード「第1のモード,ある」,」
いは「第2のモード」という用語自体に,連続読み出しの場合における,所定
アドレス毎回入力の必要性の除去及びこれを実現するための技術的手段が含意
されているという趣旨かもしれないなどと批判する。
しかしながら,原告は「モード」という文言にすべてを読み込むなどという
主張をしているのではなく「第1の所定の列から順次前記データレジスタの内,
容を外部に出力」する「第1のモード」と「第2の所定の列から順次前記デー
タレジスタの内容を外部に出力」する「第2のモード」という特許請求の範囲
,,「」,「」の各文言を基礎に読み出し開始位置が第1の所定の列第2の所定の列
という具合に,あらかじめ定まるのであるから,ページが変わるごとにアドレ
スを何度も入力し直す手間が省けると述べているのである。
前記〔被告の主張〕ウについて(3)(2)
被告は,0列というカラムアドレスから読み出しを開始する連続読み出しを
第1のモード,512列というカラムアドレスから読み出しを開始するという
連続読み出しを第2のモードと呼ぶとして,少なくともこの第2のモードの連
続読み出しにおいて,各ページごとに512列というスタートアドレスを入力
する必要があったということが本件特許発明が解決すべき従来技術の課題であ
るなどと主張する。
しかしながら,被告の上記主張は,チップの外部から0列や512列といっ
たカラムアドレスを入力しながら読み出しを行う半導体記憶装置の利用方法こ(
れは半導体記憶装置の機能ではなく,半導体記憶装置のユーザーが半導体記憶
装置を利用する際の,利用方法であるにすぎない)を「第1のモード「第2。」,
のモード」などと呼ぶと主張している点に誤りがある。原被告間で争いのない
「モード」の定義は「ある動作状態ないし方式」であるが,半導体記憶装置の
ユーザーが利用するときの利用方法は半導体記憶装置の「ある動作状態ないし
方式」とはいえない。
3争点イ(新規性欠如その1)について(2)
〔被告の主張〕
引用例1の内容(1)
IEEEJOURNALOF本件特許発明の特許出願前に頒布された刊行物である「
(乙6。以下,SOLID-STATECIRCUITS,VOL.sc-19,NO.6,DECEMBER1984」
乙第6号証に記載された発明を「引用例1」という)には,次の構成の半導体。
記憶装置が記載されている(以下,記号に従って「構成a」などという。’。)
a’64K×1ダイナミックRAMアレイと,
b’各列に対してデータを一時的に格納する高速256ビット・シフトレジ
スタとを有し,
c’ダイナミックRAMアレイ内の行の情報を単一メモリ・サイクルで前記
高速256ビット・シフトレジスタに転送して格納し,前記高速256ビ
ット・シフトレジスタ内のデータをシリアル・アウトプット(SOUT)
ピンを介して順次外部に出力する半導体記憶装置において,
d’セグメント又は“タップ”の選択に従って,所定の列(ビット00,ビ
ット64,ビット128,又はビット192)から順次前記高速256ビ
ット・シフトレジスタの内容を外部に出力する
e’ことを特徴とする半導体記憶装置
本件特許発明1との対比(2)
ア構成要件Aについて
’「」,引用例1の構成aにおける64K×1ダイナミックRAMアレイは
構成要件Aにおける「マトリクス状に配列された複数のメモリセル」に該当
する。したがって,同構成a’は構成要件Aを充足する。
イ構成要件Bについて
引用例1の構成b’における「高速256ビット・シフトレジスタ」は,
ダイナミックRAMアレイの一行分の256ビットのデータを各列に対応し
て一時的に格納しているから,構成要件Bにおける「データレジスタ」に該
当する。したがって,同構成b’は構成要件Bを充足する。
ウ構成要件C及びDについて
引用例1には,DRAM中の行の情報は単一メモリ・サイクルでレジスタ
に転送されること及び256ビットの情報をDRAMの選択された行からシ
フトレジスタへ転送させることが記載されているから(訳文2頁の1行ない
し6行,21行ないし24行。英文左欄下から8行ないし2行,右欄P.999
下から15行ないし11行,引用例1の構成c’における「ダイナミックR)
AMアレイ内の行の情報を単一メモリ・サイクルで前記高速256ビット・
シフトレジスタに転送して格納し」は,構成要件Cにおける「前記メモリセ
ル内の選択した行に並ぶページデータを前記データレジスタに格納し」に該,
当する。さらに,乙第6号証には,シリアル・アウトプット(SOUT)の
ピンはデータをシフトレジスタの外にシフトさせると記載されており(訳文
3頁の5ないし7行,256ビットのデータは行単位(ページ単位)で順次)
出力されていることは明らかである。
したがって,引用例1の構成c’における「前記高速256ビット・シフ
トレジスタ内のデータをシリアル・アウトプット(SOUT)ピンを介して
順次外部に出力する半導体記憶装置において」は,構成要件Cにおける「前,
記データレジスタ内のデータを順次外部に出力するページ読みだしモードを
備える半導体記憶装置において」に該当する。以上から,同構成c’は構成,
要件C及びDを充足する。
エ構成要件E及びFについて
乙第6号証(訳文9頁の6行ないし15行。英文左欄下から4行なP.1003
いし右欄9行)によれば,256ビットのシフトレジスタは4つのカスケー
ド接続された64ビットのセグメントに分割されており,2ビットのバイナ
リコード(00,01,10,11)によって各セグメント又は“タップ”
の選択が行なわれる。そして,バイナリコードが00のときの読み出しを第
1のモードとし,バイナリコードが11のときの読み出しを第2のモードと
すると,第1のモードのときには,第1の所定の列(ビット00)からビッ
ト255までのすべてのシフトレジスタの内容がビット00から順次外部に
出力され,第2のモードのときには,第2の所定の列(ビット192)から
ビット255までの64ビットのシフトレジスタの内容がビット192から
順次外部に出力される。そして,これらの読み出しはDRAMアレイ内のす
べての行について行なわれる。
したがって,引用例1の構成d’における「セグメント又は“タップ”の
選択に従って」は,バイナリコードが00のときには,構成要件Eにおける
「第1のモード」を設定し,バイナリコードが11のときには構成要件Fに
おける「第2のモード」を設定することに該当する。そして,シフトレジス
タのビット00の位置が構成要件Eにおける「第1の所定の列」に,ビット
192の位置が構成要件Fにおける「第2の所定の列」に,それぞれ該当す
る。
また,DRAMアレイ内の各行ごとのデータを行単位(ページ単位)でシ
フトレジスタへ順次転送して格納することは,構成要件E,Fにおける「選
択された行が切り換る」に該当する。
したがって,同構成d’は,構成要件E及びFを充足する。
オ構成要件Gについて
引用例1の構成e’が構成要件Gを充足することはいうまでもない。
カ以上のとおり,引用例1は,構成要件AないしEをいずれも充足する構成
を有し,本件特許発明1と同一であるから,同発明は新規性を欠く。
本件特許発明2との対比(3)
ア構成要件H,I,J,K及びMについて
引用例1の構成a,同b,同c’及び同e’が本件特許発明2の構成’’
要件H,I,J,K及びMをそれぞれ充足することは,上記と同様で(2)
ある。
イ構成要件Lについて
構成要件Lには「制御手段」という用語があるが,特許請求の範囲には,
その具体的な内容について何らの限定もなく単に同要件に定められた第,,「
1のモード「第2のモード」という動作を実現するための手段という意味」,
しかないから,これらの要件に定める動作と同じ動作をすることを示す引用
例1の構成d’には,かかる動作を実現するための制御手段が実質的に開示
されているものと認められる。
ウ以上のとおり,引用例1は,構成要件HないしMをいずれも充足する構成
を有し,本件特許発明2と同一であるから,本件特許発明2は,新規性を欠
く。
本件特許発明3との対比(4)
ア構成要件N,O,P,Q及びSについて
引用例1の構成a,同b,同c’及び同e’が,本件特許発明3の構’’
成要件N,O,P,Q及びSをそれぞれ充足することは,上記におけ(2)
るのと同様である。
イ構成要件Rについて
構成要件Rでは「第2のモード」において読み出しを開始する列は「第,,
1のモード」において読み出しを開始する列である「所定の列」のアドレス
以降の列であるとの限定が付されている。
構成要件FとLにおいては「第2のモード」において読み出されるデータ,
の内容については何ら限定が付されていないのに対し構成要件Rでは冗,,,「
長メモリセルのデータ」との限定が付されている。ただし,構成要件Rにい
う「冗長メモリセル」の意味するところについては,特許請求の範囲の記載
からは明らかでなく,また,本件明細書の発明の詳細な説明においても「冗,
長メモリセル「冗長メモリセルのデータ」の意味内容を定義した記載はな」,
いところ,本件明細書には「冗長メモリセル「冗長メモリセルのデータ」,」,
に関して【0010【0011【0018【0021【0038【0,】】】】】
039【0040】に記載されており,以上の記載によれば,構成要件Rに】
いう「冗長メモリセル」は,ページの連続情報や,ページの書換え回数を格
納するために使用されるメモリ領域に限定されたものではなく,データ構造
がA+Bで構成されている場合に,Bの構造のデータが格納されたメモnnn
リ領域をも含むものとされているのであるから「冗長メモリセルのデータ」,
にも特段の限定がないことが明らかである。したがって,構成要件Rにいう
「第2のモード」における「冗長メモリセルのデータ」は,結局のところ,
何ら限定が付されていないということになる。
そうすると,構成要件Rは,実質的にみて,構成要件E,F及びLと何ら
異なるものではなく,あえて相違点を挙げれば,構成要件Rの「第2のモー
」,,,,ドでは構成要件EF及びLとは異なり読み出し開始列のアドレスが
「第1のモード」の読み出し開始列のアドレスよりも後ろにあるということ
にすぎない。
以上の検討を踏まえ,引用例1の構成d’と本件特許発明3の構成要件R
とを対比すると,構成d’では,バイナリコードが11の「第2のモード」
では,ビット192からビット256までの領域に格納されているデータが
Bの構造のデータとして順次連続して読み出される。そうすると,ビットn
192からビット256までのメモリ領域は,構成要件Rにいう「冗長メモ
リセル」に該当し,この領域に記憶されたデータは「冗長メモリセルのデー
タ」に該当する。
また,構成d’における第2のモードで読み出されるデータは,所定の列
のアドレス(ビット00)以降に記憶されたデータであり,このデータは順
次連続して読み出されているから,構成d’においても,引用例1の半導体
記憶装置を第1のモードに切り換えて,所定の列から順次データレジスタの
内容を読み出し,半導体記憶装置を第2のモードに切り換えて,前記所定の
列のアドレス以降に記憶された冗長メモリセルのデータを順次連続して読み
出していることになる。
したがって,構成d’は構成要件Rを充足する。
なお,構成要件Rには「制御装置」という用語があるが,その具体的な内
容について何らの限定もなく,単に,同要件に定められた「第1のモード,」
「」,第2のモードという動作を実現するための手段という意味しかないから
これらの要件に定める動作と同じ動作をすることを示す構成d’には,かか
る動作を実現するための制御装置が実質的に開示されているものと認められ
る。
ウ以上のとおり,引用例1は,構成要件NないしSをいずれも充足する構成
を有し,本件特許発明3と同一であるから,同発明は新規性を欠く。
原告の主張に対する反論(5)
原告は,引用例1においては,行を切り換えるために新たな行アドレスを入
力する必要があるとともに,行が切り換わった都度,当該行の読み出し開始列
アドレスを入力する必要もあるとして,この点において,引用例1は,本件特
許発明の「第1のモード「第2のモード」を備えていないと主張する。しか」,
し,本件特許発明の「第1のモード「第2のモード」という要件は,行が切」,
り換わった場合において新たな行の読み出し開始列アドレスを入力する必要が
あるか否かとは無関係な要件であり「読み出し開始列アドレスの入力を必要と,
しない方式」に限定されるものではない。したがって「読み出し開始列アドレ,
ス入力の必要性」を根拠として,引用例1と本件特許発明とを区別することは
できないから,本件特許発明は新規性を欠く。
以上により,本件特許発明1ないし3はいずれも新規性を欠くから,特(6)
許法104条の3第1項により,本件特許権を行使することは許されない。
〔原告の主張〕
引用例1には,次のとおり,本件特許発明の構成要件E,F,L及びRが記(1)
載されていないから,本件特許発明と同一とはいえない。
ア引用例1の内容
引用例1の半導体メモリは,行アドレスを切り換えるごとに「2ビットの,
バイナリコード(タップ列アドレスであって,列アドレスの一種である)を」
毎回入力し,その後,指定された列アドレスから順次データを出力するもの
である。つまり,引用例1には,本件特許発明の従来技術と同一の技術が開
示されている。ここで,とは「行アドレス・ストローブ信号」をいい,/RAS
この信号がハイレベルからロウレベルに変化したときに,行アドレスが入力
され,それに応じて行が切り換わる。とは「列アドレス・ストローブ信/CAS
号」をいい,この信号がハイレベルからロウレベルに変化したときに,列ア
ドレスが入力され,それに応じて指定された列アドレスから読み出しが開始
される。
引用例1のメモリは
①行アドレス切り換え(がロウになるとき)/RAS
②列アドレス入力(がロウになるとき)/CAS
(行アドレスの切り換えごとに毎回行う)
③データの順次出力
という動作系列をたどる。
さらに,乙第6号証には「タップ選択は……がローとなるとき最上位/CAS
2つのカラムアドレスピンに印加される2ビットコードによって制御され
る」と記載されていることから,タップ選択を行いつつ,そのタップ列アド。
レスからデータを出力する場合には,
①行アドレス切り換え(がロウになるとき)/RAS
②タップ列アドレス入力(がロウになるとき)/CAS
(行アドレスが切り換わるたびに毎回行う)
③データの順次出力
という動作系列をたどる。例えば「0ビットからシフト・アウト」する場合
には,列アドレス0の二進表現であるところの0000000の上位2ビッ
トである00をの立ち下がりで入力し「64ビットからシフト・アウ/CAS,
ト」する場合には,列アドレス64の二進表現であるところの010000
0の上位2ビットである01をの立ち下がりで入力し「128ビット/CAS,
からシフト・アウト」する場合には,列アドレス128の二進表現である1
000000の上位2ビットである10をの立ち下がりで入力し「1/CAS,
92ビットからシフト・アウト」する場合には,列アドレス192の二進表
現である1100000の上位2ビットである11を入力する。
そして,00,01,10,11からなるタップ列アドレスは,行が切り
換わった後に入力される列アドレスそのものである。
イしたがって,引用例1には「選択された行が切り換ると第1の所定の列か,
ら順次前記データレジスタの内容が外部に出力される第1のモード(構成要」
件E「選択された行が切り換ると第2の所定の列から順次前記データレジ),
スタの内容が外部に出力される第2のモード(構成要件F)が記載されてい」
ない。
当然のことながら,引用例1においては,毎回行アドレス及びタップ列ア
ドレスを入力する必要があり「連続読み出しの場合における,所定アドレス,
毎回入力の必要性」という課題は全然解決されていない。
被告の主張に対する反論(2)
ア被告は,構成d’に関し,セグメント又はタップの選択にしたがって,所
定の列(ビット00,ビット64,ビット128,又はビット192)から
順次前記高速256ビット・シフトレジスタの内容を外部に出力するなどと
述べているが,誤りである。
正しくは,行アドレスを毎回入力し行を切り換え,その都度,常に,タッ
プ列アドレスを毎回入力することによって,所定の列(ビット00,ビット
64,ビット128,又はビット192)から順次前記高速256ビット・
シフトレジスタの内容を外部に出力する,というべきである。
イ被告は,バイナリコードが00のときの読み出しを第1のモードとし,バ
イナリコードが11のときの読み出しを第2のモードとするなどと述べてい
るが,誤りである。
引用例1では,行アドレスを切り換えるごとに,列アドレスを毎回入力し
なければならないのであるから,これを「第1のモード「第2のモード」」,
などと呼ぶことはできないことは明らかである。
4争点ウ(新規性欠如その2)について(2)
〔被告の主張〕
本件特許発明の特許出願前に頒布された刊行物である特開昭62-2980(1)
(。,「」。)95号公報乙7以下乙第7号証に記載された発明を引用例2という
,(,には次の構成の半導体記憶装置が記載されていることが明らかである以下
記号の順序に従って「構成a」などという。”)
a”マトリクス状に配列されたメモリアレイ(M-ARY)と,
b”各列に対してデータを一時的に格納するデータ出力バッファ(DOB)
とを有し,
c”前記メモリアレイ(M-ARY)内の選択した行に並ぶページデータを
前記データ出力バッファDOBに格納し前記データ出力バッファD(),(
OB)内のデータを順次外部に出力するページ読み出しモードを備える半
導体記憶装置において,
d”8ビット単位でデータビット(D0~D7)のページデータを順次前記
データ出力バッファ(DOB)から外部に出力する第1のモードと,書き
込み状態を記録する情報ビット(SB)の内容をアドレス$000から順
次連続して前記データ出力バッファ(DOB)から外部に出力する第2の
モードとを具備する
e”ことを特徴とする半導体記憶装置。
本件特許発明1との対比(2)
ア構成要件Aについて
構成aにおけるメモリアレイM-ARYは構成要件Aにおけるマ”「()」「
トリクス状に配列された複数のメモリセル」に該当する。したがって,構成
a”は構成要件Aを充足する。
イ構成要件Bについて
構成b”における「データ出力バッファ(DOB」は,メモリアレイ(M)
-ARY)の1行分の9ビットのデータを各列に対応して一時的に格納して
いるから構成要件Bにおける「データレジスタ」に該当する。したがって,
構成b”は構成要件Bを充足する。
ウ構成要件C及びDについて
乙第7号証の第1図及び4頁右下欄17行ないし5頁左上欄11行,5頁
左上欄17行ないし同右上欄2行の記載によれば,データは行ごとに8ビッ
ト単位でデータ出力バッファ(DOB)に書き込み/読み出しが行なわれて
いるから,構成c”における「前記メモリアレイ(M-ARY)内の選択し
(),」,た行に並ぶページデータを前記データ出力バッファDOBに格納しは
構成要件Cにおける「前記メモリセル内の選択した行に並ぶページデータを
,」。,()前記レジスタに格納しに該当するそしてデータ出力バッファDOB
に転送されたデータは行単位で順次外部に出力されているから,構成c”に
おける「前記データ出力バッファ(DOB)内のデータを順次外部に出力す
るページ読み出しモードを備える半導体記憶装置において」は,構成要件C,
及びDにおける「前記データレジスタ内のデータを順次外部に出力するペー
ジ読み出しモードを備える半導体記憶装置において」に該当する。,
以上より,構成c”は構成要件C及びDを充足する。
エ構成要件E及びFについて
乙第7号証の第1図及び4頁右下欄17行ないし5頁左上欄11行,5頁
左上欄17行ないし同右上欄2行の記載によれば,メモリアレイ(M-AR
Y)は8ビット分がデータとして,残り1ビット分が書き込み状態を記録す
る情報ビット(SB)として利用されている。そして,通常のデータ読み出
しとして,上記8ビット単位での読み出しが行なわれるとともに,上記d(1)
”,,に記載されたようにEPROMに対して別のデータを書き込む場合には
アドレス$000から情報ビット(SB)のみの読み出しが順次連続して行
われる。
したがって,8ビット単位で行データを読み出すのを「第1のモード」と
し,情報ビット(SB)を読み出すのを「第2のモード」とすると「第1の,
モード」のときには,第1の所定の列であるビットD0からビットD7まで
のすべてのメモリアレイ(M-ARY)の行単位の情報が,データ出力バッ
ファ(DOB)から順次外部に出力される。また「第2のモード」のときに,
,()は第2の所定の列であるビットSBの情報がデータ出力バッファDOB
を介して順次連続して外部に出力される。
そして,これらの読み出しは,選択された行が切り換わるごとにすべての
行について行なわれる。
したがって,構成d”における「8ビット単位でデータビット(D0~D
7)のページデータを順次前記データ出力バッファ(DOB)から外部に出
力する第1のモード」は,構成要件Eにおける「選択された行が切り換ると
第1の所定の列から順次前記データレジスタの内容が外部に出力される第1
のモード」に該当する。
また,構成d”における「書き込み状態を記録する情報ビット(SB)の
()内容をアドレス$000から順次連続して前記データ出力バッファDOB
から外部に出力する第2のモード」は,構成要件Fにおける「選択された行
が切り換ると第2の所定の列から順次前記データレジスタの内容が外部に出
力される第2のモード」に該当する。
したがって,構成d”は構成要件E及びFを充足する。
オ構成要件Gについて
構成e”が構成要件Gを充足することはいうまでもない。
カ以上のとおり,引用例2は,構成要件AないしGをいずれも充足する構成
を有し,本件特許発明1と同一であるから,同発明は新規性を欠く。したが
って,特許法104条の3第1項により,本件特許権を行使することは許さ
れない。
本件特許発明2との対比(3)
ア構成要件H,I,J,K及びMについて
引用例2の構成a,同b,同c”及び同e”が本件特許発明2の構成””
要件H,I,J,K及びMをそれぞれ充足することは,上記と同様で(2)
ある。
イ構成要件Lについて
上記エと同様の理由で,上記構成d”における「8ビット単位でデー(2)
タビット(D0~D7)のページデータを順次前記データ出力バッファ(D
OB)から外部に出力する第1のモード」は,構成要件Lにおける「第1の
モードでは選択された行が切り換ると第1の所定の列から順次前記データレ
ジスタの内容を外部に出力し」に該当する。
また,構成d”における「書き込み状態を記録する情報ビット(SB)の
()内容をアドレス$000から順次連続して前記データ出力バッファDOB
から外部に出力する第2のモード」は,構成要件Lにおける「第2のモード
では選択された行が切り換ると第2の所定の列から順次前記データレジスタ
の内容を外部に出力する」に該当する。
なお,構成要件Lには「制御手段」という用語があるが,その具体的な内
容について何らの限定もなく,単に,同要件に定められた「第1のモード,」
「」,第2のモードという動作を実現するための手段という意味しかないから
”,これらの要件に定める動作と同じ動作をすることが記載された構成dには
かかる動作を実現するための制御手段が実質的に開示されているものと認め
られる。
ウ以上のとおり,引用例2は,構成要件HないしMをいずれも充足する構成
を有し,本件特許発明2と同一であるから,同発明は新規性を欠く。
本件特許発明3との対比(4)
ア構成要件N,O,P,Q及びSについて
引用例2の構成a,同b,同c”及び同e”が本件特許発明3の構成””
要件N,O,P,Q及びSをそれぞれ充足することは,上記と同様で(2)
ある。
イ構成要件Rについて
上記エと同様の理由で,構成d”における「8ビット単位でデータビ(2)
()()ットD0~D7のページデータを順次前記データ出力バッファDOB
から外部に出力する第1のモード」は,構成要件Rにおける『前記半導体記
憶装置を第1のモードに切り換えて,所定の列から順次データレジスタの内
容を読み出し」に該当する。,
また,構成d”における「書き込み状態を記録する情報ビット(SB)の
()内容をアドレス$000から順次連続して前記データ出力バッファDOB
から外部に出力する第2のモード」は,構成要件Rにおける「前記半導体記
憶装置を第2のモードに切り換えて,前記所定の列のアドレス以降に記憶さ
れた冗長メモリセルのデータを順次連続して読み出す」に該当する。
,()「」ここで書き込み状態を記録する情報ビットSBが冗長メモリセル
に該当することは明らかである。
なお,構成要件Rには「制御装置」なる用語があるが,その具体的な内容
について何らの限定もなく単に同要件に定められた第1のモード第,,「」,「
2のモード」という動作を実現するための手段という意味しかないから,こ
れらの要件に定める動作と同じ動作をすることが記載された構成d”には,
かかる動作を実現するための制御装置が実質的に開示されているものと認め
られる。
ウ以上のとおり,引用例2は,構成要件NないしSをいずれも充足する構成
を有し,本件特許発明3と同一であるから,同発明は新規性を欠く。
以上により,本件特許発明1ないし3はいずれも新規性を欠くから,特(5)
許法104条の3第1項により,本件特許権を行使することは許されない。
〔原告の主張〕
引用例2には,本件特許発明の構成要件C,E,F,J,L,P及びRが記
載されていないから,本件特許発明と同一とはいえない。
すなわち,引用例2のデータ出力バッファ(DOB)は「選択した行に並ぶ,
ページデータ」を「格納」するのではないし「前記ページデータ出力バッファ,
(DOB)内のデータを順次外部に出力する」のでもないし(9個のデータ出
力バッファ(DOB)のうち8ビットは同時に入出力される,ページ読み出。)
し方式も採用していない。加えて「順次前記データレジスタの内容が外部に出,
力される」ような「モード」も存在しない(順次出力されるのではないから当
然である。情報ビット(SB)の内容を出力する出力バッファは1個しかない)
ので(あるいは,1ビット読み出しごとにアドレスを毎回入力するので「順次)
連続して」出力するものでもない。
以上のとおり,引用例2は本件特許発明とは全く無関係である。本件特許発
明との共通点はただひとつ「マトリクス状に配列された複数のメモリセル」を,
有するという点のみである。
5争点(損害の発生及びその額)について(3)
〔原告の主張〕
本件特許発明の相当な実施料率は1パーセントである。(1)
被告における平成16年7月から同年9月末日までの被告製品の売上げ(2)
は1億3386万6842円であり,平成16年10月から平成17年6月
末日までの被告製品の売上げは6億5034万3486円である。
よって,被告が支払うべき実施料相当損害金の額は,平成16年7月か(3)
ら同年9月末日までの分が133万8668円であり,平成16年10月か
ら平成17年6月末日までの分が650万3435円である。
〔被告の主張〕
上記〔原告の主張〕及びはいずれも認め,その余は争う。(1)(2)
第4争点に対する判断
1争点(構成要件充足性)について(1)
本件特許発明の特許請求の範囲は,前記第2の1(2)のとおりであり,本(1)
件明細書には発明の詳細な説明として,以下の記載がある(甲6。)
ア産業上の利用分野(頁左欄9行ないし11行【0001)(2)】
本発明は半導体記憶装置に関する。特に,電気的にデータの書換えが可
能な不揮発性半導体メモリに関する。
イ従来の技術
ア電気的に記憶データを消去し,新たなデータを再書込みできるRO()
MはEEPROM……として知られている。このEEPROMは,記憶
,。内容を消去するときEPROMとは異なり紫外線を用いる必要がない
従って,ボード上に実装した状態のままで電気的にデータの消去,書換
えを行うことができる。このため,使いやすく,各種制御用機器用やメ
モリカード用等として用いられる(頁左欄13行ないし22行【0(2)
002。】)
イ近年,特に大容量化に適したEEPROMとしてNANDセル構造()
を有するEEPROMが開発されている。このNANDセルタイプのE
EPROMの特徴は,以下の通りである。すなわち,データの書込み,
消去に当って,従来のNORタイプのメモリセルと異なり,ホットエレ
クトロンの注入を必要としない。書込み,消去は,トンネル効果によっ
て行っている。このため,メモリセルに流れる電流が少ない。したがっ
て,ページ単位でのデータの書換えが可能である(頁左欄23行な(2)
いし31行【0003。】)
ウこのNANDタイプのEEPROMはメモリセルサイズが小さいた()
め安価であり,大容量のハードディスクの代わりに使用される。このN
ANDタイプのEEPROMで連続データ読み出しを行う場合,1ペー
ジの最終番地(最終ページ内アドレス)まで70nsecでシリアル読
み出しを行った後に次のデータを読み出すために10μsecのランダ
ム読み出しを行う必要があるため,システムで読み出しアドレスが1ペ
ージの最終番地か監視して,メモリからのデータ読み出しタイミングを
制御する必要があった。このためメモリ制御方法が複雑でありメモリ制
御専用チップを必要とするという問題があった。これらの問題を解決す
るため,外部制御信号に応答してチップ内部の内部アドレスをインクリ
メントし,1ページの最終アドレスまで読み出した後はチップに内蔵さ
れたタイマーによる制御で自動的にランダム読み出し行う機能を付加し
たNANDタイプのEEPROMが,……出願された特願平3-779
2201に詳細に開示されている。一般にハードディスクの記憶データ
は512バイト単位で管理されており,この512バイト単位のデータ
はディスク内の任意の位置に記憶される。このため512バイト以上の
データを記憶しておくためには,この512バイト単位のデータの連続
情報を記憶しておく必要がある。NANDタイプのEEPROMをハー
ドディスクの代わりに使用する場合,カラム方向のビット数を512バ
イト(4Mビット)で構成して上記連続情報を冗長メモリセル(2バイ
トに記憶することにより1度のランダム読み出しで512バイト1),(
セクター)の情報と次のセクターアドレス(ページアドレス情報)をデ
ータレジスタに読み込むことが可能となる(頁左欄28行ないし同(3)
頁右欄7行【0010。】)
エ一般的にハードディスクではデータの配置情報を得るため各ページの()
連続情報のみを連続して読み出す必要があり,メモリチップをハードディ
スクの代わりに使用する場合も各ページの連続情報のみを読み出す必要が
ある。しかしながら上記のような改良されたNANDタイプEEPROM
の場合,各ページのページ連続情報を読み出すたびに冗長セルのスタート
アドレスを入力する必要があり,メモリチップを制御するシステムの負担
が重くなるという問題があった(頁左欄2行ないし10行【001(4)
2。】)
ウ発明が解決しようとする課題
ア従来の任意アドレスからのページ単位連続読み出し可能な半導体メモ()
リにおいて,ページ内の所定アドレスからページ最終アドレスまでのデー
タを連続したページについて読み出す場合,各ぺージ読み出し開始時に前
記ページ内所定アドレスを毎回入力する必要があり,システムの効率が低
下する問題があった(頁左欄11行ないし18行【0013。(4)】)
イ本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり,その目的は前記()
ページ内所定アドレスを管理することなく,ページ内所定アドレスからペ
ージ内最終アドレスまでの各ページデータを連続して読み出せる半導体メ
モリを得ることにある(頁左欄19行ないし23行【0014。(4)】)
エ作用(頁右欄12行ないし23行【0017。(4)】)
本発明による半導体記憶装置は,ページ内の第一の所定カラムアドレスか
らそのページの最終アドレスまでのデータを連続したページについて読み出
せるとともに,ページ内の第二の所定カラムアドレスからそのページの最終
。アドレスまでのデータを連続したページについて読み出すことが可能である
このためデータ構造が第一のデータと第二のデータの和の形となっているデ
ータの集合を記憶する場合に,第一のデータと第二のデータの和のデータ集
合を連続して読み出せるとともに,第二のデータのみの集合を連続して読み
出すことも可能となり,半導体記憶装置を用いたシステムの効率を向上させ
ることができる。
オ発明の効果(頁右欄11行ないし16行【0041)(10)】
本発明によれば,所定カラムアドレスより上位のカラムアドレスで選択さ
れるメモリセルブロックのデータをページ毎に連続して読み出す場合に,ペ
,ージアドレスが変化するたびに読み出し開始アドレスを入力する必要がなく
メモリチップを制御するシステムを簡単に構成可能な不揮発性半導体メモリ
を実現できる。
構成要件の解釈(2)
特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定められ(特許
法70条1項,特許請求の範囲に記載された用語の意味は,明細書の記載及び)
図面を考慮して解釈する(同条2項。明細書に特許請求の範囲に記載された)
用語に関する特別な説明や定義が存在しない場合には,当業者が理解する一
般的な意味として解釈すべきである。
ア本件特許発明における「マトリクス状」の意義
「マトリクス状」とは「行列状」を意味するものである(広辞苑第5,
版2521頁。)
イ本件特許発明における「データレジスタ」の意義
特許請求の範囲(構成要件B,I及びO)には「各列に対してデータ,
を一時的に格納するデータレジスタ」と,同C,J及びPには「前記メモ,
,リセルの内の選択した行に並ぶページデータを前記データレジスタに格納し
」前記データレジスタ内のデータを順次外部に出力するページ読み出しモード
と,同E,F,L及びRには「所定の列から順次前記データレジスタの内,
容が外部に出力される「所定の列から順次前記データレジスタの内容を外部」
に出力し「所定の列から順次データレジスタの内容を読み出し」と記載され」
ている。
以上の記載に,特許請求の範囲(構成要件A,D,H,K,N及びQ)
の記載から上記「各列」とは半導体記憶装置のマトリクス状に配列された
複数のメモリセルの列をいうものであると認められることを併せ考慮する
と,本件特許発明にいう「データレジスタ」とは,半導体記憶装置のマト
リクス状に配列された複数のメモリセルの各列に対してデータないし上記
メモリセルの選択した行に並ぶページデータにつき,その内容を順次外部に
出力するために,一時的に格納するものと解される。
ウ本件特許発明における「ページ読み出しモード」の意義
特許請求の範囲(構成要件C,J及びP)には「前記メモリセルの内,
の選択した行に並ぶページデータを前記データレジスタに格納し,前記デー
タレジスタ内のデータを順次外部に出力するページ読み出しモード」と記載
されているから「ページ読み出しモード」とは,データレジスタ内のデータ,
を順次外部に出力するものである。そして「モード」とは「ある動作状,,
態ないし方式」を意味するものであることは当事者間に争いがないから,
「ページ読み出しモード」とは,メモリセルのうちの選択した行に並ぶペ
ージデータをデータレジスタに格納し,データレジスタ内のデータを順次外
部に出力する動作状態ないし方式である。
エ本件特許発明における「第1のモード」及び「第2のモード」の意義
特許請求の範囲(構成要件E及びF)には「選択された行が切り換ると,
第1の所定の列から順次前記データレジスタの内容が外部に出力される第1
のモードと「選択された行が切り換ると第2の所定の列から順次前記デー,」
タレジスタの内容が外部に出力される第2のモードと,同Lには「第1の」,
モードでは選択された行が切り換ると第1の所定の列から順次前記データレ
ジスタの内容を外部に出力し,第2のモードでは選択された行が切り換ると
第2の所定の列から順次前記データレジスタの内容を外部に出力する制御手
段,同Rには「前記半導体記憶装置を第1のモードに切り換えて,所定の」,
列から順次データレジスタの内容を読み出し,前記半導体記憶装置を第2の
モードに切り換えて,前記所定の列のアドレス以降に記憶された冗長メモリ
セルのデータを順次連続して読み出す制御装置と」と記載されている。そし
て,本件明細書(甲6)には,上記のとおり,従来技術では,連続デー(1)
タ読み出しを行う場合,データの配置情報を得るため各ページの連続情報
(【】),のみを連続して読み出す必要があり頁左欄2行ないし4行0012(4)
各ぺージ読み出し開始時に前記ページ内所定アドレスを毎回入力する必要が
あったところ(頁左欄15行ないし18行【0013,本件特許発明(4)】)
の作用として「ページ内の第一の所定カラムアドレスからそのページの最終,
アドレスまでのデータを連続したページについて読み出せるとともに,ペー
ジ内の第二の所定カラムアドレスからそのページの最終アドレスまでのデー
タを連続したページについて読み出すことが可能である」こと(頁右欄1(4)
2行ないし17行【0017)が記載されている。】
以上の記載に上記「モード」の定義を併せ考慮すると「第1のモード」と,
は,選択された行が切り換わると,ページ内所定アドレスを各ページ読み出
し開始時に毎回入力することなく,自動的に,第1の所定の列から順次デー
タレジスタの内容が外部に出力される動作状態ないし方式であり「第2のモ,
ード」とは,同様に,選択された行が切り換わると,ページ内所定アドレス
を各ページ読み出し開始時に毎回入力することなく,自動的に,第2の所定
の列から順次データレジスタの内容が外部に出力される動作状態ないし方式
をいうものと解される。
オ本件特許発明2における「制御手段」の意義
特許請求の範囲(構成要件L)には「第1のモードでは選択された行が,
切り換ると第1の所定の列から順次前記データレジスタの内容を外部に出力
し,第2のモードでは選択された行が切り換ると第2の所定の列から順次前
」,記データレジスタの内容を外部に出力する制御手段と記載されているから
ここでいう「制御手段」とは,第1のモード及び第2のモードにおいて,
選択された行が切り換わるとそれぞれの所定の列から順次前記データレジス
タの内容を外部に出力する手段を意味するものである。
本件明細書(甲6)の実施例では,図4が第1のモードの動作の説明であ
り(頁左欄19行ないし右欄9行【0019【0020,図5が第2(5)】】)
のモードの動作の説明であるところ(頁右欄10行ないし頁左欄12行(5)(6)
【0021,これらの動作を制御しているのは,図2の本件特許発明の実】)
施例を表わしたブロック図に示された「制御回路「カラムアドレスバッ」,
ファ「カラムデコーダ「ロウアドレスバッファ「ロウデコーダ」等で」,」,」,
ある。そして,図2については「本発明を適用した不揮発性半導体のブ,
ロック系統図で,I/Oピン111から入力されたカラムアドレスA0~
A8はカラムアドレスバッファ回路105で記憶され,またロウアドレス
A9~A18はロウアドレスバッファ回路107で記憶される。またこの
不揮発性半導体装置の読み出し,書き込み,消去の各モードの制御は,I
/Oピンから入力されたコマンドコードをコマンドデコーダ109でデコ
ードすることにより行われる。I/Oピン111の入/出力モード切り換
えと入力データのアドレス/コマンドデータの識別は,それぞれの入力ピ
,,,,,ンから入力される外部制御信号CLENCENWEALENRE
NWPにより行われる。また制御回路からはチップがアクセス可能か,不
可能かを示す信号がReady/Busyピンを介して外部に出力され
る(頁右欄33行ないし47行【0018)と説明され,また,図」】(4)
7は「カラムアドレスA0~A8,ロウアドレスA9~A18で構成さ,
れる本発明の4Mビットの不揮発性半導体メモリにおいて,内部アドレス
の動作を説明するためのアドレスバッファ回路の回路図を示す(頁右」(6)
欄6行ないし10行【0023)ものであるが,図7の回路構成につい】
て「本実施例ではランダム読み出し後にカラム読み出し開始番地が0番,
地に設定される第一の読み出しモードでは内部制御信号EXは”L”レベ
ル,またカラム読み出し開始番地が512番地に設定される第二の読み出
””。しモードでは内部制御信号EXがHレベルとなるよう構成されている
第一の読み出しモードでは内部制御信号EXは”L”レベルであるから,
アドレス入力モードで負論理のアドレスラッチ制御信号LP1が出力され
ると,アドレスバッファ回路ABUF8Eには”L”レベルの内部アドレ
ス信号がラッチされ,アドレスバッファ回路の出力信号A8ESは”L”
レベルに,またA8ESBは”H”レベルに設定される(頁左欄4。」(8)
7行ないし右欄9行【0032)と説明され,さらに「第二の読み出】,
しモードでは内部制御信号EXは”H”レベルとなっているから,アドレ
ス入力モードで負論理のアドレスラッチ制御信号LP1が出力されると,
アドレスバッファ回路ABUF8Eには”H”レベルの内部アドレス信号
がラッチされ,アドレスバッファ回路の出力信号A8ESは”H”レベル
に,またA8ESBは”L”レベルに設定される。このためアドレス入力
モードでN番地を指定すると内部カラムアドレスは512+N番地を指定
することになる。言い替えれば第二の読み出しモードでN番地を指定する
と冗長メモリセルブロック内のN番地を指定したことになる(頁左欄」(9)
44行なし右欄4行【0037)と説明されている。これらの記載によ】
れば,結局「制御手段」とは,第1のモード及び第2のモードにおいて,,
行アドレスや列アドレスを記憶,保持し,カウントアップする機能と,こ
れらのアドレスによってメモリセル及びこれに接続されたデータレジスタ
とを選択する機能等を有する回路によって実現される,選択された行が切
り換わるとそれぞれの所定の列から順次前記データレジスタの内容を外部に
出力する手段を指すものと認められる。
カ本件特許発明3における「制御装置」について
特許請求の範囲(構成要件R)には「前記半導体記憶装置を第1のモー,
ドに切り換えて,所定の列から順次データレジスタの内容を読み出し,前記
半導体記憶装置を第2のモードに切り換えて,前記所定の列のアドレス以降
に記憶された冗長メモリセルのデータを順次連続して読み出す制御装置」と
記載されているから,ここでいう「制御装置」とは,モードを第1のモード
又は第2のモードにそれぞれ切り換えて,切り換えた後に各モードにおいて
所定の列から順次データレジスタの内容を読み出す制御装置である。
被告製品における本件特許発明1の充足性(3)
ア被告製品の構成
被告製品が以下の構成を有していることは,当事者間に争いがない。
a行列状に配列された複数のメモリセルと
b各列に対してデータを一時的に格納するページバッファとを有し,
cこのメモリセルの内の選択した行に並ぶページデータをこのページバッ
ファに格納し,このデータレジスタ内のデータを順次外部に出力するシー
ケンシャルリードモード
dを備える半導体記憶装置において,
e選択された行の最終列まで読み出されると,次の行に切り換わり,列ア
ドレスが0の位置から順次このページバッファの内容が外部に出力される
リードAモードと,
f選択された行が切り換わると列アドレスが512の位置から順次このペ
ージバッファの内容が外部に出力されるリードCモードと
gを具備することを特徴とする半導体記憶装置
イ対比
ア構成要件Aについて()
別紙被告製品説明書によれば,被告製品の構成aのとおり,複数のメモ
リセルは「行列状」に配列されている。構成要件Aの「マトリクス状」も
行列状を意味するから,被告製品は構成要件Aを充足する。
イ構成要件Bについて()
別紙被告製品説明書によれば,被告製品の構成bにいうページバッファ
とは,NANDフラッシュメモリアレイから読み出された1行分のデータ
(1ページ分のデータ)を一時的に保持する動作をするものである。した
がって,ページバッファは,半導体記憶装置のマトリクス状に配列され
た複数のメモリセルの各列に対してデータを一時的に格納する役割を
果たすものと同義であり「データレジスタ」に該当するから,被告製品,
は構成要件Bを充足する。
ウ構成要件Cについて()
別紙被告製品説明書によれば,被告製品の構成cにいうシーケンシャル
リードモードは,リードAモードとリードCモードの上位概念であり,構
成cにあるとおり,メモリセルのうちの選択した行に並ぶページデータを
ページバッファに格納し,そのデータを順次外部に出力するものであるか
ら,メモリセルのうちの選択した行に並ぶページデータをデータレジスタ
に格納し,データレジスタ内のデータを順次外部に出力する動作状態ない
し方式と同義であり「ページ読みだしモード」に該当するから,被告製品,
は構成要件Cを充足する。
エ構成要件Dについて()
被告製品の構成d(半導体記憶装置)が構成要件Dを充足することは明
らかである。
オ構成要件Eについて()
被告製品の構成eのとおり,リードAモードは,選択された行の最終列
まで読み出されると,次の行に切り換わり,列アドレスが0の位置から順
次このページバッファの内容が外部に出力されるモードである。別紙被告
製品説明書によれば,リードAモードは,1ページの最終列まで読み出し
た後,次に移行する列アドレスは,次ページの0列であるような読み出し
モードのことであり,その読み出し動作は,同説明書の図4のとおりであ
り,行が切り換わるたびに所定アドレスを各ページ読み出し開始時に毎回
入力することなく,自動的に順次ぺージデータが外部に出力されるという
ものである。そして,メモリセルは行列状に配置されていることから列ア
ドレスが0の位置は「第1の所定の列」に該当する。したがって,リード
Aモードは,選択された行が切り換わると,ページ内所定アドレスを各ペ
ージ読み出し開始時に毎回入力することなく,自動的に,第1の所定の列
から順次データレジスタの内容が外部に出力される動作状態ないし方式と
同義であり「第1のモード」に該当するから,被告製品は構成要件Eを充,
足する。
カ構成要件Fについて()
被告製品の構成fのとおり,リードCモードは,選択された行が切り換
わると列アドレスが512の位置から順次このページバッファの内容が外
部に出力されるモードである。別紙被告製品説明書によれば,リードCモ
,,,ードは1ページの最終列まで読み出した後次に移行する列アドレスは
次ページの512列であるような読み出しモードのことであり,その読み
出し動作は,同説明書の図5のとおりであり,行が切り換わるたびに所定
アドレスである512列を各ページ読み出し開始時に毎回入力することな
く,自動的に順次ページデータが外部に出力されるというものである。そ
して,メモリセルは行列状に配置されていることから列アドレスが512
「」。,,の位置は第2の所定の列に該当するしたがってリードCモードは
選択された行が切り換わると,ページ内所定アドレスを各ページ読み出し
開始時に毎回入力することなく,自動的に,第2の所定の列から順次デー
タレジスタの内容が外部に出力される動作状態ないし方式と同義であり,
「第2のモード」に該当するから,被告製品は構成要件Eを充足する。
キ構成要件Gについて()
被告製品の構成g(半導体記憶装置)が構成要件Gを充足することは明
らかである。
ウ以上のとおり,被告製品は本件特許発明1の技術的範囲に属する。
被告製品における本件特許発明2の充足性(4)
ア被告製品の構成
被告製品が以下の構成を有していることは,当事者間に争いがない。
h行列状に配列された複数のメモリセルと
i各列に対してデータを一時的に格納するページバッファとを有し,
jこのメモリセルのうちの選択した行に並ぶページデータをこのページバッ
ファに格納し,このページバッファ内のデータを順次外部に出力するシーケ
ンシャルリードモード
kを備える半導体記憶装置において,
lリードAモードでは選択された行が切り換わると列アドレスが0の位置か
ら順次このページバッファの内容を外部に出力し,リードCモードでは選択
された行が切り換わると列アドレスが512の位置から順次このページバッ
ファの内容を外部に出力するアドレスレジスタ・カウンタ,行デコーダ及び
列デコーダ
mを具備することを特徴とする半導体記憶装置
イ対比
ア上記イアないしエ及びキの認定と同様,被告製品の構成h,()(3)()()()
,,,,,。ijk及びmはそれぞれ構成要件HIJK及びMを充足する
イ被告製品の構成lのとおり,リードAモードでは選択された行が切り()
換わると列アドレスが0の位置から順次このページバッファの内容を外部に
出力し,リードCモードでは選択された行が切り換わると列アドレスが51
2の位置から順次このページバッファの内容を外部に出力しているのは,ア
ドレスレジスタ・カウンタ,行デコーダ及び列デコーダである。別紙被告製
品説明書によれば,それらは,被告製品の回路構成の一部であり,被告製品
,,,の回路は①I/Oバッファ・ラッチ回路②アドレスレジスタ・カウンタ
③コマンドインターフェース論理回路,④コマンドレジスタ,⑤書込・消去
,,,・読出制御回路高電圧発生回路⑥NANDフラッシュメモリセルアレイ
⑦行デコーダ,⑧ページバッファ,⑨キャッシュレジスタ,⑩列デコーダ等
のブロックから構成されており,その機能は図2記載のとおりである。それ
,,,によれば上記被告製品の回路が第1のモード及び第2のモードにおいて
行アドレスや列アドレスを記憶,保持し,カウントアップする機能と,
これらのアドレスによってメモリセル及びこれに接続されたページバッ
,,ファとを選択する機能等を有する回路でありこれによって実現される
選択された行が切り換わるとそれぞれの所定の列から順次前記データレジス
タの内容を外部に出力する手段が「制御手段」に該当するから,被告製品
は構成要件Lを充足する。
ウ以上のとおり,被告製品は本件特許発明2の技術的範囲に属する。
被告製品における本件特許発明3の充足性(5)
ア被告製品の構成
被告製品が以下の構成を有していることは,当事者間に争いがない。
n行列状に配列された複数のメモリセルと
o各列に対してデータを一時的に格納するページバッファとを有し,
pこのメモリセルのうちの選択した行に並ぶページデータをこのページバッ
ファに格納し,このページバッファ内のデータを順次外部に出力するシーケ
ンシャルリードモード
qを備える半導体記憶装置において,
rこの半導体記憶装置をリードAモードに切り換えて,列アドレスが0の位
置から順次ページバッファの内容を読み出し,半導体記憶装置をリードCモ
ードに切り換えて,列アドレスが512の位置以降に記憶された冗長メモリ
セルのデータを順次連続して読み出すアドレスレジスタ・カウンタ,行デコ
ーダ及び列デコーダと
sを具備することを特徴とする半導体記憶装置
イ対比
ア上記イアないしエ及びキの認定と同様,被告製品の構成n,()(3)()()()
,,,,,。opq及びsはそれぞれ構成要件NOPQ及びSを充足する
イ被告製品の構成rのとおり,被告製品は,半導体記憶装置をリードA()
モードに切り換えて,列アドレスが0の位置から順次ページバッファの内容
を読み出し,半導体記憶装置をリードCモードに切り換えて,列アドレスが
512の位置以降に記憶された冗長メモリセルのデータを順次連続して読み
出すアドレスレジスタ・カウンタ,行デコーダ及び列デコーダを有している
から,この512の位置以降に記憶された冗長メモリセルが「前記所定の列
のアドレス以降に記憶された冗長メモリセル」に該当することは明らかであ
る。
そして,前記カ認定のとおり,構成要件Rの「制御装置」とは,モ(2)
ードを第1のモード又は第2のモードにそれぞれ切り換えて,切り換えた後
に各モードにおいて所定の列から順次データレジスタの内容を読み出す制御
装置であるから,前記イイ認定と同様に,上記構成rにおいて,リー(4)()
ドAモード又はリードCモードにそれぞれ切り換えた後の「データを順
次連続して読み出すアドレスレジスタ・カウンタ,行デコーダ及び列デコー
ダ」が,構成要件Rの「制御装置」に該当することは明らかである。
したがって,被告製品は,構成要件Rを充足する。
ウ以上のとおり,被告製品は本件特許発明3の技術的範囲に属する。
2争点ア(特許法36条5項2号違反)について(2)
平成6年法律第116号による改正前の特許法36条5項は「第3項第(1),
4号の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならな
い」と規定し,同項2号(以下「特許法旧36条5項2号」という)は,。
「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載し
た項(以下「請求項」という)に区分してあること」と規定している。。。
したがって,特許請求の範囲には,発明の構成に欠くことができない事項,
すなわち当該発明の技術的課題を解決するために必要不可欠な技術的事項を
記載することにより,発明の構成要件のすべてを記載すべきものである。
前記1において認定したとおり,本件明細書(甲6)によれば,従来(2)(1)
技術では,連続データ読み出しを行う場合,データの配置情報を得るため各
ページの連続情報のみを連続して読み出す必要があり(頁左欄2行ないし6(4)
行【0012,また,各ぺージ読み出し開始時に前記ページ内所定アドレス】)
(4)を毎回入力する必要があり,システムの効率が低下する問題があったこと(
頁左欄15行ないし18行【0013,そこで,本件特許発明が解決しよ】)
うとする課題は「前記ページ内所定アドレスを管理することなく,ページ内所,
定アドレスからページ内最終アドレスまでの各ページデータを連続して読み出
せる半導体メモリを得ること(頁左欄20行ないし23行【0014)」】(4)
であり,その作用として「ページ内の第一の所定カラムアドレスからそのペー,
,ジの最終アドレスまでのデータを連続したページについて読み出せるとともに
ページ内の第二の所定カラムアドレスからそのページの最終アドレスまでのデ
ータを連続したページについて読み出すことが可能(頁右欄12行ないし」(4)
17行【0017)であって,その効果は「データをページ毎に連続して読】,
み出す場合に,ページアドレスが変化するたびに読み出し開始アドレスを入力
する必要がなく,メモリチップを制御するシステムを簡単に構成可能」にする
(頁右欄13行ないし16行【0041)というものである。(10)】
このように,本件特許発明の目的は,連続読み出しの場合において,所定ア
ドレスを毎回入力する必要をなくすことにあり,その課題を解決するための手
段が,本件特許発明1ないし3の特許請求の範囲の構成をとることである(甲
6の頁左欄25行ないし同頁右欄10行【0015【0016。すな(4)】】)
わち,例えば,本件特許発明1の構成要件Eの「選択された行が切り換ると第
1の所定の列から順次前記データレジスタの内容が外部に出力される第1のモ
ード」という記載は,上記従来技術,発明が解決しようとする課題,発明の目
的,作用及び効果を考慮すれば「第1のモード」という構成をとることによっ,
て,ページアドレスが変化するたびに,毎回アドレスを入力する必要がなく,
自動的に,第1の所定の列から順次データレジスタの内容が外部に出力される
モードと解される「第2のモード」についても,同様である。このことは,本。
件特許発明2及び3においても,同様である。
したがって,本件特許発明は「第1のモード」及び「第2のモード」という,
構成をとることによって,連続読み出しの場合において,所定アドレスを毎回
入力する必要をなくすことを実現できるという,1つのまとまった技術思想を
表したものと把握することが可能であるから「特許を受けようとする発明の構,
成に欠くことができない事項」のみが記載されているものであり,特許法旧3
6条5項2号に違反するということはできない。
被告は,本件特許請求の範囲には,所定のカラムアドレスからの「連続読み(3)
出し」を規定する「第1のモード「第2のモード」の要件とは別に,このよ」,
うな「連続読み出し」の場合において「所定アドレス毎回入力の必要性」を除,
去する技術的手段が明確に記載されなければならないところ,かかる技術的手
段が一切記載されていないと主張する。
確かに,具体的構成については特許請求の範囲に記載はないが,本件特許発
明は「第1の所定の列から順次前記データレジスタの内容を外部に出力」する,
「第1のモード」と「第2の所定の列から順次前記データレジスタの内容を外
部に出力」する「第2のモード」という特許請求の範囲の各文言を基礎に,読
み出し開始位置が「第1の所定の列「第2の所定の列」という具合に,あら,」,
かじめ定まっていることに大きな意味がある。そして,そのために,どのよう
なモード設定をするかについても,本件明細書(甲6)の実施例に関しては,
例えば「第1のモード」については,図4,図11の動作を行うものであるこ,
【】【】【】【】と及びその動作につき001900200032ないし0036
に詳細に説明されており,また「第2のモード」についても,図5,図12の,
動作を行うものであること及びその動作につき【0021【0037】に詳細】
に説明されており,当業者が実施できる程度に説明されているというべきであ
るから,かかる具体的な技術手段が特許請求の範囲に記載されていなくても,
特許請求の範囲の記載に欠けるところはないというべきである。
したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。
3争点イ(新規性欠如その1)について(2)
引用例1の内容(1)
IEEEJOURNALOFSOLID-STATE本件特許の出願前に頒布された「
」(),。CIRCUITS,VOL.sc-19,NO.6,DECEMBER1984乙6には次の記載がある
ア「ビデオ・アプリケーション用同時シリアルとランダム・モード・アクセ
P.999ス付き高速デュアルポート・メモリ訳文1頁の4行ないし5行英文」(。
表題)
イ「概要オンチップの256ビットの高速シフトレジスタにインターフェ
イスされた64K×1NMOSのダイナミックRAMが説明されている。こ
のデバイスにおいてメモリの選択された行からシフトレジスタへ,256ビ
ットの並列転送を通常のRASサイクルタイムで行うことができる(訳文。」
1頁の9行ないし13行。英文左欄上から1行ないし12行)P.999
ウ「この論文は,64K×1ダイナミックRAMと高速256ビット・シフ
トレジスタを同一チップ上に組合わせた,マルチポート・ビデオ・メモリと
称する新しいメモリ・デバイスについて説明する。DRAM中の行の情報は
単一メモリ・サイクルでレジスタに転送され,デバイスに印加される別のク
ロック信号によりビデオ・ディスプレイヘシリアルにシフトして出力され
る(訳文2頁の1行ないし6行。英文左欄下から8行ないし2行)。」P.999
エ「転送モードの場合,RAS,CAS,R/W,及びアドレスは256ビ
ットの情報をDRAMの選択された行からシフトレジスタへ,又は逆の方向
へパラレルに転送させるための制御及びアドレス情報を提供する(訳文2。」
頁の21行ないし24行。英文右欄下から15行ないし11行)P.999
「図1.オンチップの256ビットのシフトレジスタにインターフェースさ
れたDRAMアレイとランダムとシリアル回路を操作するのに必要であるコ
ントロール信号を示したマルチポート・ビデオ・メモリの基本的なブロック
線図(訳文3頁図1とその説明。英文1及びその説明)」P.1000Fig.
オ「非同期モードでは,シフト・クロック(SCLK)ピンの制御下で,シ
リアル・インプット(SIN)とシリアル・アウトプット(SOUT)のピ
ンは,データをシフトレジスタ中に,あるいはシフトレジスタの外にそれぞ
れシフトさせる(訳文3頁の5行ないし7行。英文左欄上から7行。」P.1000
ないし10行)
カ「シフトレジスタは,図示の如く,4つのカスケード接続された64ビッ
トのセグメントに分割されており,カラム(列)アドレスの最上位2ビット
によって与えられる2ビットのバイナリコードによってSOUTに接続され
るセグメントが選択される(訳文4頁の6行ないし9行。英文左欄。」P.1000
下から2行ないし右欄2行)
キ「図3.転送読み取り操作とその後の同時と非同期DRAM書き込みと
シリアル・シフトサイクルを示すタイミング図。256ビットの情報はメ
モリの行からシフト・レジスタへ転送され,順次にシフトアウトされる。
レジスタから出る最初のビットはRASの立ち上がりによりトリガーされ
。,,るその後全てのビットはSCLKインプットによりレジスタを通って
P.1002レジスタから外に伝送される(訳文6頁の3図とその説明。英文。」
及びその説明)Fig.3。
ク「256ビットシフトレジスタは実際には,4つのカスケード接続された
64ビットシフトレジスタにより構成されている。レジスタセグメントは,
それぞれSINとSOUTのピンでデバイスから,又はデバイスヘインター
。リーブされた2つの32ビットのレジスタセクションとして実現されている
各セグメント又は“タップ”選択は,シフトレジスタの転送サイクル中に,
CASがローとなるとき最上位2つのカラムアドレスピンに印加される2ビ
ットコードによって制御される。この2ビットが00なら,256ビットの
すべてが,ビット00からシフト・アウトできる。バイナリ01なら,19
2ビットがビット64からシフト・アウトできる。バイナリ10なら,12
8ビットがビット128からシフト・アウトできる。バイナリ11なら,最
後の64ビットが192ビットのところからシフト・アウトできる(訳文。」
9頁の6行ないし15行。英文左欄下から4行ないし右欄9行)P.1003
よって,引用例1には,ビデオ用のデュアルポートメモリであって,2(2)
ビットコードで指定することによりシフトレジスタからの読み出し開始位置
を4通りに選択可能にした半導体記憶装置が記載されていることが認めら
れ,その構成は次のとおりである。
a’64K×1ダイナミックRAMアレイと,
b’各列に対してデータを一時的に格納する高速256ビット・シフトレジ
スタとを有し,
c’ダイナミックRAMアレイ内の行の情報を単一メモリ・サイクルで前記
高速256ビット・シフトレジスタに転送して格納し,前記高速256ビ
ット・シフトレジスタ内のデータをシリアル・アウトプット(SOUT)
ピンを介して順次外部に出力する半導体記憶装置において,
d’セグメント又は“タップ”の選択に従って,所定の列(ビット00,ビ
ット64,ビット128,又はビット192)から前記高速256ビット
・シフトレジスタの内容を外部に出力する
e’ことを特徴とする半導体記憶装置
本件特許発明1との対比(3)
ア構成要件Aについて
’「」,引用例1の構成aにおける64K×1ダイナミックRAMアレイは
構成要件Aにおける「マトリクス状に配列された複数のメモリセル」に該当
する。よって,引用例1に構成要件Aは開示されている。
イ構成要件Bについて
引用例1の構成b’における「高速256ビット・シフトレジスタ」は,
ダイナミックRAMアレイの1行分の256ビットのデータを各列に対応し
て一時的に格納しているから,構成要件Bにおける「データレジスタ」に該
当する。よって,引用例1に構成要件Bは開示されている。
ウ構成要件C及びDについて
引用例1には,DRAM中の行の情報は単一メモリ・サイクルでレジスタ
に転送されること及び256ビットの情報をDRAMの選択された行からシ
フトレジスタへ転送させることが記載されているから(前記ウ,エ,引(1))
用例1の構成c’における「ダイナミックRAMアレイ内の行の情報を単一
メモリ・サイクルで前記高速256ビット・シフトレジスタに転送して格納
し」は,構成要件Cにおける「前記メモリセル内の選択した行に並ぶページ
」。,,データを前記データレジスタに格納しに該当するさらに引用例1には
シリアル・アウトプット(SOUT)のピンはデータをシフトレジスタの外
にシフトさせると記載されており(前記オ,256ビットのデータは行(1))
単位(ページ単位)で順次出力されていることは明らかである。
したがって,引用例1の構成c’における「前記高速256ビット・シフ
トレジスタ内のデータをシリアル・アウトプット(SOUT)ピンを介して
順次外部に出力する半導体記憶装置において」は,構成要件Cにおける「前
記データレジスタ内のデータを順次外部に出力するページ読みだしモードを
備える半導体記憶装置において」に該当する。よって,引用例1に構成要件
C及びDは開示されている。
エ構成要件E及びFについて
前記1エで認定したとおり,本件特許発明1の構成要件Eの「選択さ(2)
れた行が切り換ると第1の所定の列から順次前記データレジスタの内容が外
部に出力される第1のモード」という記載は「第1のモード」という構成を,
とることによって,ページアドレスが変化するたびに,毎回アドレスを入力
する必要がなく,自動的に,第1の所定の列から順次データレジスタの内容
が外部に出力されるモードと解され「第2のモード」についても,同様であ,
る。
一方,引用例1では,メモリの動作は,ロウアドレス,2ビットのバイナ
リコード,カラムアドレスの順にアドレスが入力され,2ビットのバイナリ
コードによって読み出される先頭アドレスが決定する構成を採用していると
認められる。そして「シフトレジスタは,図示の如く,4つのカスケード接,
続された64ビットのセグメントに分割されており,カラム(列)アドレス
の最上位2ビットによって与えられる2ビットのバイナリコードによってS
OUTに接続されるセグメントが選択され(前記カ「各セグメント又」),(1)
は“タップ”選択は,シフトレジスタの転送サイクル中に,CASがローと
なるとき最上位2つのカラムアドレスピンに印加される2ビットコードによ
って制御される(前記ク)というのであるが,引用例1では,行が切り。」(1)
換わるごとに,再び2ビットのバイナリコードを入力しないとは記載されて
いないから,行が切り換わるたびに読み出し位置の指定を行わない方式が開
示されているとは断定できない。
したがって,引用例1は,ページアドレスが変化するたびに,毎回アドレ
スを入力する必要がなく,自動的に,第1の所定の列から順次データレジス
タの内容が外部に出力されるモードである「第1のモード」及び「第2のモ
ード」を備えているとはいえず,結局,この点で,上記構成d’は,構成要
件E及びFと相違する。
オ構成要件Gについて
引用例1の構成e’は構成要件Gと一致する。
カ以上のとおり,引用例1は,本件特許発明1と構成要件A,B,C,D
及びGにおいて一致するが,構成要件E及びFにおいて相違する。
本件特許発明2及び3について(4)
上記と同様の理由により,引用例1の構成d’は,構成要件L及びR(3)
と一致しない。
以上により,本件特許発明が引用例1により新規性を欠如するとの被告(5)
の主張は理由がない。
4争点ウ(新規性欠如その2)について(2)
引用例2の内容(1)
本件特許の出願前に頒布された特開昭62-298095号公報(乙7)に
は,次の記載がある。
ア「この発明は,半導体記憶装置に関するもので,例えば,……EPROM
……装置に利用して有効な技術に関するものである(1頁右欄1行ないし7」
行)
イ「上記EPROM装置においては,その書き込みに際して,既に書き込み
データが存在するエリアに書き込みを行うと,多重書き込みによって前のデ
。,ータ及び新たに書き込むデータの双方が実質的に破壊されてしまうそこで
その内容を読み出してどのエリアまで書き込みが行われているか否かを調べ
るとことが考えられる。しかしながら,例えば全ビットが論理“1(フロー”
ティングゲートに電荷が存在しない状態)のような書き込みデータが存在す
ることがあるため,上記の読み出し(全ビット論理“1)を持って直ちに空”
きエリアと判定できない。したがって,それぞれのEPROM装置毎に書き
込みの記録を残して置く必要がありその記録管理が面倒になる(1頁右欄1」
6行ないし2頁左上欄9行)
ウ「この発明の目的は,空きエリアを簡単に識別できる機能を持つ半導体記
憶装置を提供することにある(2頁左上欄15行ないし17行)」
エ「問題点を解決するための手段〕……電気的な書き込が行われるプログラ〔
マブルROMに,書き込みデータに対応して,その書き込済を示す情報ビッ
トを格納するエリアを設けるものである(2頁右上欄1行ないし7行)」
オ「発明の効果〕……単位のデータに対してその書き込済を記録する情報ビ〔
ットを付加して書き込みを行うことによって,その情報ビットの読み出しに
よって書き込み済のメモリエリアを容易に検索することができる(6頁右。」
上欄13行ないし16行)
カ「この実施例では,例えば8ビットの単位でのデータの保持が行われる場
合,上記メモリアレイM-ARY,センスアンプSA及びデータ出力バッフ
ァDOB,データ入力バッファDIBは,9個から構成される。上記9個の
各回路のうち,8個の各回路を用いて上記8ビットの単位でのデータ書き込
み/読み出しが行われる。そして,残り1個のメモリアレイM-ARY,セ
ンスアンプSA及びデータ出力バッファDOB,データ入力バッファからな
,。,る回路は書き込み状態を記録する情報ビットとして利用されるすなわち
上記構成の9個の各回路を用いて9ビットの単位での書き込みを行う場合,
8ビット分がデータとし,残り1ビット分が書き込み状態を記録する情報ビ
ットとして論理“0”が書き込まれる(4頁右下欄17行ないし5頁左上。」
欄11行)
キ「第2図には,上記実施例のEPROM装置の書き込み状態を示すメモリ
マップ図が示されている。例えば,EPROMが4096×9ビットの記憶
容量を持つ場合,そのアドレスは,16進法で表現すると,$000(0)
から$FFF(4096)までのアドレス空間を持つものとされる(5頁。」
左上欄17行ないし同右上欄2行)
ク「したがって,次に上記EPROMに対して別のデータを書き込むとき,
読み出しモードとしてアドレス$000から順に上記情報ビットSBの読み
出しを行う。そして,その情報ビットSBが論理“1”を判定し,空きエリ
アの先頭アドレスを知ることができる(5頁右上欄13行ないし18行)。」
「,ケ単位のデータに対してその書き込み済を記録する情報ビットを付加して
書き込みを行うことによって,その情報ビットの読み出しによって書き込み
済のメモリエリアを容易に検索することができる(5頁右下欄13行ない。」
し17行)
本件特許発明との対比(2)
アよって,引用例2には,データの書き込まれていない空きエリアを簡単
に探し出せるようにすることを目的として,メモリ・アレイ内に書き込み
データに対応して,その書き込み済みを示す情報ビットを格納するエリアを
設ける構成が記載され,実施例には,9ビット単位に1ビットの情報ビット
,,()「」,を設け情報を書き込むとともに情報ビットSBに0を書き込み
情報ビットが「1」となっているエリアを探すことにより空きエリアを容易
に判定できるようにする構成が開示されている。
イしかしながら,上記カの「8ビットの単位でのデータの保持が行われる(1)
場合,上記メモリアレイM-ARY,センスアンプSA及びデータ出力バッ
ファDOB,データ入力バッファDIBは,9個から構成される。上記9個
の各回路のうち,8個の各回路を用いて上記8ビットの単位でのデータ書き
込み/読み出しが行われる(4頁右下欄17行ないし5頁左上欄3行)と。」
の記載からすると,引用例2の構成は,センスアンプ(SA,データ出力バ)
ッファ(DOB)及び外部端子(I/O)をそれぞれ9個ずつ有しており,
9個のデータ出力バッファのうち,8ビットは同時に出力されていると認め
られ(第1図参照,少なくとも,データを順次出力する構成を有していない)
と解される。そうすると,引用例2は,そもそも,ぺージデータ出力バッフ
ァ内のデータを順次外部に出力するものとはいえず,本件特許発明1の構成
要件C,本件特許発明2の構成要件J,本件特許発明3の構成要件Pの構成
と一致しない。したがって,引用例2は「データレジスタ内のデータを外部,
に出力する」ことを前提とする本件特許発明1の構成要件E及びF,本件特
許発明2の構成要件L並びに本件特許発明3の構成要件Rの構成とも一致し
ない。
以上により,本件特許発明が引用例2により新規性を欠如するとの被告(3)
の主張は理由がない。
5争点(損害の発生及びその額)について(3)
以上のとおり,被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属し,本件特許(1)
は無効にされるべきものとは認められないから,被告の行為は,原告の本件
特許権を侵害する。そして,特許法103条により,被告は,その侵害行為
について過失があったものと推定されるから,これにより原告が被った損害
を賠償すべきである。
平成16年7月から同年9月末日までの損害(2)
ア本件特許発明の相当な実施料率が1パーセントであること,被告におけ
る平成16年7月から同年9月末日までの被告製品の売上げは1億338
6万6842円であることは当事者間に争いがない。
イよって,特許法102条3項により受けるべき金銭の額は,133万8
668円と認めるのが相当である。
133,866,8420.011,338,668×=
平成16年10月から平成17年6月末日までの損害(3)
ア本件特許発明の相当な実施料率が1パーセントであること,被告におけ
る平成16年10月から平成17年6月末日までの被告製品の売上げは6
億5034万3486円であることは当事者間に争いがない。
イよって,特許法102条3項により受けるべき金銭の額は,650万3
435円と認めるのが相当である。
650,343,4860.016,503,435×=
以上のとおり,被告は,原告に対し,合計784万2103円及び内金(4)
133万8668円に対する平成17年11月8日から,残金650万34
35円に対する同月26日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合によ
る遅延損害金を支払う義務がある。
6結論
以上のとおり,被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属し,本件特許は無
効にされるべきものとは認められないから,原告の特許法100条に基づく被
告製品の譲渡,貸渡し,輸入又は譲渡若しくは貸渡しの申出の差止め及び廃棄
請求は,理由がある。
なお,原告は,輸入の申出についての差止めをも請求するが,輸入の申出は
特許法2条3項1号所定の実施行為に含まれていないから,同請求は理由がな
い。また,原告は,半製品についての廃棄も請求し,それは,別紙被告製品説
明書記載の構成を具備しているが,半導体記憶装置として完成するに至ってい
ないものをいう趣旨と解されるが,本件においては,被告製品は韓国等から輸
入したもので,被告において生産するものではなく,被告が半製品を所有して
。,。いることを認めるに足りないよって原告の半製品の廃棄請求も理由がない
また,上記特許権侵害を理由とする損害賠償請求は,前記5で認定した限度
で理由がある。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
部眞規子裁判長裁判官高
東海林保裁判官
田邉実裁判官
被告製品目録
下記製品番号の半導体記憶装置

HY27US08561M-TPCB
HY27US08561M-TPEB
HY27US08121M-TPCB
HY27US08121M-TPIB
HY27US08121M-TCB
HY27UA081G1M-TPCB
HY27UA081G1M-TCB
以上

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