弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人兼上告代理人西山明行の上告理由について
 原審の適法に確定した事実関係の下において、本件各処分及び裁決の取消しを求
める本件訴えをいずれも不適法とした原審の判断は、正当として是認することがで
きる。都市計画法二九条ないし三一条及び三三条の規定するところによれば、同法
二九条に基づく許可(以下、この許可を「開発許可」という。)は、あらかじめ申
請に係る開発行為が同法三三条所定の要件に適合しているかどうかを公権的に判断
する行為であって、これを受けなければ適法に開発行為を行うことができないとい
う法的効果を有するものであるが、許可に係る開発行為に関する工事が完了したと
きは、開発許可の有する右の法的効果は消滅するものというべきである。そこで、
このような場合にも、なお開発許可の取消しを求める法律上の利益があるか否かに
ついて検討するのに、同法八一条一項一号は、建設大臣又は都道府県知事は、この
法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこれらの規定に基づく処分に違反し
た者に対して、違反を是正するため必要な措置を採ることを命ずることができる(
以下、この命令を「違反是正命令」という。)としているが、同法二九条ないし三
一条及び三三条の各規定に基づく開発行為に関する規制の趣旨、目的にかんがみる
と、同法は、三三条所定の要件に適合する場合に限って開発行為を許容しているも
のと解するのが相当であるから、客観的にみて同法三三条所定の要件に適合しない
開発行為について過って開発許可がされ、右行為に関する工事がされたときは、右
工事を行った者は、同法八一条一項一号所定の「この法律に違反した者」に該当す
るものというべきである。したがって、建設大臣又は都道府県知事は、右のような
工事を行った者に対して、同法八一条一項一号の規定に基づき違反是正命令を発す
ることができるから、開発許可の存在は、違反是正命令を発する上において法的障
害となるものではなく、また、たとえ開発許可が違法であるとして判決で取り消さ
れたとしても、違反是正命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべ
きである。そうすると、開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付もされた
後においては、開発許可が有する前記のようなその本来の効果は既に消滅しており、
他にその取消しを求める法律上の利益を基礎付ける理由も存しないことになるから、
開発許可の取消しを求める訴えは、その利益を欠くに至るものといわざるを得ない。
論旨は、違憲をいう点を含め、これと異なる見解に立って原判決の法令違背をいう
ものにすぎず、いずれも採用することができない。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、
裁判官藤島昭の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決
する。
 裁判官藤島昭の補足意見は、次のとおりである。
 一 都市計画法(以下「法」という。)は、無秩序な市街化を防止して都市の健
全で計画的な発展を図ることを趣旨とする市街化区域、市街化調整区域の制度を設
け、かつ、良好な市街地を実現するため、宅地造成に一定の水準を確保することを
目的として、開発行為に対する規制を行っている。その規制の概要は次のとおりで
ある。
 (1) 市街化区域又は市街化調整区域において一定規模以上の開発行為を行う者
(以下「開発行為者」という。)は、原則として、あらかじめ、法三三条一項各号
に列挙されている開発許可の基準(以下「許可基準」という。)に準拠して、法及
び都市計画法施行規則(以下「規則」という。)所定の事項を記載した申請書及び
これに添付すべき図書等を提出して(法三〇条一、二項、規則一五条ないし一七条)、
都道府県知事(ただし、法八六条一項に基づく委任がされた場合は、委任を受けた
市長。以下「知事等」という。)の許可(以下「開発許可」という。)を受けなけ
ればならず(法二九条)、(2) 知事等は、申請に係る開発行為が許可基準に適合
しているときは、開発許可をしなければならない(法三三条一項)。(3) 開発行
為者は、当該開発行為に関する工事を完了したときは、その旨を知事等に届け出な
ければならず(法三六条一項)、(4) 知事等は、右届出があったときは、当該工
事が開発許可の内容に適合しているかどうかについて検査し、その検査の結果当該
工事が当該開発許可の内容に適合していると認めたときは、検査済証を当該開発行
為者に交付し(法三六条二項)、当該工事が完了した旨を公告しなければならず(
法三六条三項)、(5) 開発許可を受けた開発区域内の土地においては、右公告が
あるまでの間は、知事等が支障がないと認めた場合を除いては、建築物等を建築し
てはならない(法三七条一号)。(6) そして、建設大臣又は都道府県知事は、法
又は規則の規定若しくはこれらの規定に基づく処分に違反した者に対して、建築物
等の改築、移転若しくは除却その他違反を是正するため必要な措置を採ることを命
ずることができる(以下、この命令を「違反是正命令」という。)とされている(
法八一条一項一号)。
 これら一連の規定に照らせば、開発許可は、開発行為に着手する前に、当該開発
行為が許可基準に適合していることを公権的に判断する行為であって、それを受け
なければ開発行為に関する工事をすることができないという法的効果が付与されて
おり、また、検査済証の交付は、当該工事が開発許可の内容に適合していることを
公権的に判断した上でされるものであって、それが交付されなければ当該工事の完
了の公告はされず、予定されている建築物等を建築することができないという法的
効果が付与されているのであって、許可基準に違反する開発行為がされ、更にその
上に建築物等の建築が進められることを未然に防止することを目的としたものとい
うことができる。
 二 そこで、まず、開発許可と検査済証の交付との関係について検討する。
 前述したとおり、知事等は、開発許可に係る工事が完了した旨の届出があったと
きは、当該工事が開発許可の内容に適合しているかどうかを検査し、その検査の結
果当該工事が当該開発許可の内容に適合していると認めたときは、検査済証を交付
することとなっている。このように、検査済証の交付という行政処分は、開発行為
に関する工事が、先行する開発許可という行政処分の内容に適合するかどうかを検
査した上でされるものであるため、二つの行政処分は、不可分的に関連を有するも
のとしてとらえることができる。この点、建築基準法においては、建築確認は、当
該建築物の建築計画が建築関係規定に適合するかどうかという観点からされ(建築
基準法六条)、工事が完了したときは、建築主事は、その工事が建築確認の内容に
適合しているかどうかを検査するのではなく、改めて、当該建築物及びその敷地が
建築関係規定に適合しているかどうかを検査し、これに適合していることを認めた
ときは検査済証を交付する(建築基準法七条)という手続を採っているため、この
二つの法律が定める手続を比較すると、そこに差異があることは明らかである。建
築基準法においては、建築確認と検査済証の交付は、切り離されて別個独立の行政
処分となっているため、建築確認の存在は、検査済証の交付を拒否する上において
法的障害とならないことはいうまでもない。これに対し、都市計画法上は、開発許
可の存在が、検査済証の交付を拒否する上において法的障害となり得ると解する余
地がある。例えば、開発行為者が、自己の行おうとする開発行為が許可基準に適合
していないのに、過ってこれに適合するものと考えて、客観的には許可基準に適合
しない開発行為をすることの許可を求める旨の申請書等を提出したにもかかわらず、
知事等の過誤によりこれが看過され、右申請に係る開発行為が許可基準に適合する
との誤った判断の下に開発許可がされた場合には、開発許可の内容が客観的には許
可基準に違反するものであっても、開発行為に関する工事が開発許可の内容に適合
している以上は、検査済証の交付を拒否できないという解釈も、法三六条二項の文
理のみからすれば可能だからである。
 しかし、法三六条二項にいう開発許可は、それが法三三条の許可基準に適合して
いることを当然の前提とするもので、知事等の過誤により、許可基準に違反する開
発許可がされるなどということは、もとより法の予定するところではない。したが
って、許可基準に違反する開発行為の現出を防止し、都市の健全な発展と秩序ある
整備を図るという法の目的に整合するよう、法を合目的的に解釈することは許され
るべきである。右の見解に立てば、法三六条二項にいう開発許可には、法三三条の
許可基準に違反するものは含まれないと限定的に解釈するのが相当である。そうす
ると、たとえ工事が開発許可の内容に適合していても、開発許可の内容自体が客観
的に許可基準に違反した違法なものである場合には、知事等は、検査済証の交付を
拒否し得ると考えられる。このように考えると、開発許可の存在は、検査済証の交
付を拒否する上で何ら法的障害となるものではない。
 三 次に開発許可、検査済証の交付と法八一条一項一号に基づく違反是正命令と
の関係について検討する。
 前記の例に即して考えると、開発行為に関する工事が開発許可の内容には適合し
ているが、その開発許可が、知事等の過誤により、客観的には許可基準に違反して
いる場合には、二で述べたように、知事等は、検査済証の交付を拒否し得る。しか
も、そのような開発許可に従った開発行為は、客観的にみれば法三三条の許可基準
に違反したものであり、したがって、開発行為者は、法三三条の許可基準に違反し
た開発行為を行った者として、法八一条一項一号の「この法律に違反した者」に該
当し、その者に対して、法八一条一項一号に基づく違反是正命令を発し得ることと
なる。そして、右の場合、仮に過って検査済証が交付されても、法八一条一項一号
に基づく違反是正命令を発し得る点は同じである。そうすると、開発許可の存在又
は検査済証の交付は、法八一条一項一号に基づく違反是正命令を発する上で法的障
害にはならない。
 なお、前記の例のような場合において、検査済証の交付を拒否され、あるいは、
違反是正命令が発せられたことにより、開発行為者が財産上の損害を受けた場合に、
開発許可に関する知事等の過失を理由に国家賠償を請求し得るか否かは、別個の問
題として、検討されるべきである。
 四 本件は、開発許可がされ、工事完了により検査済証が既に交付された事案で
あるが、前述したように、法に違反した者に対しては、開発許可又は検査済証の交
付を取り消すまでもなく、法八一条一項一号に基づく違反是正命令を発することが
できるので、違反是正命令を発するについての法的障害を除去するために、開発許
可及び検査済証の交付を取り消す必要があるとする考え方には賛成し難い。したが
って、本件開発許可及び検査済証の交付の取消しを求める訴えは、その利益を欠く
ものといわざるを得ない。
 五 ちなみに、開発許可に違反して許可区域外において開発行為に関する工事を
した場合、許可に付された条件に違反した開発行為に関する工事をした場合、詐欺
等不正な手段によって許可を得て開発行為に関する工事をした場合には、検査済証
の交付はあり得ず、また、右のような開発行為者に対しては、開発許可を取り消す
までもなく、法八一条一項二号ないし四号に基づき、違反是正命令を発し得ること
はいうまでもない。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    藤   島       昭
            裁判官    中   島   敏 次 郎
            裁判官    木   崎   良   平

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