主 文
1 被告は,原告Aに対し,金2998万4840円及び内金2848万4840円に対する平
成7年12月25日から,内金150万円に対する平成12年6月10日から各支払済
みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告B及び同Cに対し,各金88万円及び各内金80万円に対する平成7
年12月25日から,各内金8万円に対する平成12年6月10日から各支払済みま
で年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,これを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とす
る。
5 この判決は,原告ら勝訴部分に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,原告Aに対し,金2億6568万7111円及び内金2億4568万7111円に
対する平成7年12月25日から,内金2000万円に対する平成12年6月10日か
ら,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告B及び同Cに対し,各金550万円及び各内金500万円に対する平成
7年12月25日から,各内金50万円に対する平成12年6月10日から,各支払済
みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告らが被告に対し,原告A運転車両と被告運転車両との間の交通事
故により原告らが被った損害(遅延損害金の起算日は弁護士費用相当分以外は
本件事故時,弁護士費用相当分は訴状送達の翌日。)につき,民法709条,自賠
法3条(物損を除く。)に基づき,その賠償を求めた事案である。
1 争いのない事実等(証拠を示した部分以外は争いがない。)
(1) 原告Aと被告との間で,以下の交通事故が発生した(以下「本件事故」とい
う。)。
ア 日時 平成7年12月25日午後5時23分ころ
イ 場所 愛知県岡崎市a町b番地c先路線上(名古屋岡崎線,以下「本件事
故現場」という。)
ウ 車両1 普通貨物自動車(以下「被告車」という。)
エ 同運転者 被告
オ 車両2 自動二輪車(以下「原告車」という。)
カ 同運転者 原告A
キ 同同乗者 訴外D
ク 事故態様 被告車が本件事故現場にある交差点(以下「本件交差点」とい
う。)において北東から北北西へ右折しようとした際,対向車線を
南西から北東へ直進しようとした原告車に衝突した。
(2) 被告は本件事故当時被告車を運行の用に供していた。
(3) 被告の過失
本件事故は,被告が本件交差点に進入し右折するに際し,対向直進車両の有
無等を確認する注意義務があったにもかかわらず,これを怠り漫然と本件交差
点に進入し右折した過失により生じた。
(4) 受傷
原告Aは,本件事故により,脳挫傷,外傷性ショック,外傷性脳内血腫,右下腿
骨骨折の傷害を負った。
(5) 原告Aの入通院
原告Aは,以下のとおり入通院して治療を受けた。
ア 岡崎病院
平成7年12月25日から平成8年10月31日まで(312日間)入院
イ 三才山病院
平成8年10月31日から平成11年12月29日まで(1155日間)入院
ウ やはぎ医院(甲11,18の①)
平成12年1月13日ころにE医師が往診
(6) 後遺障害
原告Aは,上記傷害により遷延性意識障害等の後遺症が残り,その症状は自
賠法施行令2条別表1級3号記載の後遺障害(神経系統の機能又は精神に著し
い障害を残し,常に介護を要するもの)に該当する。
(7) 既払金 4365万0195円
原告Aは,本件事故に基づく損害に関し,被告並びに被告の契約する自賠責
保険及び任意保険から下記金員の支払を受けた。
記
ア 岡崎病院治療費 175万3570円
イ 三才山病院治療費 571万2920円
ウ その他 518万0615円
(ア) 近親者看護費 100万4000円
(イ) 家政婦看護費 4万7100円
(ウ) 症状固定後の付添費 356万6222円
(エ) 搬送料 6万0900円
(オ) 売店での購入費 15万8401円
(カ) 雑費 34万3992円
エ 文書料 3090円
オ 自賠責保険支払額 3000万円
カ 被告の内払 100万円
2 争点
(1) 事故態様及び過失割合
(被告の主張)
ア 本件事故の状況
被告は,本件交差点北東側手前付近から,対面する信号が黄色から赤色
に変わり,右折の矢印信号となるのを待つため減速して走行した。そして,被
告が毎時五,六キロメートルの速度で被告車を進行させ,本件交差点内に進
入し,信号を見ながらそのまま進行させたところ,本件交差点北東側手前の
横断歩道を越えた地点で対面する信号が黄色から赤色に変わるとともに,右
折の矢印信号が出た。そこで,被告は,対向車両は既に停止していると考え,
右折を開始したところ,約7.6メートル進んだ地点において原告車と衝突し
た。
原告Aは,本件事故時,本件交差点の対面する信号が赤信号(右折矢印信
号)であったにもかかわらず,これを無視して進入した疑いが強い。仮に本件
交差点進入直後に赤信号に変わったとしても,原告Aは,対面する信号が黄
色に変わった際,所定の停止位置で停止することが可能であったにもかかわ
らず,これを無視して停止せずに本件交差点に進入した重大な過失がある。
イ 過失割合
以上からすると,原告Aは,本件事故の発生に少なくとも70パーセントの過
失があった。
(原告らの認否及び反論)
ア 本件事故の状況
被告は,本件交差点進入時に対面する信号が黄色に変わったのであるか
ら,本来,道交法施行令に従い,停止線を越えることなく停止すべき義務があ
ったにもかかわらず,本件交差点に進入した上,進行を継続した。さらに被告
は,本件交差点を右折するに際し,本件交差点中心の直近の内側を進行す
る必要があるのにもかかわらず,これを無視して,極端な早回り右折を行っ
た。
また,被告は,本件交差点を右折するにつき,徐行する義務があったにも
かかわらず,これを怠り,漫然と毎時15キロメートルの速度で右折した。
そして,被告は,右折するに際し,対向車線を直進する車両の進行妨害をし
てはならない義務があるにもかかわらず,これを怠り漫然と本件交差点を右
折し,原告車の進行を妨害した。さらに,被告は,本件交差点に右折進入する
際,対向車線を進行する車両の有無等を確認していなかった。
他方,原告Aは,本件交差点が黄色信号になった時には既に本件交差点手
前の停止線で安全に停止することができなかったため,本件交差点に進入し
たものである。
イ 過失割合
以上の各事実によると,本件事故において原告Aに過失はない。仮に若干
の過失が認められたとしても,その過失割合は10パーセントを超えないという
べきである。
ウ また,被告は,原告らとの間で,本件訴訟を提起する前段階の交渉を行った
際,原告Aが20パーセント,被告が80パーセントの過失割合であることを認
めて示談を進めてきたのであるから,上記被告の主張は,信義則に照らし許
されない。
(2) 原告Aの損害
(原告らの主張)
下記アないしシの合計2億8442万3092円から既払金3873万5981円
(上記1(7)ア,イ,ウ(イ),(エ),(オ),エ,オの合計)を控除した2億4568万711
1円に,下記スの弁護士費用2000万円を加算した2億6568万7111円を請
求する。
ア 入院治療費
(ア) 岡崎病院個人負担分 175万3570円
(イ) 三才山病院個人負担分 571万2920円
イ 通院治療費 68万5600円
(ア) 既支出分1万8990円
原告Aは,平成11年12月29日の三才山病院退院後本件訴えの提起ま
での間に,往診及び検査等の治療関係費として,1万8990円を支出した。
(イ) 将来の治療費 66万6610円
原告Aは,三才山病院退院後2年以内に尖足手術を行う必要があり,同
手術の費用は70万円を下らない。訴え提起時を基準としてライプニッツ係
数で年5分の割合による中間利息を控除すると以下のとおりとなる。
700,000×0.9523=666,610
ウ 入院付添看護費 955万0100円
(ア) 近親者付添分 950万3000円
原告Aは,平成7年12月25日から平成11年12月29日までの間(ただ
し平成8年1月30日から同年2月2日までの4日間を除く。),近親者による
付添いを必要とした。1日当たり6500円として付添日数(1462日間)に乗
じると以下のとおりとなる。
6,500×1,462=9,503,000
(イ) 職業付添人分 4万7100円
原告Aは,平成8年1月30日から同年2月2日までの4日間職業付添人
による付添いを要し,その費用として4万7100円を支出した。
エ 雑費 1542万4775円
(ア) 入院雑費 249万2200円
原告Aは,本件事故により平成7年12月25日から平成11年12月29日
までの1466日間,入院を余儀なくされ,その期間中1日当たり1700円を
下らない入院雑費を必要とした。
1,700×1,466=2,492,200
(イ) 既払の搬送料,文書料 6万3990円
(ウ) 三才山病院売店での雑費 15万8401円
(エ) 平成12年1月から同年4月までの間の雑費
25万6995円
原告Aは,平成12年1月から同年4月までの間,紙おむつ,尿取りパッ
ト,ガソリン代等の雑費として25万6995円を支出した。
(オ) 将来の雑費 1245万3189円
原告Aは,平成12年5月(22歳)から平均余命に至るまで(55.93年),
上記(エ)の平均額である1か月当たり6万4248円の雑費を必要とする。そ
して,これにつき本件事故時における現価を,ライプニッツ係数により年5
分の割合で中間利息を控除して算出すると以下のとおりとなる。
64,248×12×(18.8757-2.7232)=12,453,189
オ 付添人の宿泊費・交通費・雑費 591万9222円
原告Bは,原告Aが入院した三才山病院に付き添うため,部屋賃借料,交通
費,雑費等の支出が必要となり,平成8年10月31日から平成11年12月29
日まで(約38か月)1か月当たり15万5769円の支出を余儀なくされた。
155,769×38=5,919,222
カ 退院後及び将来の付添看護費 8193万0299円
(ア) 平成11年12月30日から平成12年5月24日まで
95万5500円
原告B及び原告Cは,上記期間中,原告Aを自宅で付添看護した。その費
用は1日当たり6500円が相当である。
6,500×147=955,500
(イ) 平成12年5月25日から平成13年1月31日まで
104万0894円
原告B及び同Cは,上記期間中,引き続き付添看護に従事するので,以
下のとおりの費用を要する。
6,500×252×0.9532×8÷12=1,040,894
(ウ) 平成13年2月以降 6927万6051円
平成13年2月以降原告Aの平均余命までの間は,原告Bが60歳に達す
ること及び原告Cが就労していることから,原告Aの付添看護のためには職
業付添人が必要である。その費用は1日当たり1万3000円を要する。そし
て,上記付添看護費用の本件事故時における現価をライプニッツ係数によ
り年5分の割合で中間利息を控除して算出すると以下のとおりとなる。
13,000×365×(18.9292-4.3294)=69,276,051
(エ) 上記期間の家族による夜間付添看護費
1065万7854円
上記職業付添人が日中付添看護をする期間についても夜間のみは家族
による付添看護の必要があるが,その費用は1日当たり2000円が相当で
ある。この損害につき本件事故時における現価をライプニッツ係数により年
5分の割合による中間利息を控除して算出すると以下のとおりとなる。
2,000×365×(18.9292-4.3294)=10,657,854
キ 症状固定後の器具等購入費 1238万7779円
(ア) 車椅子(介護車) 15万円
原告Aは,平成10年10月,車椅子(介護車)1台を15万円で購入した。
(イ) 屋外用車椅子 80万1750円
原告Aは,前記後遺障害が残っているのであるから,(ア)の車椅子の耐用
年数が経過する平成13年10月以降原告Aの平均余命までの間,価格1
台15万円,耐用年数3年の割合で屋外用の車椅子を必要とし,これにつき
ライプニッツ係数で年5分の割合による中間利息を控除した買換え費用を
算出すると以下のとおりとなる。
150,000×(0.784+0.677+0.585+0.505+0.436+0.377+0.326+0.281+0.243+0.210
+0.181+0.157+0.135+0.116+0.101+0.087+0.079+0.065)=801,750
(ウ) 室内用車椅子 77万7664円
原告Aは,前記後遺障害のため,(イ)の屋外用車椅子のほかに室内用の
車椅子が必要であったことから,平成12年3月に13万7196円相当の車
椅子を購入した(自己負担分2万2000円)。そして,この車椅子が耐用年
数を満了する平成15年3月から原告Aの平均余命までの間,1台15万60
00円,耐用年数3年の割合で屋内用の車椅子を必要とし,これにつき,ラ
イプニッツ係数で年5分の割合による中間利息を控除して買換え費用を算
出すると以下のとおりとなる。
156,000×(0.711+0.614+0.53+0.458+0.396+0.342+0.295+0.255+0.22+0.19+0.1
64+0.142+0.123+0.106+0.092+0.079+0.068+0.059)=755,664
22,000+755,664=777,664
(エ) 電動ベッド(マットレス等付属品付)
101万1414円
原告Aは,前記後遺障害のため電動ベッドを購入する必要があり,平成1
2年1月に住宅改造前の状態にあわせて簡易なものを38万6950円で購
入した(自己負担分は16万5000円であった。)が,同ベッドの耐用年数は
8年である。そこで原告Aは平成20年から原告Aの平均余命までの間,1
台51万7400円(住宅改造後は,室内の状況に適合する特殊寝台を要す
る。),耐用年数8年の割合で特殊寝台を必要とし,これにつきライプニッツ
係数で年5分の割合による中間利息を控除して買換え費用を算出すると以
下のとおりとなる。
517,400×1.05×(0.557+0.377+0.255+0.173+0.117+0.079)=846,414
165,000+846,414=1,011,414
(オ) 福祉自動車 805万6301円
原告Aは,上記後遺障害のため福祉自動車が必要である。そして,平成1
3年6月から原告Aの平均余命までの間,1台380万4000円,耐用年数1
0年の割合で福祉自動車を必要とし,これにつきライプニッツ係数で年5分
の割合による中間利息を控除して買換え費用を算出すると以下のとおりと
なる。
3,804,000×1.05×(0.823+0.505+0.31+0.19+0.117+0.072)=8,056,301
(カ) 歩行器 29万7224円
原告Aは,前記後遺障害のため歩行器が必要である。そして,平成13年
6月から原告Aの平均余命までの間,1台5万3000円,耐用年数3年の割
合で歩行器を必要とし,これにつきライプニッツ係数で年5分の割合による
中間利息を控除して買換え費用を算出すると以下のとおりとなる。
53,000×(0.823+0.711+0.614+0.53+0.458+0.396+0.342+0.295+0.255+0.22+0.
19+0.164+0.142+0.123+0.106+0.092+0.079+0.068)=297,224
(キ) 杖5万6080円
原告Aは,前記後遺障害のため杖が必要である。そして,平成13年6月
から原告Aの平均余命までの間,1本1万円,耐用年数3年の割合で杖を
必要とし,これにつきライプニッツ係数で年5分の割合による中間利息を控
除して買換え費用を算出すると以下のとおりとなる。
10,000×(0.823+0.711+0.614+0.53+0.458+0.396+0.342+0.295+0.255+0.22+0.
19+0.164+0.142+0.123+0.106+0.092+0.079+0.068)=56,080
(ク) 尖足調整装具 21万4313円
原告Aは,本件交通事故により右足の尖足を調整する器具が必要となっ
た。そして,平成13年11月から原告Aの平均余命までの間,1式4万009
6円,耐用年数3年の割合で尖足調整装具を必要とし,これにつきライプニ
ッツ係数で年5分の割合による中間利息を控除して買換え費用を算出する
と以下のとおりとなる。
40,096×(0.784+0.677+0.585+0.505+0.436+0.377+0.326+0.281+0.243+0.21+0
.181+0.157+0.135+0.116+0.101+0.087+0.079+0.065)=214,313
(ケ) ポータブルトイレ 29万4050円
原告Aは,前記後遺障害のためポータブルトイレが必要である。そして,
平成12年1月に4万8300円(うち2300円は消費税)でポータブルトイレ
を購入したほか,平成15年1月から原告Aの平均余命に至るまでの間,1
台4万6000円,耐用年数3年の割合でポータブルトイレを必要とし,これ
につきライプニッツ係数で年5分の割合による中間利息を控除して買換え
費用を算出すると以下のとおりとなる。
46,000×
1.05×(0.746+0.645+0.557+0.481+0.416+0.359+0.31+0.268+0.231+0.2+0.173
+0.149+0.129+0.111+0.096+0.083+0.072+0.062)=245,750
(コ) 会話補助機 72万8983円
原告Aは,前記後遺障害のため会話補助機が必要である。そして,平成1
3年6月から原告Aの平均余命までの間,1台12万3800円,耐用年数3
年の割合で会話補助機を必要とし,これにつきライプニッツ係数で年5分の
割合による中間利息を控除して買換え費用を算出すると以下のとおりとな
る。
123,800×
1,05×(0.823+0.711+0.614+0.53+0.458+0.396+0.342+0.295+0.255+0.22+0.19
+0.164+0.142+0.123+0.106+0.092+0.079+0.068)=728,983
ク 後見人選任費用 5万3579円
原告Aは,前記後遺障害のため禁治産宣告及び後見人選任手続が必要で
あった。上記各手続の費用は5万3579円であった。
ケ 後遺症による逸失利益 1億0448万4559円
原告Aは,症状固定時から67才に至るまでの間(49年間)就労可能であっ
た。そして,平成9年賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計男子全年齢
平均賃金である575万0800円を基礎収入として,ライプニッツ係数により年
5分の中間利息を控除してその逸失利益を算出すると以下のとおりとなる。
5,750,800×18.1687=104,484,559
コ 住宅改造費 1162万8593円
原告Aは,前記後遺障害のため現在居住している住居の改造工事を行う必
要がある。具体的には①住居の段差等を解消する又はスロープを設置する
工事,②納屋を改修して障害者用入浴施設を設置する工事,③入浴施設等
の改修に伴い障害者用洗面所・トイレ等の設備,配置を変更,新設する工
事,④一階に原告Aのための部屋を新設する工事,⑤一階の原告Aの部屋に
サンルームを新設する工事,⑥原告Aが家屋内を移動できるようにエレベータ
ーを設置する工事,⑦2階にも居住性を確保するために洋間及びトイレを改
装する工事が必要である。
これらの各工事の費用の合計は1162万8593円である。
サ 慰謝料
(ア) 入院慰謝料 450万円
原告Aは,本件事故により311日間の入院を余儀なくされ,その入院慰
謝料は450万円を下らない。
(イ) 後遺障害慰謝料 3000万円
原告Aは,18歳という若年ながら死亡にも比肩し得べき後遺障害を負
い,労働能力を喪失し,他人の介護を受けなければならない生活を余儀な
くされ,将来の可能性を奪われた。このため,今後長期間精神的,肉体的
苦痛を受けながら生活しなければならないのであって,その損害は著しい
ものである。その後遺障害慰謝料は3000万円を下らない。
シ 物損(自動二輪車) 30万5000円
原告Aは,本件事故により,原告車を破損され,その損害は金30万円を下
らない。また,原告Aは,本件事故後,原告車を牽引する費用として5000円
を支出した。したがって,本件事故により原告Aの物損として合計30万5000
円の損害が発生した。
ス 弁護士費用 2000万円
原告Aは,本訴の提起及び訴訟の追行を行うため弁護士に委任し,その弁
護士費用は2000万円を下らない。
(被告の認否及び反論)
ア 入院治療費
原告Aが,本件事故により岡崎病院及び三才山病院に入院したこと,その入
院費用として原告主張の金額を支出したこと,被告が治療費を費目として同
額の金員を原告らに支払ったことは認める。
しかし,原告Aの症状固定日は,平成8年8月9日であり,以降の入院につ
いては,原告らが退院に応じなかったため入院が継続したに過ぎない。
イ 通院治療費
否認する。
ウ 入院付添看護費
否認する。なお,被告は,付添看護費を費目として内払金を支払ったことは
認めるが,あくまで内払金支払の便宜のために費目を定めたに過ぎず,原告
らの損害発生を確定的に認めたものではない。
原告らの付添看護の必要性,相当性はない。
エ 雑費
否認する。
オ 付添人の宿泊費,交通費,雑費等
否認する。
カ 退院後及び将来の付添看護費
否認する。
原告らは,岡崎市等の公的福祉により相当程度看護の負担を軽減されてい
る。また,原告Aは,立位,摂食,一定のコミュニケーション等を行えるのであ
るから,近親者の付添いの負担は大きく軽減されている。
キ 症状固定後の器具等購入費
(ア) 車椅子(介護車)
認める。
(イ) 屋外用車椅子
否認する。現実には岡崎市等地方公共団体の福祉でまかなわれるので,
原告らの出費はない。
(ウ) 室内用車椅子
否認する。
(エ) 電動ベッド
否認する。原告Aに電動ベッドの必要性はない。
(オ) 福祉自動車
否認する。自動車の改造費の範囲であればともかく,自動車自体を購入
する必要はない。
(カ) 歩行器
否認する。原告Aに歩行器の必要性はない。
(キ) 杖
否認する。原告Aに杖の必要性はない。
(ク) 尖足調整具
否認する。原告Aに尖足調整具の必要性はない。
(ケ) ポータブルトイレ
否認する。原告Aにポータブルトイレの必要性はない。
(コ) 会話補助機
否認する。原告Aに会話補助機の必要性はない。
ク 後見人選任等費用
認める。
ケ 後遺障害による逸失利益
否認する。
原告Aは,今後自宅における生活を継続するのであるから,通常の勤労者
と異なり,外食費,衣服費,携帯電話通信費,交際費,遊興費,自動車購入
費及びガソリン代等の支出を免れることになる。
したがって,原告Aの逸失利益を算定するに当たっては,1割程度の生活費
控除をするのが相当である。
コ 住宅改造費
否認する。
原告らが,現実に工事を行ったのは129万円であり,現実に負担していな
い金額については損害が現実化しておらず,損害として認めることはできな
い。
サ 慰謝料
否認する。
シ 物損(自動二輪車)
否認する。
ス 弁護士費用
否認する。
(3) 原告B,同Cの損害
(原告らの主張)
ア 慰謝料 1000万円
原告B及び同Cは,長男である同Aが本件事故により重傷を負い重大な後
遺障害を残し,その将来が失われたことにより筆舌に尽くせない精神的苦痛
を被った。また,原告B及び同Cは,同Aの看護を行っており,看護により被る
精神的,肉体的な負担も甚大である。
これらに対する原告B及び同Cの慰謝料は各500万円の合計1000万円を
下らない。
イ 弁護士費用 100万円
原告B及び同Cの損害の程度に照らすと,その弁護士費用は各50万円の
合計100万円が相当である。
(被告の認否)
否認する。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(事故態様及び過失割合)について
(1) 上記争いのない事実等並びに証拠(甲1ないし3,27の①,②,28,乙1ない
し7,13,14,被告本人)及び弁論の全趣旨によると以下の事実が認められ
る。
ア 本件事故現場は,別紙図面のとおり,南西から北東に通じる県道岡崎環状
線(以下「本件道路」という。)と北北西から南南東に通じる県道名古屋岡崎線
(以下「交差道路1」という。)と本件交差点から北西に通じる道路(以下「交差
道路2」という。)とが交差する本件交差点内にある。本件道路は,片側1車線
の道路であるが,本件交差点手前部分で右折車のための車線が設けられ2
車線となるため,両端の歩道を含めると幅員は本件交差点の北東側で約1
6.2メートルになる。本件道路は,アスファルトによって舗装され,法定制限
速度は毎時40キロメートルである。
他方,交差道路1は本件交差点の南南東側で幅員約15.3メートル,交差
道路2は幅員約4.1メートルの道路である。本件道路と交差道路1とは直交
した状態ではないため,本件交差点は本件道路方向に長く,例えば南西から
北東に進行する場合本件道路の本件交差点南西側手前の停止線から北東
側の本件交差点を通過し終える地点までの距離は,約57.3メートルであっ
た。
本件交差点は信号機が設置されており,本件道路の進路の信号機は青信
号55秒,黄信号4秒,赤(右折矢印)信号8秒,赤信号53秒(ただし前記各5
秒はいわゆる全赤信号。)の120秒サイクルで点灯していた。
イ 本件道路北東進行車線の交通量は,本件事故当時多かった。また,本件事
故日の天候は曇りであったが,本件道路は乾燥し,本件道路南西進行車線
から対向車線の見通しは良かった。
ウ 被告は,本件事故日,午後5時ころ自動車用品店を出て,愛知県安城市に
ある自宅に帰るため原告車を運転し,本件道路南西進行車線を走行し,本件
交差点に差し掛かった。被告は本件交差点に差し掛かるまで毎時約40キロ
メートル程度の速度で走行していたが,本件交差点で右折するために毎時約
15キロメートルに減速した上,本件交差点北東側入口の右折通行帯を進行
した。
被告は,本件道路南西進行車線の本件交差点手前横断歩道に差し掛かっ
た際,別紙図面記載①の地点において,本件交差点の対面する信号が黄色
になったことを確認した。そこで,被告は,同信号がその後赤(右折矢印)信号
になるのを待つために信号を確認しながらさらに減速して本件交差点に進入
した。
被告は,別紙図面記載①の地点から約7.6メートル進行した別紙図面記
載②の地点において本件交差点の対面する信号が赤(右折矢印)信号になっ
たのを確認した。そして,被告は,対向車線の車両は既に本件交差点南西側
手前で停止したものであると考え,対向車両の有無の確認をすることなく,進
行方向である交差道路1の北北西方向の進路のみを見つつ加速しながら右
折を開始した。
被告車は,その後約6メートル進行した別紙図面記載③の地点で,原告車
に衝突した。
エ 他方,原告Aは,友人のDを後部座席に乗せ,本件道路北東進行車線を進
行した。原告Aは,本件交差点を直進するため,本件交差点南西側入口の直
進車通行帯を進行した。原告Aは,本件交差点手前で本件交差点の信号が
黄色信号に変わったのを確認したが直進,通過することができると考え,減速
等の措置を講じることなく本件交差点に進入した。そして,原告車は,本件道
路北東進行車線の本件交差点手前の停止線から約41.7メートル進行した
地点で,対向車線から右折進入してきた被告車の前部中央から右側部分に
衝突した。
オ 被告は,本件事故時,原告車と衝突するまで対向車線を進行する原告車の
存在に全く気付いていなかった。被告は,原告車との衝突の衝撃により初め
て原告車の存在に気付くとともに被告車のブレーキを踏み,被告車を原告車
と衝突した地点から約2.8メートル進行した別紙図面記載④の地点に停止さ
せた。
以上のとおり認められる。
(2) 原告らは,原告Aが本件交差点に進入する直前に本件交差点の対面する信
号が黄色に変わったため原告Aは本件交差点手前で安全に停止することができ
なかった旨主張し,その根拠として原告車と被告車の本件事故に至るまでの速
度等から最短停止距離を計算し,これに基づく推論をする。
しかし,その主張に係る原告らの最短制動距離の算出等に用いた原告車,被
告車の本件事故に至るまでの速度,時間等は,関係証拠上一義的に明白であ
るというものではないこと,本件証拠上,本件交差点の対面する信号が黄色に
変わった時点につき,原告Aが主観的に認識した地点を確定することはともか
く,客観的に変わった時点を特定することはできないこと,これらによると,本件
全証拠によっても,本件が,本件交差点の信号が黄色に変わったとき原告車が
本件交差点の停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合
に当たるとすることはできない。
かえって,証拠(甲2,乙5,被告本人)及び弁論の全趣旨によると,原告Aらが
進行していた本件道路北東進行車線には原告車以外の車両が多数存在したこ
と,本件事故時,本件交差点に進入した車両は原告車のみであったことが認め
られ,これらの各事実によれば,原告車は,同一車線を走行する他の車両が既
に停止していたにもかかわらず本件交差点に進入したもので,本件交差点の停
止位置において安全に停止することができたことが推認される。
なお,原告車に同乗していたDの警察官に対する供述調書(乙2)中には,本
件交差点付近には本件事故現場に至るまで原告車に先行する車両が存在しな
かった旨,上記認定と矛盾する記載がある。しかし,同調書の記載によれば,D
は,本件事故状況につき,本件事故直前まで前方を確認していたが,信号が黄
色に変わったのがどこであるか分からない旨供述する等その供述は曖昧である
こと,本件事故直前の原告車の動静に関して何ら供述していないこと,Dは,本
件事故のショックにより本件事故直後の記憶がないことを自認していることが認
められ,これらによれば,Dの本件事故直前の原告車の周囲の状況に関する前
記供述調書の記載の信用性には疑問がある。そして,他に前記認定を覆すに足
りる証拠はない。
したがって,原告Aは,本件事故直前,本件交差点の対面する信号が黄色に
変わったときに停止措置を講じれば安全に本件交差点手前で停止することが可
能であったものである。
(3) これに対し,原告らは,前掲証拠中,上記認定事実に沿う被告の各供述調書
(乙3,5)の信用性につき,各供述調書及び当審における被告本人尋問の結果
の内容が相互に変遷,矛盾しており,信用性が減殺される旨主張する。
しかし,上記各証拠によると,被告は,当審における本人尋問時,本件事故後
に病気に罹患したこと,時間が経過したこと等の事情から本件事故時の記憶が
不正確になっている旨自認していること,したがって,矛盾する部分が出ることは
むしろ当審において被告本人が自己の記憶に従って真摯に供述していることを
推認させること,他方,本件事故の状況等に関する各供述調書の記載は具体的
かつ詳細であって,原告らが主張する各調書間の齟齬は検察官が,被告の警
察官に対する供述調書(乙3)中の不明確な部分を明確にする趣旨で取り調べ
た結果を記載したことによるもので,齟齬には当たらないこと,これらによれば、
前記各供述調書の信用性は認められ,原告らの上記主張を採用することはでき
ない。
(4) 以上の事実を総合すると,原告Aは,本件交差点停止線手前の前記位置で本
件交差点の信号が黄色になったのであるから,信号表示に従い本件交差点内
への進入を控えるか,仮に進入するとしても対向右折車両の動静につき細心の
注意を払いながら本件交差点を進行すべきであったにもかかわらず,信号表示
を無視してこれを怠ったことが認められる。
他方,被告は,前記のとおり本件交差点の信号が赤(右折矢印)信号に変わ
ったことを確認したものではあるが,その際,なお,自動車運転者として,対向車
線から本件交差点内に進入し,走行する車両の存在につき確認をした上で右折
すべきであったにもかかわらず,これを怠り,対向車線を進行する車両の確認を
何ら行わずに進入右折したことが認められる。
これらの原告A,被告の過失内容等を考慮すると本件事故発生に対する過失
割合は,原告A6,被告4と認めるのが相当である。
(5) なお,原告らは,被告が本件訴訟以前の示談交渉段階においては過失割合
に関して原告ら2,被告8の割合で交渉していたことを理由に,被告の過失相殺
の主張は信義則等から許されない旨主張する。しかし,被告又はその委任を受
けた保険会社等が事故態様等の判明しない訴訟提起以前の段階において紛争
の早期解決を図るため,原告ら側の感情も考慮して過失割合に関して一定の譲
歩を行って交渉することは,しばしばあり得る事態であり,このような被告側の訴
訟段階における過失割合の主張の変更が信義則等に反するとすることはできな
い。
2 争点(2)(原告Aの損害)について
(1) 入院治療費 556万2183円
ア 症状固定時期について
(ア) 上記争いのない事実等並びに証拠(甲4,6,10の①)及び弁論の全趣
旨によると,原告Aは,本件事故により脳挫傷,外傷性ショック,外傷性脳
内血腫,右下腿骨骨折の傷害を負ったこと,原告Aは,本件事故により平
成7年12月25日から平成8年10月31日まで岡崎病院に入院したこと,
原告Aの症状は,同年8月9日当時,四肢の痙性麻痺が強く,関節機能障
害につき自動運動は見られるが合目的ではなく,遷延性意識障害が続き,
いわゆる寝たきりの状態であったこと,岡崎病院の医師である訴外Fは,同
月24日当時,原告Aの症状に一定の変化が見られたことから症状固定時
期を判断せずに経過観察を行い,その上で,同年9月10日の時点で,同
年8月9日を症状固定時期であると診断したことが認められる。
したがって,原告Aの本件事故による傷害の症状固定時期は,平成8年8
月9日と認めるのが相当である。
(イ) これに対し,原告らは,原告Aの症状が平成8年8月9日当時から現在に
至るまでの間に相当程度回復したことを理由に,原告の症状固定時は少な
くとも同年10月31日の原告の岡崎病院退院時である旨主張する。
しかし,上記認定事実並びに証拠(甲4,5,6,7の①ないし⑤,10の
①,②,乙9,原告B本人)及び弁論の全趣旨によると,F医師は,平成8年
8月ころから原告Aの経過観察を行い,同月24日の時点では症状固定の
診断を留保し,その上で同年9月10日の時点で症状固定時期を同年8月
9日であった旨診断したこと,原告Aの症状固定時の症状は,上記のとお
り,いわゆる寝たきりの状態であったが,少なくとも同年5月からはリハビリ
テーションを行っていたため回復の予兆が認められていたこと,原告Aは,
同年10月31日の三才山病院入院後,内服薬の変更等から症状に多少の
改善があり,平成10年秋ころには意識レベル,自発性の改善から立位をと
れるようになった等の状況となったが,原告Aは,三才山病院から退院後の
平成13年5月7日当時であっても,自分で言葉を発することができず,意
思疎通も不完全である等の意識障害があるほか,自力での歩行は不能,
座位も背もたれが必要である等の運動障害,そして,排尿のコントロール
ができていない排泄障害が残存しているとの状況にあることが認められ
る。これらの各事実によると,F医師は,原告Aの症状固定時期を診断する
につき,当時されていたリハビリテーションによる原告Aの症状の改善の可
能性を慎重に考慮した上で,これをしたこと,また,原告Aの後遺障害であ
る遷延性意識障害は,症状固定後のリハビリテーションにより多少の改善
が認められたものの未だ残存しており,もちろん後遺障害のいわゆる等級
認定に変動を生ずるほどの状況にはなっていないことが認められる。
(ウ) 以上からすれば,上記原告Aのその後の症状の多少の変化のみを理由
として,F医師の症状固定時期の診断に誤りがあったと認めることはでき
ず,したがって,上記のとおり原告Aの本件事故による症状固定時期は,平
成8年8月9日と認めるのが相当であって,他にこれを覆すに足りる証拠は
ない。
したがって,原告らの主張を採用することはできない。
イ 入院治療費
被告は,本件事故と因果関係のある原告Aの入院期間につき,症状固定時
までに限定すべき旨主張する。
しかし,前記認定の事実並びに証拠(甲4ないし6,7の①ないし⑤,10の
①,②,乙9,原告B本人)及び弁論の全趣旨によると,原告Aは,本件事故
により重篤な後遺障害を残したこと,原告の症状固定時期の診断は容易では
なかったこと,原告Aは,症状固定後においてもリハビリ治療の継続により,
後遺障害のいわゆる等級認定に変動を生ずるほどではないにしても,結果と
して若干の機能の改善があったこと,原告らは,原告Aの痙攣等の症状に適
切に対処し,かつ,適切なリハビリ治療を継続するためには,在宅療養を行え
るだけの人的・物的設備等が備わっていなかったため,被告の契約する保険
会社等の了解も得て原告Aを平成8年10月31日から平成11年12月29日
まで三才山病院に入院させたこと,原告らは,原告Aの三才山病院における
治療の後,原告Aの在宅療養を行っていることが認められる。
これら原告Aの症状,症状固定時期の診断の困難性,治療継続の必要性,
原告らの家庭における原告A介護のための人的物的設備の不足等の事情を
総合すると,原告Aは,症状固定後の治療として少なくとも平成8年8月9日の
症状固定の後,同年10月31日までの岡崎病院の入院の必要性はあったと
認めることができる。
これに対し,三才山病院における1155日間の入院治療については直ちに
その必要性を認めることは困難であり,別途住宅改造や付添人による看護等
が必要であったにせよ,在宅で,また必要に応じて適宜の医療機関に通院し
て治療を受けること等が相当であったものと認められる。
もっとも,前記認定の事実によると,原告Aは症状固定後も少なくともその症
状を悪化させないために治療を継続する必要があったこと,在宅でその治療
を継続した場合には,その症状から職業付添人による付添いも必要であった
こと,また,この間入院雑費に準ずる雑費の支出も必要であったこと,三才山
病院での入院治療については,被告の契約する保険会社等もこれを了解して
いたこと,これらの事実が認められるのであるから,これらの事情を考慮する
と三才山病院での現実の治療費571万2920円の少なくとも3分の2相当額
は,本件事故と因果関係のあった損害(後に判断する雑費的性格分も含む。)
と認めるのが相当である。
したがって,原告Aは,本件事故による入院治療費等として,岡崎病院入院
治療費175万3570円と三才山病院入院治療費571万2920円の3分の2
相当分380万8613円との合計556万2183円が必要であり,これらは本件
事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
(2) その他の治療費 1万8890円
ア 既支出分の治療費 1万8890円
証拠(甲11,18の①)及び弁論の全趣旨によると,原告Aは,前記のとおり
三才山病院を退院した後,平成12年1月13日ころ,やはぎ医院の医師の往
診を受け,その料金及び検査代として合計1万8890円を支出したことが認め
られる。
イ 将来の尖足手術代 0円
上記認定事実並びに証拠(甲8,原告B本人)及び弁論の全趣旨によると,
原告Aは,現在,立位時には,右麻痺性尖足により踵が2ないし3センチメート
ル浮いた状態になるため,装具による矯正治療を実施していること,将来アキ
レス腱延長術等の尖足に対する手術の適応となる可能性もあること,しかし,
原告Aは,現在このような手術を受けてはおらず,また受ける予定もないこと
が認められる。
これらの各事実を考慮すると,原告Aの尖足手術を行う蓋然性が高いとまで
認めることはできない。そうすると,同手術の実施及びこれによる損害につい
ての原告らの主張はこれを認めるに足りない。
(3) 入院付添看護費 133万1100円
ア 岡崎病院入院付添費用 133万1100円
証拠(甲10の②,24の①,乙9,原告B本人)及び弁論の全趣旨によると,
原告Aは,岡崎病院に入院中の平成8年1月27日から同年8月31日までの
合計218日間付添いが必要であり,医師又は看護婦から付添いを指示され
たこと,上記期間中原告Aの家族が昼夜を問わず原告Aの付添いに従事した
こと,原告Aは,同年1月30日から同年2月2日までの4日間は職業付添人に
依頼し,その付添費用として4万7100円を支出したこと,付添人は,原告A
の食事の介護,衣服の脱着,清拭,おむつ等の交換,リハビリ,洗濯等を行っ
ていたことが認められる。
これらの事実によれば,原告Aの岡崎病院の前記入院期間中は付添人が
必要であったことが認められる。
そして,上記付添人の付添時間,労務内容によると,近親者の入院付添費
を1日当たり6000円の割合で認めるのが相当であり,これと上記職業付添
人の付添いに要した費用との合計を計算すると以下のとおり合計133万11
00円となる。
計算式 6,000×214+47,100=1,331,100
なお,原告らは,入院付添いを行った期間につき,岡崎病院に入院していた
全期間を主張し,証拠(甲4,24の①,原告B本人)によると,原告Aの家族が
岡崎病院入院期間中常に付き添っていた事実が推認できるが,岡崎病院の
上記期間以外の付添いについてはその必要性を認めるに足りる証拠がなく,
原告らの主張を認めることはできない。
イ 三才山病院入院付添費用 0円
上記認定事実並びに証拠(甲4,5,7の①ないし⑤,原告B本人)及び弁論
の全趣旨によると,三才山病院は,いわゆる完全看護の病院であり,24時間
体制で看護婦が患者の看護に当たるほか,言語聴覚士,理学療法士,作業
療法士が原告Aのリハビリ等を行っていたこと,原告Bは,三才山病院の医師
から当初は付添いを断られたが独断で付添いを継続し,これを許されたこと
が認められる。これらの事実によると,原告Aの三才山病院入院中に家族等
の付添いの必要があったとは認められず,原告Bは,単に自らの意思で付き
添ったに過ぎなかったと認められる。したがって,原告Aの三才山病院入院期
間中の付添費用に関する原告らの主張は採用できない。
(4) 雑費 37万5990円
ア 岡崎病院での入院雑費 31万2000円
上記認定の事実及び弁論の全趣旨によると,原告Aは,本件事故により岡
崎病院に平成7年12月25日から平成8年10月31日までの312日間入院し
たこと,この間の入院治療の必要性は認められること,その間の入院雑費は
少なくとも1日当たり1000円が相当であったことが認められる。
そこで,原告Aの上記入院雑費を計算すると以下のとおり合計31万2000
円となる。
計算式 1,000×312=312,000
これに対し,原告らは,上記入院雑費は1日当たり約1700円程度必要であ
った旨主張するが,直ちにこれを認めるに足りる証拠はない。
イ 三才山病院での雑費,売店購入費 0円
前記のとおり,三才山病院での入院治療については直ちにその必要性を認
めることは困難である。
そして,前記のとおり,これに関する入院治療費等を認定するに際し,治療
費に準ずる雑費等の金額も考慮したので,本件では独立の損害要素として算
定しない。
ウ 三才山病院退院後将来にわたる雑費 0円
原告らは,上記費目を主張するが,別途認められる原告Aの逸失利益から
支出されることが予想される生活費を著しく超える支出となるとの事実は認め
られず,またこれを超える部分については後遺障害慰謝料算定に当たり考慮
することとする。
エ 搬送料,文書料 6万3990円
いずれも被告又はその契約する保険会社等が必要性を認め,支払を承認
し,既払となっているもので,本訴においても格別には争われていないもので
ある。
(5) 付添人の宿泊費・交通費・雑費 0円
上記(3)イのとおり,原告Aの三才山病院の入院期間中に家族の付添いの必要
性を認めることはできないのであるから,原告らが原告Aの三才山病院入院中
における付添い等のために支出した費用を被告に負担させることはできない。
(6) 将来の付添看護費 4051万4124円
ア 上記認定事実並びに証拠(甲24の①,②,25,原告B本人)及び弁論の全
趣旨によると,原告Aは,平成8年8月9日症状固定となり,その平均余命は5
8年であること,原告Aは,現在でも前記後遺障害により,常時他人の介護が
必要な状態であること,現在は母である原告Cが就労のため,在宅していない
時間がある関係から,原告Aの介護は父である原告Bが中心に行っているこ
と,原告Aは,寝返り,起きあがり,車椅子への移乗は独力で可能,立位の維
持,食事の自力摂取,車椅子自体を自力で移動させることができるとの状況
にあることが認められる。
これらの原告Aの現在の症状,必要な介護の量,後掲のとおり原告らの居
宅は将来家屋改造を行い,原告Aの介護の仕事量も減少することが予測でき
ること等の諸事情からすると,原告Aは,三才山病院退院後から原告Cが68
歳になる平成28年12月までの間は原告B及び同Cによる家族による介護
が,平成29年1月から原告Aの平均余命までの間は職業付添人等による介
護が必要となると認められる。
イ これに対し,原告らは,原告Cが就労しており,介護は原告Bが行っているこ
と,原告Bは,その持病のために67歳まで介護を行うことができないことを理
由に原告Bが60歳に達する平成13年2月までは家族による介護が可能であ
るが,それ以降は職業付添人が必要となる旨主張する。
しかし,上掲各証拠によると,原告Cは,仕事をしていない時には原告Aの
介護を行っていること,また,後掲のとおり,将来住宅改造を行うこと等によ
り,介護の負担もより軽減すると考えられることからすると,原告Cが68歳と
なる平成28年12月まではなお原告Cによる介護が可能であると認めるのが
相当である。
ウ また,上記のとおり,原告Aが一定の行動を独力で行えること等からすると,
原告Aの介護費用は,家族介護の場合は1日当たり5500円,職業付添人に
よる場合は1日当たり1万円と認めるのが相当である。
以上から,これらの付添費用を,本件事故時の現価にライプニッツ係数によ
り年5分の割合による中間利息を控除して算出すると以下のとおりとなる。
(ア) 三才山病院退院後(本件事故後約4年後)平成28年12月(本件事故後
約21年後)まで
計算式 5,500×365×(12.8211-3.5459)=18,619,964
(イ) 平成29年1月(本件事故後約21年後)以降原告Aの平均余命である平
成66年8月まで
計算式 10,000×365×(18.8195-12.8211)=21,894,160
(ウ) 合計
計算式 18,619,964+21,894,160=40,514,124
(7) 症状固定後の器具等 426万4715円
ア 車椅子(介護車・屋外用) 59万4750円
証拠(甲15,17)及び弁論の全趣旨によると,原告Aは,平成10年10月6
日に車椅子(介護車)1台を15万円で購入したことが認められる。そして,原
告Aの前記後遺障害によると,原告Aに車椅子が必要であることは明らかで
あるから,今後上記車椅子と同等の車椅子を平均余命まで必要とすることが
認められる。
そこで,1台15万円の車椅子(耐用年数は5年が相当である。)を平成10年
10月から原告Aの平均余命までの間順次買換えが必要であるとして,これら
の買換費用の本件事故時の現価をライプニッツ係数により年5分の割合で中
間利息を控除して算出すると以下のとおり59万4750円となる。
計算式
150,000×(0.9070+0.7106+0.5568+0.4362+0.3418+0.2678+0.2098+0
.1644+0.1288+0.1009+0.0790+0.0619)=594,750
これに対し,被告は,将来公的扶助による原告らの負担軽減を考慮した上
で将来の器具等を算出すべき旨主張する。しかし,原告らに対する公的扶助
を被告の賠償すべき損害から控除すべき根拠が明らかでないこと,将来も公
的扶助が確定的に受けられるか否か明らかでないことからすれば,原告らの
将来の器具等の購入費用を算出するに当たり現行の公的扶助制度の存在を
考慮するのは相当ではない。
イ 車椅子(屋内用) 35万4856円
上記認定事実並びに証拠(甲18の③,20,24の①)及び弁論の全趣旨に
よると,原告Aは,自宅内の移動に車椅子が必要であること,屋内用車椅子
は1台12万円相当であること,原告Aは,平成12年3月22日,車椅子を購入
したこと(自己負担は2万2000円であった。)が認められる。
そこで,上記車椅子購入自己負担分及び上記車椅子の耐用年数(耐用年
数は5年が相当である。)が満了する平成17年3月から原告Aの平均余命ま
での間,順次1台12万円の屋内用車椅子の買換えが必要であるとして,これ
らの買換費用の本件事故時の現価をライプニッツ係数により年5分の割合で
中間利息を控除して算出したものの合計は以下のとおり35万4856円とな
る。
なお,原告らは,上記屋内用車椅子を将来は1台当たり15万6000円に替
える予定である旨主張するが,そのような屋内用車椅子が原告Aに必要であ
るかを認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。
計算式
22,000+120,000×(0.6446+0.5050+0.3957+0.3100+0.2429+0.1903+0
.1491+0.1168+0.0915+0.0717+0.0562)=354,856
ウ 電動ベッド等 76万7481円
上記認定事実並びに証拠(甲13の①ないし③,19,24の①)及び弁論の
全趣旨によると,原告は,前記後遺障害により電動ベッド及びその附属器具
等が必要であり,平成12年1月6日に38万6950円(消費税込)の電動ベッ
ド等を購入したこと(自己負担分は16万5000円であった。)が認められる。
そこで,上記電動ベッド等購入の自己負担分及び上記電動ベッド等の耐用
年数(耐用年数は8年が相当である。)が満了する平成20年1月から原告A
の平均余命までの間,順次1台38万6950円相当の電動ベッド等の買換え
が必要であるとして,これらの買換費用の本件事故時の現価をライプニッツ係
数により年5分の割合で中間利息を控除して算出したものの合計は以下のと
おり76万7481円となる。
なお,原告らは,上記電動ベッド等は将来は51万7400円相当の電動ベッ
ドに替える予定である旨主張するが,同ベッドが原告Aに必要であることを認
めるに足りる証拠はなく,原告らの上記主張は採用できない。
計算式 165,000+386,950×(0.5568+0.3768+0.2550+0.1726+0.1168+0.0790)
=767,481
エ 福祉自動車 229万7297円
上記認定事実並びに証拠(甲21の①,②,24の①,原告B本人)及び弁論
の全趣旨によると,原告Aは,週2ないし3回程度の通院等外出する際には車
椅子で移動する必要があり,介護者の負担を軽減するためにも車椅子ごと搬
入できる福祉自動車が必要であること,車椅子を搬入することが可能となるた
めの改造費用は1台当たり108万5000円程度の費用が必要であることが
認められる。
ところで,原告らは,原告Aに福祉自動車が必要であることから,改造費で
はなく車両自体も請求するが,本件事故と相当性を有するのは上記の改造費
に限定するのが相当である。
そして,前記のとおり,原告Aは,三才山病院退院後から在宅療養し,その
移動に車椅子用の福祉自動車が必要となるのであるから,三才山病院退院
後原告Aの平均余命までの間,順次1台108万5000円(消費税別)の改造
費を支出して福祉自動車(耐用年数は10年が相当である。)を買い換える必
要があり,その改造費用の本件事故時における現価をライプニッツ係数によ
り年5分の割合で中間利息を控除して算出すると以下のとおり229万7297
円となる。
計算式 1,085,000×1.05×(0.8227+0.5050+0.3100+0.1903+0.1168+0.0717)
=2,297,297
オ 歩行器 0円
上記認定事実並びに証拠(甲7の④,12,24の①,26,原告B本人)及び
弁論の全趣旨によると,原告Aは,三才山病院入院中,歩行器を使用する訓
練を介助が必要ではあるが行っていたが,三才山病院退院後は,歩行器を使
用せずに居宅を改造して手摺等を設置し,これを用いて佇立・歩行訓練をして
いること,原告Aは,30ないし40分間程度佇立を行うことができるが,歩行し
て移動ができるまで回復してないこと,なお,仮に原告Aが歩行器による歩行
を移動手段とする程度に回復した場合には,上記車椅子等が不要となること
から,これらの費用により歩行器等の支出を賄えることが認められる。
これらの事実によると,原告Aは,歩行を訓練するために歩行器が必要であ
るに過ぎず,また,その訓練も上記手摺等で行えるのであるから,訓練のため
に必要不可欠とまでは認めることはできない。
したがって,歩行器取得費用を本件事故と因果関係のある損害と認めること
はできない。
カ 杖 0円
オと同様,原告Aに杖が必要であることを認めるに足りる証拠はない。
キ 尖足調整具 25万0331円
前記認定事実並びに証拠(甲7の④,⑤,8,16,24の①,26,原告B本
人)及び弁論の全趣旨によると,原告Aは,本件事故の傷害により,右足に麻
痺性尖足の障害が残り,立位を保つためには装具が必要となること,装具は
一式で4万0069円であることが認められる。
そこで,原告Aは,上記装具が必要になった平成10年11月から平均余命ま
での間,順次上記装具(耐用年数は3年が相当である。)の買換えが必要で
あるとして,これらの買換費用の本件事故時における現価をライプニッツ係数
により年5分の割合で中間利息を控除して算出すると以下のとおり25万033
1円となる。
計算式
40,069×(0.9070+0.7835+0.6768+0.5846+0.5050+0.4362+0.3768+0.
3255+0.2812+0.2429+0.2098+0.1812+0.1566+0.1352+0.1168+0.100
9+0.0872+0.0753+0.0650)=250,331
ク ポータブルトイレ0円
原告らは,ポータブルトイレが原告Aの排泄訓練のために必要である旨主張
し,証拠(甲13の②,④,原告B本人)によると,原告Aは,平成12年1月,ポ
ータブルトイレを購入したことが認められる。
しかし,証拠(甲7の②,原告B本人)及び弁論の全趣旨によると,原告A
は,前記後遺障害による排尿障害が残存し,現在も排泄コントロールができ
ずおむつを昼夜を問わず使用していること,ポータブルトイレの購入に関して
は特に医師等の指示に基づいていないことが認められる。
また,原告らは,後掲のとおり,自宅のトイレを原告Aが使用できるように改
造する旨主張しており,上記のポータブルトイレがトイレの改造により不要とな
ることは容易に推測できる。
したがって,原告らのポータブルトイレに関する主張は採用できない。
ケ 会話補助機 0円
証拠(甲7の③,24の①,原告B本人)によると,原告Aは,単語に対する理
解はあるが,感情を表現する発声のみ可能で,自発的な言語等の表出はな
いこと,コミュニケーションも左手挙手により「はい」を示すことは可能である
が,集中している等の条件が揃わないと確実なコミュニケーションをとることは
できないという状態であること,原告Bは,原告Aに会話補助機を使用させるこ
とにより原告Aがより回復することを期待していること,原告Aの三才山病院に
おける言語療法科の訓練において会話補助機は使用されなかったことが認
められる。
これらの各事実によると,原告Aに会話補助機が必要であるか疑問がある
ものである。
したがって,原告らの会話補助機に関する主張は採用することができない。
(8) 後見人選任費用等 5万3579円
当事者間に争いがない。
(9) 逸失利益 9652万4852円
上記争いのない事実等によると,原告Aは,本件事故により自賠法施行令2条
別表1級3号記載に該当する後遺障害(神経系統の機能又は精神に著しい障害
を残し,常に介護を要するもの)を残し,労働能力を100パーセント喪失したこと
が認められる。
そして,原告Aは,本件事故当時18歳であったところ,本件事故に遭わなけれ
ば,高校卒業後18歳から67歳までの49年間就労が可能であり,少なくとも症
状固定時である平成8年賃金センサス産業計・企業規模計・高卒男子労働者の
全年齢平均年収額531万2700円を得ることができたと認めることができる。原
告Aの逸失利益の本件事故時の現価をライプニッツ係数により年5分の割合で
中間利息を控除して算出すると以下のとおり9652万4852円となる。
なお,被告は,原告Aが自宅における療養生活を継続するのであれば外食
費,衣服代,交際費等の支出を免れることを理由に生活費の1割を控除すべき
である旨主張するが,原告Aは,将来おむつ,医療品等の雑費,通院費用等,
一般健常者とは異なる費目による出費が少なくないことが明らかであり,被告の
前記主張は採用できない。
計算式 5,312,700×18.1687=96,524,852
(10) 住宅改造費 697万7155円
原告らは,原告Aは前記後遺障害により,その在宅療養のために現在の居宅
を改造する必要があり,その住宅改造費として1162万8593円の支出が必要
である旨主張し,その工事内容の見積書(甲14の②)を提出する。
しかし,上記認定事実並びに証拠(甲14の①ないし③,24の①,原告B本人)
及び弁論の全趣旨によると,原告Aは,現在,約129万円の費用で住宅改造を
行い,必要最小限ではあるが在宅療養生活を営んでいること,前記見積書の工
事内容には,原告Aを二階部分に上げるためのエレベーター工事や二階部分の
トイレ工事,サンルーム増築工事等原告Aの在宅療養のための医学的必要性に
つき直ちにこれを認めることが困難な工事も含まれていること,洗面所,トイレ,
浴室等の工事は,原告A以外の家人の利便にも供することが認められる。これ
らの事実からすれば,原告らの主張する住宅改造費のうち被告に負担させるべ
き額は,その6割とするのが相当である。
したがって,本件事故と相当因果関係を有する住宅改造費は以下のとおり69
7万7155円となる。
計算式 11,628,593×0.6=6,977,155
(11) 慰謝料
ア 入院慰謝料 251万円
原告Aの受傷の部位,程度,そして,本件事故により症状固定時まで7か月
余りの入院を余儀なくされたこと等に照らすと,入院慰謝料の額は251万円と
認めるのが相当である。
イ 後遺障害慰謝料 2200万円
原告Aの後遺障害の内容・程度及び前記のとおり,原告Aは,症状固定後も
一定期間の入院が必要となったこと,障害を被ったことにより特別な医療上の
雑費等で,前記逸失利益から通常支出される生活費を超える部分が生ずるこ
とが予測されること,他方,後掲のとおり,原告B及び同Cにそれぞれ固有の
慰謝料を認めること等に照らすと,原告Aの後遺障害慰謝料の額は2200万
円と認めるのが相当である。
(12) 物損 20万5000円
原告らは,本件事故により原告車が全壊したこと及び原告車の牽引料として3
0万5000円の損害が発生した旨主張する。
しかし,証拠(甲22)及び弁論の全趣旨によると,原告車の時価は本件事故当
時20万円であったこと,原告車の解体処理場への搬送料として5000円の支出
があったことが認められるが,これを超える損害を認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告車の物損としては,20万5000円の範囲でのみ認められる。
(13) 原告Aの損害小計,過失相殺
以上によると,原告Aの損害金小計は1億8033万7588円となる。そして,前
記のとおり,本件につき6割の過失相殺をするのが相当であるから,上記損害
額をこの割合で過失相殺をすると,被告が原告Aに賠償すべき損害額は7213
万5035円となる。
(14) 損益相殺
上記争いのない事実等記載のとおり,被告は,原告Aに対し合計4365万01
95円を支払っているのであるから,同金額を過失相殺後の原告Aの損害額に
充当すると,被告が原告Aに賠償すべき損害金残金は2848万4840円とな
る。
(15) 弁護士費用
上記原告Aの損害額及び本件訴訟の経緯に照らすと,本件事故と相当因果関
係のある弁護士費用の相当額は,原告Aについて150万円と認めるのが相当
である。
3 争点(3)(原告B,同Cの損害)について
(1) 慰謝料について
証拠(甲24の①,25,原告B本人)及び弁論の全趣旨によると,原告Aは原告
B及び同Cの長男であり,同人らの間には他に男子はなく,原告B及び同Cが原
告Aの将来に非常に期待をしていたこと,原告Aが本件事故により重大な傷害を
負ったことにより,原告B及び同Cは重大な精神的苦痛を受けたこと,原告B及
び同Cは,上記のとおり,今後原告Aの介護を継続する必要があること等が認め
られる。
そして,これらの事情その他本件にあらわれた諸般の事情を考慮すると,原告
B及び同Cの慰謝料の額は各200万円と認めるのが相当である。
(2) 過失相殺
原告B及び同Cの損害についても前記のとおり過失相殺すると,その額は各8
0万円となる。
(3) 弁護士費用
上記原告B及び同Cの損害額及び本件訴訟の経緯に照らすと,本件事故と因
果関係のある弁護士費用の相当額は各8万円となる。
第4 結論
以上によれば,原告Aの請求は,上記損害金元本に弁護士費用を加えた2998万
4840円及び内金2848万4840円に対する本件事故日である平成7年12月25
日から,内金150万円に対する本件訴状送達の日の翌日であることが本件記録
上明らかな平成12年6月10日から各支払済みまで民法所定年5分の割合による
遅延損害金の支払を求める限度で,原告B及び原告Cの請求は,上記損害金元本
に弁護士費用を加えた各金88万円及び各内金80万円に対する本件事故日であ
る平成7年12月25日から,各内金8万円に対する本件訴状送達の日の翌日であ
ることが本件記録上明らかな平成12年6月10日から各支払済みまで民法所定年
5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ理由があるのでこれ
を認容し,原告らのその余の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することと
して,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官 北澤章功
裁判官堀内照美
裁判官小島清二
(別紙図面省略)
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