弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
       事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは株式会社山中町衛生公社に対し、金八一三万円及びこれに対する
平成一〇年七月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
主文同旨
第二 事案の概要
一 本件は、山中町の住民である控訴人らが、山中町が株主である訴外株式会社山
中町衛生公社(訴外公社。山中町が株式の六〇パーセントを保有)の取締役である
被控訴人らに対して、訴外公社が訴外A及び同Bに対して退職金を支払う旨の被控
訴人らが行った取締役会の決議は取締役の忠実義務に反し違法であるから山中町は
被控訴人らに対して株主代表訴訟を提起すべきであるのに山中町はこれを提起せず
財産の管理を怠っているとして、地方自治法二四二条の二第一項四号後段に基づき
山中町に代位して訴外公社の株主代表訴訟権を行使し、損害賠償金八一三万七六六
三円(控訴の趣旨は八一三万円に減縮)及びこれに対する不法行為後の日である平
成一〇年七月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を
訴外公社に対して支払うことを求めた事案である。
 原審は、本件訴えは地方自治法により特に出訴が認められた住民訴訟の類型に該
当しない不適法なものであるとして、控訴人らの訴えを却下した。そこで、控訴人
ら(原審原告ら)がこれを不服として本件控訴に及んだ。
二 当事者双方の主張は、原判決「第三 原告らの主張」及び「第四 被告らの主
張」各記載のとおりであるから、これらを引用する。
三 証拠関係は、本件記録中の原審における書証目録記載のとおりであるから、こ
れを引用する。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、本件訴えは地方自治法二四二条の二に定められた住民訴訟の類型
に該当せず、不適法な訴えであるとして却下すべきであると判断するが、その理由
は、原判決三五頁末尾に次のとおり付加するほかは原判決の理由説示と同じである
からこれを引用する。「確かに控訴人ら主張のように株主代表訴訟が株主による取
締役の会社に対する賠償責任の追及であり、それがひいては株主の利益の回復に資
することは否定できないところである。しかしながら、株主代表訴訟権は、その行
使の結果会社の
損害が回復したからといって、それが直ちに株主の損害の回復を意味するものでは
なく、あくまでも株主(本件では山中町)にとっては間接的なものであって通常の
実体法上の請求権とは異なるものである。そうしてみると、株主の代表訴訟権行使
による取締役に対する会社への損害賠償請求をもって株主自身の損害賠償請求とい
うことはできず、住民訴訟が特に法律によって認められた民衆訴訟の一種であり
(行政事件訴訟法四二条)、その制度目的が違法な財務会計行為による地方公共団
体の損害の発生防止、損害の回復をはかるものであることからすると、地方自治法
二四二条の二第一項四号の「損害賠償の請求」に株主である地方公共団体に代位し
て株主代表訴訟を提起することが含まれるということはできない。」
二 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却すること
として、主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所金沢支部第一部
裁判長裁判官 窪田季夫
裁判官 本多俊雄
裁判官 榊原信次

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