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裁判例


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平成20年2月21日判決言渡
平成19年(行ケ)第10242号審決取消請求事件
平成20年1月17日口頭弁論終結
判決
原告大王製紙株式会社
訴訟代理人弁護士小池豊
同櫻井彰人
訴訟代理人弁理士永井義久
同湯浅正之
被告特許庁長官肥塚雅博
指定代理人寺本光生
同関口勇
同高木彰
同大場義則
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が訂正2006−39189号事件について平成19年5月28日に
した審決を取り消す。
第2争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は発明の名称を紙おむつとする特許第3009482号の特許平
,「」(
成2年12月27日出願,平成11年12月3日設定登録。以下「本件特許」
という。登録時の請求項の数は3である。なお,本件特許に係る明細書は,出
願後,設定登録までの間に,平成4年1月22日付け手続補正書,平成9年1
2月25日付け手続補正書及び平成11年3月29日付け手続補正書により,
その記載が補正された)の特許権者である。

原告は,平成18年11月27日,本件特許に係る明細書の記載を訂正(以
,「」,,
下この訂正を本件訂正といい本件訂正前後の各明細書を図面と併せて
それぞれ「訂正前明細書「訂正明細書」という。なお,本件訂正では,請求


項2が削除され請求項3が請求項2に繰り上げられているすることについ
,。

て審判を請求した(訂正2006−39189号事件。

特許庁は審理の結果平成19年5月28日本件審判の請求は成り立
,,,
「,
たない」との審決(以下「審決」という)をし,同年6月7日,その謄本を
。。
原告に送達した。
2特許請求の範囲
(1)訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3の各記載は次のとお

りである以下これらの請求項に係る発明を項番号に対応して本件発明
(,,

1」などといい,これらをまとめて「本件発明」という。


請求項1不透液性シートと透液性シートと吸収体とを有しさらに製品

【】,
の幅方向両側部に弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバリヤーカフスを有す
る紙おむつにおいて,
前記バリヤーカフスの自由部より外側であってかつ吸収体の側縁から側外
方にあるフラップ部を構成するフラップ部材シートが,製品紙おむつの全長
にわたり,
かつ,フラップ部材シートのほぼ全体が透液性であり,これによりフラッ
プ部の製品紙おむつの全長にわたる領域が使用面側から裏面側に液が透過可
能であることを特徴とする紙おむつ。
【請求項2】フラップ部分において,前記不透液性シートと透液性シート
が存在しない請求項1記載の紙おむつ。
【請求項3】不透液性シートと透液性シートと吸収体とを有し,さらに製
品の幅方向両側部に弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバリヤーカフスを有
する紙おむつにおいて,
製品紙おむつの使用面側において,前記自由部の先端部に使用状態におい
て前記透液性シートから離間するように起立させる弾性伸縮部材を有するバ
リヤーカフスを構成する透液性バリヤーシートが,前記吸収体の側縁から側
外方に延在してフラップ部を構成し,かつ,前記透液性バリヤーシートの側
外方部分は透液性シートの側縁より側外方に延在し,
前記透液性シートおよび不透液性シートは製品紙おむつの全長にわたり,
透液性シートの側縁は,不透液性シートの側縁より内側とし,かつ,透液性
シートの側縁部が不透液性シートにホットメルト接着剤により固定され,
前記フラップ部を構成する透液性バリヤーシートが,製品紙おむつの全長
にわたり,
かつ,フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示し,かつ前記
透液性バリヤーシートの幅方向中間が前記不透液性シートの使用面側に対し
てホットメルト接着剤により固定されていることを特徴とする紙おむつ」

(2)訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2の各記載は次のとおりで

(,,
「」
ある以下これらの請求項に係る発明を項番号に対応して訂正発明1
などといい,これらをまとめて「訂正発明」という。下線部は訂正箇所を示
す。


請求項1不透液性シートと透液性シートと吸収体とを有しさらに製品

【】,
の幅方向両側部に弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバリヤーカフスを有す
る紙おむつにおいて,
前記バリヤーカフスの自由部より外側であってかつ吸収体の側縁から側外
方にあるフラップ部を構成するフラップ部材シートが,製品紙おむつの全長
にわたり,
さらに,前記フラップ部材シートは,前記不透液性シートの下面に接合さ
れ,前記バリヤーカフスを構成するバリヤーシート,前記不透液性シートお
よび透液性シートの各側縁より側外方に延在し,前記不透液性シートおよび
透液性シートが存在しないフラップ部を構成し,
前記フラップ部材シートは,透液性不織布からなるシートであり,かつ,
フラップ部材シートのほぼ全体が透液性であり,これによりフラップ部の製
品紙おむつの全長にわたる領域が使用面側から裏面側に液が透過可能である
ことを特徴とする紙おむつ。
【請求項2】不透液性シートと透液性シートと吸収体とを有し,さらに製
品の幅方向両側部に弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバリヤーカフスを有
する紙おむつにおいて,
製品紙おむつの使用面側において,前記自由部の先端部に使用状態におい
て前記透液性シートから離間するように起立させる弾性伸縮部材を有するバ
リヤーカフスを構成する透液性不織布からなる透液性バリヤーシートが,前
記吸収体の側縁から側外方に延在してフラップ部を構成し,かつ,前記透液
性バリヤーシートの側外方部分は前記不透液性シートおよび透液性シートの
側縁より側外方に延在し,
前記透液性シートおよび不透液性シートは製品紙おむつの全長にわたり,
透液性シートの側縁は,不透液性シートの側縁より内側とし,かつ,透液性
シートの側縁部が不透液性シートにホットメルト接着剤により固定され,
前記フラップ部を構成する透液性バリヤーシートが,製品紙おむつの全長
にわたり,
かつ,フラップ部の長手方向のほぼ全体において透液性を示し,かつ前記
透液性バリヤーシートの幅方向中間が,前記不透液性シートの側縁より内方
において前記不透液性シートの使用面側に対してホットメルト接着剤により
固定され,
さらに前記透液性バリヤーシートの側外方部分の下面に他の透液性不織布
シートが重合され,かつ前記フラップ部の製品紙おむつの全長にわたる領域
が使用面側から裏面側に液が透過可能である構成とされたことを特徴とする
紙おむつ」

3審決の理由
別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件訂正は,主位的には特許法
126条1項の規定に違反すること,予備的には同条5項の規定に違反するこ
とを,それぞれ理由とした。
(1)(主位的理由として)特許法126条1項違反
本件訂正は,訂正前明細書の段落【0015】における「通気撥水性」を
「通気防水性」と訂正するという訂正事項(以下,審決における符号に対応

「」。
),「」
して訂正事項gというを含むものであるところ上記通気撥水性
との記載が「通気防水性」の誤記であるとは認められず,また,訂正事項g
は,特許請求の範囲の減縮にも,明りょうでない記載の釈明にも当たらず,
特許法126条1項に掲げるいずれの事項を目的とするものとも認められな
いから訂正事項gを有する本件訂正は同項の規定に適合しない以下理
,,(「
由(1)」という。


(2)(予備的理由として)特許法126条5項違反
訂正事項gが誤記の訂正であるとしても,訂正発明1及び2は,いずれも
本件特許の出願前に頒布された刊行物である下記引用例1ないし3に記載さ
れた各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであっ
て,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けるこ
とができないから,本件訂正は特許法126条5項の規定に適合しない。
ア引用例1ないし3
(ア)引用例1
特開昭63−182401号公報(甲7。以下,引用例1記載の発明
を「引用発明1」という)

(イ)引用例2
特開昭59−146651号公報(甲4。以下,引用例2記載の発明
を「引用発明2」という)

(ウ)引用例3
実願昭62−191407号(実開平1−98110号)のマイクロ
(。,「」。

フィルム甲5以下引用例3記載の発明を引用発明3という
イ訂正発明1と引用発明1との一致点・相違点
審決は,訂正発明1と引用発明1との一致点・相違点を下記(ア),(イ)
のとおり,それぞれ認定した。
(ア)一致点
「不透液性シートと透液性シートと吸収体とを有し,さらに製品の幅
方向両側部に弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバリヤーカフスを有す
る紙おむつにおいて,前記バリヤーカフスの自由部より外側であってか
つ吸収体の側縁から側外方にあるフラップ部を構成するフラップ部材シ
ートが,製品紙おむつの全長にわたる紙おむつ(審決書13頁3行∼


7行)である点。
(イ)相違点
「訂正発明1では,フラップ部材シートは,透液性不織布からなるシ
ートであり,かつ,フラップ部材シートのほぼ全体が透液性であり,こ
れによりフラップ部の製品紙おむつの全長にわたる領域が使用面側から
裏面側に液が透過可能であるのに対し,引用例1の発明では,フラップ
部材シートの性質に関しては明確な記載がない点(審決書13頁9行


∼13行,以下「相違点1」という)

「訂正発明1では,フラップ部材シートは,不透液性シートの下面に
接合され,バリヤーカフスを構成するバリヤーシート,不透液性シート
および透液性シートの各側縁より側外方に延在し,不透液性シートおよ
び透液性シートが存在しないフラップ部を構成しているのに対し,引用
例1の発明では,フラップ部材シートの取付け構造については記載がな
い点(審決書13頁14行∼18行,以下「相違点2」という)

」。
ウ訂正発明2と引用発明1との一致点・相違点
審決は,訂正発明2と引用発明1との一致点・相違点を下記(ア),(イ)
のとおり,それぞれ認定した。
(ア)一致点
「不透液性シートと透液性シートと吸収体とを有し,さらに製品の幅
方向両側部に弾性伸縮性の自由部が内側に向いたバリヤーカフスを有
し,吸収体の側縁から側外方にあるフラップ部を構成するフラップ部材
シートが紙おむつの全長にわたる紙おむつ(審決書14頁15行∼1


8行)である点。
(イ)相違点
「訂正発明2では,製品紙おむつの使用面側において,前記自由部の
先端部に使用状態において前記透液性シートから離間するように起立さ
せる弾性伸縮部材を有するバリヤーカフスを構成する透液性不織布から
なる透液性バリヤーシートが,前記吸収体の側縁から側外方に延在して
フラップ部を構成し,かつ,前記透液性バリヤーシートの側外方部分は
前記不透液性シートおよび透液性シートの側縁より側外方に延在し,前
記透液性シートおよび不透液性シートは製品紙おむつの全長にわたり,
透液性シートの側縁は,不透液性シートの側縁より内側とし,かつ,透
液性シートの側縁部が不透液性シートにホットメルト接着剤により固定
され,前記フラップ部を構成する透液性バリヤーシートが,製品紙おむ
つの全長にわたり,かつ,フラップ部の長手方向のほぼ全体において透
液性を示し,かつ前記透液性バリヤーシートの幅方向中間が,前記不透
液性シートの側縁より内方において前記不透液性シートの使用面側に対
してホットメルト接着剤により固定され,さらに前記透液性バリヤーシ
ートの側外方部分の下面に他の透液性不織布シートが重合され,かつ前
記フラップ部の製品紙おむつの全長にわたる領域が使用面側から裏面側
,,
に液が透過可能である構成とされているのに対し引用例1の発明では
バリアカフスやフラップ部の取付構造が文言上は詳細に記載されていな


(,「」。

い点審決書14頁20行∼15頁3行以下相違点3という
第3取消事由に係る原告の主張
審決は,以下のとおり,理由(1)及び(2)に係るいずれの認定判断にも誤りが
あるから,違法として取り消されるべきである。
1取消事由1(理由(1)に係る認定判断の誤り)
以下のとおり訂正事項gは誤記の訂正を目的とするものであり理由(1)に
,,
係る審決の認定判断は誤りである。
(1)審決は「通気撥水性のシートという語の意味は通気性と撥水性を有する

シートを意味することは明らかであり通気撥水性という用語の意味は何

『』
ら不明確ではない。また,明細書中の他の箇所にこの語の記載がないことが
誤記である理由になるとは認められない以下理由(1)①という審決


(「」。
書8頁1行∼4行)と認定判断した。
しかし,以下のとおり,理由(1)①に係る審決の認定判断は誤りである。
訂正事項gに係る通気撥水性という訂正前明細書の記載が誤りで通
「」,

気防水性」という訂正明細書の記載が正しいことは,訂正前明細書の記載及
び当業者の技術常識から明らかであり,当業者であれば,当然,これに気付
いて,前者が後者の誤記であると理解する。
すなわち,①「透液性」と「通気撥水性」とは相対立する概念ではなく,
撥水性を有し,かつ,透液性であるシートも,本件特許の出願前から存在し
ていること特開昭62−250201号甲17特開平2−55058
(〔〕

号公報〔甲18,②訂正前明細書の段落【0015】は,従来技術と比較


して,本件発明1の蒸れの防止効果が優れていることを記載した部分である
ところ,蒸れの防止効果に関し比較対象とされた従来技術は,訂正前明細書
の記載全体を通じて,段落【0003】に言及された実開昭62−8870
5号公報(以下「先行例1」という。甲1)記載の考案,すなわち「通気防
水性」のものであるから,訂正前明細書の段落【0015】における「通気
撥水性」との記載のままでは,本件発明の作用効果の説明として意味が通じ
ないこと③訂正前明細書において通気撥水性という語は段落001
,,
「」【
5】以外には存在しないことに照らせば,当業者にとって,訂正前明細書の
段落【0015】における「通気撥水性」との記載が「通気透水性」の誤記
であることは,明らかである。
,,「
【】
(2)審決は本件特許の審査経緯を検討し訂正前明細書の段落0015
において比較している先行技術は,拒絶理由通知において引用文献3として
引用された実願昭62−191407号(実開平01−098110号)の
マイクロフィルム判決注引用例3甲5であると考えるのが相当であ
(,〔〕

って,先行例1のみであると限定的に考えねばならない理由は何ら認められ


(「」。)。
ない以下理由(1)②という審決書9頁2行∼6行と認定判断した
しかし,以下のとおり,理由(1)②に係る審決の認定判断は誤りである。
(「」。)
ア平成11年3月29日付け意見書以下本件意見書という甲15
において,原告は「引用文献2(判決注,引用例2〔甲4)のものは,
,〕
カフス自体が通気性であるとしても,本願発明のように透液性のものでは
ない。しかも,バリヤーカフスの外側にフラップ部をさらに設け,そのフ
ラップ部を透液性とする思想は一切ない引用文献3判決注引用例



「(,
3甲5の股下シートは通気性であるが撥水性のものである股下シー
〔〕
)。
トは,弾性部材7により,外向き状態で斜め外方に向いて起立するもので
ある。この引用文献3においても,バリヤーカフスの外側にフラップ部を
さらに設け,そのフラップ部を透液性とする思想は一切ない(2頁22


行∼24行)との意見を述べたが,その趣旨は,引用例2のほか,引用例
3においてもバリヤーカフスの外側にフラップ部をさらに設けそのフ

「,
ラップ部を透液性とする思想は一切ない」ことを説明するとともに,引用
発明3は,本件発明のように紙おむつの全長にわたるフラップ部全体を透
液性とし,蒸れ防止効果を奏するように構成したものではないことを強調
したものであって,引用例3の「通気性であるが撥水性の股下シート4」
と対比したものではない。
イ原告は,平成11年1月21日付け拒絶理由通知書(以下「本件拒絶理
由通知書」という。甲14)を受けて,平成11年3月29日付け手続補
正書以下本件手続補正書というにより特許請求の範囲の記載に
(「」。
),
ついて「通気性」を「透液性」と改め「フラップ部の製品紙おむつの全
,,
長にわたる領域が使用面側から裏面側に液が透過可能である」を付加する
補正をしたがその際発明の詳細な説明段落0016の軟便を
,,(【】
)「
阻止する機能の紙おむつにおいては,その軟便中の液分が吸収体に吸収さ
れないまま使用面側に残存するので特に蒸れが生じやすい。しかし,本発
明においては,バリヤーカフスを有する紙おむつにおけるフラップ部にお
いて,不透液性シートを存在させることなく,通気性を示すようにしたも
のであるため,蒸れを防止できる」との記載を「軟便を阻止する機能の
。,
紙おむつにおいては,その軟便中の液分が吸収体に吸収されないまま使用
面側に残存するので特に蒸れが生じやすい。しかし,請求項1記載の発明
においては,バリヤーカフスを有する紙おむつにおけるフラップ部におい
て,不透液性シートを存在させることなく,透液性を示すようにしたもの
であるために,たとえば通気撥水性のシートを用いる場合に比較して蒸れ
の防止効果はきわめて高いものとなる」と補正した。

訂正前明細書の段落【0015】の記載は,上記補正によるものである
が,同補正は,本件発明1と,通気防水性シートを用いた先行例1記載の
考案とが紙おむつにおけるフラップ部において不透液性シートを存在

「,
させることなく,透液性を示すようにしたもの」であるか否かという点で
相違することを明確にするとともに,上記相違点に係る本件発明1の構成
の効果が「蒸れの防止効果はきわめて高い」ものであることを明確にしよ

「」「」
うとしたものであって通気防水性と記載すべきところを通気撥水性
と誤記したものである。
(3)審決はたとえば通気撥水性のシートと単に例示的にあげられている


『』
『通気撥水性』という語が『通気防水性』という他の特定の用語の誤記であ
るとも到底認められない以下理由(1)③という審決書9頁7行∼9


(「」。
行)と認定判断した。
しかし,以下のとおり,理由(1)③に係る審決の認定判断は誤りである。
,【】
前記(1)及び(2)において主張したとおり訂正前明細書の段落0015
における比較対象の従来技術は「通気防水性」のものであり,そのように解
さなければ意味が通じないから,同段落において「たとえば通気撥水性のシ
」「」,
「」
ートとの記載が単に例示的にあげられているとしても通気撥水性
が「通気防水性」の誤記であることは左右されない。
(4)審決は「訂正事項gは,本件特許発明の作用を従来技術と比較して説明

する部分を訂正しようとするものではあるが,本件特許の技術的範囲を変更
する可能性のある訂正である以下理由(1)④という審決書9頁1
()

(「」。
0行∼12行)と認定判断した。
しかし,以下のとおり,理由(1)④に係る審決の認定判断は誤りである。
訂正事項gに係る訂正前明細書の段落【0015】において,比較対象の
従来技術は「通気防水性」のものであり,そのように解さなければ意味が通
じないことは,前記(1)及び(2)において主張したとおりである。
また,本件発明にいう「透液性」が「使用面側から裏面側に液が透過可能
であること」を意味することは,訂正前明細書の特許請求の範囲の記載から
一義的に明らかであるから,訂正前明細書の段落【0015】における「通
気撥水性」との記載を「通気防水性」と訂正することによって,本件発明の
技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
2取消事由2(理由(2)に係る認定判断の誤り)
審決は理由(2)において訂正発明1は引用発明1ないし3に基づいて当
,,,
業者が容易に発明をすることができたものであると認定判断し,訂正発明2に
ついても同様の認定判断をしたしかし以下のとおり理由(2)に係る審決
,。,,
の認定判断は誤りである。
なお,訂正発明1と引用発明1との一致点・相違点の各認定(前記3(2)イ
(ア)及び(イ))及び訂正発明と引用発明2との一致点・相違点の各認定(前記
3(2)ウ(ア)及び(イ))に誤りがないことは,いずれも認める。
(1)訂正発明1に係る認定判断の誤り
ア相違点1に係る容易想到性判断の誤り
(ア)審決は,相違点1に係る構成は,引用例2及び3から公知であると
する。
しかし,引用例2は,その「カフス」の外側に「フラップ部」をさら
に設ける思想はないから,訂正発明1のように「バリヤーカフスの自由
部より外側であってかつ吸収体の側縁より側外方にあるフラップ部」を
「」,「」
通気性とすることを示唆するものではなくましてこれを透液性
とすることを示唆するものではない。また,引用例3は,その「股下シ
ート4をバリヤーカフスの自由部とみたとしてもその外側にフ
」「」,「
ラップ部をさらに設ける思想はなく股下シート4を吸収体の側
」,
「」「
縁より側外方にあるフラップ部」にあるものとみたとしても,訂正発明
1の「バリヤーカフスの自由部」を有しないから,結局,訂正発明1の
ように「バリヤーカフスの自由部より外側であってかつ吸収体の側縁よ
り側外方にあるフラップ部シート」を「通気性」とすることを示唆する
ものではなく「透液性」とすることを示唆するものでもない。

(イ)審決は通気性のシートと透液性のシートとは蒸気の透過

「」「」,
性の程度に差があるとしつつ,文言上の違いに「格別の技術的意義があ
るものとは認められない(審決書13頁33行∼34行)と判断し,


また「フラップ部材のほぼ全体に蒸気を透過させる透液性とすること

は,広範な領域にわたって蒸気が透過するほうが蒸れ防止効果が高いこ
とは当然予測できることであるから,この点についても当業者が容易に


()。
なし得ることである審決書13頁35行∼14頁2行と判断した
しかし,引用例1(甲7)の記載(2頁右下欄11行∼16行,3頁
左下欄19行∼右下欄2行,3頁左上下欄5行∼8行,3頁右下欄2行
∼6行3頁右上欄1行∼5行に示されるとおり引用発明1はバ
,),,

リヤーカフス」のほか,体液不透過性バリヤをなす「ガスケットフラッ
プを必須とするものであってガスケットフラップは体液に対して
」,
「」
不透過性(非透液性)であることを必要とするものである。そして,訂
正発明1のように「フラップ部」を「透液性」とする思想は,引用例1
はもとより引用例23にもないむしろ通気性のシートに代え
,,。,
「」
て「透液性」のシートを用いれば,体液の漏れを生じる(体液不透過性
バリヤをなす「ガスケットフラップ」を構成できない)から,そのよう
に置換することを阻害する要因があるといえる。
また引用例1はバリヤーカフス及びガスケットフラップの
,,
「」「」
両者を設けることを必須とし,引用例2及び3は,起立するカフスのみ
を開示するのであって,訂正発明1の「フラップ部」のシートを示唆す
るものではないからフラップ部のシートについてより広範な領域

「」「
」。
にわたって蒸気が透過するようにすることを予想させるものではない
イ相違点2に係る容易想到性判断の誤り
審決は訂正発明1においてフラップ部材シートがバリヤーカフスを

「,
構成するバリヤーシート,不透液性シートおよび透液性シートの各側縁よ
り側外方に延在し,不透液性シートおよび透液性シートが存在しないフラ
ップ部を構成しているが,引用例1に記載の発明もこのような構造となっ
ていることは,Fig1∼3等の記載より明らかである(審決書14頁


4行∼8行)と認定した。
しかし,以下のとおり,審決の上記認定は誤りである。
引用例1(甲7)の記載(Fig1∼3,10頁左上欄5行∼12行)
によれば,引用発明1において,バリヤカフス62はフラップ部分68及
びチャンネル部分70からなり,ガスケットフラップ58はバックシート
42の延長部分及びフラップ部分68からなることが理解できる。すなわ
ち,引用発明1において,フラップ部分68は,あくまでもバリヤカフス
62の構成部分であって,バックシート42の延長部分と共にガスケット
フラップ58を構成し,吸収性製品の縁にまで延在している。
これに対して訂正発明1におけるフラップ部材シートはバリヤ
,「」,

ーカフスの自由部より外側であってかつ吸収体の側縁から側外方にあるフ
ラップ部を構成するシートでありしかも不透液性シートおよび透液
」,,

性シートの各側縁より側外方に延在し,前記不透液性シートおよび透液性
シートが存在しないフラップ部を構成」するものである。
したがって,引用発明1は,訂正発明1における「フラップ部材シート
がバリヤーカフスを構成するバリヤーシート,不透液性シートおよび透液
性シートの各側縁より側外方に延在し,不透液性シートおよび透液性シー
トが存在しないフラップ部を構成している構造」を開示ないし示唆するも
のとはいえない。
(2)訂正発明2に係る認定判断の誤り
訂正発明2に係る審決の認定判断は,訂正発明1に係る認定判断を前提と
するものであるところ,これに誤りがあることは前記(1)のとおりであるか
ら,訂正発明2に係る認定判断も,同様に誤りである。
第4取消事由に係る被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(理由(1)に係る認定判断の誤り)について
以下のとおり,理由(1)に係る審決の認定判断に誤りはない。
(1)通気撥水性のシートは通気性と撥水性を有するシートを意味するか
「」,
ら通気撥水性という語の意味は何ら不明確ではないまた段落00

「」。,【
15】を除き,訂正前明細書に「通気撥水性のシート」という語の記載がな
いことは当該記載が誤記であるとする理由にはならないから理由(1)①に
,,
係る審決の認定判断に誤りはない。
(2)本件発明に対する先行技術として本件特許の出願当初の明細書以下本
,(「
件当初明細書」という)に記載された先行例1(甲1,特開平1−201
。)
502号公報(以下「先行例2」という。甲2)のほか,本件拒絶理由通知
書が引用した実願平1−84183号(実開平3−24118号)のマイク
ロフィルム(甲3,引用例2(甲4)及び引用例3(甲5)がある。

そして,本件当初明細書には,先行例1についての記載はあるが,訂正前
【】,,,
明細書の段落0015に相当する記載はなく同記載は以下のとおり
本件拒絶理由通知書に応じて,本件意見書と同時に提出された本件手続補正
書により,付加的に補正されたものである。すなわち,本件拒絶理由通知書
が引用文献3として引用した引用例3甲5には股下シート4とし
「」(),

ては撥水性及び通気性を有するものであれば何でも良い明細書5頁3∼4


行との記載があるところ原告は本件意見書甲15において引用
),,(),

文献3の股下シートは通気性であるが撥水性のものである。股下シートは,
弾性部材7により,外向き状態で斜め外方に向いて起立するものである。こ
,,
の引用文献3においてもバリヤーカフスの外側にフラップ部をさらに設け
そのフラップ部を透液性とする思想は一切ないと主張し本件手続補正書

」,
による補正で,本件特許に係る明細書について,段落【0015】を新たに
設け請求項1記載の発明においてはバリヤーカフスを有する紙おむつに

「,
おけるフラップ部において,不透液性シートを存在させることなく,透液性
を示すようにしたものであるために,たとえば通気撥水性のシートを用いる
場合に比較して蒸れの防止効果はきわめて高いものとなるとの記載を付加


したものである。
このような本件特許の出願の経緯に照らすと,訂正前明細書の段落【00
15】において,比較対象となっている従来技術は,本件拒絶理由通知書が
引用した引用例3記載の発明であると理解されるべきであり,原告が主張す
るように,先行例1記載の考案のみではない。
したがって,理由(1)②に係る審決の認定判断に誤りはない。
(3)原告は,理由(1)③に係る審決の認定判断が誤りであるとし,その根拠と
して,訂正前明細書の段落【0015】における比較対象の従来技術は「通
」,,
気防水性のものであると主張するが原告の上記主張が失当であることは
前記(2)において指摘したとおりであり,理由(1)③に係る審決の認定判断に
誤りはない。
(4)訂正事項gは訂正前明細書の段落0015において比較対象の従
,【】,
来技術としてあげられている「通気撥水性」のシートを「通気防水性」のシ
ートと訂正するものであるが,そのように訂正することにより,本件発明の
技術的範囲を変更する可能性があることは,審決の指摘するとおりであり,
この点からも本件訂正は認められるものではない理由(1)④に係る審決の認

定判断に誤りはない。
2取消事由2(理由(2)に係る認定判断の誤り)について
,,。
以下のとおり審決のした相違点12に係る容易想到性判断に誤りはない
(1)訂正発明1について
ア相違点1の容易想到性判断の誤りに対し
紙おむつ着用時の蒸れを防止するためにカフスあるいは股下シートフ
,(
ラップに相当)を通気性のあるものとすることは,引用例2及び3に記載
されているように公知の事項であり,また訂正発明1では透液性のフラッ
プシートを用いてはいるが,通気性のシートも透液性のシートも蒸れの原
因となる蒸気を透過させるという点では同様の効果を奏するものである。
通気性であるか透液性であるかによって,その透過性の程度に差がある
としても,蒸れ防止という効果を奏するためにどの程度の蒸気の透過性を
シートに付与すべきかは当業者が適宜容易に定め得る程度のことにすぎな
い。そして,蒸気の透過性をシートに付与するという観点からすれば,通
気性あるいは透液性という単なる文言上に違いに格別の技術的意義がある
。,,
ものではないまた背中側および腹側においても蒸れを防止するために
フラップ部材のほぼ全体に蒸気を透過させる透液性とすることは,広範な
領域にわたって蒸気が透過するほうが蒸れ防止効果が高いことは当然予測
できることであるから,この点についても当業者が容易になし得ることで
ある。
イ相違点2の容易想到性判断の誤りに対し
訂正発明1において,フラップ部材シート(10)がバリヤーカフスを
構成するバリヤーシート4不透液性シート1および透液性シート
()
,()
(2)の各側縁より側外方に延在していることは,不透液性シートおよび
透液性シートが存在しないフラップ部を構成しているが,引用例1のFi
g2においても同様の位置関係になっている。
また,訂正発明1において,フラップ部は不透液性シートおよび透液性
シートが存在しないものであるが,その技術的意義は,訂正明細書に明確
に記載されておらず明らかでない仮に透液性シート2が完全に幅方
,。,

向に連続していると,尿が幅方向に伝わり,横漏れし,製品の外面に対し
て滲み出す原因ともなるので,図10に示す実施例においては,透液性シ
ート2を途中で不連続化したものである(訂正明細書の段落【003


0という効果があるとしても尿の横方向への伝わりを防止するために

),
透液性シートを不連続化することは,当業者が容易になし得ることにすぎ
ないし,その効果も当然予測できる程度のものにすぎない。しかも,フラ
ップ部は不透液性シート及び透液性シートが存在しないという構成は,例
えば引用例3(第3図)にも記載されているように公知の構成にすぎない
ものである。
そして,訂正発明1においては,フラップ部材シートは,不透液性シー
トの下面に接合されているが,訂正明細書の図2から4に記載されている
ように,フラップ部材シートは種々の箇所の接合できるものであって,フ
ラップ部材を不透液性シートの下面に接合することは,単なる設計事項に
すぎず,当業者が容易になし得ることである。しかも,フラップ部材を不
透液性シートの下面に接合したことによって,従来技術に比していかなる
利点があるのか明らかではない。
(2)訂正発明2について
紙おむつにおいて,バリアカフスやフラップ部を設ける具体的な手段は,
引用例1Fig3引用例2Fig2∼7及び引用例3第2図第
()
,()(,
3図)に記載されているように,種々の構造があり,どのような構造とする
かは当業者が適宜容易に定め得る設計事項であること,訂正発明2のような
構造(訂正明細書の図7のような構造)としたことにより,従来技術に比し
ていかなる利点があるのかは明らかでないことに照らせば,訂正発明2の構
成とすることは,当業者が容易になし得た程度のことにすぎない。なお,審
決は,フラップ部を透液性とする点について,訂正発明1と同様であると判
断している。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(理由(1)に係る認定判断の誤り)について
(1)誤記訂正目的の有無
原告は訂正事項gは誤記の訂正を目的とするものであり理由(1)に係る
,,
審決の認定判断は誤りであると主張する。
しかし,以下のとおり,原告の主張は失当である。
ア訂正前明細書(甲9)の記載
訂正前明細書には,次の記載がある。
(ア)「0001【産業上の利用分野】本発明は,フラップ部分が透液
【】
性を有し,蒸れを防止した紙おむつに関する。
0002従来の技術近年の紙おむつの改良には著しいものがあ
【】
【】
り,その改良の課題としては,着用時における蒸れの防止がある。
【0003】この課題を解決するために,実開昭62−88705号
公報には,いわゆるサイドカット部分に対してそのサイドカット部分を
埋め,紙おむつ全体が方形となるように,通気防水性シートを取付たも
の(以下先行例1という)が知られている」

(イ)「0005【発明が解決しようとする課題】前述の先行例1によ
【】
れば,確かにサイドフラップ部分における通気防水性シートの存在によ
り着用時の蒸れをある程度防止できるとしても,少なくとも前後の部分
での蒸れはまったく防止できない。たとえば幼児が仰向けまたはうつ伏
せに寝ている場合には,背中側または腹側での蒸れが著しい・・・」

0007したがって本発明の課題は第1義的には着用時にお

【】,,
ける蒸れ,特にバリヤーカフスを有することで軟便中の液分に伴う蒸れ
を,背中側および腹側においても確実に防止すること,付随的には大量
生産に適した紙おむつの構造を提供することにある」

(ウ)「0011【作用】本発明では,吸収体の側縁から側外方に延在
【】
,。,
するフラップ部のほぼ全体が透液性とされているたとえば具体的に
,,
フラップ部分において透液性シートおよび不透液性シートが存在せず
実質的に透液性不織布のみからなるフラップ部材シートにより構成さ
れ,このフラップ部材シートは紙おむつの実質的に全長にわたり配設さ
れているので,サイドフラップ部分のみならず前後においても,蒸れが
防止される」

0013他方軟便の阻止機能を有するバリヤーカフスを有する

【】,
紙おむつが知られている。この種のバリヤーカフスを構成する場合,軟
便の阻止のために,軟便中の液分の紙おむつ側方への浸透を防止するた
めに撥水性不織布を用いるとともに,そのバリヤーカフスを構成するバ
リヤーシートを不透液性シートに固定してフラップ部を構成する思想が
一般的である。したがって,フラップ部においては透液性を示さないも
のである。
【0014】しかるに,特に請求項1記載の発明においては,バリヤ
ーカフスを有する紙おむつにおけるフラップ部において,不透液性シー
トの側縁を製品紙おむつの側縁まで延在させる構成を採らないで,透液
性を有する(したがって当然に通気性も有する)ものとした。
【0015】軟便を阻止する機能の紙おむつにおいては,その軟便中
の液分が吸収体に吸収されないまま使用面側に残存するので特に蒸れが
生じやすい。しかし,請求項1記載の発明においては,バリヤーカフス
を有する紙おむつにおけるフラップ部において,不透液性シートを存在
させることなく,透液性を示すようにしたものであるために,たとえば
通気撥水性のシートを用いる場合に比較して蒸れの防止効果はきわめて
高いものとなる。
【0016】一方,バリヤーカフスを構成する場合,バリヤーシート
を通しての液分の外側外方への浸出性について考慮することが必要であ
る。この点については,バリヤーシートをたとえば撥水性不織布を用い
るで対処できるものの,トップシートを構成する透液性シートをそのま
まフラップ部に延在させると,その透液性シートを伝わってその側縁か
ら液が浸出し,製品の外面に滲み出す虞れがある。
【0017】しかるに,請求項3記載の発明によれば,透液性シート
の側縁を,不透液性シートの側縁より内側とし,かつ,透液性シートの
側縁部が不透液性シートにホットメルト接着剤により固定されているの
で,その固定部分において液の透液性シートでの伝わりが阻止され,製
品の外面に滲み出すことはない」

(エ)0021このように構成された紙おむつにおいては紙おむつ

【】,
の吸収体3の側縁の外方のほぼ全体が透液性で通気性のフラップ部材シ
ート10から構成されているので,脚回り部分において蒸れを防止する
ことができるとともに,紙おむつ長手方向前後においても,汗などによ
る水分がフラップ部材シート10を通して透過するので,背中および腹
部分におおても(判決注:においても」の誤記と認める)蒸れを防止
「。
できる」

「0033【発明の効果】以上の通り,本発明によれば,着用時に
【】
おける蒸れを脚回りのみならず腹および背中においても蒸れを防止でき
るとともに,製造がきわめて容易となる」

イ訂正前明細書における「通気撥水性」の意義
(ア)上記アの各記載によれば,訂正前明細書では,本件発明は,着用時
における蒸れ,特に軟便の阻止機能を有するバリヤーカフスを有するこ
とによる軟便中の液分に伴う蒸れを,背中側及び腹側においても確実に
防止することを課題とするものであるとされ,また,軟便の阻止機能を
有するバリヤーカフスは,従来技術においては,軟便中の液分の紙おむ
つ側方への浸透を防止するために,撥水性不織布を用いるとともに,バ
リヤーカフスを構成するバリヤーシートを不透液性シートに固定してフ
ラップ部を構成するのが一般的であり,かかる従来技術においては,フ
(【】)

ラップ部は透液性を示さないものであったため段落0013参照
バリヤーカフスを有する紙おむつが特に蒸れが生じやすいことから,本
件発明1は,フラップ部において,不透液性シートを存在させることな
く,透液性を示すようにしたものであり,その結果,たとえば通気撥水
性のシートを用いる場合に比較して蒸れの防止効果が極めて高いものと
なったこと(段落【0014【0015】参照)が説明されている。


そして,上記従来技術において,撥水性不織布バリヤーカフスは,軟
便中の液分の紙おむつ側方への浸透を防止するために用いられていたこ
とに照らすと,撥水性不織布は液の浸透を防止する目的で用いられてい
たものであることは明らかである。もっとも,撥水性不織布は直ちに不
透液性を意味するものではないので,その浸透防止効果が不透液といえ
る程度のものであったとまでいうことはできない。
このような状況下において,本件発明1は,蒸れ防止のために,フラ
ップ部材シートを単に「通気性」とするにとどまらず,特に「透液性」
としたのであるから,従来の撥水性不織布を用いていた場合(前記のと
,,
おり液分の浸透防止効果は不透液といえる程度のものではないものの
蒸れが発生してしまう程度の透液性しか有していなかったよりも高度


の透液性を要求したと解するのが自然である。訂正前明細書の段落【0
015】における「通気撥水性」のシートと比較して蒸れの防止効果が
極めて高くなった旨の記載は,上記の解釈を裏付けるものである。
(イ)また,訂正前明細書の前記アの記載によれば,バリヤーカフスを構
成する場合,バリヤーシートを通しての液分の外側外方への浸出を防止
することが求められ,液分がトップシートを構成する透液性シートを伝
わって製品の外面に滲み出すことを阻止する必要があり(段落【001
6参照本件発明3は透液性シートの側縁を不透液性シートの側
】)
,,,
縁より内側とし,かつ,透液性シートの側縁部が不透液性シートにホッ
トメルト接着剤により固定する構成を採用することによって,透液性シ
ートでの伝わりを阻止したものである(段落【0017】参照。

すなわち,本件発明3は,トップシートを構成する透液性シートを伝
わって液が浸出することを上記の構成を採用することにより防止するも
のであるから,フラップ部を構成する「透液性バリヤーシート」の「透
」,「」
液性については本件発明1のフラップ部材シートにおける透液性
と同義と解することは当然である。
なお,訂正前明細書においては,バリヤーシートを通しての液分の外

「」
側外方への浸出はバリヤーシートをたとえば撥水性不織布を用いる
ことで対処可能と記載されている(段落【0016。しかし,かかる


記載は,段落【0016】及び【0017】全体の記載,並びに,上記
のとおり,軟便中の液分の浸透防止のために撥水性不織布を用いること
が従来技術としてあげられ,かかる従来技術においても液分の浸出防止
は一定程度果たされていたのであることからすれば,かかる従来技術に
ついて触れたものと解するのが相当であって,本件発明1と本件発明3
における「透液性」を別異に解することの根拠となるものではない。
(ウ)以上のとおりであるから,本件発明における「透液性」のフラップ
部材シートは通気撥水性のシートより高度の透液性があり通

「」「」,

気撥水性」のシートを用いた場合よりも蒸れ防止効果が大きいものと解
するのが合理的であり,訂正前明細書の段落【0015】における「通
気撥水性」との記載は,これを裏付けるものであって,訂正前明細書の
段落【0015】における「通気撥水性」との記載のままでは,本件発
明の作用効果の説明として不合理であるということはない。
ウ出願の経緯,出願前の技術等
(ア)本件当初明細書では通気撥水性という語は用いられていなかっ

「」
たが,本件拒絶理由通知書(甲14)を受けて,原告は,次のように補
正した。
すなわち,本件手続補正書により,発明の詳細な説明(段落【001
6の軟便を阻止する機能の紙おむつにおいてはその軟便中の液分

)「,
が吸収体に吸収されないまま使用面側に残存するので特に蒸れが生じや
すい。しかし,本発明においては,バリヤーカフスを有する紙おむつに
おけるフラップ部において,不透液性シートを存在させることなく,通
,。
」,
気性を示すようにしたものであるため蒸れを防止できるとの記載を
「軟便を阻止する機能の紙おむつにおいては,その軟便中の液分が吸収
体に吸収されないまま使用面側に残存するので特に蒸れが生じやすい。
しかし,請求項1記載の発明においては,バリヤーカフスを有する紙お
むつにおけるフラップ部において,不透液性シートを存在させることな
く,透液性を示すようにしたものであるために,たとえば通気撥水性の
シートを用いる場合に比較して蒸れの防止効果はきわめて高いものとな
る」と補正したことが認められる(弁論の全趣旨。
。)
また,上記補正の契機となった本件拒絶理由通知書(甲14)の引用
に係る引用例3甲5には股下シート4としては撥水性および通気
(),

性を有するものであれば何でも良い明細書5頁3行∼4行との記載

()
がある。
(イ)そうすると,上記補正は,本件発明1における「フラップ部」が,
先行例1における「不透液性」シートのみでなく,より透液性が高いと
解される「通気撥水性」のシートと比較して,更に高い「透液性」を示
す「通気透液性」のシートであることを表現したものであって,本件発
明1が,撥水性及び通気性を有するシートと比較して,蒸れの防止効果
。,
が優れていることを強調する目的でされたものと理解されるすなわち
上記補正では,引用例3における「撥水性および通気性を有する」シー
トを比較対象として意識したために通気撥水性のシートという語を

「」

「」「」
選択したのであって通気防水性と記載すべきところを通気撥水性
と誤記したものと解することはできない。
(ウ)引用例3(甲5)に「股下シート4としては撥水性および通気性を
有するものであれば何でも良い明細書5頁3行∼4行と記載されて

()
いるように,本件特許の出願前から「通気性と撥水性を有するシート」
として種々のものが知られていたことが認められる。したがって,訂正
前明細書に接した当業者は,同明細書の段落【0015】における「通
気撥水性のシートについて通気性と撥水性を有するシートを意味
」,
「」
するものと理解するというべきであり,これを「通気透水性のシート」
の誤記と当然に認識するということはできない。
エ小括
以上を総合すれば,訂正前明細書【0015】における「通気撥水性」

「」。,,
との記載は通気防水性の誤記ということはできないまたその他
訂正事項gは特許法126条1項に掲げるいずれの事項を目的とするもの
とも認められないこれと同旨の理由(1)に係る審決の認定判断に誤りはな

い。
(2)原告の主張に対し
ア原告は,訂正事項gに係る「通気撥水性」という訂正前明細書の記載が
誤りで通気防水性という訂正明細書の記載が正しいことは訂正前明

「」,
細書の記載及び当業者の技術常識から明らかであり,当業者であれば,当
然,これに気付いて,前者が後者の誤記であると理解すると主張する。
しかし訂正前明細書の記載及びその合理的解釈通気撥水性のシー
,,
「」
トについての当業者の理解及び出願の経緯に照らし,訂正前明細書【00
15】における「通気撥水性」との記載を「通気防水性」の誤記というこ
とはできないことは,前記(1)のとおりである。
したがって,原告の主張は採用することができない。
イ原告は,①本件意見書(甲15)では,本件発明1と引用例3の「通気
性であるが撥水性の股下シート4」と対比したものでない,②本件手続補
正書による補正は,本件発明1と,通気防水性シートを用いた先行例1記
載の考案とが紙おむつにおけるフラップ部において不透液性シートを

「,
存在させることなく,透液性を示すようにしたもの」であるか否かという
点で相違することを明確にするとともに,上記相違点に係る本件発明1の
構成の効果が「蒸れの防止効果はきわめて高い」ものであることを明確に
しようとしたものであって通気防水性と記載すべきところを通気撥

「」「
水性」と誤記したものである,と主張する。
しかし,本件手続補正書による補正では,引用例3における「撥水性お
」,
「」
よび通気性を有するシートを比較対象として意識したため通気撥水性
のシートという用語を選択したものであって通気防水性と記載すべき

「」
ところを「通気撥水性」と誤記したものと解することはできないことは,
前記(1)ウのとおりである。
また本件意見書甲15には引用文献3の股下シートは通気性で
,(),

あるが撥水性のものであるそのフラップ部を透液性とする思想は一切




ない」など「透液性」のレベルに関する記載があり,本件発明1のフラ
。,
ップ部に相当するものが引用例3に存在しているか否かについてのみ意見
を陳述したものということはできず,むしろ,シートの「透液性」のレベ
ルの差について,意見を述べたものと解される。
,(),
「,
なお引用例3甲5には従来・・・これらの使い捨ておむつでは
・・・漏れない様にするために・・・裏面シートが通気性を有していない
ためむれが生じかぶれの原因ともなっていた・・・本考案は・・・股下
。,
両側縁部に,表面シート及び裏面シートと重合していない部分を有する,
撥水性を有し且つ通気性の股下シートを設け,且つ該股下シートの側端部
に弾性部材を設けてなる使い捨ておむつである(明細書2頁9行∼3頁


13行「本考案では,股下シート4を取り付けることにより漏れを防止


しうるので,吸収体3と股下弾性部材5との距離を狭めることが可能であ
る。股下シート4としては,撥水性及び通気性を有するものであれば何で
も良い同4頁20行∼5頁4行股下区域の表面シート及び裏面シー

()


トと股下シートとの非重合部8a,8bは通気性を付与する面からはでき
るだけ広い面積をとることが望ましい同6頁7行∼10行考案の


()



効果)本考案の使い捨ておむつは,従来の使い捨ておむつで生じていた股
下部からの漏れを防止できるばかりでなく,股下部に通気性を付与するこ
とが可能でありむれ,かぶれを防ぐことが可能であるといった利点があ
る(同6頁15行∼20行)などの記載があり,引用例3の「股下シー


ト」は,本件発明の「フラップ部材シート」と同様に,着用時の蒸れを防
止することができるものである。したがって,引用例3における「撥水性
および通気性を有する」シートを比較対象とすることが,明らかに不合理
であるとはいえない。
したがって,原告の主張は採用することができない。
ウ原告は,本件発明にいう「透液性」が「使用面側から裏面側に液が透過
可能であること」を意味することは,訂正前明細書の特許請求の範囲の記
載から一義的に明らかであるから,訂正前明細書の段落【0015】にお
ける「通気撥水性」との記載を「通気防水性」と訂正することによって,
本件発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではないと主張する。
しかし前記(1)のとおり本件発明における透液性のフラップ部材
,,「」
シートは「通気撥水性」のシートより高度の「透液性」があり「通気撥
,,
水性」のシートを用いた場合よりも蒸れ防止効果が大きいものと解するの
,【】「」
が合理的であり訂正前明細書の段落0015における通気撥水性
との記載は,これを裏付けるものであるから,同段落における「通気撥水
性」のシートを「通気防水性」のシートと訂正すれば,本件発明1におけ
るフラップ部は通気撥水性シートよりも透液性の程度が高いもの

「」「」
に限られず通気防水性のシートよりも透液性の程度が高ければよ

「」「」
いと解釈する余地を生じることになり,結局,訂正事項gは,本件発明の
技術的範囲を拡張又は変更する可能性があるというべきである。
したがって,原告の主張は採用することができない。
2結論
(1)訂正事項gと本件訂正全体の許否との関係について
ア前記1(2)ウのとおり訂正前明細書の段落0015における通気
,【】「
撥水性」のシートを「通気防水性」のシートと訂正した場合,本件発明に
おけるフラップ部は通気撥水性シートよりも透液性の程度が高い

「」「」
ものに限られず通気防水性のシートよりも透液性の程度が高けれ

「」「」
ばよいと解釈する余地を生じることになる。したがって,本件訂正は,訂
正事項gを含むことによって,訂正発明1及び2のいずれの関係において
も,本件発明の技術的範囲を拡張又は変更するとの解釈の成立する余地の
生じる訂正というべきであるから,訂正事項gは,単なる誤記の訂正にと
どまる形式的なものではなく,特許請求の範囲に実質的影響を及ぼすもの
というべきである。
イところで審判請求書甲10の1には請求の趣旨として特許第
,(),,

3009482号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正す
ることを求めるとの審決を求めると記載され複数の訂正箇所のうち
,。
」,
の一部の訂正事項が認められなかった場合,二次的に残余の訂正のみを請
求するとの格別の意思を認める合理的な理由もうかがえない。また,訂正
事項gが,一部の請求項についてのみに関係を有する事項であると解する
こともできず,むしろすべての請求項に関係する事項と解するのが合理的
である。そして,特許庁が,審判手続において発した平成19年3月16
日付け訂正拒絶理由通知書(甲12)には,訂正事項gは,特許法126
条1項に掲げるいずれの事項を目的とするものとも認められないから,本
件訂正は同号の規定に適合しておらず,訂正は許されない旨が記載されて
いたにもかかわらず原告が提出した平成19年4月23日付け意見書甲
,(
13)には,訂正事項gが許されないとしても,二次的に,その余の訂正
事項に係る訂正については許されるべきであるとの審決を求めることをう
かがわせるに足りる記載は存在せず,また,審判請求書が補正されたこと
も認められない(弁論の全趣旨。

本件における上記の経緯に照らすならば,本件では,訂正事項gに係る
訂正が許されないものと判断された場合において,その余の訂正事項につ
いて,一部のみの訂正に係る審判を求めているとの合理的な意思を推認す
ることはできない。
ウそうすると,本件において,審決が,訂正事項gについての訂正が許さ
れない以上,本件訂正に係る審判請求が全体として成り立たないと判断し
た点に違法はない。
(2)結語
上記検討したところによれば「本件審判の請求は,成り立たない」とし
,。
た審決の結論は,その余の点の当否を判断するまでもなく,これを是認する
ことができる。よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却する
こととし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官飯村敏明
裁判官大鷹一郎
裁判官嶋末和秀

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