弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成22年10月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(行ケ)第10421号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成22年10月18日
判決
原告ジュピターオキシジェンコーポレーション
訴訟代理人弁理士木村高久
被告特許庁長官
指定代理人長者義久
吉水純子
志水裕司
北村明弘
田村正明
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と
定める。
事実及び理由
第1原告の求めた判決
特許庁が不服2006−4610号事件について平成21年8月10日にした審
決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,国際特許出願に対する拒絶査定に係る不服の審判請求について特許庁が
した請求不成立の審決の取消訴訟である。争点は,進歩性の有無である。
1特許庁における手続の経緯
原告は,平成13年(2001年)4月27日(米国)の優先権を主張して,平
成14年3月22日,名称を「ガス式燃焼システムおよびその使用法(平成14」
年9月3日付けの補正により「炉およびその炉を用いた酸素供給式燃焼システムま
たは燃焼方法またはアルミニウム回収方法またはアルミニウム分離方法またはアル
ミニウム回収炉または廃棄物焼却装置廃棄物焼却方法若しくはその炉の制御方法」
と変更)とする発明について国際特許出願(PCT/US02/08701,日本
国における出願番号は特願2002−585679号)をし,平成14年9月2日
(,),に特許庁に翻訳文を提出し甲8国内公表公報は特表2004−520490号
数回の補正を経た後に拒絶査定を受けたので,不服の審判請求をした。
特許庁は,この請求を不服2006−4610号事件として審理し,その中で原
告は,平成18年4月12日付けで特許請求の範囲等を変更する補正をしたが(甲
23,請求項の数18,この補正は却下され,平成20年10月7日付けで特許)
(,),,請求の範囲等を変更する補正をしたところ甲10請求項の数18特許庁は
平成21年8月10日,この補正に基づき発明の要旨を認定した上「本件審判の,
請求は,成り立たない」との審決をし,その謄本は平成21年8月25日原告に。
送達された。
2本願発明の要旨
平成20年10月7日付け補正による請求項の数は18であるが,そのうち【請
求項1】は,次のとおりである(本願発明1。)
「少なくとも1つのバーナを有し,空気の侵入を実質的に防止するように構成さ
れ,水が入ったチューブが電気を発生させるスチームを発生する燃焼反応領域を有
するように設計された炉と,
純度が少なくとも85%である酸素を供給する酸素供給源と,
炭素系燃料を供給する炭素系燃料供給源と,
前記酸素または前記炭素系燃料のいずれかの化学量論比に対する余剰分を5%未
満に抑えるように調整する制御装置を有する制御システムと
を備え,
前記炭素系燃料および前記酸素の燃焼によって4500°Fを超える火炎温度を
形成し,前記炉からの排気流は,温度が1100°F以下である酸素供給式燃焼シ
ステム」。
3審決の理由の要点
刊行物1(特開2001-21139号公報,公開日平成13年1月26日,甲
1)には,次のとおりの引用発明が記載されていると認められる。
「少なくとも1つの純酸素バーナを有し,密閉型に構成され,被加熱流体が入っ
た熱交換チューブがバーナからの燃焼ガスによって被加熱流体を加熱する加熱領域
を有するように設計された本体と,
酸素を供給する酸素供給源と,
炭素系燃料を供給する炭素系燃料供給源とを備え,
前記炭素系燃料および前記酸素の燃焼によって火炎を形成し,
前記本体からの排熱ガスは,温度が392∼2012°Fである熱交換装置」。
本願発明1と引用発明とは,次のとおりの一致点で一致し,相違点(イ)∼(ハ)で
相違するが,相違点(イ)に係る本願発明1の構成は当事者が容易に想到できたこと
であり,相違点(ロ)の構成については,刊行物1に課題解決の示唆があり,また,
例示された文献に記載されたとおり周知技術であったと認められるので,引用発明
に周知技術を適用することは当業者が容易になし得たことであり,相違点(ハ)は実
質的な差異でないから,本願発明1は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が
容易に発明をすることができたものである。
【一致点】
「少なくとも1つのバーナを有し,空気の侵入を実質的に防止するように構成さ
れ,燃焼反応領域を有するように設計された炉と,
純度が少なくとも85%である酸素を供給する酸素供給源と,
炭素系燃料を供給する炭素系燃料供給源と
を備え,
前記炭素系燃料および前記酸素の燃焼によって火炎を形成し,
前記炉からの排気流は,温度が1100°F以下である酸素供給式燃焼システ
ム」。
【相違点(イ)】
本願発明1では,燃焼反応領域で,水が入ったチューブが電気を発生させるスチ
ームを発生するのに対して,引用発明では,燃焼反応領域で,被加熱流体が入った
熱交換チューブがバーナからの燃焼ガスによって被加熱流体を加熱するものの,電
気を発生させるスチームを発生するか否か不明である点
【相違点(ロ)】
本願発明1では,酸素または炭素系燃料のいずれかを化学量論比に対する余剰分
を5%未満に抑えるように調整する制御装置を有する制御システムを備えるのに対
して,引用発明では,このような制御装置を有する制御システムを備えるか否か不
明である点
【相違点(ハ)】
本願発明1では,4500°Fを超える火炎温度を形成するのに対して,引用発
明では,火炎温度が不明である点
第3原告主張の審決取消事由
1取消事由1(一致点認定の誤り)
審決は,刊行物1の記載から,引用発明の「酸素」は「窒素を多量に含有しない
高純度の酸素を意図したものであり6頁12行と認定するが刊行物1の純」(),「
」(【】),酸素バーナ自体からNOxが発生することなく段落0025という記載と
刊行物1全体に「純酸素バーナ」という用語が用いられていることからすると,引
用発明のバーナに導入される酸化剤は純粋な酸素であり,窒素が全く含まれないも
のと判断すべきである。また,純酸素ということは,バーナに導入される酸化剤の
組成は一定しているともいえる。
,,「」これに対し本願発明1は酸化剤として純度が少なくとも85%である酸素
を用いており,ある程度の不純物を含み,また,品質にばらつきが生じるものと考
えるべきである。
したがって,引用発明の「酸素」は,本願発明1の「純度が少なくとも85%で
ある酸素」に相当するものではない。
2取消事由2(相違点(ロ)に関する判断の誤り)
(1)審決は,バーナに供給する燃料又は酸素を化学量論比に調整することは周
知技術であるとし,特開昭54−83123号公報(甲4)および特表平11−50
3224号公報(甲3)を例示している(8頁8行∼11行。)
しかしながら,特開昭54−83123号公報及び特表平11−503224号
公報に記載されているのは,バーナに燃料と空気を供給して燃焼させる燃焼装置で
あり,刊行物1のような純酸素や本願発明1のような濃縮した酸素を酸化剤として
用いる装置ではない。特開昭54−83123号公報及び特表平11−50322
4号公報により,バーナに供給する燃料又は空気を化学量論比に調整することが本
願の優先権主張日前に周知技術であったことは認めるが,バーナに供給する燃料又
は純度が少なくとも85%である酸素を化学量論比に調整することは,これらの文
献には記載されておらず,周知技術であったとは認められない。
(2)審決は,燃料又は酸素を化学量論比に制御するために,酸素の化学量論比
に対する余剰分を5%未満に抑制することは周知技術であるとし,特開平10−5
4509号公報(甲5)及び特開平7−324704号公報(甲6)を例示している
(8頁12行∼16行。)
しかしながら,特開平10−54509号公報の段落【0004】及び【000
7】には,燃焼させる燃料の量を基準にした空気の使用量は燃料の完全燃焼に要す
る化学量論比の100∼105%であることが記載されている。さらに,ここでの
空気とは空気中に含まれる酸素に相当するものとして理解できることも記載されて
いる。
燃料又は空気を化学量論比に制御するために,空気の化学量論比に対する余剰分
を5%未満に抑制することは,特開平10−54509号公報により本願の優先権
主張日前に周知であったと認める。しかし,燃料又は純度が少なくとも85%であ
る酸素を化学量論比に制御するために,酸素の化学量論比に対する余剰分を5%未
満に抑制することは,同公報には記載されておらず,周知技術であったとは認めら
れない。
(3)また,特開平7−324704号公報には,燃料および酸化剤を化学量論
比の99∼105%で燃焼させることが記載されている。加えて,酸化剤は空気又
(【】)は空気よりも酸素濃度が高い流体であることが記載されている段落0005
という点において,本願発明と共通しているようにみえる。
しかし,特開平7−324704号公報では,燃料と酸化剤とを化学量論比で炉
に導入しているものの,燃焼温度は2200°F∼3100°F(1204℃∼1
704℃)と本願発明の燃焼温度よりも明らかに低い。また,不完全燃焼による生
成物が発生し(段落【0006,排気ポートへさらなる酸化剤の導入を行う(段】)
落【0008)ことが記載されており,完全燃焼のためには二次酸化を必要とし】
ている。
一方,本願発明1では,二次酸化を行わずに完全燃焼を達成することができる。
したがって,本願発明1と特開平7−324704号公報とは技術的思想が大き
く異なるものであり,燃料又は純度が少なくとも85%である酸素を化学量論比に
制御するために,酸素の化学量論比に対する余剰分を5%未満に抑制することは,
周知技術であったとは認められない。
(4)よって,引用発明に周知技術を組み合わせたとしても,本願発明1が想到
容易であるとはいえない。
第4被告の主張
1取消事由1に対し
(1)引用発明において使用される酸素には,実質的に純粋な酸素のような高純
度の酸素が使用されていると考えられる。ただ「純粋な酸素」といっても,実用,
上は,工業用酸素の純度が「99.5%以上」であるように(JISK11「
01。乙2,酸素以外の物質を全く含まないのではなく,不純物程度の含有は許」)
。,,「」,容されているこのため審決は窒素が多量に含有しないとしたのであって
「窒素が全く含まれない」とは認定していない。
他方本願明細書翻訳文甲8及び平成16年3月16日付け手続補正書甲,(()(
9)の記載からすると,本願発明1は「高純度の酸素」を使用することが好まし),
,,「」く酸素の純度をできる限り高くするとしておりこれには酸素が100%純度
(段落【0044)のものも包含される。また,酸素の純度が「少なくとも85)】
%である」点は,段落【0034】及び【0044】の記載からすると,酸素以外
の成分を最大15%含有する酸素供給源でも利用可能であるとしているにすぎな
い。さらに,本願発明1は,純度が「85%∼100%」の酸素を使用することを
特定事項としている。この特定事項は,使用する酸素供給源を純度の数値範囲によ
って特定したものであり,その数値範囲に含まれる純度を有する酸素供給源であれ
ば,当該特定事項に該当することになる。
以上のとおり,本願発明1の「純度が少なくとも85%である酸素を供給する酸
素供給源」という特定事項は,高純度の酸素を対象としたものであり,それには1
00%あるいは100%に近い純度も含まれる。そうすると,引用発明における酸
素は,本願発明で特定された酸素供給源の酸化剤に含まれることは明らかであり,
審決の一致点の認定に誤りはない。
(2)本願明細書に,本願発明の燃焼システムが「予め定められた純度の酸素を
供給する酸素供給源を有することが記載されているように段落00110」(【】,【
020,本願発明は,純度が85%∼100%の範囲のうち「予め定められた】),
純度」の酸素をバーナに供給するものである。そうすると,使用される酸素供給源
の酸素は,その高低はともかくとして「予め定められた純度」を一定に維持して供
,。給されるから供給される酸化剤として組成にバラツキが生じることは考えにくい
2取消事由2に対し
,(1)特開昭54−83123号公報及び特表平11−503224号公報には
「」。燃焼装置において燃料又は空気を化学量論比に調整することが記載されている
,「,ところで特表平11−503224号公報の燃焼プロセスの化学量論比Φは
ある量の燃料を燃焼するために供給された酸素モル数を,同量の燃料を燃焼するの
に理論的に必要な酸素モル数で割ることによって定まる(9頁11行∼13行)。」
という記載や,特開昭54−83123号公報の「化学量論という語は,広義に用
,。いて燃焼反応における反応剤としての元素および化合物の相対的割合を意味する
ここにおいて化学量論的比は,生成物中に過剰の反応剤を残すことなく完全な反応
を行なう,反応剤の(燃料:酸化剤)の特定の比を意味する。たとえば,CH:4
Oの化学量論的(分子)比は,CH+2O→CO+2HOの平衡反応を行24222
なうには1:2である(4頁右下欄14行∼5頁左上欄1行)という記載によれ。」
ば,燃焼における化学量論比とは,酸化剤中の酸素と燃料とが完全反応し完全燃焼
する量を意味する。
そうすると,特開昭54−83123号公報及び特表平11−503224号公
報の燃焼装置は,供給された空気中の酸素により燃料を燃焼させるものであり,か
つ「化学量論比に調整する」とは,燃料と酸化剤中の酸素とが完全反応(完全燃,
焼)する量,すなわち燃料の量と空気中の酸素の量とが化学量論比にすることを意
味するのであるから,特開昭54−83123号公報及び特表平11−50322
,「」4号公報には実質的にバーナに供給する燃料又は酸素を化学量論比に調整する
ことが記載されていることは明らかである。
したがって,審決の周知技術の認定が,バーナに燃料及び空気を供給して燃焼さ
せる燃焼装置におけるものであるとしても,上記のとおり,化学量論比で調整され
る成分は,酸化剤(空気)中の酸素であることから,高純度の酸素を使用する引用
発明に対して,審決が認定した「制御装置により,バーナに供給する燃料又は酸素
を化学量論比に調整する」との周知事項を適用し,相違点に係る構成を想到するこ
とは,当業者が容易になし得ることである。
(2)特開平10−54509号公報には,バーナに供給された燃料及び空気を
化学量論比で燃焼させる装置において,空気の使用量として,燃料の完全燃焼に要
する化学量論的量の100%以上∼105%未満,すなわち化学量論比に対する余
剰分が5%未満の範囲であることが示されている。
,,()そして上記(1)で述べたとおり化学量論比で調整される成分は酸化剤空気
中の酸素であるから,特開平10−54509号公報に記載された105%未満の
空気量とは,実質的には,105%未満の酸素量を意味するものであって「酸素,
の化学量論比に対する余剰分を5%未満に抑制すること」が特開平10−5450
9号公報に開示されていることは明らかである。したがって,高純度の酸素を使用
する引用発明に対して「燃料又は酸素を化学量論比に制御するために,酸素の化,
学量論比に対する余剰分を5%未満に抑制すること」という周知事項を適用し,相
違点に係る構成を想到することは,当業者が容易になし得ることである。
(3)ア特開平7−324704号公報には,バーナに燃料及び酸化体を供給し
て燃焼させる燃焼装置が記載されており「実質的に化学量論比率での燃料及び酸,
化体を,煙管システムと連通し且つ装入物を含んでなる炉内に提供する「実質」,“
的に化学量論の”とは化学量論の99%よりも小さく無い或は105%よりも大き
いことを意味し」の記載(段落【0004。ただし「105%よりも大きい」は】,
「105%よりも大きくない」の誤記である)によれば,燃料又は酸化体を99%。
∼105%の範囲で供給することが記載されている。したがって,特開平7−32
4704号公報に「燃料又は酸素を化学量論比に制御するために,酸素の化学量論
比に対する余剰分を5%未満に抑制すること」が開示されていることは明らかであ
り,審決の認定に誤りはない。
イなお,原告は,特開平7−324704号公報について,本願発明1よりも
燃焼温度が低い旨主張している。
しかし,特開平7−324704号公報において「2200°F乃至3100,
°F(約1204℃乃至約1704℃」とされているのは,火炎によって生じた)
燃焼反応ガスが炉内に創出する温度である。他方,本願明細書の記載に照らすと,
本願発明1についても,炉内温度は,約1300°F(約704℃)∼2200°
F(約1204℃)であって,特開平7−324704号公報の炉内温度よりも低
い。
したがって,特開平7−324704号公報に記載された燃焼温度が本願発明の
燃焼温度より低いことを根拠にして技術的思想が異なるとする原告の主張は,前提
において失当である。
ウまた,原告は,特開平7−324704号公報では二次酸化を必要としてお
り,本願発明1とは技術的思想が異なる旨主張する。
しかし,特開平7−324704号公報の燃焼装置では「燃料及び酸化体」を,
,,化学量論の99%∼105%の比率で供給し完全燃焼を実施しようとするものの
当該燃焼によっても不完全燃焼の生成物が幾らか創出されることから,完全燃焼を
行うために,二次酸化を行っているにすぎない。
したがって,特開平7−324704号公報において,二次酸化を行う燃焼方法
が記載されているとしても,化学量論の99%∼105%の比率で酸化体を供給す
るとの技術的思想が開示されていることは明らかであって,技術的思想が大きく異
なるとする原告の主張には理由がない。
第5当裁判所の判断
1本願発明1の意義
(()())本願明細書翻訳文甲8及び平成16年3月16日付け手続補正書甲9
の段落【0001【0011【0021】及び【0034】などの記載によれ】,】,
ば,本願発明1は,酸化剤と燃料とを燃焼させる炉などの燃焼システムに関する発
明であって酸化剤として空気を供給する従来の燃焼システムでは空気の約79%,,
が窒素であることから,燃焼後にNOXが発生するなどの欠点があるのに対し,本
願発明1では,酸化剤として純度85%以上である酸素を供給し,かつ,当該酸素
と燃料とを供給する際に,化学量論比に対する酸素又は燃料の余剰分を5%未満に
抑えるよう調整することで,燃焼生成物には酸化剤に由来する窒素が含まれないよ
うにし,また,燃焼の際に窒素や余剰酸素等の加熱にエネルギーが利用されること
がなくなり熱効率を向上させることができるなどというものであることが認められ
る。
2引用発明
刊行物1(甲1)の記載によれば,引用発明は,酸化剤と燃料とを燃焼させる燃
,,焼システムに関する発明であって従来技術では酸化剤として空気を供給するため
,,バーナで燃焼した後にNOxが発生するなどの問題があるのに対し引用発明では
燃料に純酸素を供給することで,バーナで燃焼した後にNOxを発生させないなど
とするものであることが認められる。
3取消事由1(一致点認定の誤り)について
(1)原告は,審決が,引用発明の「酸素」は本願発明1の「純度が少なくとも
85%である酸素」に相当するとした上「純度が少なくとも85%である酸素」を,
一致点として認定したのは誤りである旨主張する。
上記1のとおり,本願発明1における酸化剤は「純度が少なくとも85%である,
酸素,すなわち純度が85%から100%までの酸素であるのに対し,上記2のと」
,,,,おり引用発明の酸素は純酸素すなわち理論的には100%の酸素であるから
引用発明の「酸素」は,本願発明1の「純度が少なくとも85%である酸素」に含
まれるのであって,審決がした一致点の認定につき原告主張の誤りはない。
(2)ここで,本願発明1における酸化剤は「純度が少なくとも85%である酸,
素」であって,15%までの不純物が含まれ得るという点で引用発明の酸素(純酸
素)と一致しない場合があり得る。
,,しかし上記1で認定した本願発明1の技術的課題と本願明細書の記載によれば
本願発明1は,従来技術である「空気」供給燃焼システムの欠点を解消するため,
「酸素」供給式燃焼システムを提供するものであって,従来技術で用いられる「空
気」は約79%が窒素であるため,燃焼後にNOXが発生するなどの欠点があるの
に対し本願発明1では本質的に純粋な酸素を…用い段落0034燃,,「」(【】),「
料とともに給送される窒素がないため,…排気に含まれる燃焼生成物には実質的に
窒素が含まれ」ない(段落【0021)というのであり「濃度が約85%∼約9】,
9+%である酸素であれば利用可能であるが,酸素濃度(すなわち酸素供給源の純
度)は高いほど好ましい」とされている。このような作用効果,特に「燃料ととも
に給送される窒素がない」ことに照らすと,本願発明1は,基本的に,窒素の含ま
れない純度の高い酸素を用いることを課題解決の手段とする発明であって15%,,
までの不純物を含み得るとの視点においての技術的意義はなく,若干の不純物であ
れば許容されるものとして数値範囲を定めたにすぎないものと解される。
他方,引用発明についても,上記2のとおり,従来技術の空気を供給するバーナ
に代えて純酸素バーナを用いることでNOxの発生を阻止するというものであっ
て,窒素を含まない酸素を用いることを解決手段とするものと認められるから,解
決すべき課題とこれに対する手段は本願発明1と同じである。
したがって,課題解決のための技術的意義の視点からみても,本願発明1の「純
度が少なくとも85%である酸素」は引用発明の「酸素」と一致すると認められる
のであって,審決の一致点認定に誤りはない。
(3)また,原告は,引用発明の酸素は組成が一定しているのに対し,本願発明
1の「純度が少なくとも85%である酸素」は品質にばらつきが生じる旨主張して
いる(純度が変動し得る旨の主張と解される。。)
しかし,本願発明1の特許請求の範囲や発明の詳細な説明等の記載によっても,
本願発明1について,酸化剤として用いる酸素の純度が変動するものに限定された
り,純度が一定のものが除外されたりするものとは認められない。
したがって,この点に関する原告の主張も採用することができない。
以上のとおり,取消事由1には理由がない。
4取消事由2(相違点に関する判断の誤り)について
原告は,特開昭54−83123号公報,特表平11−503224号公報及び
特開平10−54509号公報に記載された技術事項に関して,空気と燃料とを化
学量論比に調整する,あるいは空気の余剰分を5%未満に抑制する技術は周知技術
,,であったが少なくとも純度が85%である酸素と燃料とを化学量論比に調整する
あるいは酸素の余剰分を5%未満に抑制する技術は周知技術ではなかったなどと主
張する。
ここで,審決が特開昭54−83123号公報と特表平11−503224号公
報を挙げたのは,制御装置により,バーナに供給する燃料又は酸素を化学量論比に
調整することが周知技術であったとするためであり,この認定については原告も争
っていない。調整される酸素は空気中に含まれる酸素に限定されるものではなく,
また「純度が少なくとも85%である酸素」もこれに含まれるから,この割合の,
酸素も調整対象として周知であったことは自明であり,この点に関する原告の主張
は理由がない。
酸素の化学量論比に対する余剰分を5%未満に抑制することが周知であること自
体についても,原告は争っておらず,5%未満に抑制される酸素も空気中に含まれ
る酸素に限定されるものではないから,以上の周知技術を参照して相違点(ロ)の本
願発明1の構成に至ることは当業者にとって容易になし得たことというべきであ
り,この点の審決の判断に誤りはない。
取消事由2において原告が主張する点は,上記判断を左右するものではなく,理
由がない。
以上のとおり,取消事由2は理由がない。
第6結論
以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。よって,原告の請求
を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
塩月秀平
裁判官
清水節
裁判官
古谷健二郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛