弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人Bの弁護人坂本一郎の上告趣意について。
 論旨は、原審が被告人のごとき前科もなく、犯情憫諒すべきものに対して、実刑
を科したのは残虐な刑罰であつて、憲法第三六条に違反するというのであるが、同
条の「残虐な刑罰」とは人道上残虐と認められる刑罰を意味するのであつて本件の
ごとき裁判所が法律により許された範囲内で、普通の刑を量定した場合は、これに
該らないことは当裁判所の判例に徴して明白である。(昭和二二年(れ)第三二三
号、同二三年六月三〇日大法廷判決参照)所論は、結局原判決の量刑の不当を主張
するに帰着し、適法な上告の理由とならない。
 被告人Aの弁護人毛利与一、同沢邦夫の上告趣旨について。
 所論は、要するに原審の事実の誤認、量刑の不当を主張するものであつて、上告
適法の理由とすることはできない。(尚「残虐な刑罰」に関する所論については、
前論旨に対する説明と同様である)
 次に職権を以て、原判決の法律の適用を調査すると、被告人Aの判示、第一の塩
酸ヂアセチルモルヒネ販売の所為、第二の麻薬の所持の所為について、原判決は、
犯罪後に法律による刑の変更があつたものとして刑法第六条、第十条を適用してい
る。しかし、判示昭和二〇年厚生省令第四四号及び麻薬取締規則は共に昭和二三年
七月一〇日麻薬取締法第六五条により廃止せられたのであるが、同法第七四条には
右法令廃止前にした行為に対する罰則の適用については、右各法令はその廃止後も、
尚、效力を有する旨規定されているのであつて、判示第一、第二の各所為に対して
は、いずれも当然にその行為時の法令が適用せられ、新法はその適用を排除される
のであるから、原判決が新旧法令の比照をしたことは誤りといわなければならない。
又原判決が右判示第一、第二の所為に対して麻薬取締法五八条を適用したのは同五
七条の誤りである。しかしながら、原判決は右新旧比照の結果前記昭和二〇年厚生
省令第四四号並びに麻薬取締規則に従つて、被告人Aを処断したものであることは
原判文上明らかであるから、如上擬律の錯誤は、結局原判決の主文には影響しない
ものと判断するのを相当とする。
 よつて、刑訴施行法二条、旧刑訴四四六条に従い、全裁判官一致の意見により、
主文のとおり判決する。
 検察官 小幡勇三郎関与
  昭和二六年七月二〇日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
 裁判長裁判官霜山精一は差支につき署名押印することができない。
            裁判官    小   谷   勝   重

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