弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主    文
被告人を懲役1年4か月に処する。
未決勾留日数中20日を刑に算入する。
理    由
(犯罪事実)
 被告人は,A航空会社(代表者日本統括副社長B)の業務を妨害して同社の運航する
航空機に搭乗する予定の知人に嫌がらせをしようと企て,平成13年10月12日午後0
時20分ころ,愛媛県宇摩郡a村bc番地dトンネルe口付近において,同所に設置された
公衆電話を使用して愛知県西春日井郡f町大字g字h先の名古屋空港国際線旅客ターミ
ナルビル1階到着ロビー総合案内所に電話をかけ,同所に勤務するC株式会社職員D
に対し,「今日のAマニラ行きで危ないことが起こる。男3人と女2人。女2人は高松空港
から2人で乗った。で,そのまま国際線に乗る。コードネームはEとF。タリバンの一味だ
よ。これは脅しと違うよ。男は名古屋から乗り込む。」等と申し向け,Dをして同会話内容
を同社関係者らを介して上記名古屋空港内所在のA航空会社名古屋空港支店職員Eら
に通報させ,同通報を受けた同人らをして,同日午後7時50分名古屋空港発マニラ行
きA航空i便の運航及び同機の搭乗客らの安全に対し重大な危害を加えられるかも知れ
ない旨畏怖させ,同社をしてi便に搭乗する乗客及びその手荷物に対する厳重な検査の
実施を余儀なくさせて,i便の出発を1時間18分遅延させるなどし,もって威力を用いて
A航空会社の航空機運航業務を妨害した。
(証拠)(省略)
(法令の適用)
1(1) 罰条         刑法234条,233条
 (2) 刑種の選択  懲役刑選択
2 未決勾留日数の算入    刑法21条
3 訴訟費用の不負担     刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1 不利な事情
(1) まず犯行内容をみると,被告人は,本件の約1か月前にアメリカ国内で大規模な
テロ事件(いわゆる同時多発テロ)が発生していたため,我が国でも航空会社など
が万一の事故をも未然に防ぐため保安対策を強化していること等を悪用したもの
であって,悪質と言うほかない。被告人が犯行時電話で述べた内容も上記テロ事
件の内容に類似した具体的なもので,被害会社(A航空会社)側が電話内容を真
実であると誤信し,畏怖するのに十分であった。
(2) 犯行動機等をみても,被告人は,知人のホステスの言動から同人らに裏切られ
たと邪推し,同人らに対する個人的恨みを晴らすため,航空会社やその利用者,
関係者らに対する悪影響を何らかえりみず本件を犯したもので,その動機はまこと
に身勝手でしん酌すべき点が全くない。
  なお,被告人は,上記ホステスがテロ組織に関係していると思った等と弁解する
が,公衆電話から自己の氏名や身分等を全く明かそうとしないで脅迫的文言を述
べるなどし,同ホステスの名前をコードネームと偽っているといった犯行態様ないし
被告人の行動内容,被告人と上記ホステスらの関係,被告人の供述内容に照ら
し,被告人の上記弁解が単なるこじつけであることも明らかである。
(3) 犯行の結果,現に被害会社の業務が著しく妨害された。本件により被害会社が
被った従業員の超過勤務手当分などの損害額はさほど多額でないとも言いうる
が,被害会社が受けた信用,営業上の損害も大きかったと認められる。また,本件
は被害会社以外の関係機関ないし会社にも大きな負担を生じさせているが,この
点も被告人の本件についての責任を考える上で無視できない。被害会社の従業員
らの受けた恐怖感等の精神的負担も大きかったと認められる。
(4) そして,被告人は,これに対して何ら被害回復のための措置をとっていないばか
りか,公判段階に至っても捜査段階で述べた不合理な弁解を再び述べるなどして
おり,本件の重大性に対する認識が不十分である。
2 有利にしん酌すべき事情
(1) 被告人は,被害会社の業務を妨害することそのものを目的として本件を犯したも
のではない。
(2) 被告人は,幼稚な弁解を繰り返すものの,本件に対する後悔の念は強く有してお
り,反省もしていると認められる。
(3) 被告人は前科前歴を複数有するが,これらはいずれも古いものであり,最近の前
科はなく,同種の前科もない。
3 被告人は自己の犯行により被害会社の業務がこれほど妨害されるとは思っていな
かったと認められる。しかし,1で述べた点や関係証拠に照らすと,軽率であったとか
被害が大きくなることを予想できなかった等という理由では被告人の刑事責任はさほ
ど軽減されないと言うほかない。被告人が行ったことが電話をかけただけのことであ
るという点も同様である。本件は,被害会社等のテロに対する恐怖心を悪用した卑劣
な犯行であり,動機もあまりにも非常識で身勝手である。そうすると,このような犯行
で被害会社の業務を現に著しく妨害した被告人の責任は重く,上記2の事情のほか
被告人に有利な事情をいかに考慮しても,本件は執行猶予を付しうる事案ではない。
(求刑-懲役2年)
  平成14年1月23日
    名古屋地方裁判所刑事第3部
            裁判官  橋   本       一

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