弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 各被告人弁護人根本松男上告趣意第一点について。
 しかし、原判決は、その第二事実の末尾に「以て四名共同してAから前記財物を
強取し」と判示し、なお、法律適用においても所論のごとく擬律しているから、住
居侵入と強盗の双方を四名共同して実行したことを認定したものであること明らか
である。そして刑法第六〇条に「二人以上共同シテ云々」とあるのは、数人相互の
間に犯意の連絡あることを意味するものであるから、原判決の「四名共同して」と
ある判示も同一趣旨に解すべきである。されば原判決には共同の意思について認定
を欠く理由不備の違法ありとの所論は採ることができない。また数人相互の間に犯
意の連絡があつて、その中の或る者が見張をした以上その者は、他の者が住居に侵
入して強盗をした責を免れるものではないから、原判決が被告人B、同Cに対して
も刑法第六〇条第一三〇条を適用したのは正当であつて、所論のような擬律錯誤の
違法も存しない。論旨は、その理由がない。
 同第二点について。
 しかし、原判決の判示したように、深夜午前零時三〇分頃二人の男子が他人の屋
内に侵入して、婦女の寝室に到り、各自菜切庖丁一挺づつを示して原判示のごとく
金を出せと申向けるがごときは、社会通念上被害者の反抗を無形的に抑圧するに足
るべき程度の脅迫行為たること明白である。従つて、原判決が所論のごとく、特に
その庖丁の新旧、大小、発見場所等を判示しなかつたからといつて、理由不備の違
法あるものとはいえない。本論旨もその理由がない。
 同第三点について。
 しかし、罪となるべき事実を判決書に判示するには、その各本条の構成要件に該
当すべき具体的事実を該構成要件に該当するか否かを判定するに足る程度に具体的
に明白にし、かくしてその各本条を適用する事実上の根拠を確認し得られるように
するを以て足るものであつて、必ずしもそれ以上更にその構成要件の内容も一層精
密に説示しなければならないものではない。されば原判決が本件も強盗罪の構成要
件たる「他人の財物」に該当する被害者所有の現金千五百円及び衣類等一〇数点と
判示した以上、更らに衣類等の詳細を判決しなくとも強盗罪の目的物の判示として
毫も欠くるところはない。本論旨もその理由がない。
 よつて旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二四年六月三〇日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎

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