弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
一 本件訴えを却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
       事実及び理由
第一 原告らの求めた裁判
 被告が別紙物件目録記載の各不動産について平成五年度ないし平成一〇年度の固
定資産税の賦課、徴収を怠ったことがいずれも違法であることを確認する。
第二 事案の概要
 本件は、原告らが、宗教法人創価学会の所有する別紙物件目録記載の各不動産
(以下「本件不動産」という。)につき被告が固定資産税を賦課、徴収しないこと
が違法であると主張して、地方自治法二四二条の二第一項三号に基づき、怠る事実
の違法確認を求めるものである。
一 法令の定め
 地方税法は、宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法三条に規定する境
内建物及び境内地については、固定資産税を課することができない旨定めている
(三四八条二項三号。以下「本件非課税規定」という。)。
二 前提事実(争いがない。)
1 原告らは、東京都の住民である。
2 創価学会は、昭和二七年八月二七日付けで東京都知事(以下「都知事」とい
う。)により認証を受け、同年九月八日付けで宗教法人として設立の登記をした。
3 原告らは、平成一一年一一月一一日、東京都監査委員に対し、地方自治法二四
二条に基づき、都知事が本件不動産を含む創価学会所有の不動産に係る固定資産税
の賦課、徴収を怠っている事実の是正を求める住民監査請求を行ったところ、東京
都監査委員は、平成一一年一二月三日、監査を行わない旨の通知をした。
三 原告らの請求原因
1 創価学会は、固有の本尊や教義を有せず、宗教法人日蓮正宗の信徒による団体
に他ならず、宗教法人としての本質的な要件に欠けているものであって、宗教法人
としての適格性を有しないから、本件非課税規定が適用される余地はない。また、
創価学会は、平成三年一一月二八日付けで日蓮正宗から破門され、宗教団体として
の性格を失った。
2 創価学会は、本件不動産を「事務所」「礼拝所」としているが、これらの土地
建物を「本部」等として使用しており、本来的な意味で宗教行事の用に供している
とは認められないから、本件非課税規定は適用されない。
四 本案前の争点
 本案前の争点は、都知事に被告適格が認められるか否かという点であり、これに
関する当事者の主張は以下のとおりである。
(被告の主張)
 本件訴訟は、地方自治法二四二条の二第一項三号に基づき怠る事実の違法確認を
求めるものであるが、右条項は、地方公共団体の執行機関又は職員に対し、個人と
してその職務懈怠の責任を追及することを目的としたものではなく、職務懈怠の違
法を確認することによってその違法状態を除去し、もって地方自治体の財務の適法
性を確保することを目的としたものであるから、必然的に、怠る事実の違法確認を
求める相手方は、現に当該怠る事実に係る権限を有しているものに限られるという
べきである。
 これを本件についてみれば、地方税法三条及び三四二条の規定によると、固定資
産税は、当該固定資産所在の市町村で課する市町村税であり、固定資産税を賦課徴
収する権限は市町村長にあるところ、都の特別区の存する区域においては、地方税
法七三四条一項の規定により、「都」は「市」とみなされ、「市町村長」は「都知
事」と読み替えられる。そして、法三条の二及び東京都都税条例(以下「都税条
例」という。)四条の三第一項によれば、この都知事の権限は、都税の納税地所管
の各都税事務所長等に委任されており、本件固定資産税の賦課徴収の権限は、東京
都新宿都税事務所長に委任されている。
 したがって、被告は、本件固定資産税の賦課、徴収に係る権限を有していないの
で、地方自治法二四二条の二第一項三号に規定する「当該執行機関又は職員」に該
当しないから、本件訴えの被告適格がないというべきである。
 また、原告らは、固定資産税の賦課徴収の権限がない都知事を対象とする住民監
査請求を行ったのであるから、右監査請求は不適法なものというべきところ、本件
訴えは、適法な住民監査請求を経たものということはできず、この点でも本件訴え
は不適法というべきである。
(原告らの主張)
 本件において怠る事実とされる固定資産税の非課税の措置は、賦課徴収の事務を
執行する上での権限の懈怠ではなく、宗教法人の適格性を欠くにもかかわらず、都
知事において創価学会について宗教法人の認証を行い、これを引き続き容認してい
るという事実に由来しているのである。都税事務所長は、固定資産税の賦課徴収の
事務に限って委任されているにすぎない。そして、当該怠る事実の存否は、その理
由との関連を度外視して判断することはできないのであって、都知事が他の機関に
事務上の権限を委任したとしても、その基となる法律に基づく本来的な職責と権限
に伴う責任を免れないというべきである。
 また、登録免許税法四条二項によれば、境内
建物等の所有権の取得登記等は非課税とされているところ、右登記がなされる場合
には、現地調査が行われ、都知事が「もっぱら本来の用に供する境内建物及び境内
地に該当する」旨の証明書を交付することとされている。そして、固定資産税や不
動産取得税の非課税に関しても、右証明書をもって申請することが要求されてい
る。このように、非課税とするかどうかの判定が、都知事固有の権限に基づく認定
に依拠して行われることからしても、本件訴訟における被告は、都知事とするのが
相当である。
 したがって、都知事は、本件訴えについて被告適格を有するというべきである。
第三 当裁判所の判断
一 本件は、地方自治法二四二条の二第一項三号に基づき、固定資産税の賦課若し
くは徴収を怠る事実の違法確認を求める訴訟であるところ、怠る事実の違法確認請
求は、地方公共団体の執行機関又は職員に対し、個人としてその職務懈怠の責任を
追及することを目的としたものではなく、職務懈怠の違法を確認することによって
その違法状態を除去し、もって地方自治体の財務の適法性を確保することを目的と
したものであるから、怠る事実の違法確認を求める相手方は、現に当該怠る事実に
係る権限を有している者に限られるというべきである。
 これを本件についてみると、東京都は、特別区の存する区域において、固定資産
税を課することとされているが(地方税法七三四条一項)、都知事は、徴収金の賦
課徴収に関する事項を、都税の納税地所管の各都税事務所長又は支庁長(以下「都
税事務所長等」という。)に委任している(地方税法三条の二及び都税条例四条の
三第一項)から、固定資産税の賦課徴収に関する権限は、都税事務所長等に属して
おり、都知事は右権限を有していないものと解される。
 もっとも、都知事は、委任した事項について必要があると認める場合において
は、都税事務所長等に指示をすることができ(都税条例四条の三第九項)、都税事
務所長等に対する指揮監督権限を有しているものであるが、都知事の右指揮監督権
限の行使自体については、これを財務会計上の行為とみることはできないから、仮
に右指揮監督権限の行使に懈怠があったとしても、これをもって地方自治法二四二
条の二第一項三号にいう公金の賦課若しくは徴収を怠る事実に該当すると解するこ
とはできない。
 そうすると、被告は、地方自治法二四二条の二第一項三号に規定する「当該執行
機関又は
職員」に該当せず、本件訴えにつき被告適格を有しないというべきである。
二 これに対して、原告らは、創価学会の宗教法人としての適格性及び本件不動産
の本件非課税規定該当性を判断したのは都知事であるところ、右の各点が本件訴訟
で争点とされるべきであるから、都知事に被告適格が認められるべきであると主張
する。
 右主張は、直接の審理対象とされるべき財務会計行為に先行する別の行為に違法
性があると主張して当該先行行為の主体に被告適格を認めようとするものである。
しかし、本件訴訟は地方自治法が特別に認めた訴訟類型である住民訴訟であり、被
告とすべき者は、同法二四二条の二第一項三号が定める「当該執行機関又は職員」
に限られるのであって、先行行為の主体にすぎない者は右に該当せず、被告適格を
有しないというほかないから、右主張は採用できない。
三 結論
 よって、本件訴えは、その余の点を判断するまでもなく、被告適格のない者を被
告としたものとして、不適法であるから、これを却下することとし、訴訟費用の負
担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条、六五条一項本文を適用して、主
文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第三部
裁判長裁判官 藤山雅行
裁判官 谷口豊
裁判官 加藤聡

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛