弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
特許庁が昭和五六年審判第二六二〇二号事件について平成二年四月五日にした審決
を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
主文同旨の判決。
二 被告
「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決。
第二 請求の原因
一 特許庁における手続の経緯
商標登録出願人 株式会社コンチネンタルトレーディング
出願日 昭和五四年九月一八日(昭和五四年商標登録願第七〇三〇七号)(同年商
標登録願第七〇三〇八号商標との連合商標として登録出願)
本願商標 欧文字「MICROLON」をゴシック体にて横書きしてなる商標(別
紙(一))
指定商品 第一類「原材料が一〇パーセントのテフロンと九〇パーセントの石油蒸
溜液からなり、金属の摺動面に用いて減摩擦、減磨耗の効果を生ぜしめる商品、そ
の他本類に属する商品」(その後、「化学剤、その他本類に属する商品」に訂正)
出願人名義変更届 昭和五六年七月三〇日に柿崎健治名義
 昭和五七年一〇月五日に原告名義
拒絶査定 昭和五六年一一月二日
審判請求 同年一二月二九日(昭和五六年審判第二六二〇二号事件)
出願公告 昭和六三年一月一三日(商標出願公告昭六三ー二〇一七号)
異議申立 同年三月一一日
請求不成立審決 平成二年四月五日
二 審決の理由の要点
1 本願商標の構成、指定商品及びその登録出願日は、前項記載のとおりである。
2 異議申立人が本願商標を商標法四条一項一一号に該当するとして引用した登録
第五四五一三二号商標(以下、「引用商標」という。)は、別紙(二)のとおり
「MAKROLON」の欧文字を横書きしてなり、(旧)第一類「化学品、薬剤及
び衣料補助品」を指定商品として、昭和三三年一二月一二日に登録出願、同三四年
一二月七日に登録され、その後昭和五五年四月三〇日及び平成二年一月一九日の二
回にわたり存続期間の更新登録がなされたものである。
3 本願商標と引用商標との類否について判断するに、両商標の構成は、いずれも
前記のとおりであるから、それぞれの構成文字に相応して本願商標よりは「マイク
ロロン」の称呼を生じ、引用商標よりは「マクロロン」の称呼を生ずるものと認め
られる。
 そこで、本願商標より生ずる「マイクロロン」と引用商標より生ずる「マクロロ
ン」の両称呼を比較すると、両者は、「マ」と「クロロン」の各音を共通にするも
のであり、異なるところは前者における第二音「イ」の音を有するか否かの差にす
ぎないものである。しかして、「イ(i)」の音は、それのみを単独で発音する場
合においては調音位置を前母音とし、調音方法を有声の開放音とするはっきり澄ん
だ明確音であるといえるとしても、比較的聴別され難い中間に位置する場合におい
ては必ずしも明瞭に聴取されるとはいい難いところであるから、前記「マ」と「ク
ロロン」の中間に該「イ」の音を有無にしたその差異が両称呼全体に及ぼす影響は
決して大きいものがあるとはいい難く、結局、両称呼は、それぞれを一連に称呼す
るときは全体の語調、語感が近似したものとなり、彼此聴き誤るおそれがあるもの
といわなければならない。
 したがって、本願商標と引用商標とは、称呼において類似する商標であり、且
つ、その指定商品も同一または類似するものであるから、結局、本願商標は、商標
法四条一項一一号に該当し、登録することができない。
三 審決の取消理由
1 審決の理由の要点1、2は認める。同3のうち、本願商標及び引用商標がその
構成文字に相応して、それぞれ「マイクロロン」及び「マクロロン」の称呼を生ず
るものであることは認め(但し、本願商標より「ミクロロン」の称呼も生ずるもの
であることは後記のとおりである。)、その余は争う。
 審決は、本願商標を「マイクロロン」の称呼が生ずるとしたうえ、本願商標と引
用商標とは称呼において類似する商標であるとの誤った判断をし、それが結論に影
響を及ぼすことが明らかであるから、違法として取り消されるべきである。
2(一) 外観上の差異
 本願商標は、別紙(一)のとおり、「MICROLON」の綴字をゴシック体で
左横書きに表わしたものであり、引用商標は、別紙(二)のとおり、「MAKRO
LON」の綴字をボールド体で左横書きに表わしてなるものであるから、本願商標
と引用商標とは、その書体の差異と、第一字ないし第三字において「MIC」と
「MAK」の綴字を著しく異にするものであり、全体として外観を異にするもので
あることは明白である。
(二) 称呼及び観念上の差異
(1) 本願商標は、その綴字全体からして、特定の観念を生ずることのない造語
であることは否定し得ないとしても、その構成前半「MICRO」は、「百万分の
一」「微小」を意味する外来語として既に日本語化された語であると同時に、「ミ
クロの世界」の用語例に代表されるように、該語よりは「ミクロ」及び「マイク
ロ」の各称呼を生ずるものであり、このことは、該語は各商品の普通名称の接頭語
としても活用され、「ミクロメーター」、「ミクロコスモス」、「マイクロバ
ス」、「マイクロフォン」、「マイクロコンピュータ」等の日常用語のみならず、
とりわけ化学、病理、電子、理化学に関する各種商品に圧倒的に多用されている事
実によっても窺い知ることができるものである。
 したがって、本願商標に接する者は、本願商標の構成が「百万分の一」「微小」
を意味する英語の成語「MICRO」と造語「LON」の複合語であることの認識
を容易に抱かしめるものであり、同時に、本願商標よりは「ミクロロン」「マイク
ロロン」の各称呼を生ずるものである。
(2) 引用商標は、本願商標と同様に、その綴字全体からして、特定の観念を生
ずることのない造語であることは否定し得ないとしても、その構成前半「MAKR
O」は、「巨大」「巨視的」を意味するドイツ語であり、「MAKROBIOTI
K」(延命学)、「MAKROCHEILIE」(大唇症)、「MAKROCHI
RIE」(大手症)、「MAKRODAKTYLIE」(大指症)、「MAKRO
LEKUL」(巨大分子)、「MAKROPSIE」(大視症)、「MAKROS
OMIE」(大耳症)、「MAKROZEPHALIE」(大頭蓋症)、「MAK
ROZYKLISCH」(大環状化合物)、「MAKROZYT」(大赤血球)
等、医学、化学に関する用語の接頭語として、医学、化学分野における専門用語に
使用されている。
 ドイツ語が、我が国において、いまだもって親しみの薄い語であるとしても、本
願商標及び引用商標の指定商品である「化学品、薬剤、医療補助品」の取引分野に
おける取引者、需要者は、業務上ドイツ語を主要外国語として使用する医師、科学
者等が圧倒的に多数であることからすれば、引用商標に接する者は、引用商標の構
成が「巨大」「巨視的」を意味するドイツ語「MAKRO」と造語「LON」の複
合語であることの認識を容易に抱かしめるものであり、同時に、これより「マクロ
ロン」の称呼によって取引されるものとするのが相当である。
 なお、ドイツ語「MAKRO」と同義語として使用される英語「MACRO」
は、「巨大」「巨視的」を意味する外来語として既に日本語化されているものであ
り、また該語は接頭語として「マクロエンジニアリング」、「マクロファージ」、
「マクロ命令」、「マクロレンズ」等が日常用語として使用されるほか、右の用語
以外に医学、化学、電子等の各分野においても使用されており、英語「MACR
O」は、ドイツ語「MAKRO」にもまして、医学、化学、電子等の各分野におい
て世情一般に広く使用されている。してみると、ドイツ語「MAKRO」及び英語
「MACRO」よりは、共に「マクロ」の称呼を生ずるものであり、それがため
に、引用商標がドイツ語「MAKRO」と造語「LON」の複合語であったとして
も、医師、科学者等の化学品、薬剤に携わる者以外の一般世人をしても、「マクロ
ロン」の称呼を生ずる引用商標は、称呼上において「巨大」「巨視的」を意味する
「マクロ」と造語の「ロン」の複合語であるとの印象を強く抱かしめるものであ
る。
(3) 本願商標の構成前半より生ずる称呼「ミクロ」「マイクロ」と引用商標の
構成前半より生ずる称呼「マクロ」とは、日常会話としても「ミクロ(微小)とし
てみた場合……何々」或いは「マクロ(巨大、拡大)としてみた場合……何々」
等、両者は正反対の語として使用され、また、数多い外来語の中にあっても稀有な
正反対の語として既に日本語化されている。したがって、仮に、本願商標の構成前
半より生ずる称呼「マイクロ」と引用商標の構成前半より生ずる称呼「マクロ」と
を比較したとしても、この両者の称呼上差異する「イ」音の有無によって正反対の
語として認識されているのであるから、観念と一体となって称呼されるこれら構成
前半の成語において、両者を称呼聴別するうえにおいて「イ」音の有無こそが重大
な影響を及ぼしめているものであって、若しこの正反対の観念を有する「マイク
ロ」と「マクロ」とが類似音として聴取される場合があったとしても、そのことは
会話する当事者のいずれかにおいて何等かの原因に基づく例外であって、この例外
をもって称呼上類似であると判断することは当を得ない。
 一方、本願商標及び引用商標の構成後半の「LON」は、特定の語義を生ずるこ
とのない造語であって、これより「ロン」の称呼を生ずるところ、商標の末尾に接
尾語として「ロン」の称呼を伴う化学品、薬剤に関する登録商標及び出願商標の特
許庁における出願状況は五音ないし八音構成のものに限ってみても六五八一件にの
ぼっており、「ロン」なる接尾語は化学品、薬剤についてはありふれて使用されて
いるものであり、商標の接尾語としては付記的とまではいえないにしても極めて顕
著性の乏しいものであるといえる。
 してみると、本願商標「MICROLON」及び引用商標「MAKROLON」
は、いずれもその構成前半を接頭語の成語とし、構成後半を顕著性の乏しい造語と
するものであって、該構成にあっては、両商標は共にその構成前半の「MICR
O」又は「MAKRO」に取引者、需要者の強い関心が注がれて、これを観念し称
呼されるものである。したがって、本願商標及び引用商標は、構成全体としてみた
場合といえども、構成後半の「LON」に影響されて接頭語たる成語の語義を喪失
するものではないから、両商標はその構成前半において、依然として「ミクロ」と
「マクロ」または「マイクロ」と「マクロ」の対立する正反対の称呼、観念を認識
せしめることに変わりはない。
(4) ところで、本願商標より生ずる「マイクロロン」の称呼と引用商標より生
ずる「マクロロン」の称呼とを比較してみるに、本願商標は六音よりなるものであ
り、引用商標は五音よりなるものであって、両者を単に音数の差について比較した
場合には、本願商標のほうがその第二音の母音「イ」について多いことが認められ
るものであるが、両者の称呼を強弱、高揚の伴う音声言語としてみた場合には、本
願商標より生ずる称呼は「マイ」「クロ」「ロン」の三音節を構成して称呼される
ものであり、引用商標より生ずる称呼は「マ」「ク」「ロ」「ロン」の四音節を構
成して称呼されるものである。したがって、簡易迅速を旨とする商品取り引きの実
際の場からみた場合、本願商標は各音節の語頭音である「マ」と「ク」と「ロ」の
夫々にアクセントを伴って、各二音づつが区切りを伴って規則正しい調子で「マ
イ・クロ・ロン」と称呼されるものである。これに対して、引用商標は第一音から
第三音までの「マクロ」の各音がほぼ平板に連続するように称呼されるから、第四
音にアクセントを伴って第五音と一体となって「ロン」と称呼され、全体としては
その音数が前半と後半で三対二の比率となって「マクロ・ロン」と不規則な調子で
称呼されるものである。
 したがって、本願商標と引用商標の差異音とする「イ」は、審決が認定するよう
に中間音であったとしても、本願商標の構成上第一音節として最初に発せられる語
頭音「マ」に続いて「マイ」と発せられる第二音に位置する音であり、この第二音
の「イ」が、例えば「エイス」と「エース」の比較のように、第一音と第二音とが
共に唇を横に広げ、その調音位置も共に前母音とする音構成において、これを連続
して称呼するときには第二音が第一音に吸収されて明確に聴取され難い場合は格別
としても、本願商標の第一音「マ」の帯有母音「ア」と第二音「イ」は中母音と前
母音の調音位置を異にするとともに「アイウエオ」において連続する母音であるか
ら、これを連続して「マイ」と称呼しても「ア」を帯有母音とする「マ」に第二音
の「イ」が吸収されて聴別し難いものでは決してない。そして、本願商標は、これ
を一連に称呼した場合といえどもその音構成の前半は「マイ・クロ」の二音節とし
て明確に聴取され、一方、引用商標はその音構成の前半は「マクロ」と連続して平
板な称呼として聴取されるものである。
 以上によれば、百万分の一、微小の意味を容易に認識させる「マイクロ」の称呼
と、巨大、巨視的の意味を容易に認識させる「マクロ」の称呼より、その構成前半
において正反対の語として認識せしめる本願商標と引用商標とは、その構成前半の
相違する観念と相俟って、夫々を一連に称呼した場合といえども、彼此聴き誤るお
それは断じてない。
(三) 以上のとおり、本願商標よりは「ミクロロン」と「マイクロロン」の二つ
の称呼を生ずるものであるにも拘らず、審決は、「ミクロロン」の称呼については
一言も述べるところがなくこれを欠落せしめて、本願商標の他の称呼「マイクロロ
ン」と引用商標より生ずる「マクロロン」とを比較し、その差異とする「イ」音の
有無の差異は両商標の称呼全体に及ぼす影響が決して大きいものがあるとはいい難
いとして本件商標の登録を拒絶したものであり、事実認定を誤った違法なものであ
るから取り消されなければならない。
第三 請求の原因に対する認否及び被告の主張
一 請求の原因一及び二は認める。同三については、2(一)、及び2(二)のう
ち本願商標よりは「マイクロロン」及び「ミクロロン」の各称呼が生ずること、商
標の末尾に「ロン」の称呼を伴う商標の出願状況が原告主張のとおりであることは
認め、その余は争う。
 審決の認定、判断は相当であり、審決には取り消すべき違法はない。
二 被告の主張
1 審決が本願商標より生ずる「ミクロロン」の称呼について引用商標との類否判
断をしなかったのは、審判手続において、原告が、本願商標より生ずる称呼は「マ
イクロロン」が自然であると主張したため、及び、本願商標より「マイクロロン」
の称呼を生ずるとともに「ミクロロン」の称呼も生ずるとしても、後者の称呼は引
用商標との称呼の類否判断上不要であるから(引用商標の称呼を「ミクロロン」と
対比しても両者は類似しているということができる。)。
2 商標の称呼の類否判断は、指定商品についてのわが国の需要者の認識を基準と
して判断すべきものであるから、商標中の一部の文字がドイツ語で接頭語として使
用されていることをもって当該商標を分断して考察すべき根拠とすることはできな
い。
3 「ロン」を接尾語とする商標の登録例が多々存在するというだけで「ロン」の
部分が顕著性に乏しいものであるとはいえないから、両商標を「ロン」の部分で分
断すべき根拠は見出すことができない。
 しかして、本願商標の各構成文字は、同じ書体、大きさ、間隔で一連に書されて
いて視覚的に一体のものとして看取される簡明な構成になるものであり、該構成文
字より生ずる「マイクロロン」の称呼も格別冗長なものでなく、且つ、該構成文字
が特定の称呼、観念をもって一般に親しまれた既成語とはいえないとしても、無理
なく一連且つ平坦に称呼し得るものであるから、構成全体をもって一体不可分の造
語よりなるものと認識し、把握されるものとみるのが極めて自然であり、経験則に
も適うといい得るものであって、他にこれを「MICRO」と「LON」の二つの
文字部分に分離して観察すべき特段の事情があるとは認められない。
 他方、引用商標も、本願商標と同様の理由により、一体不可分の造語よりなるも
のと認識し、把握されるものとみるのが極めて自然なものである。
4 「イ」の音は、それのみを単独で発音する場合には、はっきり澄んだ音である
といえるとしても、他の母音との比較においては聞えが弱い音であることは明らか
である。まして、本願商標における該「イ」の音は、母音の中でも最も聞えが弱
く、響く「ア」を母音とする「マ」の音をその前音とし、これに連なるものである
から、これについての原告の主張は失当である。
 なお、本願商標及び引用商標は、いずれも一体不可分の造語を表わしたものとし
て認識し、把握されるものとみるのが自然であり、観念の点については比較すべく
もないものであるから、一連で且つ平坦な称呼を生ずる両商標がそれぞれ時と所を
異にして一連に称呼された場合に相紛れるか否かについて比較し検討すべきであ
る。
第四 証拠関係(省略)
       理   由
一 本件に関する特許庁における手続の経緯、審決の理由の要点、本願商標の構
成、指定商品及び登録出願日、並びに、引用商標の構成、指定商品、登録出願日、
設定登録日及びその更新登録日が、いずれも原告主張のとおりであることは、当事
者間に争いがない。
二 本願商標と引用商標との類否
1 本願商標は「MICROLON」の綴字をゴシック体で左横書きに表わした別
紙(一)のとおりのものであり、一方、引用商標は「MAKROLON」の綴字を
ボールド体で左横書きに表わした別紙(二)のとおりのものであって、両商標は外
観を異にするものであるとの点は、当事者間に争いがない。
2 そこで、両商標から生ずる称呼上の類否について検討する。
(一) 別紙(一)の構成からなる本願商標よりは「マイクロロン」または「ミク
ロロン」の各称呼が生ずること、別紙(二)の構成からなる引用商標よりは「マク
ロロン」の称呼が生ずることについては、当事者間に争いがない。
(二) いずれも成立に争いのない甲第九号証の一ないし七(コンサイス外来語辞
典第四版、一九八七年四月一日株式会社三省堂発行)、同第一〇号証の一ないし六
(カタカナ新語辞典、一九八九年三月一〇日株式会社学習研究社発行)、同第一一
号証の一ないし八(KENKYUSHA’S NEW ENGLISH-JAPA
NESE DICTIONARY 一九八〇年株式会社研究社発行)、同第一三号
証の一ないし四(独和辞典、一九八七年二月株式会社郁文堂発行)及び同第一四号
証の一ないし四(新修反対語辞典、一九八八年一一月三〇日株式会社集英社発行)
によれば、「MICRO」(本願商標の語頭部分)は「百万分の一」「微小」の意
味を有する英語の接頭語であり、「MACRO」は「巨大」「巨視的」の意味を有
する英語の接頭語であって、両極端にある物体の大きさ、量、ひいては比喩的に事
柄の大小を表わす正反対の語として用いられ、我が国では「MICRO」を「マイ
クロ」または「ミクロ」と称呼し、「MACRO」を「マクロ」と称呼し、いずれ
も右と同義の外来語として日常生活において広く用いられていて、前者の複合語と
して「マイクロバス」、「マイクロフィルム」、「マイクロフォン」、「マイクロ
コンピューター」、「マイクロメーター」、「ミクロメーター」、「ミクロコスモ
ス」等の用例があり、後者の複合語として「マクロエンジニアリング」、「マクロ
コスモス」等の用例があること、「MAKRO」(引用商標の語頭部分)は「MA
CRO」と同じ意味を有するドイツ語であるが、その称呼は「MACRO」同様
「マクロ」であるから、「MAKRO」の聴者である取引者、需要者はこれを「M
ACRO」の外来語としての「マクロ」と同義、すなわち「MICRO」の外来語
としての「マイクロ」または「ミクロ」の反対語として「巨大」「巨視的」を意味
するものと理解することは明らかであることが認められる。
 しかして、称呼の類否については、称呼それ自体から判断しても差支えない場合
があることはもとより否定するものではないが、一見共通する部分または似通った
部分が認められるかのごとき称呼にあっても、その称呼の全部または一部が明らか
に特定の観念を生じさせるものであれば、聴者である取引者、需要者はその称呼を
明確に聴別することができるものと認めるのが相当である。
 これを本件についてみれば、「マイクロロン」または「ミクロロン」と称呼され
る本願商標と「マクロロン」と称呼される引用商標において、両商標の指定商品で
ある「化学剤、その他本類(第1類)に属する商品」または「化学品、薬剤及び医
療補助品」の取引者、需要者は、必ずしも医師、薬剤師等に限らず一般需要者も含
まれると解され、成立に争いのない甲第一六号証の一ないし一五(株式会社東洋情
報の商標調査検索システムから検出した情報資料)によるも、「ロン」が広く取引
者、需要者の間で、原告主張のように、化学品、薬剤の意味を有する語として通用
しているとまでは認め難く、したがって、「ロン」の語は特定の意味を有しないも
のと認めるのが相当である。そうであれば、両商標はともに全体としては意味のな
い造語であって、これが一連に称呼され、その発音を表記した場合、文字の配列が
一見似通ったところがあるとしても、それぞれの語頭を占める「マイクロ」または
「ミクロ」と「マクロ」が、前記のように外来語として、しかも正反対の意味を有
するものとして、広く我が国の日常生活において理解されている以上、取引者、需
要者が右語頭部分を含め僅か五音または六音に過ぎない両商標を称呼の紛らわしい
ものとして聴取混同するおそれはないものと認めて差支えないものというべきであ
る。むしろ、取引者、需要者は、「ロン」の意味を理解しないまでも、本願商標を
「小さいロン」、引用商標を「大きいロン」と明確に区別して観念して聴取するも
のと認められるのである。
3 本願商標と引用商標が観念においても類似するものでないことは、前記2に説
示したところから明らかである。
4 以上によれば、本願商標と引用商標とは外観、観念、称呼のいずれにおいても
相紛れることのない別異の商標であると認められるから、両商標が称呼において類
似するとした審決は、その類否判断を誤ったものというべく、違法として取消しを
免れない。
三 よって、本件審決の違法を理由にその取り消しを求める原告の本訴請求は理由
があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七
条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 松野嘉貞 舟橋定之 杉本正樹)
<03040-001>

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