弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決及び第一審判決を破棄する。
     被告人を懲役二月に処す。
     本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
     第一審及び当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人杉之原舜一の上告趣意(一)について。
 所論は、第一審判決が、起訴状に記載のない「委員長は税金が戦争準備のために
使われていないというが、平衡交付金が減らされたこと自体、戦争準備の為に使わ
れている証拠だ」との文言を、被告人の発言内容として判示したのは、刑訴三七八
条三号の「審判の請求を受けない事件について判決をした」違法があり、憲法三一
条に違反するというのである。
 しかし右が違憲であるとのことは原審で主張せず、従つて原判決の判断を経てい
ない事項であるばかりでなく、第一審判決が附加した事実は、訴因の内容たる事実
を明確にし詳細にしたに止まり訴因に変動を来すものではなく、従つて公訴事実の
同一性を害するものでもないから、第一審判決は審判の請求を受けない事件につい
て判決をしたものではない。故に所論違憲の主張はその前提を欠き上告適法の理由
とならない。
 同(二)の(2)について。
 所論は憲法違反を主張するけれども、その実質は地方税法一二条の解釈適用の問
題であつて、刑訴四〇五条所定の上告理由にあたらない。
 被告人の上告趣意について。
 所論は原判決の事実認定並びに地方税法の解釈適用を争うもので刑訴四〇五条所
定の上告理由にあたらない。
 弁護人杉之原舜一の上告趣意(二)の(1)について。
 裁判官真野毅、同小谷勝重、同島保、同藤田八郎、同谷村唯一郎、同入江俊郎の
意見は、昭和二一年勅令三一一号「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する
処罰等に関する勅令」は、平和条約発効と同時に当然失効し、その後に右勅令の効
力を維持することは、憲法上許されないから本件勅令違反の点については犯罪後の
法令により刑が廃止された場合にあたるとするものであること、昭和二七年(あ)
第二八六八号同二八年七月二二日言渡大法廷判決記載の右六裁判官の意見のとおり
であり、又裁判官栗山茂、同岩松三郎、同河村又介、同小林俊三の意見は、右勅令
三一一号は、平和条約発効後においては、本件に適用されている昭和二〇年九月一
〇日附連合国最高司令官の「言論及び新聞の自由」と題する覚書第三項の「連合国
に対する虚偽又は破壊的批評及び風説」を「論議すること」を禁止する部分は憲法
二一条に違反するから、右指令を適用するかぎりにおいて、平和条約発効と共に失
効し、従つて、本件勅令違反の点は犯罪後の法令により刑の廃止があつた場合にあ
たるとすること、昭和二七年(あ)第二〇一一号同三〇年四月二七日言渡大法廷判
決記載の栗山、岩松、河村、小林各裁判官の意見のとおりである。よつて以上一〇
裁判官の意見によれば、本件勅令違反の点は犯罪後に刑が廃止されたときにあたる
から、原判決及び第一審判決はこれを破棄しなければ著しく正義に反するものであ
る。
 よつて刑訴四一一条により原判決及び第一審判決を破棄し、同四一三条但書によ
り更に判決をするのであるが、第一審判決の確定した事実中、被告人が地方税を納
めないことをせん動した点は、昭和二五年法律二二六号地方税法一二条一項にあた
るので所定刑中懲役刑を選択し、その刑期範囲内で被告人を懲役二月に処し、刑法
二五条により本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し、刑訴一八一条に則り
第一審及び当審における訴訟費用は被告人の負担とする。次に昭和二一年勅令三一
一号違反の点は犯罪後に刑が廃止された場合にあたること前記のとおりであるが、
右は前記地方税法違反の罪と一個の行為で二個の罪名に触れるものとして起訴され
たものであるから特に主文において免訴の言渡をしない。よつて主文のとおり判決
する。
 昭和二一年勅令三一一号違反の点に対する裁判官田中耕太郎、同斎藤悠輔、同本
村善太郎の反対意見は、次のとおりである。
 平和条約発効前に犯した昭和二一年勅令三一一号違反の罪に対する刑罰は平和条
約発効後といえども、廃止されたものといえないことは前記昭和二七年(あ)第二
〇一一号の大法廷判決記載の意見のとおりである。
 なお、右勅令違反の点に対する各裁判官の補足意見は前記昭和二七年(あ)第二
〇一一号の大法廷判決に記載乃至引用したとおりである。
 裁判官霜山精一、同井上登は退官につき評議に関与しない。
 検察官安平政吉、同竹原精太郎、同宮崎三郎、同神山欣治出席
  昭和三〇年一一月三〇日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛