弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
 控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人らの申請を却下する。訴訟費用は第一、
二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは、主文一項同
旨の判決を求めた。
 当事者双方の主張および立証の関係は、左に附加する外、原判決事実摘示のとお
り、(但し、原判決八丁裏八行目「八月二一日」を「八月二日」と改め、一〇丁表
四行目「大決定」を「大会決定」と補正し、また原判決添付別表中、a、b及びc
の三名を削除し、d、e、f、g及びhの五名については上記当事者欄表示のとお
り各その姓を改める)であるから、これを引用する。
(立証省略)
       理   由
一、控訴人が航空運輸業を目的とし、フランス国法により設立せられた外国会社で
あること、被控訴人らが原判決添付別表のとおりそれぞれ昭和三九年四月二七日か
ら同四七年一一月二〇日の間に控訴人と雇用契約を締結した日本人スチユワーデス
であること、しかして右雇用契約は期間の定めのないものであり、又同契約におい
ては「雇用地は東京、配属先は控訴人日本支社」(以下これを東京ベースともい
う)とされていたところ、控訴人が被控訴人らに対し、昭和四八年一〇月三一日付
の書面により、同年一二月三一日をもつて右契約を終了させる旨の解雇予告の意思
表示をなすと共に、同書面により、昭和四九年一月一日発効の「雇用地をパリ、配
属先を控訴人本社」(以下これをパリベースともいい、又前記東京ベースからパリ
ベースへの移行をパリ移籍と称する)とする新雇用契約の申込をなし且つその回答
期限を昭和四八年一一月二〇日としたこと、被控訴人らが右期限までに承諾の回答
をしなかつたこと、以上の各事実は当事者間に争がない。
二、右によると、控訴人の為した解雇予告の意思表示は昭和四八年一二月三一日の
経過と共に一応その効力を生ずることとなるのであるが、右各争のない事実からす
でに看取されるように、本件解雇予告の意思表示は、通常のそれと異なり、被控訴
人らにおいて控訴人の提示した新契約に応ずるときは雇用関係が実質的に継続する
との性格を有するものであり、換言すれば、右解雇予告の意思表示は、控訴人の採
つたパリ移籍の方針に対し、被控訴人らがこれに従わないことを実質的な理由とし
て為されたことを窺うに充分であるから、以下この観点より本件の事実関係を検討
することとする。
 まず、控訴人が本件パリ移籍の方針を採るに至つた経緯とその理由をみるに、各
成立に争のない乙第三、第四号証、同第二二号証の一、同第三二号証の一ないし
八、並びに当審証人i及び同jの各証言を総合すると、次の事実を認めることがで
き、反証は存しない。
 控訴人はその客室乗務員たるスチユワーデスにつき、かねてフランス人女性を採
用してこれに充ててきたのであるが、国際路線の開拓に伴い漸次日本、ドイツ及び
ブラジルの外国人女性をも採用するようになり、日本の場合、昭和二五年に支社を
開設し、同二七年に初めて日本人女性四名を採用するに至つた。ところでフランス
人スチユワーデスについては、パリ本社で採用し、配属先も同本社とするいわゆる
パリベースが実施され、正規の職員となり、又労働条件についても、同女らは、控
訴人の唯一交渉団体であるSNPNC(フランス全国客室乗務員労働組合)に加入
し、その労働協約の適用を受けて高水準の保護を与えられていた。しかし外国人ス
チユワーデスについては、現地支社が採用し、配属先も右支社とする外国ベースが
実施され、身分も非正規の地方職員であり、又労働条件についても、各外国人で組
織する労働組合(被控訴人らの場合についていえば、エールフランス日本人従業員
労働組合)に加入するのみで前記SNPNCの協約の適用を受けず、しかも各外国
ベース毎に取極められる労働条件は、右協約によるそれに比し、かなり低いもので
あつた。尤もこれら外国人スチユワーデスといえども、その勤務についてはパリ本
社の運航本部の指揮命令下にあり、同本部の決定した編成、スケジユール等を受け
た各支社の組分けに従つて航空機に搭乗し、機内においてはフランス人スチユワー
デスと同じくパーサー等の監督下に置かれるのであるが、しかしその職務内容は、
正規職員たるフランス人スチユワーデスの補助的仕事をするにとどまつていた。
 ところが、その後国際路線の発展拡充に伴い、外国人スチユワーデスの採用数も
増加し、昭和四八年一二月現在においては、控訴人客室乗務員(パーサー、スチユ
ワード及びスチユワーデス)総数約四、〇〇〇名中、計約一〇〇名(うち日本人四
二名)となり、又その職務内容も正規職員と同内容の仕事を要請せられるに至つ
た。それに伴い、日本人労組など外国人労組もその待遇改善を求めるようになり、
一方SNPNCも亦、同組織が労働争議に突入した場合など外国人スチユワーデス
が正規職員と同等の職務を行うことにより結果的にスト破りと同一事態を招くこと
になることを憂慮するあまり、外国人スチユワーデスについてもSNPNCの労働
協約の適用を認めるのを得策とし、そのためには外国人スチユワーデス全員につき
パリ移籍を実現することが必要であるとして、約一五年位前からこれを繰り返し主
張し、遂に右実現のためにはストライキをも辞さぬとの強硬な態度をとるに至つ
た。
 尤も控訴人自身としても、その頃すでに労務管理及び運航管理上の必要から外国
人スチユワーデスのパリ移籍問題を考慮していたのであるが、右SNPNCの態度
の硬化を契機として遂に控訴人も明確にパリ移籍の方針を決意するに至つた(その
時期は昭和四八年五月頃と推認せられる)。なるほどそれは一面SNPNCとのト
ラブルを避けたいとの労組対策上の配慮に出たものといえるが、より根本的には、
同一労働同一賃金の原則の完全実施、即ちフランス人スチユワーデスと外国人スチ
ユワーデスとの労働条件を別異にしないためには外国人スチユワーデスのパリ移籍
を必須とするとの考慮があつたればこそであるというに妨げない。控訴人として
は、そのためには、外国人スチユワーデスをもSNPNCに加入せしめる要があ
り、そしてその前提手段としてはパリ移籍のみが唯一の方法であると考えたのであ
り、もしパリ移籍、従つてSNPNCへの加入なくして外国人スチユワーデスにS
NPNCの協約と同等の保護を与えるときは、例えば休息時間等において現在にく
らべ時間増となる反面厳格な時間の遵守が要求されることとなるため、これをその
まま人数の少ない外国ベース・スチユワーデスに適用すると、不時の差支え等の場
合、スチユワーデスの編成、スケジユールの樹立、ひいては国際路線の運航そのも
のにも困難を来たす可能性があり、こうしたことからみて、外国ベースのままSN
PNC並みの労働条件を実現することは困難であると考えたものと認められる。
 結局、控訴人がパリ移籍の方針を採つた理由としては、労務管理及び運航管理上
の叙上の如き情勢の変化に対応し、一方SNPNCとのトラブルを防止すると共
に、他方増加し且つ高度化した外国人スチユワーデスをフランス人スチユワーデス
と同じに直接本社において集中的統一的に管理し、その労働条件を均質化し、併せ
て国際路線運航の円滑効率化の実を挙げることを期し、そのためにこれらを実現す
る手段としてはパリ移籍のみが唯一の方法であるとの認識を有したことに由るもの
と認められる。
三、次にパリ移籍に関し、その内容、即ちこれが実現をみた場合の勤務状態や労働
条件の如何をみるに、各成立に争のない乙第一、第二号証、同第一六号証の一ない
し九、同第一九、第二〇号証、同第二二号証の一、同第二五、第二六号証、弁論の
全趣旨により成立を認め得る甲第一二号証、並びに当審証人i及び同kの各証言を
総合すると、次の事実を認めることができ、反証は存しない。
(一) 前叙のように昭和四九年一月一日以降、雇用地をパリ、配属先を本社とす
るいわゆるパリベースの新契約に移行するとすると、このためには住居をパリに移
すことを要し、又勤務も東京発・東京帰着からパリ発・パリ帰着の如くパリ中心の
ローテーシヨンとなる。但し日本人スチユワーデスの場合、その搭乗路線としては
従来どおり主にパリー東京間路線が予定されており、スチユワーデスという職業の
特性上、時間的な意味での東京滞在日数に大差はない。
(二) パリ移籍に伴い、当然SNPNCへの加入が考えられるから、その結果、
フランス国労働法、SNPNC労働協約等の適用を受けることとなる。具体的に
は、
1 賃金が現在より増額し、昇給率も高く、且つパリ・東京間の出張旅費が二倍に
なる。
2 有給休暇の日数及び休息の時間が多くなる。
3 身分が正規職員となり、種々の資格取得や昇進等の途が開かれる。
4 定年が延長されるうえ、年金の支給がある。
四、最後に、パリ移籍の件に関する控訴人と被控訴人らとの交渉の経過をみるに、
各成立に争のない甲第三ないし第五号証、同第一五号証、乙第二二号証の一ないし
三、弁論の全趣旨により成立の認められる甲第一四号証、並びに原審証人l、同
m、当審証人i(一部)及び同k(一部)の各証言を総合すると、次の事実を認め
ることができる。
(一) 控訴人との直接交渉前、SNPNCから日本人労組に対しパリ移籍協力方
についての説得があつたが、同労組の了承するところとならなかつた(従つて、控
訴人が交渉に入る頃にはSNPNCと日本人労組との間に原則的了解が成立してい
たとする控訴人の主張は採り得ない。)。
(二) 昭和四八年六月一四、一五日に開かれた春斗要求の団体交渉の席上、控訴
人から初めてパリ移籍の方針が明示されたが、具体的協議には至らなかつた(なお
右の席にはSNPNCの書記長が同席していた)。
(三) 同年六月二一日控訴人と日本人労組との間に春斗の妥結に伴う新労働協約
が締結されたが、その末尾に「パリ移籍については、日本人労組との協議を経て最
終的に決定される。」旨の特別条項が設けられた。
(四) しかるに控訴人は、日本人労組との協議が未だ終了していない(むしろ未
だ行われていないに等しい)にもかかわらず、SNPNCとの間に同年八月二日、
パリ移籍に関する新労働協約を締結した。
(なお、右と前後して、ドイツ及びブラジルのスチユワーデス全員並びに日本のス
チユワーデス数名がパリ移籍を承諾した)。
(五) 同年八月二八日より三〇日にかけてパリ移籍に関する団交がもたれたが、
控訴人側の説明は簡単で且つ具体性に乏しく、むしろ右八月二日の本社決定を伝達
するとの色彩の濃いものであつた。
(六) 同年九月一二日から三日間重ねてパリ移籍に関する団交が行われたが、控
訴人側の説明はかなり詳細且つ具体的にはなつたものの、それはパリ移籍を既定の
事実としたうえでの各種条件等の説明的傾向が強く、且つ日本人労組側の「九月二
一日の大会決定まで最終意見を留保したい。」旨の表明に対する控訴人側の態度に
は明確を欠くものがあつた。
(七) 日本人労組は同年九月二一日の大会でパリ移籍の拒否を決定し、同月二五
日控訴人側にこれを通告したが、控訴人は同年一〇月二五日パリ移籍強行の方針を
示したうえ、同月三一日付で本件解雇予告の意思表示を為すに至つた。
 右のように認めることができ、当審証人i及び同kの各証言中右認定に抵触する
部分は、前掲各証拠と対比して採用することができない。
五、以上のように認定できるところ、控訴人と被控訴人らとの上記雇用契約におい
て、その成立及び効力に関し日本国法に準拠する旨の合意の存することは当事者間
に争がないから、控訴人は、わが民法六二七条及び労働基準法二〇条により、一応
予告解雇を為す権利を有するものというべきである。
 しかし、上来判示の事実関係によれば、控訴人の為した本件解雇予告の意思表示
は、契約関係を完全に終了せしめる通常のそれとは異り、もし被控訴人らにおいて
新契約の締結に応ずるときは、旧契約の終了と同時に直ちに新契約に移行すること
を前提とするものであり、しかも前認定のとおり、右両契約は、その雇用地及び配
属先を異にする点以外は、その勤務内容等において本質的な意味での差異はなく、
右両者間の決定的な相違点は結局するところ、被控訴人らのベースが東京かパリか
という一点に帰着するものとみるのが相当である。
 してみると、これを実質的に考察するときは、本件解雇予告の意思表示は、恰も
パリヘの配置転換命令に対する承諾を解除条件とする解雇予告のそれに等しく、換
言すれば、右命令に応じないことに因る予告解雇と同一に論ずるのを相当とするも
のである(控訴人は、本件解雇はいわゆる一部事業閉鎖に基くものであると主張す
るが、前に認定したところによれば、控訴人のいう外国ベースの廃止は、当該外国
支社自体ないし当該国際路線の廃止閉鎖を伴うものでなく、控訴人の事業の重要部
分には何らの変更をも来たさないものであるから、右をもつて事業の一部閉鎖に該
るとする控訴人の主張は失当である)。
 ところで、企業における労働者の配置転換については、その雇用契約において配
置場所が明定されている場合には、使用者は当該労働者の同意なくしてこれを配転
し得ない(逆にいえば労働者は右配転命令に応ずる法的な義務を有しない)のを本
則とするものと解すべきであり、従つて特段の事情があれば格別、然らざる限り、
使用者が右の如き配転命令を発し、これに従わない労働者をそのゆえをもつて予告
解雇に付するが如きは、通常、解雇権の濫用として無効たることを免れないものと
いうべきである。
 これを本件についてみるに、前判示のとおり、控訴人と被控訴人らの雇用契約に
おいては「雇用地を東京、配属先を日本支社」とすることが明定されているのであ
り、しかも被控訴人らの職種がスチユワーデスであつていわゆる幹部職員ではない
ことからみて右文言を広義弾力的に解釈することは当を得たものとはいえない(尤
も本件の如く国際的な航空会社に勤務するスチユワーデスについては、その企業自
体とスチユワーデスという仕事の特殊性から、配置場所の観念ないし配置転換の意
味合にいについても、通常の国内企業の労働者の場合とやや異る面のあり得ること
は考えられない訳ではないが、いずれにしても本件の場合被控訴人らが控訴人に対
し、如何なる意味合いにせよ将来他国ベースになることにつき包括的な黙示の同意
等を与えていたと認めるに足る疎明は何ら存しない)。従つて控訴人は元来被控訴
人らに対し、その意に反して東京以外の地への配置転換を命じ得ない筋合であるに
もかかわらず、控訴人が実質的配置転換を命じ、これに従わない被控訴人らをその
理由で予告解雇に付したものとみるべきことは上述のとおりであるから、控訴人の
右解雇予告の意思表示を予告解雇権の濫用とする被控訴人らの主張は一応理由があ
るものといえる。
六、これに対し控訴人は、本件解雇予告の意思表示をなすについては、パリ移籍が
控訴人にとつて必要やむを得ないものであり、被控訴人らの拒否は合理性に乏しい
うえ、被控訴人らは控訴人との交渉において不誠実であつた等の諸要因が作用して
いると陳述するところ、右は、前記配置場所の合意ある労働者に対しなお配置転換
を命じ得る特段の事情の主張をなすものと善解し得るから、以上この点について順
次判断を加える。
 まず、控訴人のいうパリ移籍が客観的にみて真に必要止むを得ないものか否かの
点を考えてみるに、前叙第二項に判示の事実関係からすると、控訴人が被控訴人ら
を雇用した時期以後の各種情勢の変化、SNPNCとの関係、同一労働同一賃金の
原則、運航管理の効率化等の諸点からみて、控訴人がパリ移籍の方針を採るに至つ
たことについては、その心理はこれを理解し得なくはない。
 しかし問題は、本件パリ移籍に、東京ベースを一方的に排除するだけの客観的正
当性があるか否かにある。国際路線の発展拡充、外国人スチユワーデスの増員及び
高度化の問題も、国際的な航空会社たる控訴人としては、被控訴人らの雇用時にお
いて絶対予見不可能な事態にあつたとはいえぬであろう。SNPNCとの調整関係
も、今後新規採用する外国人スチユワーデス等についてはともかく、外国ベースの
変更に同意し兼ねている既存の外国人スチユワーデスの既得権を排除するに足る事
由とは認め難い。又同一労働同一賃金の原則についても、労働者の均等待遇という
普遍的な法理(なお労働基準法三条参照)に立つとき、外国人スチユワーデスのS
NPNCへの加入ないしその協約の適用の有無にかかわりなく、すでに今日までに
実現せられていて然るべきものであつて、パリ移籍を必然的ならしめるものとはい
い難い。更に運航管理の点についても、近時におけるコンピユーターシステムの開
発発展等にかんがみ、パリ移籍以外に方法がないとすることは根拠薄弱である。
 要するに本件については、外国ベースの全スチユワーデスをパリに移籍せしめな
ければ、控訴人の運航及び労務管理等その業務の遂行に重大な支障を生ずるとの点
について、説明不充分というの外なく、これに、成立に争のない乙第六号証により
認められる「BOAC、ノースウエスト(但し一部はシアトルベース)、スカンジ
ナビア航空及びアリタリヤイタリヤ航空等の諸航空会社が現在も外国人スチユワー
デスにつき外国ベース制を採つている」事実を勘案すると、本件パリ移籍は、被控
訴人らの権益を一方的に排除するに値する客観的正当性を欠くものといわざるを得
ない。
七、次に、被控訴人らの拒否の点をみるに、前叙第三項に判示したところによれ
ば、控訴人の提示するパリ移籍後の勤務及び労働条件は一見むしろ外国人スチユワ
ーデスにとつて有利なようにもみえる。しかし勤務に関しては、居をパリに移して
パリ中心のローテーシヨンに入ること自体に後記のような問題があり、又労働条件
については、結局SNPNCの協約下に入ることによるその向上に帰着するとこ
ろ、前叙第六項で判示したとおり、本来労働条件の向上は右SNPNCへの加入に
よつてのみ実現されるべきものではないから、それはパリ移籍に特有の利点と称す
る訳にはいかない。
 しかも眼を転じて被控訴人らの事情をみるに、原審における被控訴人本人nの供
述により成立を認め得る甲第一三号証の一ないし三六によると、被控訴人らは二〇
ないし三〇才代のおおむね独身の日本人女性であり、本件パリ移籍に応ずることと
なると、東京ベースの契約で就職したにもかかわらず当然パリに住居を移さざるを
得ず、その結果、日本国民としての公民権の行使に著しい制約を受け、生活の本拠
が言語、習俗の異る地に在ることとなり、そのうえ結婚問題等にも影響のあること
が明らかであり、又日本人労組を離れてフランス人主体の労働組合(SNPNC)
に加入する点に一抹の不安を抱くのも無理からぬことであると認められる。
 勿論被控訴人らは進んで国際航空を業とする外国会社に身を投じた者であるか
ら、それに伴う特殊な勤務状態や労働条件等の生ずることは覚悟し、これに耐え順
応すべき厳しさを要求される筋合ではあるが、しかし上記の如く本件パリ移籍は、
単なる勤務状態ないし労働条件の変更ではなく、人の生活の本拠地を外国に移すと
いう、人間にとつて公私、物心ともに根本的な事柄を中心とするものである以上、
東京ベースで契約した被控訴人らが右移籍を拒否したからといつて、これをもつて
合理性を欠くものとすることはできない。
八、更に、被控訴人らと控訴人との交渉経過につき考えるに、前叙第四項判示の事
実関係によれば、被控訴人らを含む日本人労組の側に控訴人指摘のような不誠実な
点はこれを見出し難く、むしろ控訴人側にパリ移籍の実現を期するの余り、日本人
労組との話合いの姿勢に欠けるものがあり、しかも元来被控訴人らには右移籍に応
ずる法的義務がなく、又右第四項(三)判示の如き特別条項があるにもかかわらず
(尤も被控訴人らは右条項をもつて単なる協議義務約款ではなく同意約款と同一視
すべきものと主張するが、文理的にもそのようには解されない)、控訴人が被控訴
人らの主張に対応する別途次善の策の提案する何ら為さないまま本件予告解雇に及
んだことはいささか強引に過ぎるものというべく、パリ移籍問題の手続的側面とも
いうべき右交渉経過の面においても、信義則上むしろ控訴人側に負因を見るものと
いわざるを得ない。
九、以上によると、控訴人が被控訴人らに対し、東京ベースの合意に反して為した
本件配転命令(形式上は旧契約終了の通告と新契約締結の申込)につき、これを適
法有効ならしめる特段の事情は遂にこれを認めることができないから、右配転命令
の拒否をその実質的理由とする本件解雇予告の意思表示は、予告解雇権の濫用とし
て許されないものといわなければならない。
一〇、本件弁論の全趣旨によれば、もし本件解雇予告の意思表示の効力をそのまま
存置するときは、被控訴人らにおいてその生活上重大な影響を受けることが充分窺
われるから、仮にその地位を定める必要性がある。
一一、如上の次第であるから、被控訴人らの申請は理由あるものとしてこれを認容
すべく、右と同旨に帰する原判決は結局正当であり、本件控訴は理由がないからこ
れを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用し
て主文のとおり判決する。
(裁判官 古山宏 西岡悌次 小谷卓男)

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