弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2埼玉県知事が平成17年2月21日付け指令廃指第3332号をもって控訴
人に対してした産業廃棄物処分業の許可取消処分を取り消す。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要(略語等は,原則として,原判決に従う)。
1本件は,埼玉県知事が,産業廃棄物処分業者である控訴人に対し,控訴人が
野菜くずを破砕したもの(本件野菜くず)の堆肥化を無許可業者であるAこと
Bに依頼したこと等が,産業廃棄物処分の再委託を禁止する廃棄物の処理及び
清掃に関する法律(法)に違反する行為であり,情状が特に重いときに当たる
として,法14条の3の2第1項2号等に基づき,控訴人の産業廃棄物処分業
の許可を取り消す旨の処分(本件処分)をしたところ,控訴人が,被控訴人に
対し,本件処分は法令の解釈適用を誤り,埼玉県知事に与えられた裁量の範囲
を逸脱した違法なものであるとして,その取消しを求めている事案である。
原審は,控訴人の請求を棄却したので,控訴人が控訴した。
2争いがない事実等,関係法令等の定め並びに争点及び争点に対する当事者の
主張は,原判決の「事実及び理由」第2の2から4までに摘示されたとおりで
あるから,これを引用する。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次の
とおり原判決を訂正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の1から4まで
(原判決25頁9行目末尾まで)に説示されたとおりであるから,これを引用
する。
(原判決の訂正)
(1)原判決19頁11行目の末尾に改行して,次のとおり加える。
「,,()控訴人は本件野菜くずは中間処理の過程において有用物堆肥原料
を堆肥化して資源化・有効利用ができるので,有機農業推進法の取組例及
びその前提とされている行政指針(平成17年3月31日付け農林水産省
生産局長通知「環境と調和のとれた農業生産活動規範について)にも照」
らし,有償で取引されないものであっても,産業廃棄物としての取扱いか
ら外れる旨主張する。しかし,仮に適切な人的・物的な体制を整備して適
正な処理を行えば野菜くずの堆肥化による資源化・有効利用が可能である
としても,前示のとおり,本件野菜くずは,控訴人が処理を受託した野菜
くずを単に破砕したもので,腐敗臭を放ち,控訴人の事業所において受入
量の増加により処理しきれなくなったため,控訴人自らも廃棄物との認識
のまま,排出量の確認も経ず,控訴人の依頼を受けた出入り業者のBによ
って深さ2メートルの穴にチップ材を混ぜることもなく大量(ドラム缶3
0本以上,フレコンバッグ30袋程度)に投下されたものであり,控訴人
は堆肥化に必要な法・規則上の変更の申請・届出や肥料取締法上の届出を
一切していないなど,資源化・有効利用に係る人的・物的な処理の体制の
欠如した本件の事実関係の下で,上記の性状,排出状況,取扱形態,取引
価値の欠如,事業者の意思等を総合的に考慮すれば,本件野菜くずをもっ
て産業廃棄物としての取扱いから外れると解する余地はなく,有機農業の
推進施策の基本法である有機農業推進法の規定及び農業環境に関する上記
行政指針の一般的な規範も,本件の具体的事案に係る上記の判断を左右し
得るものとは解されない」。
(2)同22頁15行目の末尾に改行して,次のとおり加える。
「控訴人は,控訴人とBとの契約書(甲7)では,Bは控訴人の依頼する
内容に基づき作業を請け負う(第2条)と定められ,控訴人は作業現場に
社員を派遣してBに対する指示を行う予定であったが,本件では試験的作
業の初日に連絡の不備があったにすぎない旨主張する。しかし,前記認定
の事実によれば,控訴人は,作業の実態において,控訴人から独立した出
入りの業者であるBに広範な作業上の裁量を与え,単に破砕したのみで腐
敗臭を放つ本件野菜くずの処理を全面的にBに依頼し,控訴人の管理監督
を欠いたまま,本件野菜くずの大量投棄に至ったものと認められ,控訴人
代表者らの陳述書(甲2,21)も,堆肥化につき知識のあるBに現場作
業を依頼したもので,作業の要領が分かるようになれば控訴人の従業員の
手で作業を行う予定であった等と述べるのみで(甲2参照,控訴人にお)
いて当初から作業現場に社員を派遣してBに対する指示(管理監督)を行
う計画の存在を認めるに足りる記載はなく,他に上記主張に係る事実を認
めるに足りる証拠はない」。
(3)同頁末行の「である」を「であり,その違反行為の態様は,単に破砕し。
たのみで腐臭を放つ本件野菜くずの処理を出入りの業者に全面的に依頼し,
これに対する管理監督を欠いたまま,本件野菜くずの大量(ドラム缶30本
以上,フレコンバッグ30袋程度)の投棄に至り,近隣住民の通報で違反行
為が発覚したというもので,違法性の程度において重大なものというべきで
ある」に改め,同25頁9行目の末尾に改行して,次のとおり加える。。
「控訴人は,違反行為の態様や回数,行為者の是正の可能性等の考慮の在
り方について,本件における違反行為の回数は1回にすぎず,本件は控訴
人が現代表者の買収後の新体制の下で稼働を開始してからわずか半年後に
発生した事件で,控訴人は新体制の下でC時代に生じた諸問題につき改善
,「」。,に努めてきており情状が特に重いとはいえない旨主張するしかし
①排出者責任原則の担保を目的とする法の再委託禁止規定の違反行為は,
それ自体が責任ある廃棄物処理体制の構築という法の趣旨の根幹を揺るが
す重大な事柄である上,本件の違反行為の態様は,前記のとおり違法性の
程度において更に重大なものであること,②控訴人は,上記のとおり,本
件以前にも,Bに対し野菜くずの処理を依頼しているほか,C時代から近
隣住民と悪臭・汚水に係るトラブルを起こし,日高市下大谷沢区長等から
埼玉県あてに多数の近隣住民の署名を付した改善要望書が提出されていな
がら(乙10の1・2,本件の違反行為の前後を通じてその解消に至っ)
ておらず,法定帳簿の備付けを懈怠していることが違反行為後の埼玉県の
調査により発覚する(甲23)など,本件の違反行為以外にも不適切・違
法な行為があり,代表者変更の前後で是正の可能性に有意な変化が生じた
とは認め難いこと等を勘案すると,今回が1回目の行政処分であることの
一事をもって,情状の重さ及び裁量判断の適否に関する上記の判断が左右
されるものではない(なお,控訴人の指摘に係る環境省策定の行政処分の
指針(平成17年8月12日付け環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策
部産業廃棄物課長通知。甲19)でも,再委託禁止規定の違反行為を行っ
た場合は,重大な法違反を行ったものとして「情状が特に重いとき」に該
当すると解して差し支えないとされている」。
2控訴人のその余の主張も,前示の認定・判断を左右するに足りるものとは認
められない。
3よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし
て,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第11民事部
裁判長裁判官富越和厚
裁判官岩井伸晃
裁判官横田典子

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