弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
()原判決を取り消す。1
()処分行政庁相模原税務署長が控訴人に対し平成16年2月26日付けで2
平成13年分及び平成14年分の所得税についてした各更正処分(ただし,
いずれも裁決により一部取り消された後のもの)のうち,原判決別紙1「確
定申告」欄記載の各納付すべき税額を超える部分及び各過少申告加算税賦課
決定処分(ただし,いずれも裁決により一部取り消された後のもの)の全部
を取り消す。
()処分行政庁相模原税務署長が控訴人に対し平成16年2月26日付けで3
平成13年1月1日から同年12月31日まで及び平成14年1月1日から
同年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税についてした各
(,),更正処分ただしいずれも裁決により一部取り消された後のもののうち
原判決別紙2「確定申告」欄記載の各納付すべき消費税額及び地方消費税額
を超える部分並びに各過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも裁決
により一部取り消された後のもの)の全部を取り消す。
()訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。4
2被控訴人
主文同旨。
第2事案の概要
1本件は,法律事務所を経営する弁護士である控訴人が,第1の1記載の所得
税について各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受け,かつ,消
費税及び地方消費税(以下「消費税等」という)の各更正処分並びに過少申。
告加算税の各賦課決定処分を受けたことから,上記各決定処分は違法であると
して,被控訴人に対し,これらの各更正処分の一部取消し及び過少申告加算税
の各賦課決定処分の全部取消しを求める事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却した。これを不服とする控訴人が,控
訴を提起した。
2前提事実,本件における課税の根拠並びに争点及び争点に対する当事者の主
張の要旨は,次の3のとおり当審における控訴人の主張の骨子を追加するほか
は,原判決「事実及び理由」欄中の「第2事案の概要」の1から3まで(原
判決3頁11行目から5頁16行目まで)に記載のとおりであるから,これを
引用する。
3当審における控訴人の主張の骨子
権利確定主義は,形式的,発生主義的に理解されてはならず,担税力を認め
得る程度に所得が実現されたかどうかを具体的に検討する必要がある。特に本
件で問題となっているのは,ほとんどが多重債務者の事案であり,上記の観点
から具体的,かつ,慎重に検討されるべきである。上記のような観点から所得
税法の関係規定を解釈適用しなければ,憲法84条,29条違反となる。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきもの
と判断する。その理由は,次のとおり補正し,2のとおり当審における控訴人
の主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄中の「第
3争点に対する判断」の1から6まで(原判決5頁18行目から31頁9行
目まで)の理由説示と同一であるから,これを引用する。
()原判決6頁24行目から7頁2行目までを次のとおり改める。1
「弁護士報酬についても,報酬支払請求権が確定的に発生した時期を基準
として収入すべき金額を計上して所得を算定すべきであり,報酬支払請求
権が確定的に発生した時期については,弁護士と依頼者との間で締結され
る委任契約において定められる弁護士報酬支払時期その他の支払に関する
合意に基づいて判断すべきである」。
()原判決8頁18行目の末尾に次のとおり加える。2
「,,(),そして前掲各証拠によれば横浜弁護士会報酬規程会規第21号は
横浜弁護士会の会員の報酬に関する標準を示すことを目的とし(1条,次)
。,,のとおり定めていることが認められるすなわち横浜弁護士会報酬規程は
会員がその職務に関して受ける弁護士報酬及び実費等の標準はこの会規(横
浜弁護士会報酬規程)の定めるところによることとし(2条,弁護士報酬)
の支払時期について,着手金は,事件等の依頼を受けたときに,報酬金は,
事件等の処理が終了したときに,その他の弁護士報酬は,この会規に特に定
めのあるときはその規定に従い,特に定めのないときは,依頼者との協議に
,(),,より定められたときにそれぞれ支払を受けることとし4条弁護士は
各依頼者に対し,弁護士報酬を請求することができる(6条1項)と明示し
た上で,弁護士は,依頼者に対し,あらかじめ弁護士報酬等について十分に
説明しなければならないこととし(7条1項,弁護士は,事件等を受任し)
たときは,委任契約書を作成するよう努めなければならないこととし(同条
2項,委任契約書には,事件等の表示,受任の範囲,弁護士報酬等の額及)
び支払時期その他の特約事項を記載することとし(同条3項,依頼者が経)
済的資力に乏しいとき又は特別の事情があるときは,弁護士は,横浜弁護士
会報酬規程4条及び第2章ないし第7章の規定にかかわらず,弁護士報酬の
支払時期を変更し又はこれを減額若しくは免除することができることとして
いる(8条1項。したがって,横浜弁護士会の会員である弁護士は,依頼)
者が経済的資力に乏しい場合又は特別の事情がある場合に弁護士報酬の支払
時期を横浜弁護士会報酬規程の上記の定めと異なる時期に変更する必要があ
ると判断したときは,弁護士と依頼者との間で委任契約を締結し,弁護士報
酬の支払に関する合意をするに当たり,弁護士報酬の支払時期について明示
した上で上記の合意をし,その内容を委任契約書に明記しておくことが相当
である。このことにより,弁護士が依頼者に対する説明義務を十分に果たす
ことになるほか,権利確定主義により収入を計上して所得を算定すべき法制
の下で適正な税務申告を行う上でも必要,かつ,相当な措置を執ることにな
るというべきである」。
()原判決13頁22行目の末尾に次のとおり加える。3
「前記認定のとおり,横浜弁護士会報酬規程は,横浜弁護士会の会員の報
酬に関する標準を示すことを目的としており(1条,弁護士報酬の支払)
時期について,報酬金は事件等の処理が終了したときに支払を受けること
とし(4条,弁護士は,各依頼者に対し,弁護士報酬を請求することが)
できる(6条1項)と明示した上で,弁護士は,依頼者に対し,あらかじ
め弁護士報酬等について十分に説明しなければならないこととし(7条1
項,弁護士は,事件等を受任したときは,委任契約書を作成するよう努)
めなければならないこととし(同条2項,委任契約書には,事件等の表)
示,受任の範囲,弁護士報酬等の額及び支払時期その他の特約事項を記載
することとし(同条3項,依頼者が経済的資力に乏しいとき又は特別の)
事情があるときは,弁護士は,横浜弁護士会報酬規程4条及び第2章ない
し第7章の規定にかかわらず,弁護士報酬の支払時期を変更し又はこれを
減額若しくは免除することができることとしているのであって(8条1
項,横浜弁護士会の会員である弁護士は,依頼者が経済的資力に乏しい)
場合又は特別の事情がある場合に弁護士報酬の支払時期を横浜弁護士会報
酬規程の上記の定めと異なる時期に変更する必要があると判断したとき
は,弁護士と依頼者との間で委任契約を締結し,弁護士報酬の支払に関す
る合意をするに当たり,弁護士報酬の支払時期について明示した上で上記
の合意をし,その内容を委任契約書に明記しておくことが相当である。し
かるに,控訴人と依頼者との間で交わされていた委任契約書には,弁護士
報酬の支払時期について上記の趣旨に沿った特約をした旨の記載はなく,
そのような特約がされたことを認めるに足りる的確な証拠はない」。
()原判決20頁2行目から3行目にかけての「既受領の着手金について返4
還義務を負わない旨合意した」を「既受領の着手金の返還義務を除外するこ
となく一切の債権債務の存在しない旨合意した」に,30頁6行目の「原告
とAは」を「控訴人とA及び株式会社Bとは」に,12行目の「上記依,,
頼者に係る」を「上記各受任事務に係る」に改める。
2控訴人の当審における主張に対する判断
控訴人は,前記第2の3の主張を骨子として本件に関して詳論するが,これ
,,(。)らの点に関する認定判断は前記引用に係る原判決前記補正部分を含む
が説示するとおりであり,控訴人の上記主張はいずれも採用することができな
い。控訴人の違憲の主張はその前提を欠くものである。
第4結論
以上の認定及び判断の結果によると,控訴人の請求はいずれも理由がないか
らこれを棄却すべきである。よって,当裁判所の上記判断と符合する原判決は
相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文の
とおり判決する。
東京高等裁判所第21民事部
裁判長裁判官渡邉等
裁判官高世三郎
裁判官西口元

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