弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A本人の上告趣意について。
 所論は、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由に当らない(なお、同被告人
の捜査官に対する供述調書が任意性を欠くと認むべき資料は存しない)。
 被告人Aの弁護人佐藤彦一の上告趣意について。
 所論は、量刑不当の主張であつて適法な上告理由に当らない。
 被告人Aの弁護人正木亮、同石川芳雄の上告趣意第一点について。
 所論は、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由に当らない。
 同第二点の一について。
 公職選挙法第二五二条に規定する選挙権、被選挙権の停止の処遇は、法律の定め
る手続によらないものでないから憲法三一条に違反しないことは、当裁判所の判例
(昭和二八年(あ)五三二二号同二九年六月二日第二小法廷決定、刑集八巻六号七
九四頁、昭和三〇年(あ)一六九九号同年一一月二二日第三小法廷判決、刑集九巻
一二号二四九六頁、昭和三五年(あ)九九七号同年一二月二日第二小法廷判決、刑
集一四巻一三号一七八六頁)の趣旨に徴し明らかであるから所論は採用できない。
 同第二点の二について。
 所論は、公職選挙法二五二条は罰金刑に処せられた者に重ねて参政権の剥奪や国
民主権の停止という無用にして残虐な刑罰を科するものであつて、憲法三六条に違
反するものであると主張する。
 しかしながら、憲法三六条にいわゆる「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的、肉
体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を意味すること当裁判所の判例
(昭和二二年(れ)三二三号同二三年六月二三日大法廷判決、刑集二巻七号七七七
頁参照)の趣旨とするところである。しかして、公職選挙法二五二条所定の選挙犯
罪はいずれも選挙の公正を害する犯罪であつて、かかる犯罪の処刑者は選挙に関与
せしめるに不適当なものとして、一定の期間、その選挙権、被選挙権を停止し、公
職の選挙に関与することから排除するのは相当であつて、国民の参政権を不当に奪
うものでないのみならず、憲法の保障する基本的人権をおかすものでないこともま
た、当裁判所の判例(昭和二九年(あ)四三九号同三〇年二月九日大法廷判決、刑
集九巻二号二一七頁参照)の趣旨とするところであるから、これを憲法三六条の前
記法意に照らすと、選挙権、被選挙権の停止の処遇は精神的苦痛を伴うこと所論の
とおりであるが、これが不必要且つ人道上残酷な刑罰に当るものでないことは明ら
かである。
 よつて論旨は採用することができない。
 被告人Bの弁護人大竹昭三の上告趣意第一点について。
 公職選挙法二五二条が憲法一四条、一五条、四四条に違反せず、かつ国民の参政
権を不当に奪うものでないことは、当裁判所判例(昭和二九年(あ)四三九号同三
〇年二月九日大法廷判決、刑集九巻二号二一七頁)の趣旨に徴し明らかであるから
所論違憲の主張は理由がない。
 同第二点について。
 所論は、量刑不当の主張であつて適法な上告理由に当らない。
 被告人Bの弁護人佐藤彦一の上告趣意について。
 所論は、量刑不当の主張であつて適法な上告理由に当らない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三九年一月二一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊

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