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平成16年(ネ)第5168号 報償金請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成1
5年(ワ)第26311号)
口頭弁論終結日 平成16年12月14日
             判      決
控訴人   A
同訴訟代理人弁護士  彦 坂 敏 之
 被控訴人 株式会社東芝
   同訴訟代理人弁護士  竹 田   稔
同          川 田篤
同補佐人弁理士小 栗 久 典
        主      文
1 本件控訴を棄却する。
2 当審で拡張された控訴人の請求を棄却する。
3 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
 (1) 原判決を取り消す。
  (2) 被控訴人は,控訴人に対し,1億円及びこれに対する平成16年10月2
6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 (3) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
(4) 仮執行の宣言
2 被控訴人
主文と同旨
第2 事案の概要
1控訴人は,被控訴人会社の元従業員であり,被控訴人会社在職中に温水器用
ステンレス鋼製缶体の発明(以下「本件特許発明」という。)をした。この発明
は,昭和52年11月24日,被控訴人会社により特許出願され,昭和61年8月
28日,発明者を控訴人,権利者を被控訴人会社として設定登録された(特許第1
333891号。以下,この特許権を「本件特許権」という。)。
 本件は,控訴人が,特許法35条3項に基づき,職務発明の相当対価の一部
に当たる金員及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事件である。
 原判決は,控訴人が上記相当対価の請求権を有するとしても,当該請求権に
ついては消滅時効が完成しているとして,控訴人の請求を棄却した。
 控訴人は,原判決を不服として,本件控訴を提起するとともに,請求を拡張
し,上記相当対価の一部請求として1億円及びこれに対する遅延損害金の支払を求
めた(なお,原審における請求は5000万円及びこれに対する遅延損害金の支払
を求めるというものであった。)。
 2 前提となる事実
   次のとおり補正,付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案
の概要」2に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決2頁21行目の「甲4,5」を「甲4,5,乙14の1,6」と,
同22行目の「社内規程」を「社内規程である昭和49年4月1日改正従業員発明
考案取扱規程」と改める。
(2) 同4頁6行目から7行目にかけての「当該発明の評価(A区分からC区分
までの3区分)に従い」を削除し,同8行目の「とされている」の次に「(昭和4
9年4月1日改正従業員発明考案取扱規程3条の規定により会社に届出のあった発
明等に対する「譲渡補償」については,同規程7条の規定により,当該発明の評価
(A区分からC区分までの3区分)に従い所定の金額が支払われるものとされてい
た。)」を加える。
(3) 同4頁22行目冒頭から同23行目末尾までを削除し,同24行目の項記
号「ウ」を「イ」と改める。
(4) 同4頁末行の「昭和53年」を「昭和52年12月末ころ」と,同行の
「3000円(甲7)」を「2000円(弁論の全趣旨)」と改める。
第3 当事者の主張 
次に補正,付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当事者の主
張」に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決6頁25行目の「5335億円」を「4014億円」と,同7頁3
行目の「昭和53年」から同7行目末尾までを次のとおり改める。
「昭和53年から(太陽熱温水器について昭和54年から)平成3年までの
期間における製品(電気温水器等)の売上総額は,以下のとおりである。
   (ア) 電気温水器2924億円
(イ) 太陽熱温水器  1090億円
   (ウ) 合計    4014億円」
(2) 同7頁8行目冒頭から同15行目末尾までを次のとおり改める。
 「イ 控訴人の受けるべき相当の対価の計算の基礎となる利益
     (ア) 被控訴人会社の製品販売による純利益 803億円
  被控訴人会社が製品販売により得た純利益は,上記売上総額の20
パーセントを下らないというべきである。したがって,純利益の額は次のとおりと
なる。
  a 電気温水器   約585億円(1億円未満4捨5入)
  b太陽熱温水器 218億円
  c合計 803億円
  (イ) 特許使用料 512億円
      a 電気温水器     79億円
b 太陽熱温水器 433億円
c 合計 512億円
ウ 相当対価の額   182億円
本件特許発明に関して控訴人が被控訴人会社より受けるべき相当の対
価は,上記イ(ア)の製品販売による純利益額803億円に控訴人の寄与度10パー
セントを乗じて算出した金額と,上記イ(イ)の特許使用料512億円に控訴人の寄
与度20パーセントを乗じて算出した金額との合計額182億円(1億円未満切捨
て)とするのが相当である。」
(3) 同7頁16行目の「5000万円」を「1億円」と,同18行目の「10
6億7000万円」を「182億円」と,同23行目の「純利益」から同25行目
の「訴状送達の日の翌日(平成15年12月16日)」までを「純利益の総額80
3億円及び特許使用料の総額512億円に対応する相当対価182億円のうち1億
円及びこれに対する控訴状送達の日の翌日(平成16年10月26日)」と改め
る。
(4) 同8頁12行目の「発売日から」を「発売日の」と改める。
(5) 同8頁20行目の「次のとおりである」の次に「(以下,各項目を「構成
A」などという。)」を,同9頁7行目から8行目にかけての「次のとおりとな
る」の次に「(以下,各項目を「構成a」などという。)」を加える。
(6) 同12頁20行目の「譲渡に伴い,」の次に「平成4年12月25日,」
を加える。
(7) 同13頁12行目の「従業員規程等」を「本件規程等」と,同18行目の
「この点,原告が書証として提出した特別事情補償に関する文書には」を「前記1
(被告の反論)(2)イ記載のとおり,被控訴人会社は本件特許権の東芝設備機器への
譲渡に伴い,控訴人に対し特別事情補償金を支払っているが,その支払に関し被控
訴人会社が控訴人に交付した補償金明細書には」と改める。
(8) 同14頁5行目の「12月末日」を「12月末日限り」と,同15頁6行
目の「9月から12月まで」を「9月分から12月分まで」と改め,同18行目の
「支払時期は,」の次に「同月分の給与の支払時期である」を加える。
(9)同18頁14行目の「1970年代」から同21行目末尾までを次のとお
り改める。
「本件職務発明が実質的に完成した1970年代から1990年代にかけ
て,我が国社会においては,法律として特許法35条の規定こそ存在したものの,
企業における従業員の職務発明について,その貢献度に応じた独立の対価が想定さ
れて従業員が企業に対してその支払を請求できるとは一般に考えられていなかった
のであり,給与に上乗せされる若干の手当を給付されれば,それで満足しなけらば
ならないと考えるのが一般の風潮であった。そのため,控訴人も,被控訴人が補償
金として給与に上乗せして支払ったことから,それで満足しなければいけないもの
と永年思い込んできた。控訴人は,権利(相当対価支払請求権)があるなどとは思
いもよらずにいたのであるから,権利の行使が可能であるにもかかわらずそれを行
使しないという状況下には永年なかった。」
第4 当裁判所の判断
1当裁判所は,控訴人の本件請求は,当審で拡張された部分を含めて理由がな
く,これを棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正,付加するほ
か,原判決「事実及び理由」欄の「第4 当裁判所の判断」1ないし3に記載のと
おりであるから,これを引用する。
(1) 原判決19頁11行目から12行目にかけての「昭和53年に譲渡補償と
して3000円」を「昭和52年12月末ころに譲渡補償として2000円」と改
める。
(2) 同19頁17行目の「乙4~18」を「乙4~20,23~25」と改め
る。
  (3) 同19頁20行目の「委員会」の次に「(昭和50年12月16日に同委
員会の名称は「電気温水器缶体委員会」と改められた。)」を加える。
  (4) 同19頁22行目の「被告会社は」を「被控訴人会社の一組織である東芝
総合研究所が温水器用材料としてアルミナイズド鋼等に代わる材料を検討して行く
中で,新日鉄が開発したステンレス鋼(YUS-27A)を含む材料に着目したこ
とを契機として,被控訴人会社は,」と,同末行の「ステンレス鋼缶体用」を「ス
テンレス鋼製缶体用」と改める。
  (5) 同20頁4行目の「YUS190」を「新日鉄が開発したYUS190」
と改め,同5行目の「研究を行った。」の次に「YUS190の代表的化学組成
は,重量パーセントでCr:18.95,Mo:2.05,Ti:0.15,N
b:0.27,Si:0.09,C+N:0.017であり,本件特許発明の構成
C,D,Eの要件を充足するものであった。」を加え,同7行目の「もっとも」か
ら同12行目末尾までを次のとおり改める。
    「原告は,昭和52年9月30日付けの技術報告書において,「幾何学的
形態の相異による腐食性に関し解析した結果,隙間限界深さ20㎜であることがわ
かった。」と記載しているものの,上記委員会等の記録や原告提出の報告書に照ら
しても,原告が,上記委員会等で,隙間の深さ,溶接方法について上記報告以外に
積極的に意見を述べ,主導的な立場で電気温水器の研究,設計に従事したことはう
かがわれない(甲6,22ないし24も,この認定を左右するに足りず,他にこの
認定を覆し,控訴人が被控訴人会社において主導的な立場で電気温水器の研究,設
計に従事したとの事実を認めるに足りる証拠はない。)。」
  (6) 同20頁18行目の「15.5mm」の次に「(本件特許発明の構成Fの要
件を充足する。)」を加える。
(7) 同20頁末行から同21頁1行目にかけての「当該発明の評価(A区分か
らC区分までの3区分)に従い」を削除し,同2行目の「とされている」の次に
「(昭和49年4月1日改正従業員発明考案取扱規程3条の規定により会社に届出
のあった発明等に対する「譲渡補償」については,同規程6,7条の規定により,
当該発明の評価(A区分からC区分までの3区分)に従い所定の金額が支払われる
ものとされていた。)」を加える。
 (8) 同21頁17行目及び同22行目の各「規程上」並びに同22頁1行目の
「規程等上」をいずれも「本件規程等上」と改める。
(9) 同22頁9行目の「昭和63年12月23日」の次に「(昭和63年12
月25日は日曜日であるため,同年12月分の給与は同月23日に繰り上げて支給
された。)」を加える。
(10) 同23頁10行目の「昭和53年」を「昭和52年12月末ころ」と,
同行目の「3000円」を「2000円」と改める。
(11) 同24頁7行目から8行目にかけての「12万8000円の支払を受け
たことは当事者間に争いがないが,」を「12万7000円の支払を受けたことは
前記「前提となる事実」(第2の2)に記載のとおりであるが,」と改める。
(12)同25頁22行目から23行目にかけての「昭和53年に譲渡補償30
0円」を「昭和52年に譲渡補償2000円」と,同26頁4行目の「12月末
日」を「12月末日限り」と改める。
(13) 同27頁末行末尾の次に改行の上,次のとおり加える。
「なお,控訴人は,本件職務発明が完成した1970年代から1990年
代にかけて,我が国の社会においては,特許法35条の規定は存在したものの,企
業における従業員の職務発明について,その貢献度に応じた独立の対価が想定され
て従業員が企業に対してその支払を請求できるとは一般に考えられておらず,控訴
人も,被控訴人が補償金として給与に上乗せして支払ったことから,それで満足し
なければいけないものと永年思い込んできたものであり,その意味で,控訴人にお
いて,相当対価支払請求権があるなどとは思いもよらずにいたのであるから,権利
の行使が可能であるにもかかわらずそれを行使しないという状況下には永年なかっ
たとも主張している。しかしながら,消滅時効は権利を行使することを得る時より
進行するものであり,控訴人において特許法35条の規定の趣旨内容について理解
が十分でなかったことなどは消滅時効の進行を妨げる事情にはなり得ないというべ
きであり,また,そのことは消滅時効の援用が権利濫用となるか否かの判断に当た
り考慮すべき事情にも当たらない。」
 2 以上の次第で,被控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は
理由がなく,また,当審で拡張された控訴人の請求も理由がないから,これらをい
ずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所知的財産第1部
         裁判長裁判官 北  山  元  章
            裁判官 青  栁   馨
 
            裁判官 沖  中  康  人

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