弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破毀する。
     本件を東京地方裁判所に差戻す。
         理    由
 上告人は、原判決を破毀しさらに相当の裁判を求めると申立て、上告の理由とし
て別紙記載のように主張した。
 上告理由第一点について
 <要旨>建物保護ニ関スル法律(以下建物保護法という。)第一条が、土地の賃借
人が地上に登記した建物を所有することをもつて土地賃借権の登記に代わる
対抗事由としている所以は、当該土地の取引をする者は、地上建物の登記名義によ
り、その名義人が地上に建物を所有し得る土地賃借権を有することを推知し得るか
らである(最高裁判所昭和四一年四月二七日判決の判決理由)。そうして、土地の
取引をする者は現地を検分して建物の所在を知るのが通例であるから(最高裁判所
昭和四〇年三月一七日判決の判決理由)、その者が建物登記簿を閲覧した場合、取
引土地上の現存建物と同一と認められる建物の登記とその所有者の記載とを見出し
得るならば、その者はその所有名義人が賃借権等土地の使用権を有することを推知
し得る道理である。これを要約すれば、土地賃借権の対抗要件としての建物の登記
は、土地の取引をする者に建物の所有名義人の存在とその氏名とを知らせるに足る
記載があれば十分なのであつて、建物自体についての権利の対抗要件としての登記
と同一である必要はないのである。このように考えるならば、土地賃借権の対抗要
件としての建物の登記が、不動産登記法所定の所有権に関する登記でなければなら
ぬ理由はなく、建物の表示の登記であつても、所有者の氏名の登記のあるものであ
れば足るといわなければならない。
 形式の面からみても、建物保護法第一条の表現は「登記シタル建物」とあつて、
如何なる登記であることを要するかは規定されていない。もちろん建物の表示の登
記の制度は、建物保護法制定の遥かのちに、家屋台帳登録制度に代わるものとし
て、不動産登記法を改正して採択されたものであるけれども、同法改正の際、ある
いはその後において、建物保護法第一条の前記表現に関する手直しはない。したが
つて、建物の表示の登記が所有権に関する登記とひとしく建物登記簿に記載される
登記である以上、建物保護法第一条の「登記」に該当しないとはいえないのであ
る。
 また建物の表示の登記は、登記官の職権によつてされることもあるので、この場
合の表示の登記にも対抗要件としての効力を認めるときは、土地賃借人はみずから
権利保全の手続をとらないのに対抗要件を取得する結果となることを認めざるを得
ないが、すでに登記がある以上は、第三者がこれを知り得る関係においては、その
登記が当事者の申請に基くものか職権によるものかによつて差異はないわけである
から(大審院昭和一三年一〇月一日判決の判決理由)、右のような結果を招いても
異とするに足りないし、この結果が土地賃借人の保護に傾きすぎると考える必要も
ない。
 さらに、建物の表示の登記はすべての建物についてされることが制度の趣旨であ
るため、それが実行されたことを前提とし、かつこの登記が建物保護法第一条の登
記に当ると解するときは、同条の保護をうけない土地賃借人は極めてまれとなり、
借地人保護に厚い結果となることは否定できない。しかしこの結果は、借地人保護
のための社会政策的規定といわれる同法の立法趣旨にかないこそすれ、これに反す
ることにはならないと考える。
 当裁判所は叙上のように判断するのであるが、翻えつて本件事案について考える
と本件において上告人の所有建物について、被上告人が土地所有者となる以前から
建物の表示の登記がされていることは原審の確定した事実である(もつとも、登記
簿上の建物の面積は実際の面積とかなり相違しており、また所在地の地番も相違し
ていて、これら相違の原因は一件記録上では必ずしも明白とはいえない。)。しか
も甲第三号証によれば、右表示の登記の所有者の欄に上告人の氏名が登記されてい
ることが認められる。したがつて、もし上告人が被上告人の前主との間に適法に賃
貸借契約を結んでいたとすれば、賃借権について建物保護法による対抗力を取得し
ていることになり、被上告人の本件土地明渡請求認容の妨げとなることはいうまで
もない。しかし、原審は右賃貸借契約の存否について事実を確定しないまま、建物
の表示の登記は建物保護法所定の賃貸借の対抗要件とならないと解して、被上告人
の請求を認容しているのであつて、その法令解釈はさきに判断したところに照らし
て誤りといわなければならず、その誤りが賃貸借の存否について審理を尽くさなか
つた違法を招来していることは明らかである。
 上告理由第一点は以上当裁判所の判断と同旨のものであるから理由があり、原判
決は破毀を免れない。よつて上告理由第二第三点についての判断を省略し、原判決
を破毀して、さらに審理を尽くさせるため本件を原審に差戻すこととし、主文のと
おり判決する。
 (裁判長裁判官 近藤完爾 裁判官 田嶋重徳 裁判官 吉江清景)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛