弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人今井豊治の上告趣意第一点について。
 論旨は、原審は本件の併合罪につき法定の加重をするに当り、窃盗罪と強盗未遂
罪との刑の軽重の比較において窃盗罪を重しとして、その刑に法定の加重をしてい
るが、それは違法であるというのである。しかし、同時に刑を加重減軽すべきとき
には、併合罪の加重に先だつて法律上の減軽をしなければならないことは、刑法第
七二条の規定するところであるから、原審はまず強盗罪について同法第四三条第六
八条第三号により、未遂減軽をしたのであつて、その結果強盗未遂罪の刑は二年六
月以上七年六月以下の懲役となつたのである。そこで、強盗未遂罪の右の刑を窃盗
罪の十年以下の懲役と比較すれば、窃盗罪の刑の方が重いことは、同法第一〇条第
二項によつて明かであるから、原審は同法第四七条によつて重い窃盗罪の刑につい
て併合罪の加重をしたのであつて、原審の適条は正しく、原判決には所論のような
違法はない。されば、論旨は理由がない。
同第二点について。
 裁判所が証拠に引用した被告人の自白が、その裁判所の公判廷でなされたもので
あるときには、その自白は憲法第三八条第三項及び刑訴応急措置法第一〇条第三項
の自白に含まれないということは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一六八号
同年七月二九日大法廷判決、昭和二三年(れ)第六六二号同年一一月一〇日大法廷
判決)とするところである。されば原審が本件犯罪事実を認定するに当り、被告人
の原審公判廷における自白のみを証拠としたからといつて、原判決には所論のよう
な違法はなく、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 原審が認定した事実として引用した第一審判決記載の第二事実は、被告人はA外
七名と強盗を共謀して、所論会社に侵入の上、社員等に拳銃を突きつけ脅迫して、
同社所有金品を奪取しようとしたが、社員等に反抗されたため、その目的を遂げな
いで逃走したというのである。弁護人は、この事実によつては、刑法第一三〇条の
「人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物」に侵入したことが不明であるというの
であるが、社員等を脅迫して会社所有の金品を奪取しようとしたというのであるか
ら、その場所が「人ノ看守スル建造物」であつたことは明かである。されば、原審
が右の事実につき刑法第一三〇条を適用して、住居侵入罪を認めたことは正当であ
つて、原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。
 以上は、第二点を除き、裁判官全員の一致した意見であつて、第二点については、
裁判官長谷川太一郎、同島保同河村又介の意見は本文記載のとおりであり、裁判官
井上登の意見は昭和二三年(れ)第一六八号同年七月二九日大法廷判決、裁判官穂
積重遠の意見は昭和二三年(れ)第一五四四号昭和二四年四月二〇日大法廷判決に
それぞれ示されたとおりである。
 よつて、最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項、旧刑事訴訟法第四四六条に
従い主文のとおり判決する。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二四年五月三一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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