弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

 主文
原判決中、被告人Aに関する部分を破棄する。
被告人を懲役八月に処する。
訴訟費用中、原審国選弁護人清水正夫に支給の金員は、全部被告人の負担とす
る。
         理    由
 本件控訴の趣意は、末尾添附の弁護人久留島新司作成名義の控訴趣意書記載のと
おりである。
 よつて按ずるに、窃盗罪が既遂の域に達するには、他人の支配内にあるものをそ
の支配を排して自己の支配<要旨>内に移すことを要する。しかして窃盗犯人がその
目的物件を工場の資材小屋内から取出し、未だ工場の構外に搬出しないよう
な場合において、構内が一般に人の自由に出入し得るが如き場所であり、構内から
物件を構外に搬出するにつき、なんら障碍排除の必要のないような場合には、犯人
はその目的物件を小屋内から工場構内へ取出すと同時にその目的物に対する占有者
の支配を排してこれを自己の支配に移したものといい得るから窃盗既遂をもつて論
ずることができる。しかし、目的物件を小屋外へ取出しても、構内は一般に人の自
由に出入することができず、更に門扉、障壁、守衛等の設備があつて、その障碍を
排除しなければ構外に搬出することができないような場合には、その目的物件をそ
の障碍を排除して構外に搬出するか、あるいは少なくともそれに覆いをかぶせいん
とくする等適宜の方法によりその所持を確保しない以上、未だその占有者の事実上
の支配を排除して自己の支配内に納めたものとはいえないから、たとえその目的物
件を小屋から構内を相当距離運搬したとしても、窃盗既遂をもつて論ずるわけには
いかない。けだしこの場合といえども構内全体には完全な管理者の支配が及んでい
るからである。
 ところで、本件についてこれを考えて見ると、原審挙示の各証拠及び当審検証調
書、当審証人B、同Cの各証人尋問調書によると、被告人は原審相被告人Dと窃盗
を共謀の上、昭和二十八年一月十九日午後七時頃西宮市a町京阪神急行電鉄E工場
の構内東方にある資材小屋内から本件アクスルメタル四個(目方約三三、六瓩)を
取り出し、これを構外へ運び出すため各自二個ずつを手に持ちその場所から同構内
西方約百七、八十米の個所まで運搬し、未だ構外に出ない内に同工場夜間作業員等
に発見せられ、その目的を遂げなかつたものであり、また同工場の周囲には外部か
ら構内への侵入を防ぐため高さ約九尺の金網の棚をめぐらし、構内三個所の出入口
の内北側の出入口は常にこれを閉ざし、北東及び西側出入口には昼夜を通じ守衛が
各常駐して、工場の者の出入にも一々その許可を要するものであることが明らかで
あるから、右被告人等の所為は、叙上説示の理由により窃盗未遂をもつて論ずるの
を相当と認める。従つて、これを窃盗既遂と認定した原判決には事実の誤認があ
り、これが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決中被告人Aに関す
る部分は破棄を免れない。
 よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十二条により原判決中被告人Aに関
する部分を破棄し、なお、同法第四百条但し書に従い、更に次のとおり判決する。
 罪となるべき事実
 被告人は原審相被告人Dと窃盗を共謀の上、昭和二十八年一月十九日午後七時頃
西宮市a町京阪神急行電鉄株式会社E工場構内F小屋内から同工場検車係長G保管
にかかる砲金製アクスルメタメダ個(目方約三三、六瓩、時価約一万七千円相当)
を盗み出し、構外へ搬出の目的でそこから同構内西方約百七、八十米の個所まで運
搬したが、その際同工場夜間作業員等に発見せられ、窃盗の目的を遂げなかつたも
のである。
 なお、被告人は昭和二十二年二月十二日神戸地方裁判所において強盗住居侵入罪
により懲役五年(未決勾留日数百三十日通算)に処せられ、当時その刑の執行を受
け終つたものである。
 証拠の標目
 一、 司法巡査のHに対する第一回供述調書
 一、 司法巡査のB及びCに対する各第一回供述調書
 一、 当審における検証調書
 一、 当審における証人B、同Cの各証人尋問調書
 一、 被告人及び原審相被告人Dに対する原審第一回公判調書(供述)
 一、 被告人の身上調書及び前科調書
 法令の適用
 刑法第二百三十五条、第二百四十三条、第六十条、第五十六条第一項、第五十七

 刑事訴訟法第百八十一条第一項
 よつて、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 瀬谷信義 判事 山崎薫 判事 西尾貢一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛