弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人に関する部分を破棄する。
     被告人を懲役一年六月に処する。
     但しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
     原審における訴訟費用は被告人の負担(但し原審相被告人Aと連帯)と
する。
     本件公訴事実中、昭和二二年政令第一六五号違反の事実については、被
告人を免訴する。
         理    由
 本件公訴事実中、昭和二二年政令第一六五号違反の事実(原判決摘示第三の事実)
は、昭和二七年政令第一一七号大赦令一条八三号一一七号にあたるので、刑訴施行
法二条、三条の二、刑訴四一一条五号、旧刑訴四四八条、四五五条、三六三条三号
により、原判決中被告人に関する部分を破棄し、右事実については免訴の言渡をし
なければならない。その余の公訴事実に関する、上告趣意についての判断は、次の
とおりである。
 弁護人奥山八郎の上告趣意第一点について。
 所論は、原審において、所論(一)及び(七)の各書類が、証拠書類として法廷
に顕わされなかつたから、その供述者又は作成者の尋問請求をする機会が被告人に
与えられなかつたということを前提として、憲法三七条二項違反を主張するもので
ある。しかし、原審第六回公判調書の記載(五九八丁うら)によると、これらの書
類についてもその内容の要旨が告げられたうえ、被告人等に対し意見弁解の有無が
問われ、利益の証拠があれば提出できる旨告げられていることが認められる。(一)
の聴取書について、所論のような理由からこれを反対に解することはできないし、
また(七)の英文受領書控(品目と受領の旨が記載された極めて簡単な書面)につ
いても、当然、日本語によつてその内容が解示されたものと認められるのであり、
これを反対に解すべき根拠はない。従つて、所論憲法違反の主張は、その前提を欠
き、理由のないものといわなければならない。
 同第二点について。
 所論は、単なる刑訴法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由にあたらな
い。そして昭和二三年一二月三一日以前起訴された事件を昭和二四年一月一日以後
審理するにあたり、引き続き一五日以上開廷しなかつた場合には、刑訴施行法一三
条、刑訴規則施行規則三条三号により、その必要ありと認めた場合に限り、公判手
続の更新をすれば足りるのであるから昭和二四年(れ)二〇〇〇号同二五年二月一
五日大法廷判決、集四巻二号一六七頁。昭和二四年(れ)二一二七号同二五年一〇
月二五日大法廷判決、集四巻一〇号二一五一頁参照)、原審の手続に所論の違法は
ない。
 弁護人鍛治利一、同山岡重良の上告趣意第一点乃至第三点は、前記大赦にあたる
事実にのみ関するものであるから、判断を要しない。
 同第四点について。
 原判決は、被告人(B)と共同審理を受けた数名の共同被告人(共犯者)及び共
同審理を受けない数名の単なる共犯者の、いずれも原審公判廷外の自白を綜合して、
被告人に対する犯罪事実の認定をしているのであつて、このような証拠による犯罪
事実の認定が、すこしも憲法三八条三項に違反するものでないことは、当裁判所大
法廷の判例(昭和二三年(れ)七七号同二四年五月一八日判決、集三巻六号七三四
頁)に徴して明らかであり、所論は理由がない。
 同第五点について。
 所論は、原審が証拠の趣旨を離れ、予断によつて有罪を言渡したものであるとい
うのであつて、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。なお、所論Cの供述記載中
には、被告人(B)の関与を明示する部分はないが、同時にこれを明らかに否定す
る部分もないのであつて、原審が、これを綜合認定資料の一つとしたことにはすこ
しも矛盾はない。
 同第六点について。
 所論は、憲法三一条違反を主張するけれども、その実質は、一体をなす一連の陳
述を不当に分離して罪証に供したという単なる訴訟法違反の主張にほかならないか
ら、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。また、所論のような不当分離も認めら
れない。
 同第七点乃至第九点について。
 所論は、採証法則違背、審理不尽の主張であり、刑訴四〇五条の上告理由にあた
らない。
 同第一〇点について。
 所論は、憲法三七条一項違反を主張するけれども、その実質は、採証法則違背、
審理不尽の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。
 なお、以上の諸点につき、記録を調べても、所論のような採証法則違背又は審理
不尽の違法があるとは認められない。
 よつて、原判決の確定した窃盗の事実(原判決摘示第四の事実)につき、刑法二
三五条、六〇条を適用して主文の刑を量定し、なお情状に照らして同法二五条によ
りその執行を猶予することとし、さらに旧刑訴二三七条、二三八条を適用して、裁
判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 公判出席検察官 吉河光貞
  昭和二七年一二月二六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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