弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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            主      文
被告人を懲役1年4月に処する。
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
押収してあるのんこ1本(平成17年押第19号の1)を没収す
る。
            理      由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成17年2月22日午後4時30分ころ,神戸市A区Ba丁目b番
c号Cアパートの1階通路において,同アパート1階の住人であるD(当時68
歳)に対し,同人が同通路の電灯を点灯したままにしていたことに文句を言ったと
ころ,同人が「お前は電気係か」と言い返したことなどに立腹し,同人に対し,陶
器製カップで右目上部付近を数回殴打し,ミニ鎌(のんこ。刃体の長さ7.2セン
チメートル,平成17年押第19号の1)で頭部や首付近を数回切り付けるなどの
暴行を加え,よって,同人に全治約14日間を要する右前頭部切創,頚部切創,左
右手指切創の傷害を負わせたものである。
(証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―
省略
(弁護人の主張に対する判断)
 弁護人は,被告人の本件行為は,手かぎ(長柄)で殴り掛かり,頚部を手で締め
てきた被害者による急迫不正の侵害に対し,少なくとも自己の身体を防衛するた
め,やむを得ずにした行為であるから,正当防衛が成立して被告人は無罪であると
主張し,被告人も,捜査段階からほぼ一貫して,これに沿う供述をしている。
 しかしながら,被害者は,被告人が「電気消さんかい」と怒鳴り付けてきたの
で,「お前は電気係か」と言い返して,自室から1階通路に出たところ,被告人か
らいきなり硬いもので顔面を何回か殴打された上,刃物で右側頭部に切り付けら
れ,顔面,頚部及び両手親指の根元等にけがを負わされたことから,自分の身を守
るため膝げりをしたほか,自室から手かぎを持ち出して被告人の尻をたたくなどし
た,と証言しているところ,被害者の上記証言は,(1)被告人の加害行為の詳細につ
いて記憶がない点も含め,いきなり攻撃を受けた者の認識及び反応を述べたものと
して,ごく自然で合理的な内容となっていること,(2)仮に被害者が当初から手かぎ
を持ち出し率先して加害行為に及んだのであれば,手かぎがある程度の長さを有し
ていること等に照らし,傷害の程度が被害者と被告人とで逆転していてもおかしく
ない上,片手に手かぎを持ち,片手で被告人の頚部を締めていたという被害者の両
手指に防御創と認められるけがが生じた原因を十分に説明することもできないので
あって,実際の傷害の発生状況は被害者の供述にこそ符合していると認められるこ
と,(3)被害者としては,被告人から文句を言われたからといって,いきなり手かぎ
を持ち出して加害行為に及ぶほどの理由があったとは考えにくいことなどに照ら
し,その信用性はかなり高いと考えられる。
 これに対し,被告人の前記供述は,(4)手かぎで殴り掛かり,頚部を手で締めてき
たという被害者の攻撃に対し,目の前にある被害者の手を直接払ったり,これに切
り付けたりするのではなく,頭部や頚部等にけがを生じさせるような態様で反撃し
たという点で,いささか不自然な内容となっていること,(5)被害者の攻撃と被告人
の反撃の順序等については,供述に少なからぬ変遷が見られること,(6)声が出にく
くなるほど強く首を締め付けられたと供述する点についても,被告人の頚部等にこ
れに相応する痕跡は見当たらないこと,(7)被告人及び被害者の従前の言動に関し,
被害者が被告人の悪口を言ったとか,手かぎを持ち出して脅したことがあるなどと
被告人が供述している点は,被害者はもとより,前記アパートの住人らの供述とも
矛盾していることな
どに照らし,その信用性には疑問を差し挟む余地が多分にある。
 そして,以上の諸事情を総合考慮すれば,被害者の供述が十分に信用できる一
方,これに反する被告人の供述は信用できないから,正当防衛を主張する弁護人の
主張はその前提を欠き,採用できないことが明らかである。
(量刑の理由)
 本件は,傷害1件の事案である。動機が短絡的で酌量の余地がないこと,後に被
害者も手かぎを持ち出しているとはいえ,当初は素手であった被害者の頭部等に陶
器製カップ及びミニ鎌で一方的かつ執ように攻撃を加えていること,捜査の当初か
ら,先に加害行為に及んだのは被害者であると強弁するなどしており,真しな反省
がうかがわれないことなどに照らすと,犯情は誠に芳しくなく,その刑責を軽視す
ることはできない。そうすると,他方で,傷害の程度そのものは比較的軽いこと,
被告人には前科が無く,高齢でもあることなど,被告人のために酌むべき事情を十
分に考慮しても,本件は刑の執行を猶予するのが相当な事案とはいえず,主文の程
度の実刑は免れないところである。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成17年10月19日
神戸地方裁判所第1刑事部
        裁 判 官    的 場  純 男

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