弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各控訴を棄却する。
         理    由
 検察官長富久及び弁護人松井佐の各控訴趣意は記録に編綴されている原審検察官
山根静寿及び同弁護人並びに弁護人諫山博(第一点のみ)被告人提出の各控訴趣意
書記載のとおりであり弁護人松井佐の答弁は記録に編綴されている同弁護人の答弁
書及び弁護人諫山博の控訴趣意書第二点各記載のとおりであるからこれを引用す
る。
 諫山弁護人の控訴趣意第一点及び松井弁護人並びに被告人の各控訴趣意書につい

 しかし公務員がその職権内に於て作成した文書は縦令未完成であつても現に公務
所に於て使用に供するものなる以上刑法第二百五十八条に謂う公務所の用に供する
文書に該当し又同条に毀棄とは文書の全部又は一部の効用を害する一切の行為を指
称し必ずしも物質的壊滅を要せず本来の用に供する能はざる状態に至らしめたる場
合をも包含するものと解すべきところ原判示によれば「被告人は昭和二十七年六月
七日窃盗及び政令第三百二十五号占領目的阻害行為処罰令違反等の被疑事実につき
逮捕状により福岡市警察局員に逮捕せられ同日午前十一時頃同局公安部警備課にお
いて同課司法警察員巡査部長Aより刑事訴訟法第二百三条の規定に基き被疑事実の
要旨及び弁護人を選任し得る旨を告げられ之に対する供述をしたので其の旨記載し
た弁解録取書(証第一号)を作成せられた上これを読み聞かせられ誤の有無を問わ
れたところ黙秘したので同巡査部長においてその旨の文書を末尾に記載中たまたま
同部長が右書面を机上においたまま一寸わき見をした瞬間その隙を窺い右弁解録取
書を取つて両手で丸めしわくちやにした上床上に投げ棄てえと謂うにあり右事実は
原判決挙示<要旨第一>の証拠により優に認められるのであるから本件の如く司法警
察員がその職権に基き既に弁解を録取してこれが読聞けを完了し末尾文
言を記載中の弁解録取書は所論の如く未だ被疑者及び司法警察員の署名捺印なく未
完成たからと謂つて公務所の用に供する文書に該当しないとは謂えない、しかして
又原判決引用の領置に係る弁解録取書自体に徴し(尤も原審証人Aの供述調書には
該弁解録取書は、まるめてつぶされたのを拡げたところ右の中央部辺が破れてたが
それは拡げるとき破れたのかも知れぬ旨記載され右破損が被告人の所為に基く<要旨
第二>ものとは断じ難いので破損の点を除く)右弁解録取書が甚だしくしはよりその
体裁の上から見て将又破損し易い形状を呈しこれが保存の点より謂つて
も、もはや公務所の用に供する文書として使用し得ない状態に至つてることが明認
される、されば被告人を刑法第二百五十八条に問擬したのは相当である尚松井弁護
人は被告人の本件所為は黙否権の不法侵害に対する正当防衛乃至緊急避難である旨
を主張するけれども被告人の黙否権が侵害せられた証左なく所論はその前提を欠き
到底採用に値しない。
 検察官の控訴趣意第一について
 原審が所論引用の理由に基いて本件公訴事実中「被告人はB外一名と共謀して昭
和二十七年二月中旬C株式会社の承諾を受けずして福岡市a町b番地のc、D方製
材場の桁の側面を通つている同会社配線に係る正規の屋内動力線のチユーブ入口の
個所に別個の電線三本を夫々接続管にてみだりに接続接触せしめて電気工作物の機
能に障害を与え同所から右D方所有空地に建造した作業場内に積算動力計を経由し
ない分岐配線を施して右正規の電気工作物の施設を変更しその頃から同年五月七日
頃迄の間引続き右分岐配線を利用して同作業場内に設置したアーク燈電気コンロ電
気湯沸器ラジオ及び電燈等に電気を流通せしめて電気の供給を妨害すると共に同株
式会社供給に係る電気料合計約千九百八十三キロワツトアワー(掛金約一万九千二
十円相当)を窃取した」との点につき被告人に対し無罪の言渡をなしたことは原判
決に照し明瞭であるしかるところ記録によれば原判決掲記の如くBEがD方裏の作
業場において公訴事実記載の如き配線工事を施して盗電し以つて新聞紙Fを印刷し
ていた事実そして該印刷が被告人の指示の下に行はれたことは認められるが盗電の
ための右配線工事が被告人及びB外一名の共謀に基く確証はなく却つて被告人が当
初D方に赴き土地の借用方を懇請するに際し同人に対して「自分は写真の焼付に動
力が必要だが新しく動力を取付けるときは経費もかかるし面倒だから幸い貴方の所
にはモーターがありますからそれで無理を言いに来た動力代は今迄あなたが使用し
ていた分以上メーターが上つた分については自分が負担する」旨述べて居りこれに
前示作業場建築が昭和二十七年二月初であつて盗電が同月中旬からなされたことを
併せ考へると被告人に当初から盗電の意思があつたものとは到底認め得ないしかし
て所論の如く被告人がH党福岡地区の幹部の地位にあつたこと新聞紙FがH党機関
紙Gの同類紙なること及びこれが印刷にはD方製材場の配線を利用し別個の配線工
事を施すを要することを被告人において認識して居た等の点を以てしては盗電配線
に関する被告人の共謀を疑うに足るとは謂え未だ以つて被告人の共謀に基くものと
断ずるを得ない尤も被告人は作業場建築後も何回か作業場に入つたことが認められ
るのであるから爾後被告人においてこれが認識を得たことは推認し得られないわけ
ではないがいついかなる機会に認識したかは遂に確認し得べくもない然らば本件公
益事業法違反窃盗の公訴事実はその証明なきに帰し原審が此点につき無罪を言渡し
たのは相当である論旨は採用に値しない。
 検察官の控訴趣意第二について、
 しかし、本件記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われた諸般の情状に
よるも原審の被告人に対する刑の量定は必ずしも不当とは云えないので、論旨は採
用することができない。
 よつて、刑事訴訟法第三百九十六条に従い、本件各控訴を棄却することとし主文
のとおり判決する。
 (裁判長判事 下川久市 判事 青木亮忠 判事 鈴木進)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛