弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     第一審被告の控訴について、
     原判決中、第一審被告敗訴の部分を左の通り変更する。
     第一審被告は、第一審原告Aに対し、同原告より金七万円及びこれに対
する昭和二十六年六月二十九日以降完済に至るまで年一割の割合による金員の支払
を受けるのと引換えに別紙目録記載のするめを引渡すべし。
     第一審原告Aのその余の請求を棄却する。
     第一審原告Bの本件控訴を棄却する。
     訴訟費用中、第一審原告Aと、第一審被告との間に生じたものは、第
一、二審を通じてこれを二分し、この両名平等の負担とし、第一審原告Bの控訴費
用は同原告の負担とする。
         事    実
 第一審原告代理人は、原判決中、第一審原告Bの敗訴の部分を取消す、第一審被
告は第一審原告Bに対し別紙目録記載のするめを引渡すべし、訴訟費用中第一審原
告Bと第一審被告との間に生じたものは第一、二審を通じて、これを第一審被告の
負担とする、第一審原告Aに対する第一審被告の本件控訴を棄却する、との判決を
求め、第一審被告代理人は、原判決中第一審被告敗訴の部分を取消す、第一審原告
Aの請求を棄却する、第一審原告Bの本件控訴を棄却する、訴訟費用中第一審被告
と第一審原告Aの間に生じたものは第一、二審共第一審原告Aの負担とする、との
判決を求めた。
 第一審原告等代理人は、請求の原因として、
 一、 第一審原告(以下いずれも原告と云う)Bは、昭和二十七年一月四日原告
Aに、自己の所有する別紙目録記載のするめ百二十貫を他に売渡担保に供して金員
の借入をなすことを依頼したところ、原告Aはこれを承諾して同日第一審被告(以
下被告と云う)の代表社員Cから自分の名義で金二万四千二百円を、弁済期同年同
月三十一日と定めて借受け、同被告に対しその担保のために原告Bより交付を受け
た有するめの所有権を譲渡して引渡し、この借入金を原告Bに交付した。
 二、 その後、原告等と被告との合意によつて、その弁済期は同年二月一日に延
期され、同日原告Bは前記金員を原告Aに交付し、原告Aにおいてこれを被告に弁
済したのである。
 三、 ところで、原告Aが原告B所有の本件するめを被告に売渡すについて原告
Bは単にこれを他に担保に供することを承諾したにすぎほいのであつて、別に原告
Aに対しどのような趣旨においてもその所有権を移転したものではないのであつ
て、この関係は債務者が第三者所有のものに、その承諾を得て質権を設定した場合
と同様なのである。そして、前記売渡担保の契約は、前記貸金の担保の目的で被告
に本件のするめの所有権を移転するが、弁済と同時にその所有権は当然復帰すると
云う趣旨のものであつたから、前記の通り原告Aにおいて本件貸金の弁済をなすこ
とによつて、この担保権は消滅し 同時に本件するめの所有権は前所有者たる原告
Bに復帰したのである。
 四、 よつて、原告Bは所有権を、原告Aは売渡担保権の消滅を原因として本件
するめの返還を求めるものである。
 と陳述し、被告主張の後記(二)の(3)、(4)の事実中、原告A及び被告が
被告主張の通りの商人であること、被告が本件するめを占有していることは認める
が、その余の事実は否認する、とのべた。
 被告訴訟代理人は、
 (一)、 原告等は、本訴において、一、は所有権に基いて、一、は担保権の消
滅を原因として、いずれも本件するめの引渡を求めているが、同一の物を原告両名
に引渡すことを求めるのは事実上不可能を強いるものであるから、原告等の請求は
それ自体失当のものとして排斥さるべきである。
 (二)、 (1)、原告等の主張事実中、被告が昭和二十七年一月四日原告Aに
対し金二万四千二百円を、原告等主張の如き約定の下に貸与し、同原告からその担
保の目的で別紙目録記載のするめの所有権の移転を受けて、その引渡を受け、その
弁済と共に右するめの所有権は当然復帰するとの約定をなしたことは認めるが、そ
の余の事実はこれを否認する。
 (2)、 本件するめは原告Aの所有に属していたものであつて、原告Bの所有
のものではなかつたのである。売渡担保権の設定はその性質上、債務者が自己の所
有物についてこれをなすべきであつて他人の所有物についてこれを設定することは
出来ない。従つて仮りに本件するめがもと原告Bの所有に属していたものであつた
としても原告Bは、原告Aに対し他より金員を借入れるためこれを売渡担保に供す
ることを承諾することによつてその所有権を原告Aに移転したものと見なければな
らないのであつて、いずれにしても本件するめの所有権は貸金の弁済によつて当然
原告Aに復帰したのである。
 (3)、 而して、原告Aは海産物の仲買業を営む商人であり、被告は古物の売
買及金融業を営む合名会社であるところ、被告会社は昭和二十六年六月二十九日同
原告に対し金七万円を、弁済期同年七月十五日、利息金一万円の約束で貸与した
が、同原告はいまだその弁済をしないので、被告はその担保のため本件するめを留
置する権利を有するのである。
 (4)、 また仮りに本件するめが、前期売渡担保権設定の時において原告Bの
所有に属していたものであつたとしても、被告は原告Aより平穏且公然に本件する
めの占有を承継し、占有の始め、善意にして且過失がなかつたから即時にこれを留
置する権利を取得したのである。
 (5)、 されば、原告等の本訴請求はいずれも失当と云わなければならない。
と陳述した。
 証拠として、原告等訴訟代理人は、甲第一ないし第四号証を提出し、原審証人
D、同Eの各証言、原審及び当審における原告B本人の供述を援用し、書証に関す
る原告Aの答弁として、乙号各証の成立を認め、原告Bの答弁として、乙第一、第
五号証の成立はこれを認めるが、その余の乙号各証の成立は知らない、とのべ、被
告訴訟代理人は、乙第一、二号証、乙第三、四号証の各一、二、乙第五号証を提出
し、原審及び当審における証人Fの証言、原審及び当審における被告会社代表者C
の供述(いずれも第一、二回)を援用し、甲第二号証の成立は知らない、その余の
甲号各証の成立を認める、と答えた。
         理    由
 一、 先ず第一審被告の前記(一)の主張の当否について判断する。
 <要旨>本件は、第一審原告等の主張によれば、原告Bは、本件するめの所有権に
基いて、原告Aはこのするめに対する担保権の消滅による返還請求権に基い
て、両者共同して被告に対しその引渡を求めているのであつて、一、は物権的請求
権、一、は債権的請求権に基くものであるが、此のような場合には、数人の債権者
があつて、その債権の目的が性質上不可分の場合と同様に、各権利者は、単独で、
又は共同して両権利者のために履行を請求し、又、義務者は両権利者のため各権利
者に対して履行をなすことが出来るものと解するのを相当とするから、原告等の本
訴請求は、別に被告主張のように被告に対して不可能を強いるものとは認められな
いのである。さればもとより原告等の本訴請求が不適法であるとか、又はこの点に
おいてその主張自体失当のものである、とは云えないのである。被告の右主張は採
用し得ない。
 二、 よつて次に原告等の請求の当否について判断する。
 1、 原告Aが昭和二十七年一月四日被告会社代表者Cとの間に、原告Aにおい
て被告より金二万四千二百円を、弁済期を同年同月末日として借用すること、原告
Aは、この債務の担保の目的で別紙目録記載のするめの所有権を被告に移転するこ
と、との趣旨の消費貸借ならびに売渡担保権設定の契約をなし、この契約に基い
て、同日被告会社代表者Cは同原告に対して金二万四千二百円を交付し、同原告は
右代表者Cに対して別紙目録記載のするめを引渡してその所有権を移転したこと、
右貸金の弁済期がその後双方の合意によつて同年二月一日に延期され、同日原告A
において被告会社代表者Cに対してその弁済をなしたこと、はいずれも当事者間に
争がない。
 2、 而して、原審ならびに当審証人F、原審証人E、同Dの各証言ならびに原
審に於ける被告会社代表者C本人訊問(第一、二回)の結果、原告B本人訊問の結
果を綜合すると、別紙目録記載のするめはもと原告B所有のものであつたこと、そ
して、同原告は昭和二十七年一月四日予ねて知合の間柄にあつた原告Aに対して自
分が所有している右するめを他に担保に供して他より金員の借用方依頼したが、正
月早々金を借りるのは自分の信用を疑われることになるのを恐れて、この際特に原
告Aに対して、他より金員を借用するについては自分の名前を出さず、原告Aの名
義で借り受け、同じく原告Aの名において前記のするめを担保のため適当に処分し
て貰いたいとの趣旨の依頼をなし、本件するめの所有権を原告Aに譲渡したことを
仮装するため、同原告に対して、同人より買受けた生いかの代金の代物弁済として
同人に本件するめを譲渡した、との趣旨の記載をした念書を作成して交付したの
で、原告Aはこれを承諾して、同日前記の如く被告会社より右するめを売渡担保と
して金二万四千二百円を借受け、これを原告Bに交付したこと、被告会社代表者C
は、前記貸借をなすに際して原告Aに対し、本件するめが真実同原告の所有である
かどうかをたしかめたところ、同原告は真実その所有者であることを確信し右の念
書を示したので、被告代表者はこれを信用してこのするめを担保とすることを承諾
するに至つたものであること、がいずれも認められるのであつて、右認定を左右す
べき証拠はない。
 3、 ところで、原告等は、原告Bは、原告Aに対して、本件するめを他に担保
に供することを承諾したにすぎないから、その所有権は前記売渡担保の契約によつ
て原告Bから直接被告に移転し、従つてその債務の弁済によつてやはり直ちに原告
Bに復帰したのであると主張するが、原告Bが原告Aに対して、本件するめを他に
担保に供することを承諾したに止まらず、進んで原告Aの名において他に所有権を
移転することを承諾し、そのため、これを原告Aに譲渡したとの趣旨の念書を交付
してそのように第三者に表示せしめたこと前記認定の通りである以上、原告Bは最
早、これを信用して即ち善意でこのするめに売渡担保権の設定を受けた被告会社に
対してこの売渡担保権設定の時において自己がこれを所有していたものであること
を主張し得ず、原告Aもまた自己がその所有者でなかつたことを主張し得ないもの
と云わなければならない。
 4、 されば、本件売渡担保権設定の契約において、本件するめの所有権は貸金
の弁済と同時に当然その前所有者に復帰する、との趣旨のものであつたことは当事
者間に争がないから、被告との関係において、本件するめの所有権は本件貸金の弁
済によつて、此の担保権の設定看で且つこのするめの所有者であつた原告Aに復帰
し、原告Bには復帰しなかつたものと認めざるを得ないから、所有権に基いて本件
するめの返還を求める原告Bの本訴請求は他の争点について判断するまでもなく失
当たるを免れない。
 5、 而して、前記貸金の弁済によつて本件するめに対する担保権は消滅したか
ら此の担保権の設定着である原告Aは被告に対しその返還請求権を有するが、原告
Aと被告とがいずれも被告主張の如き商人であることは当事者間に争がなく、成立
に争ない用第一号証、原審における被告代表者C本人の供述(第一、二回)により
真正に成立したと認められる乙第二号証、乙第三、四号証の各一、二(いずれも原
告Aとの関係においては成立に争がない)及び原審における被告代表者C本人の供
述(第一、二回)を綜合すると、被告は昭和二十六年六月二十九日原告Aに対して
金七万円を、弁済期同年七月十五日、利息金一万円として貸付けたが、原告Aにお
いでいまだにその弁済をしないでいることが認められるから、被告はこの貸金の弁
済を受けるまでその占有に係る(この占有の事実は当事者間に争がない。)本件す
るめを留置することが出来るものと云わなければならない。
 されば被告は、原告Aに対し、同原告より右貸金七万円及びこれに対する貸付日
たる昭和二十六年六月二十九日以降完済に至るまでの約定利率を旧利息制限法所定
の範囲内に引直した年一割の割合による利息ならびに遅延損害金の支払を受けるの
と引換えに本件するめを引渡すべきである。
 三、 よつて、原告Aの本訴請求は右二、の5において認定の限度に於いて正当
であるから、この限度においてこれを認容し、その余を棄却すべく、原告Bの本訴
請求はこれを棄却すべきであるから民事訴訟法第三百八十四条、第三百八十六条、
第九十五条、第九十六条、第九十三条、第八十九条を適用して主文の通り判決す
る。
 (裁判長判事 西田賢次郎 判事 山崎益男 判事 松永信和)
 (別紙目録は省略する。)

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